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熟
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じつ
ふりがな文庫
“
熟
(
じつ
)” の例文
考
(
かんが
)
へても
見
(
み
)
たが
可
(
い
)
い。
風流人
(
ふうりうじん
)
だと、
鶯
(
うぐひす
)
を
覗
(
のぞ
)
くにも
行儀
(
ぎやうぎ
)
があらう。それ
鳴
(
な
)
いた、
障子
(
しやうじ
)
を
明
(
あ
)
けたのでは、めじろが
熟
(
じつ
)
として
居
(
ゐ
)
よう
筈
(
はず
)
がない。
湯どうふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
屍を守る
見樣
(
みえ
)
で、棒の如く突立つた女は、軈て
俄然
(
がば
)
と身を投て、伏重なつたと思ふと、
熟
(
じつ
)
と僵れて身動も仕無い。
二十三夜
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
熟
(
じつ
)
と其の
邪気
(
あどけ
)
ない顔付を眺めた時は、あのお志保の涙に
霑
(
ぬ
)
れた
清
(
すゞ
)
しい
眸
(
ひとみ
)
を思出さずに居られなかつたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
巨砲もて打たれたらん如き
驚愕
(
きやうがく
)
を、梅子は
熟
(
じつ
)
と制しつ「——
左様
(
さう
)
ですか——誰にお聴きなすつて——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
良々意氣を揚げ
來
(
きた
)
つて、彼は
熟
(
じつ
)
と考へ込む。是れ、久しい間、彼が頭の中に籠つた大問題である。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
身動
(
みうごき
)
もせず
熟
(
じつ
)
として兩足を
組
(
くん
)
で
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
園
(
その
)
を
吹渡
(
ふきわた
)
る
生温
(
なまぬ
)
くい
風
(
かぜ
)
と、半分
焦
(
こげ
)
た芭蕉の實や
眞黄色
(
まつきいろ
)
に
熟
(
じゆく
)
した
柑橙
(
だい/\
)
の
香
(
かほり
)
にあてられて、
身
(
み
)
も
融
(
とけ
)
ゆくばかりになつて
來
(
き
)
たのである。
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
一箇
(
ひとり
)
の男を
熟
(
じつ
)
と守つて、さうしてその人の落目に成つたのも見棄てず、一方には、身請の客を振つてからに、
後来
(
これから
)
花の咲かうといふ体を、男の為には少しも惜まずに死なうとは
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
松公は
此
(
この
)
四五日、姿も見せない。お大は
頭腦
(
あたま
)
も體も燃えるやうなので、
宅
(
うち
)
に
熟
(
じつ
)
としてゐる瀬はなく、毎日ぶら/\と
其處
(
そこ
)
ら中
彷徨
(
うろつ
)
きまはつて、
妄濫
(
むやみやたら
)
と行逢ふ人に突かゝつて喧嘩を
吹
(
ふつ
)
かけて居る。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
とせい/\、
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆすぶ
)
ると、
其
(
そ
)
の
響
(
ひゞ
)
きか、
震
(
ふる
)
へながら、
婦
(
をんな
)
は
真黒
(
まつくろ
)
な
髪
(
かみ
)
の
中
(
なか
)
に、
大理石
(
だいりせき
)
のやうな
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
を
押据
(
おしす
)
えて、
前途
(
ゆくさき
)
を
唯
(
たゞ
)
熟
(
じつ
)
と
瞻
(
みまも
)
る。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さすが心の表情は
何処
(
どこ
)
かに読まれるもので——大きな、ぱつちりとした眼のうちには、何となく不安の色も
顕
(
あらは
)
れて、
熟
(
じつ
)
と物を
凝視
(
みつ
)
めるやうな沈んだところも有つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「でも、
熟
(
よ
)
くお
眠
(
よ
)
ツてゐらツしやるんだもの、惡いわ。」と今度は
圓
(
まる
)
い柔な聲がする。基れはお房で。周三は何といふことは無く
熟
(
じつ
)
と耳を澄ました。眼はパツチリ覺めて了つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「
左様
(
さう
)
ですねエ——思ひに悩む時、心の
寂
(
さび
)
しい時、気の狂ほしい時、
熟
(
じつ
)
と精神を
凝
(
こ
)
らして祈念しますと、影の如く幻の如く、其の
面
(
おもて
)
も見え、其声も聴こゆるですよ、伯母さんのと格別
違
(
ちがひ
)
ありますまい」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「
可
(
よ
)
うございますよ。さあ、
熟
(
じつ
)
