あか)” の例文
「なんというおそろしいところだ。どうしてこんなところにまれてきたろう。」と、ちいさなあかはなは、自分じぶん運命うんめいをのろいました。
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もういっぽうは、男の子がひろって、いまにあかぼうでも生れたら、ゆりかごに使うんだ、と言いながら、持っていってしまいました。
みちざねはあかい、うめのはなを みて、あの うつくしい うめのはなの いろを わたしの かおに つけたい と うたったのです。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
曾祖母ひいばあさん、祖父おぢいさん、祖母おばあさん、伯父おぢさん、伯母おばさんのかほから、奉公ほうこうするおひなかほまで、家中うちぢうのものゝかほ焚火たきびあかうつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
烈々れつ/\える暖炉だんろのほてりで、あかかほの、小刀ナイフつたまゝ頤杖あごづゑをついて、仰向あふむいて、ひよいと此方こちらいたちゝかほ真蒼まつさをつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おしの強い事ばかり云つて。ひとの気も知らないで」と梅子は誠吾の方を見た。誠吾はあかまぶたをして、ぽかんと葉巻はまきけむいてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼女かのぢよ小使部屋こづかひべやまへとほりかゝつたときおほきな炭火すみびめうあかえる薄暗うすくらなかから、子供こどもをおぶつた内儀かみさんがあわてゝこゑをかけた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それから三月みつきほどたつと、おじいさんのおかみさんがきゅうにおなかが大きくなりました。そしてもなく男のあかんぼがまれました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とおかあさんは言いながら、あかぼうのようなかわいたその子の口をすうてやりますと、子どもはかわきもわすれてほおえみました。
『おきぬさん!』とぼくおもはずげた。おきぬはにつこりわらつて、さつとかほあかめて、れいをした。ひとくるまとのあひだる/\とほざかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
出来ない相談だから仕方がない。美事みごと撃退されてしまった。俺は駄目だよ。勧められることは上手だが、勧めることはあか下手ぺただからね
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さしもになかよしなりけれど正太しようたとさへにしたしまず、いつもはづかしかほのみあかめてふでやのみせ手踊てをどり活溌かつぱつさはふたゝるにかたなりける
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
餘所よそをんな大抵たいてい綺麗きれいあかおびめて、ぐるりとからげた衣物きものすそおびむすしたれて只管ひたすら後姿うしろすがたにするのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おほかぶさつてるまゆ山羊やぎのやうで、あかはな佛頂面ぶつちやうづらたかくはないがせて節塊立ふしくれだつて、何處どこにかう一くせありさうなをとこ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此様こんな女の人は、多勢の中ですもの、幾人もあったでしょうが、其あかさんをいて御居での方が、妙に私の心を動かしたのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
物おほくいはぬ人のならいとて、にわかいだししこと葉と共に、顔さとあかめしが、はや先に立ちていざなふに、われはいぶかりつつも随ひ行きぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
喜び勇んで椅子からとび下りそうになったが、おいしいおやつにありついたあかぼうみたいに、足をちょいとばたつかせるだけで我慢がまんした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
そのとき西にしのぎらぎらのちぢれたくものあひだから、夕陽ゆふひあかくなゝめにこけ野原のはらそゝぎ、すすきはみんなしろのやうにゆれてひかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
こういわれて、おとこはこなかあたま突込つっこんだ途端とたんに、ガタンとふたおとしたので、小児こどもあたまはころりととれて、あか林檎りんごなかちました。
大きな牛のようなブルを、あかの指一本でなげとばすというんだから、この大評判が、とうとう、新聞にまで出てしまった。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
さても吉兵衞は今ぞ大事と思ひきりつゝしんで又々申立る樣もとより久八と千太郎とは兄弟に御座候と顏をあからめて云ければ越前守殿是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おむつをきらうあかぼうのようだ。仲仕が鞭でしばく。起きあがろうとする馬のもがきはいたましい。毛並けなみに疲労の色がい。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「あなたがたあかちやんがもうぢきうまれるといふのに、子守歌こもりうたならひもしないで、そんな暢氣のんきなことをつていらつしやる。」
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
出雲いづもくにあたりから碧玉へきぎよくといふ青黒あをぐろいしもちひられ、さらにのちになると、あか瑪瑙めのう普通ふつう使つかはれるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
がすりのあはせに、あかおび竪矢たてや背中せなかうた侍女じぢよが、つぎつかへて、キッパリとみゝこゝろよ江戸言葉えどことばつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やつと隧道トンネルたとおもふ——そのときその蕭索せうさくとした踏切ふみきりのさくむかうに、わたくしほほあかい三にんをとこが、目白押めじろおしにならんでつてゐるのをた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あかん谷の婆(母の乳母で髪の白いなつかしい老婆だつた)のところに山桃やんもも採りにゆく時にも、絶えず何らかの稗史を手にしないことは無かつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
