つね)” の例文
かうしてはやしなか空氣くうきは、つねはやしそとくらべて、晝間ちゆうかんすゞしく、夜間やかんあたゝかで、したがつてひるよるとで氣温きおんきゆうかはることをやはらげます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
はなはだ勝手な申分であるが、私は正月の元旦といえども、ふだん着のまま寝ころんでいたりして、つねのままな顔がしていたいのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
百樹もゝき曰、唐土もろこしにも弘智こうちたる事あり。唐の世の僧義存ぎそんぼつしてのちしかばね函中はこのなかおき、毎月其でしこれをいだし爪髪つめかみのびたるを剪薙はさみきるをつねとす。
それは丁度ちやうど日本にほん國號こくがう外人ぐわいじんなんなんかうとも、吾人ごじんかならつね日本にほん日本にほんかねばならぬのとおな理窟りくつである。(完)
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
いふ心夢しんむとはつね平生へいぜいこゝろに思ふ事を見るをいふなりこの時奧方おくがたの見給ふは靈夢れいむにして天下の主將しゆしやうなるべきさが後々のち/\思ひしられたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つねなんともおもはぬ島田しまだがめ今日けふばかりはづかしいとゆふぐれのかゞみまへなみだくむもあるべし、きくのおりきとても惡魔あくまうまがはりにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その中におつねさんという顔も美しくなければ三味線も達者に弾けない、服装なりも他に比べて大分見劣りのする芸子が一人混っていた。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
やはり、いしは、うまくたりませんでした。最後さいごにいちばん臆病おくびょうつねちゃんでした。もとより、うまくたりっこがありません。
真坊と和尚さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
人麿歌集にある歌で、「児等こらが手を巻向まきむく山はつねなれど過ぎにし人に行きかめやも」(巻七・一二六八)と一しょに載っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
どうかそうありたいものだ、勝敗しょうはいはいくさのつね、小太郎山が敵方てきがたの手に落ちたのもぜひないことと伊那丸いなまるさまもあきらめておいであそばす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向ひのおてるさんが待つて居たやうににこやかに目礼した。道の人通りが多いのでつねのやうに物を云つてもきこえさうではない。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「この間から、神明の水茶屋の、おつね阿魔あまに熱くなりやがって、毎日入りびたって、渋茶で腹をダブダブにしてやがったよ」
すべひとたるものつね物事ものごとこゝろとゞめ、あたらしきことおこることあらば、何故なにゆゑありてかゝこと出來できしやと、よく其本そのもと詮索せんさくせざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
口頭くちさきですっかりさとったようなことをもうすのはなんでもありませぬが、実地じっちあたってるとおもいのほかこころあかおおいのが人間にんげんつねでございます。
と。鮑叔はうしゆくすで管仲くわんちうすすめ、もつこれくだる。((鮑叔ノ))子孫しそんよよせい祿ろくせられ、封邑ほういふたももの餘世よせいつね名大夫めいたいふたり。
んなもんですか……苦労しに東京に行くやうなものかも知れませんよ。年寄に子供、力になるのはつねばかりですから』主婦は鳥渡ちよつと考へて
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
つねさんの、三日みつかばかり學校がくかうやすんだのはことながら、民也たみやは、それがゆめでなくとも、まで可恐おそろしいとも可怪あやしいともおもはぬ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
カクラサマとは以前は神々の旅をして休息したもうべき場所の名なりしが、その地につねいます神をかくとなうることとなれり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此邊このへん熱帶國ねつたいこくつねとて、年中ねんちうながいので、食後しよくご時間じかんばかりは大佐たいさをはじめ一同いちどう海邊かいへんでゝ戸外運動こぐわいうんどうふけるのである。
それに、彼が再び包む時にチラと見た所によると、額の表面に描かれた極彩色の絵が、妙に生々しく、何となく世のつねならず見えたことであった。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その重さこそつねづね尋ねあぐんでいたもので、疑いもなくこの重さはすべての善いものすべての美しいものを重量に換算して来た重さであるとか
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
かれくびにはちひさい腫物はれもの出來できてゐるので、つね糊付のりつけシヤツはないで、やはらかな麻布あさか、更紗さらさのシヤツをてゐるので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
現身うつしみの人のひじり現身うつしみの鳥の雀と、雀とフランチエスコと、朝夕に常かくなりき。あなあはれ、世のつねの事にはあらずよ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
諸外國しよぐわいこく事情じじやうこと/″\あたまなかれてかんがへなければならぬのであつて、もつと見通みとほしのにくいものである。それでつね商賣人しやうばいにんるゐきたすものである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
し、ひと各々おの/\その仕事しごと專念せんねんなるときは』と公爵夫人こうしやくふじん咳嗄しわがれた銅鑼聲どらごゑつて、『世界せかいつねよりもすみやかに回轉くわいてんします』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
領主 つね足下おぬしをばたゞしいそうしんじてをったわ。……ロミオのしもべ何處いずこにをる? れは此儀このぎたいしてなんまうすぞ?
平岡ひらをか不在ふざいであつた。それをいた時、代助ははなしてゐやすい様な、又はなしてゐにくい様な変な気がした。けれども三千代の方はつねの通り落ちいてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
寢息ねいきもやがて夜着よぎえりしろ花咲はなさくであらう、これが草津くさつつねよるなのである。けれどもれては何物なにものなつかしい、吹雪ふゞきよ、遠慮ゑんりよなくわたしかほでゝゆけ!