として」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
美女
(
たをやめ
)
は、やゝ
俯向
(
うつむ
)
いて、
其
(
そ
)
の
駒
(
こま
)
を
熟
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
める
風情
(
ふぜい
)
の、
黒髪
(
くろかみ
)
に
唯
(
たゞ
)
一輪
(
いちりん
)
、……
白
(
しろ
)
い
鼓草
(
たんぽゝ
)
をさして
居
(
ゐ
)
た。
此
(
こ
)
の
色
(
いろ
)
の
花
(
はな
)
は、
一谷
(
ひとたに
)
に
他
(
ほか
)
には
無
(
な
)
かつた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
丑松は明後日あたり蓮華寺へ引越すといふ話をして、この友達と別れたが、やがて
少許
(
すこし
)
行つて振返つて見ると、銀之助は往来の片隅に
佇立
(
たゝず
)
んだ
儘
(
まゝ
)
、
熟
(
じつ
)
と
是方
(
こちら
)
を見送つて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
古谷俊男
(
ふるやとしを
)
は、
椽側
(
えんがは
)
に
据
(
す
)
ゑてある長椅子に長くなツて、
兩
(
りやう
)
の腕で頭を
抱
(
かゝ
)
へながら
熟
(
じつ
)
と
瞳
(
ひとみ
)
を
据
(
す
)
ゑて考込むでゐた。
體
(
からだ
)
のあいた日曜ではあるが、今日のやうに降ツては
何
(
ど
)
うすることも出來ぬ。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
言ひも
訖
(
をは
)
らぬ顔を満枝は
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
て
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
影
(
かげ
)
を
映
(
うつ
)
した
時
(
とき
)
でした……
其
(
そ
)
の
間
(
ま
)
に
早
(
は
)
や
用
(
よう
)
の
趣
(
おもむき
)
を
言
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かされた、
髮
(
かみ
)
の
長
(
なが
)
い、
日本
(
につぽん
)
の
若
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
の、
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
るのと、
瞳
(
ひとみ
)
を
合
(
あは
)
せたやうだつたつて……
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
周三は、何と云ふ譯もなく此の音と響とを聞き分けて見やうと思ツて、
熟
(
じつ
)
と耳を澄ましてゐると、其の遠い音と響とを
消圧
(
けを
)
して、近く、邸内の
馬車廻
(
ばしやまはし
)
の
砂利
(
じやり
)
に
軋
(
きし
)
む馬車の
轍
(
わだち
)
の音がする。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「うむ、」と
云
(
い
)
ふ。
中
(
なか
)
から
縁
(
ふち
)
へしがみついた、
面
(
つら
)
を
眞赤
(
まつか
)
に、
小鼻
(
こばな
)
をしかめて、
目
(
め
)
を
白
(
しろ
)
く
天井
(
てんじやう
)
を
睨
(
にら
)
むのを、
熟
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
めて
銭湯
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
又かと思ふと氣持が惡くなつて胸が
悶々
(
もだ/\
)
する。でも
近子
(
ちかこ
)
は
熟
(
じつ
)
と
耐
(
こら
)
えて
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
三
(
み
)
ツ
四
(
よ
)
ツの
壁越
(
かべごし
)
ですが、
寢臺
(
ねだい
)
に
私
(
わたし
)
、
凍
(
こほ
)
りついたやうに
成
(
な
)
つて、
熟
(
じつ
)
と
其方
(
そのはう
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
ますと、
向
(
む
)
きました、
高
(
たか
)
い
壁
(
かべ
)
と、
天井
(
てんじやう
)
の
敷合
(
しきあ
)
はせの
所
(
ところ
)
から、あの、
女性
(
をんな
)
が
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と自分は
熟
(
じつ
)
と流を見詰めると、螢の影は
恰
(
まる
)
で流れるやうだ。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
で、
辷
(
すべ
)
らした
白
(
しろ
)
い
手
(
て
)
を、
若旦那
(
わかだんな
)
の
胸
(
むね
)
にあてて、
腕
(
うで
)
で
壓
(
お
)
すやうにして、
涼
(
すゞし
)
い
目
(
め
)
で
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
る。
其
(
そ
)
の
媚
(
こび
)
と
云
(
い
)
つたらない。
妖艷無比
(
えうえんむひ
)
で、
猶
(
なほ
)
且
(
