ひろ)” の例文
旧字:
それは、ひろい、さびしい野原のはらでありました。まちからも、むらからも、とおはなれていまして、人間にんげんのめったにゆかないところであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「日本よりあたまなかの方がひろいでせう」と云つた。「とらはれちや駄目だ。いくら日本の為めを思つたつて贔負ひいきの引き倒しになる許りだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はなまるい、ひたひひろい、くちおほきい、……かほを、しかいやいろえたので、暗夜やみました。……坊主ばうず狐火きつねびだ、とつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
などゝいふから、益々ます/\国王こくわう得意とくいになられまして、天下てんかひろしといへども、乃公おれほどの名人めいじんはあるまい、と思つておいでになりました。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そんなら、ゆっくりめえりやしょう。——おせんちゃんがたれげておくんなさりゃ、どんなに肩身かたみひろいかれやァしねえ。のうたけ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのひろさ一尺あまり、ふかさ七八寸、長さ一丈あまり、数日にしてこれを作る。つくりをはれば女魚めなそのなかへを一つぶづゝむ。
で、ひろ座敷の入口のほうをふりかえって見ると、ひかえ座敷と広座敷のちょうどあいだくらいのところで、佐原屋が俯伏せになって倒れている。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは丸太まるたんで出来できた、やっと雨露うろしのぐだけの、きわめてざっとした破屋あばらやで、ひろさはたたみならば二十じょうけるくらいでございましょう。
であるからわれわれは、近い左右前後さゆうぜんごはいつでもあいまいであるけれど、遠い前後とひろ周囲しゅういには、やや脈絡みゃくらく統一とういつがある。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おろかな息子も年頃になったので、調布在から出もどりの女を嫁にもろうてやった。名をおひろと云って某の宮様にお乳をあげたこともある女であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうして自分じぶん哲人ワイゼかんじている……いや貴方あなたこれはです、哲学てつがくでもなければ、思想しそうでもなし、見解けんかいあえひろいのでもい、怠惰たいだです。自滅じめつです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
それをどこまでもいくと、ひろはらっぱへでました。そこはかすみうらのふちで、一面いちめん夏草なつくさがはえしげっています。夏草には夜露よつゆがしっとりとおりています。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
部屋へやが六百、はたらいているひとが五百にんもおり、おきゃくも千にんぐらいはとまれるほどのひろさでした。
そこで、今迄いまゝで毎月まいげつ三銭さんせんかの会費くわいひであつたのが、にはかに十せん引上ひきあげて、四六ばん三十二ページばかり雑誌ざつしこしらへる計画けいくわくで、なほひろく社員を募集ぼしうしたところ、やゝめいばかりたのでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
アウグスツスのひろこうぢに余りて列をなしたる馬車の間をくぐり、いま玄関に横づけにせし一輛いちりょうより出でたる貴婦人、毛革の肩掛を随身ずいじんにわたして車箱のうちへかくさせ
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
那須野なすのはらというのは十ほうもあるひろひろはらで、むかしはそのあいだに一けんいえく、とおくのほうに山がうっすりえるばかりで、見渡みわたかぎくさがぼうぼうとしげって
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「三ばかりあちらで学校がくかうはいりたまへ。そしてみつちり勉強べんきやうしてはうがいゝね。」竹村たけむらはさうつて、作家さくかとしてよりも、むしろもつとひろ意味いみ修業しゆげふかれ要望えうばうした。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
外套の隠しに両手を突込むで、停車場前のひろを歩きながら、大きな靴のかゞとやけ地面ぢべたを蹴散らしてみたが、地面ぢべたを蹴つたところで、急行列車がとまる訳でもなかつた。
濁醪どぶろく引掛ひつかける者が大福だいふく頬張ほゝばる者をわら売色ばいしよくうつゝかす者が女房にようばうにデレる鼻垂はなたらしあざける、之れ皆ひとはなあなひろきをしつしりあなせまきをさとらざる烏滸をこ白者しれものといふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
つぎ瓢箪池へうたんいけうづめたあと空地あきちから花屋敷はなやしきかこそとで、こゝには男娼だんしやう姿すがたられる。方角はうがくをかへて雷門かみなりもんへんでは神谷かみやバーの曲角まがりかどひろ道路だうろして南千住行みなみせんぢゆゆき電車停留場でんしやていりうぢやうあたり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
かたはらに直下数丈の瀑布ばくふありてはばすこぶひろし其地のいうにして其景のなる、真に好仙境こうせんきようと謂つべし、ちなみに云ふ此文珠岩はみな花崗岩みがけいわよりりて、雨水のくは水蝕すゐいつしたるなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
いつの時代ときよなりけん。紀の国三輪が崎に、大宅おほやの竹助といふ人在りけり。此の人海のさちありて、海郎あまどもあまた養ひ、はたひろき物をつくしてすなどり、家豊かに暮しける。
試合場しあいじょう城戸きどから、八ちょう参道さんどうとよぶひろ平坦へいたんさかをかけおりてゆくうちに、燕作の小粒こつぶなからだはみるみるうちにされて、とてもこれは、比較ひかくにはならないと思われるほど
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こゝはいゝね。たかいし、庭はひろいし、はなはあるし、あさ起きても日にあたれるし。」
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
