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僅
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わづか
ふりがな文庫
“
僅
(
わづか
)” の例文
左右は千丈の谷なり、ふむ所
僅
(
わづか
)
に二三尺、
一脚
(
ひとあし
)
をあやまつ時は身を
粉砕
(
こな
)
になすべし。おの/\
忙怕
(
おづ/\
)
あゆみて
竟
(
つひ
)
に
絶頂
(
ぜつてう
)
にいたりつきぬ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
不知庵主人
(
フチアンシユジン
)
の
譯
(
やく
)
に
成
(
な
)
りし
罪
(
つみ
)
と
罰
(
ばつ
)
に
對
(
たい
)
する
批評
(
ひゝやう
)
仲々
(
なか/\
)
に
盛
(
さかん
)
なりとは
聞
(
きゝ
)
けるが、
病氣
(
びやうき
)
其他
(
そのた
)
の
事
(
こと
)
ありて
余
(
よ
)
が
今日
(
こんにち
)
までに
見
(
み
)
たるは
僅
(
わづか
)
に
四五種
(
しごしゆ
)
のみ
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
これが
西暦
(
せいれき
)
千八百八十三年
(
せんはつぴやくはちじゆうさんねん
)
に
大爆裂
(
だいばくれつ
)
をなして、
島
(
しま
)
の
大半
(
たいはん
)
を
噴
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばし、
跡
(
あと
)
には
高
(
たか
)
さ
僅
(
わづか
)
に
八百十六米
(
はつぴやくじゆうろくめーとる
)
の
小火山島
(
しようかざんとう
)
を
殘
(
のこ
)
したのみである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
私
(
わたくし
)
はこの
時
(
とき
)
始
(
はじ
)
めて、
云
(
い
)
ひやうのない
疲勞
(
ひらう
)
と
倦怠
(
けんたい
)
とを、さうして
又
(
また
)
不可解
(
ふかかい
)
な、
下等
(
かとう
)
な、
退屈
(
たいくつ
)
な
人生
(
じんせい
)
を
僅
(
わづか
)
に
忘
(
わす
)
れる
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
たのである。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
質請
(
しちうけ
)
して御主人を
暖
(
あたゝ
)
かに
休
(
やす
)
ませられよ
外
(
ほか
)
に思案は有まじと
貞節
(
ていせつ
)
を盡して申を聞き喜八も涙を流して
其志操
(
そのこゝろざし
)
を
感
(
かん
)
じ
僅
(
わづか
)
二分か三分の金故妻を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
卓子
(
テーブル
)
の
側
(
そば
)
が
僅
(
わづか
)
に
少
(
すこ
)
しばかり
明
(
あか
)
るいだけで、
其
(
そ
)
の
外
(
ほか
)
は
電灯
(
でんとう
)
一
(
ひと
)
つ
点
(
つ
)
けず、
真黒闇
(
まつくらやみ
)
のまゝで
何処
(
どこ
)
を
何方
(
どちら
)
に行つて
宜
(
い
)
いかさツぱり
分
(
わか
)
らぬ。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
彼は書斎へ老女を招致せり、新古の書巻
僅
(
わづか
)
に膝を
容
(
い
)
るゝばかりに堆積散乱して、
只
(
た
)
だ壁間モーゼ火中に神と語るの一画を掛くるあるのみ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
馬士
(
まご
)
が
戻
(
もど
)
るのか
小荷駄
(
こにだ
)
が
通
(
とほ
)
るか、
今朝
(
けさ
)
一人
(
ひとり
)
の
百姓
(
ひやくしやう
)
に
別
(
わか
)
れてから
時
(
とき
)
の
経
(
た
)
つたは
僅
(
わづか
)
ぢやが、三
年
(
ねん
)
も五
年
(
ねん
)
も
同一
(
おんなじ
)
ものをいふ
人間
(
にんげん
)
とは
中
(
なか
)
を
隔
(
へだ
)
てた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
おつぎのまだ
短
(
みじか
)
い
身體
(
からだ
)
は
麥
(
むぎ
)
の
出揃
(
でそろ
)
つた
白
(
しろ
)
い
穗
(
ほ
)
から
僅
(
わづか
)
に
其
(
そ
)
の
被
(
かぶ
)
つた
手拭
(
てぬぐひ
)
と
肩
(
かた
)
とが
表
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
