大切たいせつ)” の例文
こと大切たいせつ御病人ごびょうにんいのちたすけようとしておいでのとき、ほかの人間にんげんいのちるというのは、ほとけさまのおぼしめしにもかなわないでしょう。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたくしみぎ懐剣かいけん現在げんざいとても大切たいせつ所持しょじしてります。そして修行しゅぎょうときにはいつもこれ御鏡みかがみまえそなえることにしてるのでございます。
とき勘次かんじもおしなはら大切たいせつにした。をんなが十三といふともうやくつので、與吉よきちそだてながら夫婦ふうふは十ぶんはたらくことが出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
細工さいく流々りゅうりゅう仕上しあげ御覧ごらん」というが、物件ぶっけんならば、できた仕事で用にたつが、人間はそうはいかぬ。細工さいくする間の心持ちが大切たいせつである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そへ種々いろ/\禮物れいものおくりけるゆゑ五八はにはか分限ぶげんとなり何れも其家々そのいへ/\繁昌はんじやうなせし事實に心實しんじつほど大切たいせつなるものはなしと皆々感じけるとなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
第一だいいちに、青々あを/\した、といふものは、植物しよくぶつにとつては一番いちばん大切たいせつで、ちょうどわれ/\の心臟しんぞうちようのような、生活上せいかつじよう必要ひつよう器官きかんです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
大切たいせつことなんですから。もしか御覽ごらんなすつたら、かまひません、——つてください、たと、貴女あなたたと……かまはないからつてください。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ればその栄誉えいよもっぱらにし敗すればその苦難くなんに当るとの主義をあきらかにするは、士流社会の風教上ふうきょうじょう大切たいせつなることなるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下敷したじきになつたひとたすすことは震災しんさい防止上ぼうしじようもつと大切たいせつなことである。なんとなれば震災しんさいかうむ對象物中たいしようぶつちゆう人命じんめいほど貴重きちようなものはないからである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
カピューレットどの、わしいまカピューレットといふその名前なまへ我名わがな同樣どうやう大切たいせつおもうてゐる、まゝ、堪忍かんにんさっしゃれ。
もうけしこゝろまへさま大切たいせつなほどおあんじ申さずにはりませぬをいまはしやなにごとぞ一生いつしやう一人ひとりおくるのんでおもひを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かねとか、学問がくもんとかいうことより、なによりみんながただしいかんがえをもつ人間にんげんとなることが大切たいせつなんですね。」
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、この新石器時代しんせつきじだいになつてから、人類じんるい發明はつめいした大切たいせつ品物しなもの土器どきであります。土器どきといひますと粘土ねんどかたちつくつて、それをいたものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
なるほどぶはずです、そのきものというのはかえるで、みちばたの草原くさはらまで行こうと思っているのです。その草原はかえるさんのお国です。蛙さんには大切たいせつなお国です。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
かれきはめてかたくなで、なによりも秩序ちつじよふことを大切たいせつおもつてゐて、自分じぶん職務しよくむおほせるには、なんでも其鐵拳そのてつけんもつて、相手あいてかほだらうが、あたまだらうが、むねだらうが
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぽっとかつらをかぶった故人菊五郎の与次郎が、本物の猿を廻わしあぐんで、長いつえで、それ立つのだ、それ辞義じぎだと、が物好きから舞台面の大切たいせつな情味を散々に打壊ぶちこわして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
林「うむ、少しは疵も付いたろう、自業自得じごうじとくだ、誰をうらむところがあるか、神妙にお縄を頂戴しろえ、これ友之助、大切たいせつな御用だぞ、かみへお手数てすうの掛らねえように有体ありていに申上げろよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ばあさんもこのたいそううつくしいのをよろこんで、かごなかれて大切たいせつそだてました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しんの心は、要らないどころか、大事だいじで大事でならないものを、うるさいなどゝあんまり世間並せけんなみなことを仰言るな、あなたのめぐまれた母の愛を、なほこのうへとも眞面目まじめにお大切たいせつになさいまし。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
