てら)” の例文
あるまちはずれのさびしいてらに、和尚おしょうさまと一ぴきのおおきな赤犬あかいぬとがんでいました。そのほかには、だれもいなかったのであります。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あの若者わかもの毎日まいにちつっしたきり、ものべずにいる様子ようすだが、あのままいてかつえにになれでもしたら、おてらけがれになる。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
るのがうまいとしたから、ちることもよくちた。本郷ほんがう菊坂きくざか途中とちう徐々やは/\よこちたがてら生垣いけがき引掛ひつかゝつた、怪我けがなし。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでは塩原しほばらてら何処どこでせうと聞いたところが、浅草あさくさ森下もりしたの——たしか東陽寺とうやうじといふ禅宗寺ぜんしうでらだといふことでございますといふ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ハイ、御覽ごらんとほり、むらではおほきな建物たてものです。しかしこのおてら村中むらぢう人達ひとたちめにあるのです。わたしはこゝに御奉公ごほうこうしてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
聞居られしが其後そののちかれが弟願山の事におよび江戸表のてらは何方の徒弟とていなるやとたゞさるゝに至りて多兵衞はハツと心付おほいに狼狽うろたへ樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
法被はつぴてらとも棺桶くわんをけいた半反はんだん白木綿しろもめんをとつて挾箱はさんばこいれた。やが棺桶くわんをけ荒繩あらなはでさげてあかつちそこみつけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このふるかはらふるいおてら境内けいだいや、ふるいおてらのあつた場所ばしよいまはたけとなつてゐるところから、よくされるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
まもなく法師ほうしは、また女の手に案内あんないされ、大げんかんへ来ました。そこには前の武士ぶしが待っていて、法師をあみだてらまでおくって来てくれました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
その小高こだか所々ところ/″\に、したから石段いしだんたゝんで、てららしいもんたかかまへたのが二三軒目げんめいた。平地ひらちかきめぐらして、點在てんざいしてゐるのは、幾多いくらもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一寸ちよつとうかゞひますが、アノ、アノ、田村たむらをんなのおはか御在ございますが、アノ、それはこちらのおてら御在ございませうか。」と道子みちことゞこほちにきいてた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
『これはよいだ。とおか十一になったら、おてらへやって、りっぱなおぼうさんにしよう。』とおっしゃったのですよ。
馬鹿をふな! お前は乃父おれのやうに旋盤細工ろくろざいく商業しやうばいにするか、それともうんくばおてら書役かきやくにでもなるのだ。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そりゃこそ頬邊ほっぺた放埓みだらめがのぼるわ、所詮つまりなにいてもすぐ眞赤まっかにならッしゃらうぢゃまで。はやうおてらへ。
鉋太郎かんなたろうこたえました。これは、江戸えどから大工だいく息子むすこで、昨日きのうまでは諸国しょこくのおてら神社じんじゃもんなどのつくりをまわり、大工だいく修業しゅぎょうしていたのでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
都のてらでらの鐘がいぬの刻(午後八時)を告げるのを待ち侘びて、千枝太郎は土御門つちみかどの屋敷を忍んで出ると、八月九日の月は霜を置いたように彼の袖を白く照らした。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
じつと目を閉ぢようと為たが、目を閉ぢると、此の広い荒れ果てたてらに唯つた独り自分のると云ふ事が、野のなか捨児すてごにでも成つた様に、犇々と身にせまつてさびしい。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
また諸所しよしよ修道院しうだうゐんともらつて、もはや此世このよない会友くわいいうためいのりげ、其名そのな巻物まきものきとめて、てらからてらへと其過去帳そのくわこちやう持回もちまはつたなら、みんなさぞよろこことであらうが、だい
みちはなか/\きのふのやうにははかどらない。途中とちゆう午飯ひるめしつて、西にしかたむかつたころ國清寺こくせいじの三もんいた。智者大師ちしやだいし滅後めつごに、ずゐ煬帝やうだいてたとてらである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
太吉たきちはがた/\と溝板どぶいたおとをさせてかゝさんいまもどつた、おとつさんもれてたよと門口かどぐちから呼立よびたつるに、大層たいそうおそいではないかおてらやまへでもゆきはしないかとくらいあんじたらう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからは、さるは大きなおにの人形をこしらえ、甚兵衛じんべえれはてたてらたずねて歩きました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
てども/\つてぬので、ハンマーをつて往還わうくわんをコツ/\穿うがち、打石斧だせきふうもれたのなど掘出ほりだしてたが、それでもない。仕方しかたいので此方こつち二人ふたりは、きへてらなかはいつた。
どこの国からきた、どこのおてら行人ぎょうにんであろうか、天蓋てんがい瓔珞ようらくのたれたお厨子ずしなかにせおい、むねにはだいをつってかね撞木しゅもくをのせてある。そして行乞ぎょうこつでえたぜには、みなそのかねのなかにしずんでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからまもなく、おてら役僧やくそうがこのうちへたずねてきました。