與吉
(
よきち
)
は
道
(
みち
)
の
側
(
はた
)
の
薦
(
こも
)
の
上
(
うへ
)
に
大人
(
おとな
)
しくして
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
為
(
な
)
す事もあらねば、貫一は
疾
(
と
)
く
臥内
(
ふしど
)
に入りけるが、
僅
(
わづか
)
に
眊
(
まどろ
)
むと為れば
直
(
ぢき
)
に、
寤
(
さ
)
めて、そのままに
睡
(
ねむり
)
は
失
(
うす
)
るとともに、様々の事思ひゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
東京
(
とうきやう
)
に
出
(
で
)
てから、
自分
(
じぶん
)
は
畫
(
ゑ
)
を
思
(
おも
)
ひつゝも
畫
(
ゑ
)
を
自
(
みづか
)
ら
書
(
か
)
かなくなり、たゞ
都會
(
とくわい
)
の
大家
(
たいか
)
の
名作
(
めいさく
)
を
見
(
み
)
て、
僅
(
わづか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
畫心
(
ゑごころ
)
を
滿足
(
まんぞく
)
さして
居
(
ゐ
)
たのである。
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
しかし
九州
(
きゆうしゆう
)
にはこの
帶
(
たい
)
にはひる
土地
(
とち
)
がなく、
四國
(
しこく
)
の
六千五百尺
(
ろくせんごひやくしやく
)
以上
(
いじよう
)
の
高山
(
こうざん
)
(
石槌山
(
いしづちやま
)
、
劍山
(
つるぎやま
)
)に、
僅
(
わづか
)
にこの
帶
(
たい
)
の
下部界
(
かぶかい
)
を
見
(
み
)
ることが
出來
(
でき
)
ます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
提灯
(
ちやうちん
)
の
灯
(
ひ
)
にも
其
(
その
)
色
(
いろ
)
が
多少
(
たせう
)
映
(
うつ
)
る
感
(
かん
)
じがあつた。
其
(
その
)
提灯
(
ちやうちん
)
は
一方
(
いつぱう
)
に
大
(
おほ
)
きな
樹
(
き
)
の
幹
(
みき
)
を
想像
(
さうざう
)
する
所爲
(
せゐ
)
か、
甚
(
はなは
)
だ
小
(
ちひ
)
さく
見
(
み
)
えた。
光
(
ひかり
)
の
地面
(
ぢめん
)
に
屆
(
とゞ
)
く
尺數
(
しやくすう
)
も
僅
(
わづか
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
物おぼえのついた以後特に文筆を
弄
(
ろう
)
しはじめた以後の経験が誠に
尠
(
すくな
)
いので、その
僅
(
わづか
)
の経験を
綴
(
つづ
)
り合せれば、ただ懐しい川として心中に残るのみである。
最上川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
資本主
(
しほんぬし
)
と
機械
(
きかい
)
と
勞働
(
らうどう
)
とに
壓迫
(
あつぱく
)
されながらも、
社會
(
しやくわい
)
の
泥土
(
でいど
)
と
暗黒
(
あんこく
)
との
底
(
そこ
)
の底に、
僅
(
わづか
)
に其の
儚
(
はかな
)
い
生存
(
せいぞん
)
を
保
(
たも
)
ツてゐるといふ
表象
(
シンボル
)
でゞもあるやうな
此
(
こ
)
の
唄
(
うた
)
には
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
○
僅
(
わづか
)
に
三十一
(
みそひと
)
文字を以てすら、目に見えぬ
鬼神
(
おにがみ
)
を感ぜしむる国柄なり。
況
(
いは
)
んや識者をや。目に見えぬものに驚くが如き、野暮なる今日の
御代
(
みよ
)
にはあらず。
青眼白頭
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
僅
(
わづか
)
な
收入
(
しうにふ
)
は
母
(
はゝ
)
の
給養
(
きふやう
)
にも
供
(
きよう
)
せねばならず、
彼
(
かれ
)
は
遂
(
つひ
)
に
此
(
こ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
には
堪
(
た
)
へ
切
(
き
)
れず、
斷然
(
だんぜん
)
大學
(
だいがく
)
を
去
(
さ
)
つて、
古郷
(
こきやう
)
に
歸
(
かへ
)
つた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
僅
(
わづか
)
に原詩「牀前」の「前」字を
将
(
も
)
つて一個「頭」字に易へ、而かも用ひ来つて直ちに天衣無縫の如し、云々」。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
