わら)” の例文
こうしたひとたちのあつまるところは、いつもわらごえのたえるときがなければ、口笛くちぶえや、ジャズのひびきなどで、えくりかえっています。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとおにかおじゅう口にして、ぎえッ、ぎえッ、ぎえッと、さもおもしろそうにわらいました。そうして、大きなをむきしたまま
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのはなは、のめずりたおれた老人ろうじん死体したいを、わらつておろしているというかたちで、いささかひとをぞつとさせるような妖気ようきただよわしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
で、「眞平まつぴら御免ごめんなさい。」とふと、またひよろ/\とそれを背負しよつてあるく。うすると、その背後うしろで、むすめは、クツクツクツクツわらふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『なあに、柳川君やながはくんには片附かたづけるやうな荷物にもつもないのさ。』と濱島はまじまこゑたかわらつて『さあ。』とすゝめた倚子ゐすによつて、わたくしこの仲間なかまいり
で、貴方あなた時代じだいやうとすましてもゐられるでせうが、いや、わたくしふことはいやしいかもれません、笑止をかしければおわらください。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
女同士をんなどうしはわあとたゞわらごゑはつして各自てんで對手あひていたりたゝいたりしてみだれつゝさわいだ。突然とつぜん一人ひとりがおつぎのかみへひよつとけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
駕籠舁どもは大いにわらひコレ旦那だんなどうした事をいひなさる此道中は初めてと見えるゆゑ夫リヤア大方おほかた此宿の者が御客をつるつもりの話しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつはりではけれどくすとはなにを、デハわたしからまをしませう深山みやまがくれのはなのおこゝろひさして莞爾につことすれば、アレわらふてははぬぞよ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このとき早く富田六段は、ごろりところんでしまった。まるで昼寝でもするように板の間にあおむけに寝てにこにこわらっている。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
『おきぬさん!』とぼくおもはずげた。おきぬはにつこりわらつて、さつとかほあかめて、れいをした。ひとくるまとのあひだる/\とほざかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひとりや(六二)猜忍さいにん人也ひとなり其少そのわかときいへ、千きんかさねしが、(六三)游仕いうしげず、つひ其家そのいへやぶる。(六四)郷黨きやうたうこれわらふ。
そして悪口が見つかったので、やはり顔を地面じべたうずめたまま、わらいこけながら大声おおごえでそれをいってやった。けれどなんの返事もなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「もうこんなぐあいです。どうかたくさんわらってやってください」とうとたん、かいの火はするどくカチッと鳴って二つにれました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やがて思いついたことがあって、わたしはそれをまるいてネクタイにした。大将たいしょうがもっとわらった。カピがまたでんぐり返しを打った。
「ぢや貴方あなたべつ書畫しよぐわきで、らしつたわけでもないんですね」と自分じぶん誤解ごかいを、さも面白おもしろ經驗けいけんでもしたやうわらした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わらごとではい、なにてもころだと、心中しんちういろ/\苦悶くもんしてるが如何どうない、破片はへん獸骨じうこつ、そんなところしか見出みいたさぬ。
「そんなことはない。」わたしわらひながら否定ひていした。するとまたS、H訂正ていせいでもするやうに、「いや、わたしほうが……。」とこたへた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ンガオド何歳ナンボだバ。ワイのナ今歳コドシ二十六だネ。なにわらふんダバ。ンガ阿母オガあねダテ二十歳ハダヂしたヲドゴたけアせ。だけアそれほどチガはねエネ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
貴樣達きさまたちはあのとき中根なかね行爲かうゐわらつたかもれん。しかし、中根なかねまさしく軍人ぐんじんの、歩兵ほへい本分ほんぶんまもつたものだ。えらい、えらい‥‥」
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
此うなるとお房の方でも剛情がうじやうで、恰で眼底めのそこ粘付ねばりついたやうになつて、何うかすると、莞爾につこりわらつて見せる。いや、ひつこいことだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
じいさんは子供こどものようによろこんで、ながかおをいっそうながくして、あは、あは、とわらった。ぼくたちもいっしょにわらしてしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
わたしは一先生せんせいところきませんでした』とつて海龜うみがめ長太息ためいきし、『その先生せんせいわらふことゝかなしむことゝををしへてゐたさうです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
と、すぐそばでやかすようなわらごえきこえた。あくたれでとおっているドゥチコフのいやな声だ。シューラはおもいがけなさにぴくっとなった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