眼もはるかなひろに、何百か何千かわからぬ狂人の群れが、ウジャウジャして、あらん限りの狂態を演じている光景が見られるのかと思っていたが、これじゃあチットモ張合がない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雪の奇状きじやう奇事きじ大概たいがいは初編にいだせり。なほ軼事てつじあるを以此二編にしるす。すでに初編にのせたるも事のことなるは不舎すてずしてこれろくす。けだし刊本かんほん流伝りうでんひろきものゆゑ、初編をよまざるものためにするのあり。
汽車やその学者がくしゃや天の川や、みんないっしょにぽかっと光って、しいんとなくなって、ぽかっとともってまたなくなって、そしてその一つがぽかっとともると、あらゆるひろ世界せかいががらんとひらけ
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてにははなるたけひろくとつて芝生にする。花だんをこしらへる……
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
間もなくそこに展けたひろの光景がありました。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ひろきよりせばみ暮れゆく其果そのはてとほ切目きれめ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かぜがなくていいな。」とゆめなかだけれどおもっていたときです。蒸気じょうきポンプのわだちが、あちらのひろとおりをよこほうがったようです。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一階目いつかいめゆかは、いまよぎつたに、とびらてまはしたとるばかりひろかつた。みじかくさ処々ところ/″\矢間やざまひと黄色きいろつきで、おぼろおなじやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大なるは七八けん、種々のかたちをなし大小ひとしからず、川のひろき所とせまき処とにしたがふ。あしたさけはじめてゆふべにながれをはる。
なに世のなかひろいから、心配するがものはない。実は僕にも色々あるんだが。僕の方であんまりうるさいから、御用で長崎へ出張すると云つてね
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
刷毛はけいたようなゆみなりになったひろはま……のたりのたりとおともなく岸辺きしべせる真青まっさおうみみず……薄絹うすぎぬひろげたような
と、おもいました。それでかれつぶって、なおもとおんできますと、そのうちひろひろ沢地たくちうえました。るとたくさんの野鴨のがもんでいます。
素気無そっけなかおには青筋あおすじあらわれ、ちいさく、はなあかく、肩幅かたはばひろく、せいたかく、手足てあし図抜ずぬけておおきい、そのつかまえられようものなら呼吸こきゅうまりそうな。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二三ちやうまゐつて総門そうもん這入はいそれから爪先上つまさきあがりにあがつてまゐりますると、少しひろところがございまして、其処そこ新築しんちくになりました、十四五けんもある建家たていへがございました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
酒でも飲んだ時は、媳に負け通しの婆さんも昔の権式を出して、人が久さんを雇いに往ったりするのが気にくわぬとなると、「おひろ、断わるがいゝ」と啖呵たんかを切った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なにもかにもあったもんじゃねえ。かにならよこにはうのが近道ちかみちだろうに、人間にんげんはそうはいかねえ。ひろいようでも世間せけんせめえものだ。どうかすぐいてあるいておくんなせえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
べつ貴重きちやうの金石を発見はつけんせず、唯黄鉄鉱の厚層こうさうひろ連亘れんたんせし所あり、岩石は花崗岩みかげいし尤も多く輝石安山岩之にげり、共に水蝕のいちじるしき岩石なるを以て、いたる処に奇景きけいを現出せり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
おもって、のこのこもんの中にはいっていきました。ひろ砂利道じゃりみちをさんざんあるいて、大きな玄関げんかんまえちました。なるほどここは三条さんじょう宰相殿さいしょうどのといって、ぶりのいい大臣だいじんのお屋敷やしきでした。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
俗人ぞくじんをしふる功徳くどく甚深じんしん広大くわうだいにしてしかも其勢力せいりよく強盛きやうせい宏偉くわうゐなるは熊肝くまのゐ宝丹はうたん販路はんろひろきをもてらる。洞簫どうせうこゑ嚠喨りうりやうとして蘇子そしはらわたちぎりたれどつひにトテンチンツトンの上調子うはでうしあだつぽきにかず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
政治学せいぢがくとか社会学しやくわいがくとか、さうつた意味いみでの修養しうやうが、むしろかれあたらしいひろみちひらいてくれるだらうとおもつた。かれ特異とくい恋愛病れんあいびやうが、作品さくひんおもなる要素えうそであることが、のちになつて竹村たけむらにもわかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
たちまち赤き半円のめしひしごとひろごれば
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだちいさいから、こんななかでもひろ世界せかいおもうのか、満足まんぞくするように、べつにさかなどうしで、けんかをするようすもえませんでした。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
へばふほど枝葉えだはしげつて、みちわかれてたにふかく、ひろく、やまたかつて、くもす、かすみがかゝる、はて焦込じれこんで、くうつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
処々より雪かこひの丸太あるひは雪垂ゆきたれとてかやにて幅八九尺ひろさ二間ばかりにつくりたるすだれかりあつめてすべての日覆ひおひとなす。
「世のなかへはむかしからてゐるさ。ことに君とわかれてから、大変世の中がひろくなつた様な気がする。たゞ君のてゐるなかとは種類がちがふ丈だ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)