)” の例文
こまかきあめははら/\とおとして草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをもみださず、かぜひとしきりさつふりくるはにばかりかゝるかといたまし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのそばにえている青木あおきくろずんで、やはり霜柱しもばしらのためにいたんではだらりとれて、ちからなくしたいているのでありました。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、母親ははおやおしえました。するとみんな一生懸命いっしょうけんめい、グワッ、グワッと真似まねをして、それから、あたりのあおおおきな見廻まわすのでした。
しばらくすると、毛蟲けむしが、こと/″\眞白まつしろてふになつて、えだにも、にも、ふたゝ花片はなびららしてつてみだるゝ。幾千いくせんともかずらない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もりおくまいには、毎日まいにち木枯こがらしがいて、ちつくすと、やがてふかゆきもりをもたにをもうずめつくすようになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
川口かはぐちの、あしのたくさんえてゐる、そのあしさきが、みんなとれてゐる。これは、たれつたのかとまをしますと、それは、わたしです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そればかりではありません、やまにある田圃たんぼにあるくさなかにも『べられるからおあがり。』とつてくれるのもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其晩そのばん宗助そうすけうらからおほきな芭蕉ばせうを二まいつてて、それを座敷ざしきえんいて、其上そのうえ御米およねならんですゞみながら、小六ころくことはなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
雜木林ざふきばやしあひだにはまたすゝき硬直かうちよくそらさうとしてつ。そのむぎすゝきしたきよもとめる雲雀ひばり時々とき/″\そらめてはるけたとびかける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにかでつくったみののようなものが、彼のからだにせられた。その時から、忍剣がなにをきいても、さる返辞へんじをしなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其方そちもある夏の夕まぐれ、黄金色こがねいろに輝く空気のうちに、の一ひらひらめき落ちるのを見た時に、わしの戦ぎを感じた事があるであろう。
つりの帰りらしい小舟がところどころのように浮いているばかり、見渡す隅田川すみだがわは再びひろびろとしたばかりかしずかさびしくなった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うしをたべてしまった椿つばきにも、はなが三つ四ついたじぶんの海蔵かいぞうさんは半田はんだまちんでいる地主じぬしいえへやっていきました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
村の方ではまだ騒いで居ると見えて、折々人声は聞えるけれど、此の四辺あたりはひつそりと沈まり返つて、そよぐ音すら聞えぬ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
末男すゑを子供こどもきながら、まちと一しよ銀座ぎんざあかるい飾窓かざりまどまへつて、ほしえる蒼空あをそらに、すきとほるやうにえるやなぎつめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
かく緑色みどりいろ植物しよくぶつの、とく固有こゆういろで、われ/\はといへば、すぐにみどりいろおもさずにゐられないくらゐしたしいいろです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
鹿しかはおどろいて一度いちど竿さをのやうにちあがり、それからはやてにかれたのやうに、からだをなゝめにしてしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
天女てんによ御空みそらふがごと美音びおんは、こゝろなき壇上だんじやうはなさへさへゆるぐばかりで、滿塲まんじやうはあつとつたまゝみづつたやうしづまりかへつた。
んなのがりましたとしてせるのは、彌生式土器やよひしきどき上部じやうぶ(第五圖參照)と破片はへん澤山たくさんおよぞこである。べつ貝塚土器かひづかどき網代底あじろぞこ
つまあをざめた顔色かほいろやうやはなのためにやはらぎ出した。しかし、やがて、秋風あきかぜが立ち出した。はな々はを落す前に、そのはならすであらう。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
わたしあがつて、をりからはこばれて金盥かなだらひのあたゝな湯氣ゆげなかに、くさからゆるちたやうななみだしづかにおとしたのであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そのなかに人妻となって子を生んだくずという狐の話をとり上げられた一篇があって、そこにこういう挿話が語られている。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
秋には地面じめんにおちたクルミやをあつめて、うろのなかにはこびこみました。クルミは冬のあいだの食べものなのです。
と、四方あたりが急に微暗うすぐらくなって頭の上のがざざざと鳴りはじめた。大粒の雨のしずくが水の上へぽつりぽつりと落ちて来た。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そはこの話にとどまらず、安珍あんちん清姫きよひめの話を翻訳したる「紀州きしう日高ひだかの女山伏やまぶしを殺す事」も然り、くずの話を翻訳したる、「畜類人とちぎ男子をのこを生む事」