友伯父ともをぢさんはもう十二さいでしたから、そんなやまなか子供こどものやうなかみをして行つて東京とうきやうわらはれてはらないと、おうち人達ひとたちひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ニヤリとわらったまつろうが、障子しょうじすみへ、まるくなったときだった。藤吉とうきち案内あんないされたおこのの姿すがたが、影絵かげえのように縁先えんさきあらわれた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
みんなは、そんないやしい小やっこどもが、人なみに、もっともらしくゆずり合うのをおもしろがって、やんやとわらいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
このひとすぐれた才子さいしでありましたが形恰好なりかつこうすこへんで、せいたかかたて、見苦みぐるしかつたので、人々ひと/″\わらつてゐました。
はじめのうち少年は、ほんとに生きているのだと思ったけれど、まもなく、なあんだ人形にんぎょうなんだ、と気がつくと、いきなり大声でわらいだした。
「あのとんまの六兵衛のうらないが当たったら、あしたからおてんとう様が西から出らあ。」と、村の人々はわらいました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
をみひらき、はれやかにわらいながら、だんだんはげしく、しまいにはまるで気でもちがったように、おどりまわりました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そのこん水干すゐかんをとこは、わたしをごめにしてしまふと、しばられたをつとながめながら、あざけるやうにわらひました。をつとはどんなに無念むねんだつたでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのあいだには随分ずいぶんくことも、またわらうこともありましたが、ただ有難ありがたいことに、以前いぜん良人おっとったときのような、あの現世げんせらしい、へん気持きもちだけは
わらだけなんて、そんなものを呑ませて、萬一間違ひがあつてはと、人の良い卯八がそつと菊次郎に耳打をしたんです」
乳母 はい/\、だまりまする、でもな、わらはいではをられませぬ、くのをめて、「あい」とはッしゃったとおもふと。
狂気きちがいわらいする。臙脂屋は聞けども聞かざるが如く、此勢に木沢は少しにじり退すさりつつ、益々毅然きぜんとして愈々いよいよ苦りきり
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
より江は何かしらとおもって走ってゆきますと、昨夜ゆうべのおじさんが、バナナのかごをさげて板の間へ腰をかけていました。お母さんはにこにこわらって
(新字新仮名) / 林芙美子(著)
花前は、ついに自分で菓子かしなどうてきて、民子にやるようになった。ときにはさびしいわらいようをして、タアちゃんと一ことくらいよぶのであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ラランはいつものやうに、カラカラとわらつた。五千メートル。いつもならこのへんるまでにつかれてちてしまうはづなのに、今度こんど莫迦ばか調子てうしがいい。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
但馬守たじまのかみ莞爾くわんじわらつて、ひやく宗教しうけうせん道徳だうとくも、ひとつの死刑しけいといふものにはかなはない、これほど效果かうくわおほいものはもとむることが出來できないとおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
女性じよせい無邪氣むじやきなる輕薄けいはくわらひ、さら一旦いつたんあたへたる財貨ざいか少娘こむすめ筐中きようちうよりうばひて酒亭一塲しゆていいちじやう醉夢すいむするのじようかしめついふたゝ免職めんしよくになりしこと
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
わたしはすっかり父に話してしまおうかと思ったけれど、じっとこらえて、にやりとひとわらいをしただけだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
『えゝ。』と、まちわらひながらこたえたが、彼女かれ自分じぶん昔淋むかしさびしい少女時代せうぢよじだいのことははなさなかつた。そしてがついたやうに、またまどそとをのぞいた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ところが明治めいじになつて、ふる歴史れきしのある日本につぽん短歌たんか改正かいせいして、新派和歌しんぱわかといふものをとなした一人ひとり正岡子規まさをかしきといふひと第一だいゝちにこのうたわらひました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
山田にては土葬どそうするもの少く、多くは荼毘するゆえ、今も死人しにんあれば此竈を使つかうなり。村はずれの薬師堂の前にて、いわなの大なるをいて宿やどの婢にわらわる。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
落語家らくごか見識けんしきからすると、『新玉あらたまの』は本統ほんたう發句ほつくだが、『たまの』は無茶むちやだとして、それで聽衆ちやうしうわらはせようとするんだが、おれところこれことなりだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
勝田君かつだくんく。『彼奴きやつだ/\』と、みなくす/\わらふ。自分じぶんのことをわらつたのかと、なきだに無愛想ぶあいさうかほをしたモンゴリアがう事務長じむちやうは、ます/\むづかしいかほをする。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
昨日きのうまでわらっていた友だちは、朝月あさづき駿馬しゅんめぶりを見て、心からかんぷくしてしまったのであった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)