か
)
つ
婦人
(
ふじん
)
の
背
(
せ
)
を
抱
(
だ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
網
(
あみ
)
の
底
(
そこ
)
の
方
(
はう
)
……
水
(
みづ
)
ン
中
(
なか
)
に、ちら/\と
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
える……
其
(
そ
)
のお
前様
(
めえさま
)
、
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
が
正的
(
まとも
)
に
熟
(
じつ
)
と
此方
(
こちら
)
を
見
(
み
)
るだよ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
のですが、
其
(
それ
)
が、
黒目勝
(
くろめがち
)
な
雙
(
さう
)
の
瞳
(
ひとみ
)
をぱつちりと
開
(
あ
)
けて
居
(
ゐ
)
る……
此
(
こ
)
の
目
(
め
)
に、
此處
(
こゝ
)
で
殺
(
ころ
)
されるのだらう、と
餘
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
に
然
(
さ
)
う
思
(
おも
)
ひましたから、
此方
(
こつち
)
も
熟
(
じつ
)
と
凝視
(
みつめ
)
ました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
足
(
あし
)
は
裾
(
すそ
)
へ、
素直
(
まつすぐ
)
に
揃
(
そろ
)
へたつ
切
(
きり
)
、
兩手
(
りやうて
)
は
腋
(
わき
)
の
下
(
した
)
へ
着
(
つ
)
けたつ
切
(
きり
)
、で
熟
(
じつ
)
として、たゞ
見舞
(
みまひ
)
が
見
(
み
)
えます、
扉
(
ひらき
)
の
開
(
あ
)
くのを、
便
(
たよ
)
りにして、
入口
(
いりくち
)
の
方
(
はう
)
ばかり
見詰
(
みつ
)
めて
見
(
み
)
ました。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
咳
(
せき
)
をすると、
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
るのを、もぢや/\と
指
(
ゆび
)
を
動
(
うご
)
かして
招
(
まね
)
くと、
飛立
(
とびた
)
つやうに
膝
(
ひざ
)
を
立
(
た
)
てたが、
綿
(
わた
)
を
密
(
そつ
)
と
下
(
した
)
に
置
(
お
)
いて、
立構
(
たちがま
)
へで
四邊
(
あたり
)
を
見
(
み
)
たのは、
母親
(
はゝおや
)
が
内
(
うち
)
だと
見
(
み
)
える。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
、
件
(
くだん
)
の、
長頭
(
ながあたま
)
は、くるりと
眞背後
(
まうしろ
)
にむかうを
向
(
む
)
いた、
歩行出
(
あるきだ
)
すか、と
思
(
おも
)
ふと……
熟
(
じつ
)
と
其
(
そ
)
のまゝ。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
はて、
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に、あんな
處
(
ところ
)
へ
水車
(
みづぐるま
)
を
掛
(
か
)
けたらう、と
熟
(
じつ
)
と
透
(
す
)
かすと、
何
(
ど
)
うやら
絲
(
いと
)
を
繰
(
く
)
る
車
(
くるま
)
らしい。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ほとゝぎすの
繪比羅
(
ゑびら
)
を
見
(
み
)
ながら、
熟
(
じつ
)
と
見惚
(
みとれ
)
て
何某處
(
なにがしどころ
)
の
御贔屓
(
ごひいき
)
を、うつかり
指
(
ゆび
)
の
尖
(
さき
)
で
一寸
(
ちよつと
)
つゝく。
銭湯
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
襖
(
ふすま
)
障子
(
しやうじ
)
が
縱横
(
じうわう
)
に
入亂
(
いりみだ
)
れ、
雜式家具
(
ざふしきかぐ
)
の
狼藉
(
らうぜき
)
として、
化性
(
けしやう
)
の
如
(
ごと
)
く、
地
(
ち
)
の
震
(
ふる
)
ふたびに
立
(
た
)
ち
跳
(
をど
)
る、
誰
(
たれ
)
も
居
(
ゐ
)
ない、
我
(
わ
)
が
二階家
(
にかいや
)
を、
狹
(
せま
)
い
町
(
まち
)
の、
正面
(
しやうめん
)
に
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
て、
塀越
(
へいごし
)
のよその
立樹
(
たちき
)
を
廂
(
ひさし
)
に
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さて/\
淺間
(
あさま
)
しや、
親
(
おや
)
の
難儀
(
なんぎ
)
が
思
(
おも
)
はれる。
先
(
ま
)
づ
面
(
おもて
)
を
上
(
あ
)
げさせろ。で、キレー
水
(
すゐ
)
を
熟
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
めて