「ほんの
僅
(
わづか
)
だが、こゝに三十円ばかしあるから以前の朋輩衆と
何処
(
どつ
)
かで一口やつて呉れないか、俺がこんな出世をしたのも、つまりみんなのお蔭だからな。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
和歌を
善
(
よ
)
くし、
筆札
(
ひつさつ
)
を善くし、絵画を善くした。十九歳で家督をして、六十二万石の大名たること
僅
(
わづか
)
に二年。
椙原品
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
僅
(
わづか
)
に
瞰
(
うかゞ
)
ひ得たり、この芙蓉の根部より
匐枝
(
ふくし
)
を出だしたる如き、宝永山の、鮮やかに黒紫色に凝固せるを、西へと落ちたる冷魂の、
銹
(
さび
)
におぼろなる弧線を引いて
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
今迄は、秋の湖のやうに澄み切つてゐた夫人の容子が、青年の遺言と云ふ言葉を聴くと、急に
僅
(
わづか
)
ではあるが、擾れ始めた。信一郎は手答へがあつたのを欣んだ。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
百
仭
(
じん
)
の崖上
僅
(
わづか
)
に一条の
笹
(
ささ
)
を
恃
(
たの
)
みて
攀
(
よ
)
ぢし所あり、或は左右両岸の大岩
既
(
すで
)
に
足
(
あし
)
を
噛
(
か
)
み、前面の危石
将
(
まさ
)
に頭上に
落
(
お
)
ち
来
(
きた
)
らんとする所あり、一行
概
(
おおむ
)
ね多少の負傷を
被
(
かうむ
)
らざるはなし。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
が、
戀人
(
こひびと
)
の
片山
(
かたやま
)
と一
緒
(
しよ
)
に
生活
(
せいくわつ
)
したのは、
僅
(
わづか
)
かに三ヶ
月
(
げつ
)
ばかりだつた。
彼
(
かれ
)
がその
屬
(
ぞく
)
してゐる
黨
(
たう
)
の
指令
(
しれい
)
のもとに、ある
地方
(
ちはう
)
へ
派遣
(
はけん
)
された
後
(
のち
)
、
彼等
(
かれら
)
は
滅多
(
めつた
)
に
逢
(
あ
)
ふ
機會
(
きくわい
)
もなかつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
(三
人
(
にん
)
でしたがその
一人
(
ひとり
)
は
此
(
こ
)
の
現實
(
げんじつ
)
の
世界
(
せかい
)
にでて
僅
(
わづか
)
に三
日
(
か
)
、
日光
(
ひのひかり
)
にも
觸
(
ふ
)
れないですぐまた
永遠
(
えいゑん
)
の
郷土
(
きやうど
)
にかへつて
行
(
ゆ
)
きました)
勿論
(
もちろん
)
、
天眞
(
てんしん
)
な
子
(
こ
)
ども
達
(
たち
)
に
對
(
たい
)
しては
耻
(
はづか
)
しいことばかりの
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
それは灯のある夜景であつた。五層楼位の洋館の高さが、
僅
(
わづか
)
に五
分
(
ぶ
)
とは無いであらう。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
今日
(
こんにち
)
まで吾々が年久しく見馴れて来た品川の海は
僅
(
わづか
)
に
房州通
(
ぼうしうがよひ
)
の蒸汽船と
円
(
まる
)
ツこい
達磨船
(
だるません
)
を
曳動
(
ひきうごか
)
す曳船の往来する
外
(
ほか
)
、東京なる大都会の繁栄とは直接にさしたる関係もない
泥海
(
どろうみ
)
である。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
始
(
はじめ
)
には越後の
諸勝
(
しよしよう
)
を
尽
(
つく
)
さんと思ひしが、
越地
(
ゑつち
)
に入し
後
(
のち
)
、
年
(
とし
)
稍
(
やゝ
)
侵
(
しん
)
して
穀価
(
こくか
)
貴踊
(
きよう
)
し人心
穏
(
おだやか
)
ならず、ゆゑに越地を
践
(
ふむ
)
こと
僅
(
わづか
)
に十が一なり。しかれども
旅中
(
りよちゆう
)
に於て
耳目
(
じもく
)
を
新
(
あらた
)
にせし事を
挙
(
あげ
)
て此書に
増修
(
そうしう
)
す。
北越雪譜:05 北越雪譜二編凡例
(新字旧仮名)
/
山東京山
(著)
猶
(
なほ
)
源頼朝の
蛭
(
ひる
)
が
島
(
しま
)
に在りしや、
僅
(
わづか
)
に伊豆一国の主たらんことを願ひしも、大江広元を得るに及びて始めて天下を
攘
(
ぬす
)
みしが如き也、正統記大鏡等、
蓋
(
けだ
)
し其跡に就いて而して之を拡張せる也、故に
