うを)” の例文
○新撰字鏡うをに鮭(佐介さけ)とあり、和名抄には本字はさけぞくさけの字を用ふるは也といへり。されば鮭の字を用ひしもふるし。
「君、つかん事を訊くやうだが、姑蘇こそ城外の蘇の字だね、あれは艸冠くさかむりの下のうをのぎとは何方どつちに書いた方がほんとうだつたかな。」
ひとはしるもの汽車きしやず、ぶものとりず、およぐものうをず、なるもの廂髮ひさしがみざるゆゑて、ちくらがをきとなすなかれ。
怪談会 序 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まづしい店前みせさきにはおほがめかふわに剥製はくせい不恰好ぶかっかううをかはつるして、周圍まはりたなには空箱からばこ緑色りょくしょくつちつぼおよ膀胱ばうくわうびた種子たね使つかのこりの結繩ゆはへなは
幕を引上げない以前に、濁つた流れに終日ひねもす絲を垂れて居てもうをはつれないと云ふ貧しい漁夫の歌を獨唱させるつもりである。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
くらがりの海のものおそろしさも、衰弱のきよくとなれる神経を刺すこと多く、はてはもとの𤍠湯の中に死なずして目をひらうをとなり申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
食物しよくもつはおもによるくさ果實かじつうを、かになどをとり、ときには人里ひとざとて、家畜かちくをかすめとつていくこともあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
岸のきはうをの鱗を蒔き散らしたやうに、ちら/\明るく光つてゐる、黒い海の水が、今まで話をしてゐた老人を呑んでしまつたかと思はれるやうに。
センツアマニ (新字旧仮名) / マクシム・ゴーリキー(著)
菓子種は小川こがはのやうに焼鍋の上に流れる。バタが歌ふ。火がつぶやく。そして誰の皿の上にも釣り上げられたうをのやうに、焼立の菓子が落ちて来る。
良久しばらくしてのぞいてるとうを歩兵ほへい姿すがたはなくて、モ一人ひとりはうそば地面ぢべたうへすわつて、茫然ぼんやりそら凝視みつめてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
併しわたくし共の行く岩の間で取れるうをは、種類が沖合より余程多くて、魚の数もやはり多いのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
... ぐる所以ゆゑんかくごと而已のみ』と。孔子こうしつて弟子ていしつていはく、『とりわれぶをり、うをわれおよぐをり、けものわれはしるをる。 ...
一人は太古たいこからかれない泥沼の底の主、山椒さんせううをでありたいといひ、ひとりは、夕暮、または曉に、淡く、ほの白い、小さな水藻みづもはなでありたいと言ふ、こんな二人。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ほつと一息ひといき引上ひきあげてると、おもつたより巨大おほきうをで、ほとんど端艇たんてい二分にぶんいちふさいでしまつた。
ふまでもなくうまむちぼく頭上づじやうあられの如くちて來た。早速さつそくかねやとはれた其邊そこら舟子ふなこども幾人いくにんうをの如く水底すゐていくゞつて手にれる石といふ石はこと/″\きしひろあげられた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
みづうつつきうばはんとする山猿やまざるよ、無芸むげい無能むのうしよくもたれ総身そうみ智恵ちゑまはりかぬるをとこよ、よつうをもとくさうつへびをどろ狼狽うろたへものよ、白粉おしろいせて成仏じやうぶつせんことねが艶治郎ゑんぢらう
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
冬の雪おろしは遠慮なく身をきる寒さ、うをといひては甲府まで五里の道を取りにやりて、やうやう𩻩まぐろの刺身が口にる位、あなたは御存じなけれどお親父とつさんに聞て見給みたま
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前にもべし如く、コロボックルはもりの類にてうをりし事も有り、あみを以て魚を捕りし事も有りしはあきらかなれば、或る種類しゆるゐの舟も存在せしならんとは推知さるる事ながら
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
みつが煮しめばかり食べてうをを余り食べなかつたからソツプを飲ませた。玄関の土間の暗くなつた頃に平野さんが来た。これから暁星の夜学にくのだと云つて腰を掛けた儘で話した。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
蘭軒はうをの価を償うた。そして猫に謂つた。「人の家の物を取つて来てはいけぬ。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
以て無事目的を達してかへるを得せしむるなり云々と、朝来雨やうやれ来れば一行笑顔えがほを開き、一して戸倉に至るをす、此夜森下君の発案により、鍋伏なべふせを行ふてうをるをたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
うをのやうにねむりつづける 瀲灔れんえんとしたみづのなかの かげろふ色のばらの花。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
相手の女といふは、西京のうをたなあぶら小路こうぢといふところにある宿屋の総領娘、といふことが知れたもんですから、さあ、寺内のせんの坊さんも心配して、早速西京へ出掛けて行きました。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
