トップ
>
黒雲
>
くろくも
ふりがな文庫
“
黒雲
(
くろくも
)” の例文
あとから、
雷
(
かみなり
)
の
音
(
おと
)
が
追
(
お
)
いかけるようにきこえたのです。ふり
向
(
む
)
くと、もはや
野原
(
のはら
)
のかなたは、うず
巻
(
ま
)
く
黒雲
(
くろくも
)
のうちに
包
(
つつ
)
まれていました。
曠野
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と
叫
(
さけ
)
んで、
大音
(
だいおん
)
に
呵々
(
から/\
)
と
笑
(
わら
)
ふと
斉
(
ひと
)
しく、
空
(
そら
)
を
指
(
さ
)
した
指
(
ゆび
)
の
尖
(
さき
)
へ、
法衣
(
ころも
)
の
裙
(
すそ
)
が
衝
(
つ
)
と
上
(
あが
)
つた、
黒雲
(
くろくも
)
の
袖
(
そで
)
を
捲
(
ま
)
いて、
虚空
(
こくう
)
へ
電
(
いなづま
)
を
曳
(
ひ
)
いて
飛
(
と
)
ぶ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
悪魔のような
黒雲
(
くろくも
)
は町から村へと大きな手を拡げて
了
(
しま
)
った。ここに有るほどの家も人も、総て悪魔の黒い袖の下に包まれたのであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こうした風景が、カフェ・ネオンにおいて表面は案外平凡にくりかえされているうちに、突如として
大惨劇
(
だいさんげき
)
の
黒雲
(
くろくも
)
が、この家の上に舞い
下
(
くだ
)
った。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
弦月丸
(
げんげつまる
)
は
萬山
(
ばんざん
)
の
崩
(
くづ
)
るゝが
如
(
ごと
)
き
響
(
ひゞき
)
と
共
(
とも
)
に
左舷
(
さげん
)
に
傾斜
(
かたむ
)
いた。
途端
(
とたん
)
に
起
(
おこ
)
る
大叫喚
(
だいけうくわん
)
。
二百
(
にひやく
)
の
船員
(
せんゐん
)
が
狂
(
くる
)
へる
甲板
(
かんぱん
)
へ、
數百
(
すうひやく
)
の
乘客
(
じやうきやく
)
が
一時
(
いちじ
)
に
黒雲
(
くろくも
)
の
如
(
ごと
)
く
飛出
(
とびだ
)
したのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
「毘沙門さまの
御前
(
おんまへ
)
に
黒雲
(
くろくも
)
が
降
(
さがつ
)
た(モウ)」 (
衆人
(
おほぜい
)
)「なんだとてさがつた(モウ)」(山男)「
米
(
よね
)
がふるとてさがつた(モウ)」とさゝらをすりならす。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
と文治も一生懸命であかを
掻出
(
かきだ
)
して居ります。烈風ます/\
猛
(
たけ
)
り狂って、
黒雲
(
くろくも
)
の
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
は
朱
(
しゅ
)
をそゝいだようになりました。船頭はこれを赤じまと申します。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そのもやが少しずつ
濃
(
こ
)
くなって、やがて、
黒雲
(
くろくも
)
のようにまっくらになってしまうと、からだが深い深い地の底へでも落ちこんでいくような気持がして、老人は
怪人二十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
立っているところは、つき立った岩の上で、
眼
(
め
)
もくらむほど下の方に、
白雲
(
しろくも
)
と
黒雲
(
くろくも
)
とが
湧
(
わ
)
き立って、なにも見えませんでした。
冷
(
つめ
)
たい風が
吹
(
ふ
)
きつけてきて、今にも
大嵐
(
おおあらし
)
になりそうでした。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
お
爺
(
じい
)
さんからそう
注意
(
ちゅうい
)
されるまでもなく、
私
(
わたくし
)
はもう
先刻
(
さっき
)
から
一心不乱
(
いっしんふらん
)
に
深
(
ふか
)
い
統一
(
とういつ
)
に
入
(
はい
)
って、
黒雲
(
くろくも
)
の
中