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
肩
(
かた
)
を
斜
(
なゝ
)
めに
前
(
まへ
)
へ
落
(
おと
)
すと、
袖
(
そで
)
の
上
(
うへ
)
へ、
腕
(
かひな
)
が
辷
(
すべ
)
つた、……
月
(
つき
)
が
投
(
な
)
げたるダリヤの
大輪
(
おほりん
)
、
白々
(
しろ/″\
)
と、
搖
(
ゆ
)
れながら
戲
(
たはむ
)
れかゝる、
羽交
(
はがひ
)
の
下
(
した
)
を、
輕
(
かる
)
く
手
(
て
)
に
受
(
う
)
け、
清
(
すゞ
)
しい
目
(
め
)
を、
熟
(
じつ
)
と
合
(
あ
)
はせて
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ト、
一
(
ひと
)
つ
一
(
ひと
)
つ、
自分
(
じぶん
)
の
睫
(
まつげ
)
が、
紙
(
かみ
)
の
上
(
うへ
)
へばら/\と
溢
(
こぼ
)
れた、
本
(
ほん
)
の、
片假名
(
かたかな
)
まじりに
落葉
(
おちば
)
する、
山
(
やま
)
だの、
谷
(
たに
)
だのを
其
(
その
)
まゝの
字
(
じ
)
を、
熟
(
じつ
)
と
相手
(
あひて
)
に
讀
(
よ
)
ませて、
傍目
(
わきめ
)
も
觸
(
ふ
)
らず
視
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのが。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
女
(
をんな
)
が
一人
(
ひとり
)
、これは
背向
(
うしろむ
)
きで、
三人
(
さんにん
)
がかり、
一
(
ひと
)
ツ
掬
(
すく
)
つて、ぐい、と
寄
(
よ
)
せて、くる/\と
饀
(
あん
)
をつけて、
一寸
(
ちよいと
)
指
(
ゆび
)
で
撓
(
た
)
めて、
一
(
ひと
)
つ
宛
(
づゝ
)
すつと
串
(
くし
)
へさすのを、
煙草
(
たばこ
)
を
飮
(
の
)
みながら
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
た。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……
真夜中
(
まよなか
)
に、
色沢
(
いろつや
)
のわるい、
頬
(
ほゝ
)
の
痩
(
や
)
せた
詩人
(
しじん
)
が
一人
(
ひとり
)
、
目
(
め
)
ばかり
輝
(
かゞや
)
かして
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
る。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
先刻
(
さつき
)
から、
人々
(
ひと/″\
)
の
布施
(
ふせ
)
するのと、……もの
和
(
やは
)
らかな、
翁
(
おきな
)
の
顏
(
かほ
)
の、
眞白
(
まつしろ
)
な
髯
(
ひげ
)
の
中
(
なか
)
に、
嬉
(
うれ
)
しさうな
唇
(
くちびる
)
の
艷々
(
つや/\
)
と
赤
(
あか
)
いのを、
熟
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
めて、……
奴
(
やつこ
)
が
包
(
つゝ
)
んでくれた
風呂敷
(
ふろしき
)
を、
手
(
て
)
の
上
(
うへ
)
に
据
(
す
)
ゑたまゝ
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
仰
(
あふ
)
いで
言
(
い
)
ふのを、
香川
(
かがは
)
は、しばらく
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
たが、
膝
(
ひざ
)
をついて、ひたと
居寄
(
ゐよ
)
つて
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
小
(
ちひ
)
さき
潛門
(
くゞりもん
)
の
中
(
なか
)
へ
引込
(
ひつこ
)
んで、
利口
(
りこう
)
さうな
目
(
め
)
をぱつちりと、
蒋生
(
しやうせい
)
を
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
て
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
御免
(
ごめん
)
。」と
衝
(
つ
)
と
膝
(
ひざ
)
を
進
(
すゝ
)
めて、
畫
(
ゑ
)
の
面
(
おもて
)
にひたと
向
(
むか
)
うて、
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
るや、
眞晝
(
まひる
)
の
柳
(
やなぎ
)
に
風
(
かぜ
)
も
無
(
な
)
く、
寂
(
しん
)
として
眠
(
ねむ
)
れる
如
(
ごと
)
き、
丹塗
(
にぬり
)
の
門
(
もん
)
の
傍
(
かたはら
)
なる、
其
(
そ
)
の
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
もと
)
の
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
、
絹地
(
きぬぢ
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、するりと
開
(
あ
)
くと