葉ざくらの葉蔭に、珊瑚さんごいろのあかが、いて血のように見える。れきった桜の実は、地にもこぼれていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかしかけをきた人形にんぎやうは、しろ手拭てぬぐひのしたにくろひとみをみひらいて、とほくきたたびをおもひやるやうにかほをふりあげました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
しかし、夫が死んでしまへば、何の結縁けつえんもない、あかの他人の邪魔者を、何の縁故で心から愛することが出來ようか。
その一つは、私がどこかの浜辺の芝生の様な所で、暖かい日に照らされて、可愛いあかさんと遊んでいる景色なの。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
縁日えんにちでよくあかをしたかわいゝ、しろぶちのうさぎをつてゐるのを、みなさんも、たびたびごらんになつたでせう。しかしやまには褐色かつしよくのうさぎがゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
同書どうしよ崔禹錫さいうせき食経しよくきやうを引て「さけ其子そのこいちごあかひかり春うまれて年の内にゆゑにまた年魚ねんぎよと名く」と見えたり。
蚊帳釣草かやつりぐさ」の穂の練絹ねりぎぬの如くに細く美しき、「猫じゃらし」の穂の毛よりも柔き、さては「あかまま」の花の暖そうに薄赤き、「車前草おおばこ」の花のさわやか蒼白あおじろ
『一番可哀想なのは、おなかさん(嫁さんの名)とあか(赤ん坊)だ。あんないゝ嫁さんもないもんだ。』
惨事のあと (新字新仮名) / 素木しづ(著)
二年生のエピファーノフが、ナイフと一ルーブリ銀貨ぎんかをなくしたのである。このあかいほっぺたをしたふとっちょの子供は、盗難とうなんに気がつくと、わっと泣声なきごえをあげた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
あかと、ほねしろの配色の翅をつけた一匹の蝶は、落寞とした空間に、見るもあやうげにかかっている。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
船橋せんけううへにはビールだるのやうに肥滿ひまんした船長せんちやうが、あか頬髯ほゝひげひねりつゝ傲然がうぜんと四はう睥睨へいげいしてる。
これと向ひあいに腰かけてゐるのが今大声をだしたので、年は四十位に見えるが、其あかがほは酒を呑むしるしなのであらう、見るからたくましそうな、そして其の袖口の赤ひのや
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
やう/\のこと、くに役人やくにん世話せわ手輿てごしせられていへきました。そこへ家來けらいどもがけつけて、お見舞みまひをまをげると、大納言だいなごんすもゝのようにあかくなつたひらいて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
いや、それは、鬼のように恐ろしい計画だった。旦那どのの考えは若い男が一旦飛び込んで、熱鉛ねつえんのためあか爛れにただれたところで若い男の死骸をひっぱり出すことにあった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぽんおほきな薔薇ばらが、ほとんど其花園そのはなぞの中央ちゆうわうつてゐて、しろはないくつもそれにいてゐましたが、其處そこには三にん園丁えんていて、いそがはしげにそれをあか彩色さいしきしてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
へえーアノなんですか、ひきがへるを。真「ひきがへるぢやアない、敷皮しきがはです、彼所あれいてあるから御覧ごらんなさい。甚「へえー成程なるほど大きな皮だ、熊の毛てえものは黒いと思つたらりアあかうがすね。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
千穂子の子供をもらってもいいと云ってくれる人であったが、産婆さんばの話によると、もう少し、器量のいいあかぼうを貰いたいと云う事で、話が沙汰さたやみのようになっているのであった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
硝子の破れ目から怪我けがをしないように、手を突込んで、注意して調べてみると、全部で五冊に別れていて、その第一頁ごとにあかインキの一頁大の亜剌比亜アラビア数字で、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あかとんぼが障子しょうじへくっきりかげうつした画室がしつは、きん砂子すなこらしたようにあかるかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
柔脆じゅうぜいの肉つきではあるが、楽焼らくやきの陶器のような、粗朴な釉薬うわぐすりを、うッすりいたあかと、火力の衰えたあとのほてりを残して、内へ内へと熱を含むほど、外へ外へと迫って来る力が
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
窓際まどぎは紫檀しだんたくはさんでこしおろし、おたがひつかがほでぼんやり煙草たばこをふかしてゐると、をんな型通かたどほ瓜子クワスワツアはこんでくる。一人ひとり丸顏まるがほ一人ひとり瓜實顏うりさねがほそれ口紅くちべにあかく、耳環みゝわ翡翠ひすゐあをい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
幼児をさなごだまつて、あたしをつめてくれた。この森蔭もりかげはづれまであたしは一緒いつしよつてやつた。此児このこふるへもしずにあるいてく。つひにそのあかかみが、とほひかりえるまで見送みおくつた。
これが、此の廢殘はいざんさかひにのさばつてもつとも人の目を刺戟しげきする物象ぶつしやうだ………何うしたのか、此の樹のこずえあかいと一筋ひとすじからむで、スーツと大地だいちに落ちかゝツて、フラ/\やはらかい風にゆらいでゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)