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
箱根はこね伊豆いづ方面はうめん旅行りよかうするもの國府津こふづまでると最早もはや目的地もくてきちそばまでゐたがしてこゝろいさむのがつねであるが、自分等じぶんら二人ふたり全然まるでそんな樣子やうすもなかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いづれか此両策の一をりしなるべし、而るに後に聞く処にれば、沼田近傍はあめつねおうかりしに、利根山中日々晴朗せいろうの天気なりしは不可思議ふかしぎと云ふの外なし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
この流派のつねとして極端に陰影の度を誇張した区劃の中による小雨こさめのいと蕭条しめやか海棠かいどう花弁はなびらを散す小庭の風情ふぜいを見せている等は、誰でも知っている、誰でも喜ぶ
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
磨製石斧 磨製石斧とは細長ほそながくして其端そのはしを付けたる石器の稱へなり。大小不定だいせうふていなれど長さ五六寸ばかりをつねとす。刄は殆と悉皆一端のみにりと云つて可なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あれほどつね平生へいぜい船を大事にする濱の人たちも、それを見ながら誰一人どうしようといふ者がなかつた。
樹木とその葉:34 地震日記 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
秀才は自分で長山ちょうざんの張という者であるといった。秀才はその時詩を作って贈別してくれた。その詩の中に、「花有り酒有り春つねに在り。月無し無し夜おのずから明らか」
考城隍 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
べつに怨恨えんこんなどいだいてはいないのだとこたえたが事実じじつとしては青流亭せいりゅうてい女将おかみおなじく、いつもよるになつてから老人ろうじんたずねるのがつねで、あるとき、ひどくはげしい口調くちょう
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
妹たちの学校に行ったあとでも、苔香園たいこうえんばあさんに言葉をかけておいて家を明ける事はつね始終だった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
と美奈子が良人をつとの広い机の端に、妊婦のつねとして二階の上下あがりおり目暈めまひがするその額を俯伏うつぶして言つた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
かりにも此方こちらは美男の聞えの隠れもない平中である。大概な女は彼だと分れば訳もなくなびいてしまうのがつねで、今度のように手きびしい扱いをした者は一人もなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
天滿與力てんまよりきはそれからけふ木綿もめんものの衣類いるゐ仕立したてさせるやら、大小だいせうこしらへをへるやら、ごた/\と大騷おほさわぎをしたが、但馬守たじまのかみは、キラ/\とつね彼等かれらうへひかつて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
朝日新聞社員あさひしんぶんしやゐん横川勇次氏よこかはゆうじしを送らんと、あさ未明まだきおきいでて、かほあらも心せはしく車をいそがせて向島むかふじまへとむかふ、つねにはあらぬ市中しちうにぎはひ、三々五々いさましげにかたふて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
別にたいして話をしているようでもないのに、叔母はなかなかその部屋からは出て来ないのがつねだった。私はこまちゃくれた好奇心にそそられないわけには行かなかった。
いにしへの神の時より逢ひけらし今の心もつねおもほえず(常不所念。常わすられず) (巻十三)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
つねにしたひむつべるともにしあればことにうれしくてなほつがののいやつぎ/\にたゆみなく千枝ちえ八千枝やちえにしげりて木高こたかきかげとなりたまはんことをかつはしゆくしてたゝ一言ひとこと
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
無盡藏むじんざう自然しぜんふところから財貨ざいくわ百姓ひやくしやうかならず一あたへられるあき季節きせつれば、財貨ざいくわたもつたはたけ穗先ほさきこれねたむ一自然現象しぜんげんしやうたいしてつね戰慄せんりつしつゝかついた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにひとつ心願しんがんなんぞのありそうもない、五十をした武家ぶけまでが、雪駄せったをちゃらちゃらちゃらつかせてお稲荷詣いなりもうでに、御手洗みたらし手拭てぬぐいは、つねかわくひまとてないくらいであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
友の思想と自分の思想とはつねほとんど同じで、其の一方の感ずることはやがまた他方たほうひとしく感ずる處であるが、いま場合ばあひのみは、私はたゞち賛同さんどうの意をひやうすることが出來なかツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その子成人ののち、命なりけり小夜の中山とつねに口ずさみ、諸国をめぐつてついに池田の宿にてかの盗賊のかたきにであひ、親のかたきをやす/\と討ちしとぞ。そのしょうつまびらかならず
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
一体斯様な事をいう手前などはな主人をつね思わんからだ、主人を思わん奴が偶々たま/\胸に主人の為になる事をうかぶと、あゝ忠義な者じゃとみずから誇る、家来が主人を思うは当然あたりまえの事だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
玄関にはいると、つねが一人私を出迎えた。私は一種の物足りなさを感じた。
生と死との記録 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
巌谷いはや紹介せうかいで入社したのが江見水蔭えみすゐいんです、この人は杉浦氏すぎうらし称好塾せうこうじゆくける巌谷いはや莫逆ばくぎやくで、素志そしふのが、万巻ばんくわんの書を読まずんば、すべから千里せんりの道をくべしと、つねこのんで山川さんせん跋渉ばつせふ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)