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆずの野生が多いのも見慣れない人には珍らしいであろう。口元の滝ノ沢、奥の滝ノ沢などいう小沢が左手の山腹から瀑となって落下している。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
春信はるのぶは、こいからはなすと、きゅうおもいだしたように、縁先えんさき万年青おもと掃除そうじしている、少年しょうねん門弟もんてい藤吉とうきちんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
黄ばみ戰くはどこへ行くのだらう。言ふまでも無く、それは自然が歳々としどしの復活を營むあの大實驗室へ行くのだ。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
そしてまたわたしは、あの菜の花の咲きつづく和泉の國、信田しのだもりくずぎつねの傳説をおもひうかべないではゐない。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
しづかなよひで、どことはなしに青をにほはせたかぐはしい夜風よかぜには先からながれてくる。二人のあひだにはそのまましばらくなんの詞も交されなかつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「今は聞いてくれるな。しかし、わしはもないことをおそれているのではない。わしを信じてくれ。そしてわしを完全に保護してくれたまえ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十二、三ばかりの、女の子が前かがみに何か線の細かなをすすいでいる、せりかときいてみるとかすかに顔を赤らめながら、人参にんじんの葉だという。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ふねのようにゆれ、たかいなみはかんぱんにおどりあがり、うっかりしていると、人間にんげんもころがされるしまつで、みんなあおかおをしていました。
往つての小さいのを捜してらつしやいよ。常春藤の葉つ葉は、小さければ小さい程愛情おもひが深いんですつて。
お秀は土間に飛び降りると、木綿物のあわせに、赤いあさの帯をしめた十七八の娘の袖をつかんでグイと引きました。
金魚鉢きんぎょばち位置いちから、にわかえでがくれではあるが、島本医院しまもといいん白壁しらかべえていて、もしそのかべあながあると、こつちをおろすこともできるはずである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
知たるかと時に取ては氣轉きてんの問條此方は聞も及ばざれど名高き奉行はこといつはりあらじとおもひしかば如何にもおほせの通りにて心得ゐるよし答へけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「椎の葉」は、和名鈔は、「椎子和名之比」であるからしいであってよいが、ならだろうという説がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おそれながら御前ごぜんさまはお大名だいみやう御身おみりながら、お月さまとおほせられましては、小児せうに童子わらべことにて、歌俳諧うたはいかいにでも月は月で事はますやうぞんじます。
昔の大名の心意気 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
昼過ひるすぎからすこ生温なまあたゝかかぜやゝさわいで、よこになつててゐると、何処どこかのにはさくらが、霏々ひら/\つて、手洗鉢てあらひばちまはりの、つはぶきうへまでつてる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのかたちにも種々しゆ/″\かはつたのがあつて、なががたちやなぎかたちのようなものや、三角形さんかくけいのものや、またふたつのあしのついたもの、そのあしながくなつてゐるもの
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「その代わりわたしがまたおをあとから入れたからすっぱすぎる所があるかもしれなくってよ。も少しついでにおも入れればよかってねえ、愛ねえさん」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ですから、二年ばかりたちますと、そこにはコケるいえてきました。秋にはや枯れ草が落ちかかり、春にはくずれ落ちた石やじゃりがたまりました。
毎年秋のを鹿ががさつかせるという時分、大したお供揃ともぞろいで猟犬や馬をひかせておくだりになったんです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
我が朝の貫之つらゆきもその古今集の序に於て「やまと歌は人の心をたねとしてよろずこととぞなれりける」と説き
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
若々とした武蔵野に復活の生気があふれる。色々の虫が生れる。田圃たんぼに蛙が泥声だみごえをあげる。水がぬるむ。そろ/\種籾たねもみひたさねばならぬ。桑のがほぐれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのうたの一ツにハア〽うさぎ/\児兎こうさぎハアヽ〽わが耳はなぜながいハアヽ〽母の胎内たいないにいた時にさゝ
これは多分、しばしば祖母に連れられて文楽座ぶんらくざ堀江座ほりえざの人形芝居へ行ったものだから、そんな時に見たくずの子別れの場が頭にんでいたせいであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
えんじゅの下の大きな水鉢みずばちには、すいれんが水面すいめんにすきまもないくらい、まるけて花が一りんいてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)