(
なか
)
を
睨
(
にら
)
みつめて
居
(
い
)
たのですが、たちまち
一体
(
いったい
)
の
竜神
(
りゅうじん
)
の
雄姿
(
ゆうし
)
がそこに
鮮
(
あざや
)
かに
見出
(
みいだ
)
されました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
哀
(
かな
)
しみは遠き窓より我に
来
(
き
)
ぬ
夜
(
よる
)
を催す
黒雲
(
くろくも
)
の
如
(
ごと
)
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
寢みだれ髮か
黒雲
(
くろくも
)
の風にふかれつそらに飛び
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
時
(
とき
)
はるかな
黒雲
(
くろくも
)
の中で
羅生門
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
詠
(
なが
)
め居たりしが
遙
(
はるか
)
向
(
むかう
)
に山一ツ見えけるにぞ吉兵衞は
水差
(
みづさし
)
に向ひ
彼
(
あの
)
高き山は
何國
(
いづく
)
の山なりや
畫
(
ゑ
)
に
描
(
かき
)
し駿河の
富士山
(
ふじさん
)
に
能
(
よく
)
も似たりと問ふ
水差
(
みづさし
)
答
(
こた
)
へて
那山
(
あのやま
)
こそ名高き四國の
新富士
(
しんふじ
)
なりと答ふる
折
(
をり
)
から
此
(
こ
)
は
抑何
(
そもいか
)
に此山の
絶頂
(
ぜつちやう
)
より
刷毛
(
はけ
)
にて引し如き
黒雲
(
くろくも
)
の出しに水差は
仰天
(
ぎやうてん
)
しすはや程なく
雨下
(
あまおろ
)
しの來るぞや早く
用心
(
ようじん
)
して帆を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
子供
(
こども
)
が
角笛
(
つのぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
いて、
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと、おおかみの
群
(
む
)
れとともに
駆
(
か
)
け
去
(
さ
)
る
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
の
空
(
そら
)
には、
黒雲
(
くろくも
)
がわいて、
雷
(
かみなり
)
がとどろいていたのであります。
角笛吹く子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
曇ると見る
間
(
ま
)
に、
群
(
むらが
)
りかさなる
黒雲
(
くろくも
)
は、さながら
裾
(
すそ
)
のなき滝の
虚空
(
こくう
)
に
漲
(
みなぎ
)
るかと
怪
(
あやし
)
まれ、
暗雲
(
あんうん
)
忽
(
たちま
)
ち陰惨として、灰に血を
交
(
ま
)
ぜた雨が飛んだ。
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「毘沙門さまの
御前
(
おんまへ
)
に
黒雲
(
くろくも
)
が
降
(
さがつ
)
た(モウ)」 (
衆人
(
おほぜい
)
)「なんだとてさがつた(モウ)」(山男)「
米
(
よね
)
がふるとてさがつた(モウ)」とさゝらをすりならす。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
北の山々は夜の
衣
(
ころも
)
をまだ脱がぬと見えて、
頽
(
くず
)
れかかった
砲塁
(
ほうるい
)
のような
黒雲
(
くろくも
)
が
堆
(
うずたか
)
く拡がっていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
黒い煙は、いったん銀白色の
膜
(
まく
)
につつまれたが、まもなくそれを破って、あらしの
黒雲
(
くろくも
)
のように——いや、まっくろな
竜
(
りゅう
)
のように天じょうをなめながら、のたくりまわった。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
我先
(
われさき
)
に
其
(
その
)
端艇
(
たんてい
)
に
乘移
(
のりうつ
)
らんと、
人波
(
ひとなみ
)
うつて
嘈閙
(
ひしめ
)
く
樣
(
さま
)
は、
黒雲
(
くろくも
)