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
杖
(
つゑ
)
を
引緊
(
ひきし
)
めるやうに、
胸
(
むね
)
へ
取
(
と
)
つて
兩手
(
りやうて
)
をかけた。
痩按摩
(
やせあんま
)
は
熟
(
じつ
)
と
案
(
あん
)
じて
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
衣紋
(
えもん
)
を
細
(
ほそ
)
く、
圓髷
(
まげ
)
を、おくれ
毛
(
げ
)
のまゝ、ブリキの
罐
(
くわん
)
に
枕
(
まくら
)
して、
緊乎
(
しつか
)
と、
白井
(
しらゐ
)
さんの
若
(
わか
)
い
母
(
かあ
)
さんが
胸
(
むね
)
に
抱
(
だ
)
いた
幼兒
(
をさなご
)
が、
怯
(
おび
)
えたやうに、
海軍服
(
かいぐんふく
)
でひよつくりと
起
(
お
)
きると、ものを
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
て、みつめて
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかも
其
(
そ
)
の
雪
(
ゆき
)
なす
指
(
ゆび
)
は、
摩耶夫人
(
まやぶにん
)
が
召
(
め
)
す
白
(
しろ
)
い
細
(
ほそ
)
い
花
(
はな
)
の
手袋
(
てぶくろ
)
のやうに、
正
(
まさ
)
に
五瓣
(
ごべん
)
で、
其
(
それ
)
が
九死一生
(
きうしいつしやう
)
だつた
私
(
わたし
)
の
額
(
ひたひ
)
に
密
(
そつ
)
と
乘
(
の
)
り、
輕
(
かる
)
く
胸
(
むね
)
に
掛
(
かゝ
)
つたのを、
運命
(
うんめい
)
の
星
(
ほし
)
を
算
(
かぞ
)
へる
如
(
ごと
)
く
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
たのでありますから。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
唯今
(
たゞいま
)
、
寢
(
ね
)
おびれた
幼
(
をさない
)
のの、
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
たものに
目
(
め
)
を
遣
(
や
)
ると、
狼
(
おほかみ
)
とも、
虎
(
とら
)
とも、
鬼
(
おに
)
とも、
魔
(
ま
)
とも
分
(
わか
)
らない、
凄
(
すさま
)
じい
面
(
つら
)
が、ずらりと
並
(
なら
)
んだ。……いづれも
差置
(
さしお
)
いた
荷
(
に
)
の
恰好
(
かつかう
)
が
異類
(
いるゐ
)
異形
(
いぎやう
)
の
相
(
さう
)
を
顯
(
あらは
)
したのである。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
旅
(
たび
)
は
此
(
これ
)
だから
可
(
い
)
い——
陽氣
(
やうき
)
も
好
(
よし
)
と、
私
(
わたし
)
は
熟
(
じつ
)
として
立
(
た
)
つて
視
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
た。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
熟
(
じつ
)
と
瞳
(
ひとみ
)
を
定
(
さだ
)
めると、
其處
(
そこ
)
に
此處
(
こゝ
)
に、それ
彼處
(
あすこ
)
に、
其
(
そ
)
の
數
(
かず
)
の
夥
(
おびたゞ
)
しさ、
下
(
した
)
に
立
(
た
)
つたものは、
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
の
隧道
(
トンネル
)
を
潛
(
くゞ
)
るのである。
往來
(
ゆきき
)
はあるが、
誰
(
だれ
)
も
氣
(
き
)
がつかないらしい。
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つは
却
(
かへ
)
つてこぼれて
目
(
め
)
に
着
(
つ
)
かう。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
玉
(
たま
)
のやうな二の
腕
(
うで
)
をあからさまに
背中
(
せなか
)
に
乗
(
の
)
せたが、
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
て
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
床几
(
しやうぎ
)
の
娘
(
むすめ
)
も
肩越
(
かたごし
)
に
衝
(
つ
)
と
振向
(
ふりむ
)
いた。
一同
(
いちどう
)
、
熟
(
じつ
)
と
二人
(
ふたり
)
を
見
(
み
)
た。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「え、
知
(
し
)
つてるかい、
若
(
わか
)
い
衆
(
しう
)
。」と
振返
(
ふりかへ
)
つて
熟
(
じつ
)
と
視
(
み
)
た。
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
熟
常用漢字
小6
部首:⽕
15画
“熟”を含む語句
熟々
熟視
熟睡
早熟
成熟
爛熟
熟〻
半熟
熟柿
熟練
熟考
熟知
未成熟
黄熟
熟兎
未熟
熟慮
熟達
熟実
熟蝦夷
...