採
(
と
)
らず
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
左右は千丈の谷なり、ふむ所
僅
(
わづか
)
に二三尺、
一脚
(
ひとあし
)
をあやまつ時は身を
粉砕
(
こな
)
になすべし。おの/\
忙怕
(
おづ/\
)
あゆみて
竟
(
つひ
)
に
絶頂
(
ぜつてう
)
にいたりつきぬ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
今夜それを読んだら、
叶
(
かな
)
はない気がした。
僅
(
わづか
)
百枚以内の短篇を書くのに、悲喜
交
(
こもごも
)
至つてゐるやうでは、自分ながら気の毒千万なり。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あれよ/\とみてゐると
水煙
(
みづけむり
)
は
急
(
きゆう
)
に
衰
(
おとろ
)
へ
裂
(
さ
)
け
口
(
くち
)
も
閉
(
と
)
ぢて
噴出
(
ふんしゆつ
)
一時
(
いちじ
)
に
止
(
と
)
まつてしまつたが、
僅
(
わづか
)
に
五六秒位
(
ごろくびようくらゐ
)
經過
(
けいか
)
した
後
(
のち
)
再
(
ふたゝ
)
び
噴
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し
始
(
はじ
)
めた。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
其處
(
そこ
)
にはもうそつけなくなつた
女郎花
(
をみなへし
)
の
莖
(
くき
)
がけろりと
立
(
た
)
つて、
枝
(
えだ
)
まで
折
(
を
)
られた
栗
(
くり
)
が
低
(
ひく
)
いながらに
梢
(
こずゑ
)
の
方
(
はう
)
にだけは
僅
(
わづか
)
に
笑
(
ゑ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
僅
(
わづか
)
二三兩の金をも貸ず只今に至り證據もなき事を
公儀
(
かみ
)
へ申立候
段
(
だん
)
不屆者めと
白眼
(
にらま
)
れしかば彌吉夫婦は
戰慄
(
ふるへ
)
出し恐れ入て居たりける
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
婚姻と死とは、
僅
(
わづか
)
に邦語を談ずるを得るの稚児より墳墓に近づく迄、人間の常に口にする所なりとは、ヱマルソンの至言なり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
世上貫一の
外
(
ほか
)
に愛する者無かりし宮は、その貫一と奔るを
諾
(
うべな
)
はずして、
僅
(
わづか
)
に一
瞥
(
べつ
)
の富の前に、百年の契を
蹂躙
(
ふみにじ
)
りて
吝
(
をし
)
まざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
がう/\と
戸障子
(
としやうじ
)
をゆする
風
(
かぜ
)
がざツと
屋
(
や
)
の
棟
(
むね
)
を
拂
(
はら
)
つて、やゝ
輕
(
かる
)
くなるやうに
思
(
おも
)
はれて、
突
(
つ
)
つ
伏
(
ぷ
)
したものも、
僅
(
わづか
)
に
顏
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げると……
何
(
ど
)
うだらう
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
死力を
籠
(
こ
)
めたる細き
拇指
(
おやゆび
)
に、左眼
抉
(
ゑぐ
)
られたる松島は、
痛
(
いたみ
)
に堪へ得ぬ
面
(
かほ
)
、
僅
(
わづか
)
に
擡
(
もた
)
げつ「——秘密——秘密に——名誉に関はる——早く医者を、内密に——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
父を知つてゐた人は勿論、父の事を聞いたことのある人は絶無僅有で、其の
僅
(
わづか
)
に存してゐる人も、記憶のおぼろげになり、耳の遠くなつたのをかこつばかりである。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
この
少年
(
せうねん
)
は
數學
(
すうがく
)
は
勿論
(
もちろん
)
、
其他
(
そのた
)
の
學力
(
がくりよく
)
も
全校
(
ぜんかう
)
生徒中
(
せいとちゆう
)
、
第
(
だい
)
二
流
(
りう
)
以下
(
いか
)
であるが、
畫
(
ゑ
)
の
天才
(
てんさい
)
に
至
(
いた
)
つては
全
(
まつた
)
く
並
(
なら
)
ぶものがないので、
僅
(
わづか
)
に
壘
(
るゐ
)
を
摩
(
ま
)
さうかとも
言
(
い
)
はれる
者
(
もの
)
は
自分
(
じぶん
)
一
人
(