の
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて
卷返
(
まきかへ
)
すやうである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
黒雲
(
くろくも
)
の行く
大空
(
おほぞら
)
のかなたにむかひうめきしが
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
影が、結んだ玉ずさのようにも見えた。——夜叉ヶ池のお雪様は、
激
(
はげし
)
いなかにお
床
(
ゆか
)
しい、野はその
黒雲
(
くろくも
)
、
尾上
(
おのえ
)
は
瑠璃
(
るり
)
、皆、あの方のお計らい。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正直
(
しょうじき
)
で、
信
(
しん
)
じやすい
雷
(
かみなり
)
は、たかのいうことに
従
(
したが
)
いました。そして、
雷
(
かみなり
)
は、
方向
(
ほうこう
)
を
転
(
てん
)
じて、
都
(
みやこ
)
の
方
(
ほう
)
へ
進
(
すす
)
んでいきました。
黒雲
(
くろくも
)
は
雷
(
かみなり
)
に、
従
(
したが
)
いました。
ぴかぴかする夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
更に山の方を
振返
(
ふりかえ
)
って見ると、
三方崩
(
さんぽうくず
)
れの
彼方
(
あなた
)
から不思議な形の
黒雲
(
くろくも
)
が
勃々
(
むくむく
)
と湧き出して来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
天色
(
てんしよく
)
倏急
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
り
黒雲
(
くろくも
)
空
(
そら
)
に
覆
(
おほ
)
ひければ(是雪中の常也)
夫
(
をつと
)
空
(
そら
)
を見て大に
驚怖
(
おどろき
)
、こは
雪吹
(
ふゞき
)
ならんいかゞはせんと
踉蹡
(
ためらふ
)
うち、
暴風
(
はやて
)
雪を
吹散
(
ふきちらす
)
事
巨濤
(
おほなみ
)
の
岩
(
いは
)
を
越
(
こゆ
)
るがごとく、
飇
(
つぢかぜ
)
雪を
巻騰
(
まきあげ
)
て
白竜
(
はくりやう
)
峯
(
みね
)
に
登
(
のぼる
)
がごとし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
金絲
(
きんし
)
の縫の黒繻子の帶かとぞ見る
黒雲
(
くろくも
)
の
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
黒雲
(
くろくも
)
を
捲
(
ま
)
いて、
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
き、
電
(
いなづま
)
のやうに、
鐵
(
てつ
)
の
門
(
もん
)
、
石
(
いし
)
の
唐戸
(
からと
)
にも、
遮
(
さへぎ
)
らせず、
眞赤
(
まつか
)
な
胸
(
むね
)
の
炎
(
ほのほ
)
で
包
(
つゝ
)
んで、
弱
(
よわ
)
い
婦
(
をんな
)
に
逢
(
あ
)
ひました。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
月
(
つき
)
が
円
(
まる
)
く、
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
から
上
(
のぼ
)
る
晩
(
ばん
)
も、また、
黒雲
(
くろくも
)
が
出
(
で
)
て
外
(
そと
)
の
真
(
ま
)
っ
暗
(
くら
)
な
晩
(
ばん
)
も、こうもりは、りんご
畑
(
ばたけ
)
の
上
(
うえ
)
を
飛
(
と
)
びまわりました。
牛女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その大暴れの最中に、外堀から
黒雲
(
くろくも
)
をまき起して、
金色
(
こんじき
)
の
鱗
(
うろこ
)
をかゞやかしながら天上に昇つた怪物のあることを、多数の人が目撃した。人々はそれを龍の昇天であると云つた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし、それは、
西風
(
にしかぜ