白たへのさるすべりの花散りをりてほとけてらの日の光はや
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
四十八そのひとてらの鐘なりぬ今し江の北雨雲あまぐもひくき
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
燈明ともしの火ぞしめるてらあらば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
閑居鳥かんこどりてら見ゆ麦林寺ばくりんじとやいふ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
くれりやおてらかねがなぁる。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
やしろをよぎりてらをすぎ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「おてら
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
どこかとおくのほうで、いぬのないているこえこえたのであります。ようやく、まちはいろうとしました。するとそこにおてらがありました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
若者わかものはのそのそがって、いつものとおりぼうさんのところって、ものをもらってべると、すぐにおてらていきました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
引合ひきあつて、もつれるやうにばら/\とてらもんけながら、卵塔場らんたふばを、ともしびよるかげそろつて、かはいゝかほ振返ふりかへつて
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
桃林和尚たうりんをしやうはそのはなしいてつてりましたから、いづれきつねがまたなに惡戯いたづらをするためにおてらたづねてたにちがひないと、すぐかんづきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
またべつ先生方せんせいがたからおきになる場合ばあひがありませう。なほふるいおてらのあつたところには、かはらのほかにおほきなはしら礎石そせきのこつてゐることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「うるさかつたのかい。わたしおつかさんの、田舎ゐなかのおてらへお墓参はかまゐりにつたんでね。昨夜ゆうべはやてしまつたんだよ。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
もし、おとうさまがきておられたら、おまえは、いまごろは、どこかのおてらぞうさんになっているところだよ。
懊惱あうなう困憊こんぱいうちかたむいた。障子しやうじうつときかげ次第しだいとほくへ退くにつれて、てら空氣くうきゆかしたからした。かぜあさからえだかなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其方てらはうむりし趣きなるが右は當時たうじ無縁むえんなるか又はしるし石塔せきたふにてもたてありやと尋けるに此祐然もとより頓智とんち才辨さいべんの者故參候若君わかぎみ澤の井の石塔せきたふは御座候も香花かうげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
があけると近所きんじよ人々ひとびとてらつたり無常道具むじやうだうぐひにつたり、他村たそん姻戚みよりへのらせにつたりしていへには近所きんじよ女房にようばうが二三にん義理ぎりをいひにた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
國清寺こくせいじ拾得じつとくまをすものがをります。じつ普賢ふげんでございます。それからてら西にしはうに、寒巖かんがん石窟せきくつがあつて、そこに寒山かんざんまをすものがをります。じつ文殊もんじゆでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
どういふわけ梅廼屋うめのや塔婆たふばげたか、不審ふしんに思ひながら、矢立やたて紙入かみいれ鼻紙はながみ取出とりだして、戒名かいみやう俗名ぞくみやうみなうつしましたが、年号月日ねんがうぐわつぴ判然はつきりわかりませぬから、てら玄関げんくわんかゝつて
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
となりてら觀音樣くわんをんさま御手おんてひざ柔和にうわの御さうこれもめるがごとく、わかいさかりのねつといふものにあはれみたまへば、此處こゝなるひややかのおぬひくぼをほうにうかべてことはならぬか
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其れを取囲とりかこんだ一町四方もある広い敷地は、桑畑や大根畑に成つて居て、出入でいりの百姓が折々をり/\植附うゑつけ草取くさとりに来るが、てらの入口の、昔は大門だいもんがあつたと云ふ、いしずゑの残つて居るあたりから
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「これはなんでも、地獄じごく関係かんけいのある古いおてられはてたおてらちがいない」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
金槌かなづち往來わうらいたゝくとは奇拔きばつである。大笑おほわらひをして、自轉車隊じてんしやたいてらはいつた。
ロミオ あ、これ、おち。やがて、あのてら塀外へいそとへ、おぬしにわたために、繩梯子なはばしごのやうにあはせたものを家來けらいたせてりませう。それこそはしの夜半やはうれしいこと頂點ちゃうてん此身このみはこえんつな
それから、おてらってあったかねも、なかなかおおきなもので、あれをつぶせば、まず茶釜ちゃがまが五十はできます。なあに、あっしのくるいはありません。うそだとおもうなら、あっしがつくってせましょう。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さまみがいて おてらにあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)