にん
)
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
僅
(
わづか
)
なペンキ一缶の価でこの「好意」が買へたかと思ふとこんな嬉しい事はないといふのださうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
危險
(
あぶな
)
う
御座
(
ござ
)
います」と
云
(
い
)
つて
宜道
(
ぎだう
)
は
一足先
(
ひとあしさき
)
へ
暗
(
くら
)
い
石段
(
いしだん
)
を
下
(
お
)
りた。
宗助
(
そうすけ
)
はあとから
續
(
つゞ
)
いた。
町
(
まち
)
と
違
(
ちが
)
つて
夜
(
よる
)
になると
足元
(
あしもと
)
が
惡
(
わる
)
いので、
宜道
(
ぎだう
)
は
提灯
(
ちやうちん
)
を
點
(
つ
)
けて
僅
(
わづか
)
一
丁
(
ちやう
)
許
(
ばかり
)
の
路
(
みち
)
を
照
(
て
)
らした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
灌木はミヤマ
榛
(
はん
)
の木の
痩
(
や
)
せさらばひたるが
僅
(
わづか
)
に数株あるのみ、初めは草一面、後は
焦沙
(
せうさ
)
磊々
(
らい/\
)
たる中に、
虎杖
(
いたどり
)
、
鬼薊
(
おにあざみ
)
及び他の
莎草
(
しやさう
)
禾本
(
くわほん
)
を
禿頭
(
とくとう
)
に残れる二毛の如くに見るも、それさへ
失
(
う
)
せて
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
僅
(
わづか
)
ながらもわざわざ買つて貰つた自分の畑の地面を
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
○さて
我
(
わが
)
塩沢
(
しほさは
)
は江戸を
去
(
さる
)
こと
僅
(
わづか
)
に五十五里なり、
直道
(
すぐみち
)
を
量
(
はから
)
ばなほ近かるべし。雪なき時ならば
健足
(
たつしや
)
の人は四日ならば江戸にいたるべし。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
實際
(
じつさい
)
大地震
(
だいぢしん
)
の
損害
(
そんがい
)
に
於
(
おい
)
て、
直接
(
ちよくせつ
)
地震動
(
ぢしんどう
)
より
來
(
きた
)
るものは
僅
(
わづか
)
に
其一小部分
(
そのいつしようぶぶん
)
であつて、
大部分
(
だいぶぶん
)
は
火災
(
かさい
)
のために
生
(
しよう
)
ずる
損失
(
そんしつ
)
であるといへる。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
加へ
新規
(
しんき
)
に
建添
(
たてそへ
)
などし失費も
厭
(
いと
)
はず人歩を
増
(
まし
)
て急ぎければ
僅
(
わづか
)
の日數にて
荒増
(
あらまし
)
成就
(
じやうじゆ
)
したれば然ば
迚
(
とて
)
一先歸國すべしと旅館へは召し連下男一人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
抑も当時武門の権勢漸く内に衰へて、華美を競ひ遊惰を事とするに及びて、風教を依持す可き者とては
僅
(
わづか
)
に朱子学を宗とする儒教ありしのみ。
粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
天秤商人
(
てんびんあきうど
)
の
持
(
も
)
つて
來
(
く
)
るのは
大抵
(
たいてい
)
屑
(
くづ
)
ばかりである。それでも
勘次
(
かんじ
)
は
廉
(
やす
)
いのを
悦
(
よろこ
)
んだ。
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
僅
(
わづか
)
な
錢
(
ぜに
)
を
幾度
(
いくたび
)
か
勘定
(
かんぢやう
)
して
渡
(
わた
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
この
祠
(
ほこら
)
を
頂
(
いたゞ
)
く、
鬱樹
(
うつじゆ
)
の
梢
(
こずゑ
)
さがりに、
瀧窟
(
たきむろ
)
に
似
(
に
)
た
径
(
こみち
)
が
通
(
とほ
)
つて、
断崖
(
きりぎし
)
の
中腹
(
ちうふく
)
に
石溜
(
いしだま
)
りの
巌
(
いはほ
)
僅
(
わづか
)
に
拓
(
ひら
)
け、
直
(
たゞ
)
ちに、
鉄
(
くろがね
)
の
階子
(
はしご
)
が
架
(
かゝ
)
る
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
僅
常用漢字
中学
部首:⼈
13画
“僅”を含む語句
僅少
僅々
僅有
僅三時
僅僅
僅有絶無
僅計