)
であって、
高
(
たか
)
い
嶺
(
みね
)
を
滑
(
すべ
)
った
夕日
(
ゆうひ
)
は、
雪
(
ゆき
)
をはらんで
黒雲
(
くろくも
)
のうず
巻
(
ま
)
く
中
(
なか
)
に
落
(
お
)
ちかかっていたのです。
深山の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
まだ
方角
(
はうがく
)
も
確
(
たしか
)
でない。
旅馴
(
たびな
)
れた
身
(
み
)
は
野宿
(
のじゆく
)
の
覺悟
(
かくご
)
で、
幽
(
かすか
)
に
黒雲
(
くろくも
)
の
如
(
ごと
)
き
低
(
ひく
)
い
山
(
やま
)
が
四方
(
しはう
)
を
包
(
つゝ
)
んだ、
灰
(
はひ
)
のやうな
渺茫
(
べうばう
)
たる
荒野
(
あらの
)
を
足
(
あし
)
にまかせて
辿
(
たど
)
ること
二里
(
にり
)
ばかり。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
源吉
(
げんきち
)
は、
風
(
かぜ
)
の
比較的
(
ひかくてき
)
当
(
あ
)
たらない、
北窓
(
きたまど
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けて
空
(
そら
)
を
仰
(
あお
)
ぐと、
地球
(
ちきゅう
)
が
動
(
うご
)
くように、
黒雲
(
くろくも
)
がぐんぐんと
流
(
なが
)
れている。
台風の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そりゃあるいは雨も降ろう、
黒雲
(
くろくも
)
も
湧
(
わ
)
き起ろうが、それは、
惨憺
(
さんたん
)
たる黒牛の背の
犠牲
(
ぎせい
)
を見るに忍びないで、天道が泣かるるのじゃ。月が
面
(
おもて
)
を
蔽
(
おお
)
うのじゃ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けると、
風
(
かぜ
)
は
止
(
や
)
みましたけれど、
沖
(
おき
)
の
上
(
うえ
)
には
黒雲
(
くろくも
)
が
垂
(
た
)
れ
下
(
さ
)
がって、ゆく
船
(
ふね
)
の
影
(
かげ
)
が
見
(
み
)
えませんでした。
薬売り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
なから舞ひたりしに、
御輿
(
みこし
)
の
嶽
(
たけ
)
、
愛宕山
(
あたごやま
)
の
方
(
かた
)
より
黒雲
(
くろくも
)
俄
(
にわか
)
に
出来
(
いでき
)
て、
洛中
(
らくちゅう
)
にかゝると見えければ、——
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人
(
ふたり
)
は、
海辺
(
うみべ
)
にきてみたのです。すると
波
(
なみ
)
は
高
(
たか
)
くて、
沖
(
おき
)
の
方
(
ほう
)
は
雲切
(
くもぎ
)
れのした
空
(
そら
)
の
色
(
いろ
)
が
青
(
あお
)
く、それに
黒雲
(
くろくも
)
がうずを
巻
(
ま
)
いていて、ものすごい
暴
(
あ
)
れ
模様
(
もよう
)
の
景色
(
けしき
)
でした。
大きなかに
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
打
(
う
)
ちつゞく
惡鬼
(
あくき
)
ばらひ、
屋
(
をく
)
を
壓
(
あつ
)
する
黒雲
(
くろくも
)
をぬぐつて、
景氣
(
けいき
)
なほしに「
明月
(
めいげつ
)
」も、しかし
沙汰
(
さた
)
過
(
す
)
ぎるから、せめて「
良夜
(
りやうや
)
」とでも
題
(
だい
)
して、
小篇
(
せうへん
)
を、と
思
(
おも
)
ふうちに……
四五人
(
しごにん
)
のお
客
(
きやく
)
があつた。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夕焼
(
ゆうや
)
けのした
晩方
(
ばんがた
)
に、
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
を、
電光
(
でんこう
)
がし、ゴロゴロと
雷
(
かみなり
)
が
鳴
(
な
)
って、ちょうど
馬車
(
ばしゃ
)
の
駆
(
か
)
けるように、
黒雲
(
くろくも
)
がいくのが