近江屋「なに、それはもつと小さい丸いので、ぶら提灯ぢやうちんといふのだが、あれは神前しんぜん奉納ほうなふするので、周囲まはりあかつぶして、なかくろで「うをがし」と書いてあるのだ、周囲まはりなかくろ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それなら一ことんなでかへらうとて、發掘はつくつ中止ちうしし、天幕てんとたゝみ、飮餘のみあましたる麥酒ビールびんたづさへて、うら池邊ちへんき、其所そこにてまた小宴せうえんり、食物しよくもつのこりをいけうを投與とうよして、かるくし
翌日あくるひばん宗助そうすけはわがぜんうへかしらつきのうをの、さらそとをどらすさまながめた。小豆あづきいろまつためしかをりいだ。御米およねはわざ/\きよつて、坂井さかゐいへうつつた小六ころくまねいた。小六ころく
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今彼の身は第二医院の一室に密封せられて、しかも隠るる所無きベッドの上によこたはれれば、宛然さながら爼板まないたに上れるうをの如く、むなしく他の為すにまかするのみなる仕合しあはせを、掻挘かきむしらんとばかりにもだゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さらもり彼の藥をお熊が手より入れて又七の前へ持來もちきたり是は母樣はゝさまよりお前に上んとて新場より取寄とりよせうをなればおあがさるべしと一年餘のあひだはじめてお熊の口より又七へ物云ものいひければ又七は喜び直樣すぐさまめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
指さきに吸ひつくうをのこころよりつめたく秋は流れそめたり
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
赤く塗りし大きうをかかりゐる僧等のはんのときに打つべく
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
腐れたるうをのまなこは光なし石となる日を待ちて我がゐる
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
世の中の人に心を合せけん水とうをとを見るにつけても
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
飢にや狂ふ、おどろしき深海底ふかうみぞこのわたりうを
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
唯惡相のうをにのみ暗き心ををののかし
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
一跳ね一跳ねうをの最後が刻まれる
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
ゆく春や鳥うをの目は涙 芭蕉
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
はじめにりたるうををとりて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
うをとなり飛ぶ鳥となり
オリンピック東京大会讃歌 (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
とりくもうをぶも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
青い小父さんとうを
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
うを幾千いくせん溌溂はつらつ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
われく、むかし呉道子ごだうし地獄變相ぢごくへんさうつくる。成都せいとひと一度ひとたびこれるやこと/″\戰寒せんかんしてつみおそれ、ふくしうせざるなく、ために牛肉ぎうにくれず、うをかわく。
聞きたるまゝ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
したが、このこひ一卷ひとまき只一たゞひとらはぬことゝいふは、表紙おもてがみがまだかず、うつくしうぢてもい。うをはまだ沖中おきなかにぢゃ。
およそひと悪をなして天罰てんばつもれざる事、うをあみにもれざるがごとくなるゆゑ、これをたとへて天のあみといふめり。
けん程の波が立つたまゝで氷つて居るのも二三里の間続いた景色であつた。鏡の様に氷が解けて光つたところにはうをが居るらしく、船に乗つて釣をして居る人もあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「実はかうしたいからなんだ。」棕隠は箸でもつて矢庭やにはに山陽の焼肴と自分のとを取りかへた。「ね、うをは右にあつたつて、左にあつたつて一向差支ないんだらう。」
山椒さんせううをたる主人と、清からんとして、山椒さんせううをの住みにくいのを忘れてしまふ私との問答。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ふゆゆきおろしは遠慮ゑんりよなくをきるさむさ、うをといひては甲府かうふまで五みちりにやりて、やう/\𩻩まぐろ刺身さしみくちくらゐ、あなたは御存ごぞんじなけれどお親父とつさんにきい見給みたま
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくしこのちいさいうをを百ばいにも二百倍にひやくばいにもする工夫くふういでもない、よしこの小鰺こあぢで、あの巨大おほき沙魚ふかつてやらうとかんがへたので、少年せうねんかたると少年せうねん大賛成だいさんせい勿論もちろん釣道具つりどうぐいが