見
(
み
)
られます。それを
見
(
み
)
ると、この
町
(
まち
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
赤い姫と黒い皇子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彫像
(
てうざう
)
の
成
(
な
)
つた
時
(
とき
)
、
北
(
きた
)
の
一天
(
いつてん
)
、
俄
(
には
)
かに
黒雲
(
くろくも
)
を
捲起
(
まきお
)
こして
月夜
(
つきよ
)
ながら
霰
(
あられ
)
を
飛
(
と
)
ばした。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
伯父
(
おじ
)
さんは、だまって、
目
(
め
)
を
遠
(
とお
)
くの
地平線
(
ちへいせん
)
へ
馳
(
は
)
せていました。そのほうには
乱
(
みだ
)
れた
黒雲
(
くろくも
)
がものすごく
垂
(
た
)
れさがって、
町々
(
まちまち
)
が、その
雲
(
くも
)
のすそに
包
(
つつ
)
まれようとしていました。
僕はこれからだ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と
老爺
(
ぢい
)
が
叫
(
さけ
)
ぶ、……
其
(
それ
)
なるは、
黄金
(
こがね
)
の
鯱
(
しやち
)
の
頭
(
かしら
)
に
似
(
に
)
た、
一個
(
いつこ
)
青面
(
せいめん
)
の
獅子
(
しゝ
)
の
頭
(
かしら
)
、
活
(
い
)
けるが
如
(
ごと
)
き
木彫
(
きぼり
)
の
名作
(
めいさく
)
。
櫓
(
やぐら
)
を
圧
(
あつ
)
して、のつしとあり。
角
(
つの
)
も、
牙
(
きば
)
も、
双六谷
(
すごろくだに
)
の
黒雲
(
くろくも
)
の
中
(
なか
)
に
見
(
み
)
た、
其
(
それ
)
であつた。……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たかは、
黒雲
(
くろくも
)
に、
伝令
(
でんれい
)
すべく、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
空
(
そら
)
に
翔
(
か
)
け
上
(
のぼ
)
りました。
古
(
ふる
)
いひのきは
雨
(
あめ
)
と
風
(
かぜ
)
を
呼
(
よ
)
ぶためにあらゆる
大
(
おお
)
きな
枝
(
えだ
)
、
小
(
ちい
)
さな
枝
(
えだ
)
を、
落日後
(
らくじつご
)
の
空
(
そら
)
にざわつきたてたのであります。
あらしの前の木と鳥の会話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
此
(
これ
)
が
禁厭
(
まじなひ
)
に
成
(
な
)
るのと
見
(
み
)
えます。
窓
(
まど
)
を
透
(
とほ
)
して
手
(
て
)
のやうに
擴
(
ひろ
)
がります、
其
(
そ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
が、じり/\と
來
(
き
)
ては、
引返
(
ひきかへ
)
し、じり/\と
來
(
き
)
ては、
引返
(
ひきかへ
)
し、
仙人
(
せんにん
)
の
背
(
せ
)
は
波打
(
なみう
)
つやうに、
進退
(
かけひき
)
するのが
見
(
み
)
えました。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
また、あるときはしらさぎにまじって、
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
く
日
(
ひ
)
に、そして、
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
が
暴
(
あ
)
れて、どちらを
見
(
み
)
ても
黒雲
(
くろくも
)
がわきたつような
日
(
ひ
)
に、
波
(
なみ
)
を
切
(
き
)
って
中空
(
なかぞら
)
にひるがえることを
学
(
まな
)
んだのです。
紅すずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
……
其
(
そ
)
の
余波
(
なごり
)
が、カラカラと
乾
(
から
)
びた
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
を
捲
(
ま
)
きながら、
旅籠屋
(
はたごや
)
の
框
(
かまち
)
へ
吹込
(
ふきこ
)
んで、
大
(
おおき
)
な
炉
(
ろ
)
に、
一簇
(
ひとむら
)
の
黒雲
(
くろくも
)
の濃く
舞下
(
まいさが
)
つたやうに
漾
(
ただよ
)
ふ、松を焼く煙を
弗
(
ふっ
)
と吹くと、煙は
筵
(
むしろ
)
の上を
階子段
(
はしごだん
)
の下へ
潜
(
ひそ
)
んで
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さあ、
今年
(
ことし
)
の
冬
(
ふゆ
)
の
踊
(
おど
)
りおさめに、みんながうたって、
騒
(
さわ
)
いでくれ。」と、
一人
(
ひとり
)
の
神
(
かみ
)
が
命令
(
めいれい
)
すると、
風
(
かぜ
)
は、
凱歌
(
がいか
)
をあげ、
幾
(
いく
)
百千
万
(
まん
)
の
波
(
なみ
)
は、
手
(
て
)
をたたいて
乱舞
(
らんぶ
)
し、
黒雲
(
くろくも
)
は、
雷
(
かみなり
)
を
鳴
(
な
)
らして
海の踊り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
殆
(
ほとん
)
ど
形容
(
けいよう
)
の
出來
(
でき
)
ない
音
(
おと
)
が
響
(
ひゞ
)
いて、
炎
(
ほのほ
)
の
筋
(
すぢ
)
を
蜿
(
うね
)
らした
可恐
(
おそろし
)
い
黒雲
(
くろくも
)
が、
更
(
さら
)
に
煙
(
けむり
)
の
中
(
なか
)
を
波
(
なみ
)
がしらの
立
(
た
)
つ
如
(
ごと
)
く、
烈風
(
れつぷう
)
に
駈𢌞
(
かけまは
)
る!……あゝ
迦具土
(
かぐつち
)
の
神
(
かみ
)
の
鐵車
(
てつしや
)
を
驅
(
か
)
つて
大都會
(
だいとくわい
)
を
燒亡
(
やきほろぼ
)
す
車輪
(
しやりん
)
の
轟
(
とゞろ
)
くかと
疑
(
うたが
)
はれた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たかは、
空
(
そら
)
にまき
起
(
お
)
こった、
黒雲
(
くろくも
)
を
目
(
め
)
がけて、
高
(
たか
)
く、
高
(
たか
)
く、
舞
(
ま
)
い
上
(
あ
)
がりました。そして、その
姿
(
すがた
)
を
雲
(
くも
)
の
中
(
なか
)
に、
没
(
ぼっ
)
してしまいました。たかは、
黒雲
(
くろくも
)
の
中
(
なか
)
を
翔
(
か
)
けりながら、
雷
(
かみなり
)
に
向
(
む
)
かって、
叫
(
さけ
)
びました。
ぴかぴかする夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
柱
(
はしら
)
のやうに
立
(
た
)
つたと
思
(
おも
)
ふと、ちやうど
箕
(
み
)
の
大
(
おほき
)
さに
見
(
み
)
えました、
爪
(
つめ
)
が
電
(
いなづま
)
のやうな
掌
(
てのひら
)
を
開
(
ひら
)
いて、
女
(
をんな
)
たちの
髮
(
かみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
仙人
(
せんにん
)
の
足
(
あし
)
を
釣上
(
つりあ
)
げた、と
見
(
み
)
ますと、
天井
(
てんじやう
)
が、ぱつと
飛散
(
とびち
)
つて、あとはたゞ
黒雲
(
くろくも
)
の
中
(
なか
)
に
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかし、どういうものか、その
鐘
(
かね
)
を
鳴
(
な
)
らしますと、いかに、いい
天気
(
てんき
)
の
日
(
ひ
)
でも、たちまちのうちに、
池
(
いけ
)
のある
方
(
ほう
)
の、あっちの
山
(
やま
)
の
頂
(
いただき
)
に
黒雲
(
くろくも
)
がわいて
出
(
で
)
て
雨
(
あめ
)
になったり、
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いたりするのであります。
娘と大きな鐘
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
黒
常用漢字
小2
部首:⿊
11画
雲
常用漢字
小2
部首:⾬
12画
“黒雲”で始まる語句
黒雲母