春重はるしげかたわらにいたべに糠袋ぬかぶくろを、如何いかにも大切たいせつそうに取上とりあげると、おもむろに口紐くちひもいて、十ばかりのつめてのひらにあけたが、そのままのたぎる薬罐やかんなかへ、一つ一つ丁寧ていねいにつまみんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それがございましたので、はじたゞ骨惜ほねをしみをしない、親切しんせつ同宿どうしゆくだとぞんじてゐました豐干ぶかんさんを、わたくしども大切たいせつにいたすやうになりました。するとふいとつてしまはれました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なにわたくしからふと、じつはあの文庫ぶんこはうむし大切たいせつしなでしてね。祖母ばゞむか御殿ごてんつとめてゐた時分じぶんいたゞいたんだとかつて、まあ記念かたみやうなものですから」とやうこと説明せつめいしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おどろいたことには、とらのやうに大切たいせつにしてゐるウェルスの手紙てがみなどれた折鞄をりかばんのなかから、黒髪くろかみたば短刀たんたうとが、かみにくるんで、ひもいはへられたまゝ、竹村たけむらまへ引出ひきだされたことであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかし、彼女かのじょは兄をやさしく愛していたし、兄も口には出さないが彼女を大切たいせつにしていた。彼等は二人ふたりきりでほかに身寄みよりものもなかった。二人ふたりとも生活のためにひどく苦労くろうして、やつれはてていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
とうさんが子供こども時分じぶんからみづといふものを大切たいせつおもひ、ずつとおほきくなつてもみづながれてるのをるのがきで、みづおとくのもきなのは、うしてみづ不自由ふじいう田舍ゐなかうまれたからだとおもひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かなり大切たいせつにして金魚きんぎょうつもりだつてことはわかりました。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
なににしろ婦女おんな亀鑑かがみとしてられた御方おかた霊場れいじょうなので、三浦家みうらけでも代々だいだいあそこを大切たいせつ取扱とりあつかってたらしいのでございます。
ついでですが、みなさんはばかりでなく、そこいらのまちなかにある樹木じゆもく大切たいせつにしてえだつたりしないようにしてくださらなければいけません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
家内安全かないあんぜん、まめ、そくさい、商賣繁昌しやうばいはんじやう、……だんご大切たいせつなら五大力ごだいりきだ。」と、あらうことか、團子屋だんごや老爺とつさまが、今時いまどきつてめた洒落しやれふ。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汝等が執持とりもち致せしも同前なりしかるに九助は其等の儀をいからずして速かに離別に及び父が遺言ゆゐごんおもんじ不埓ふらちの伯父女房等に大切たいせつの金子を配分はいぶんいたし遣たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かかる大切たいせつの場合にのぞんでは兵禍へいかは恐るるにらず、天下後世国を立てて外に交わらんとする者は、努〻ゆめゆめわが維新いしん挙動きょどうを学んで権道けんどうくべからず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
終期部しゆうきぶ地震動ぢしんどう餘波よはであつてあま大切たいせつなものではないが、初期微動しよきびどう主要部しゆようぶとはきはめて大切たいせつなものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
れはごく大切たいせつうたにてひとすべきではけれど、若樣わかさまをおたせまうしたく、ほかひと内證ないしよにて姉樣ねえさまばかりに御覽ごらんたまへ、はやく、内證ないしよで、姉樣ねえさまにおげなされ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なかにはながさが一寸いつすんぐらゐもない、ちひさいうつくしいいしつくつたをのがありますが、それは實際じつさいやくつものとはおもはれません。多分たぶん大切たいせつ寶物ほうもつるいであつたのでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そのわりこんどは和尚おしょうさんにたのんで、ただのちゃがまのようにいろりにかけて、火あぶりになんぞしないようにして、大切たいせつにおてら宝物ほうもつにして、にしき布団ふとんにのせて
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かれきわめてかたくなで、なによりも秩序ちつじょうことを大切たいせつおもっていて、自分じぶん職務しょくむおおせるには、なんでもその鉄拳てっけんもって、相手あいてかおだろうが、あたまだろうが、むねだろうが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わしたまやりるは、ひめかほようがためでもあるが、それよりもひめけたたふと指輪ゆびわある大切たいせつよう使つかはうため取外とりはづしてるのがおも目的もくてきぢゃによって、はやね。
ほんとに大切たいせつおもいつきなら、けっして、わすれることはないはずだといったのでした。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
此の世の中の手形同様に取遣とりやりをするだけの物とかんげえます、金だって銀だって人間程大切たいせつな物でなえから、おかみでも人間を殺せば又其の人を殺す、それでもお助けてえと思う心があるので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けつして失望しつばうなさること御座ございません。たゞ熱心ねつしん大切たいせつです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからのわたくしえず竜宮界りゅうぐうかいこと乙姫様おとひめさまことばかりかんがむようになり、わたくし幽界生活ゆうかいせいかつひとつ大切たいせつなる転換期てんかんきとなりました。
のばして貰ひし恩義おんぎは城重のかげあらうな然れば師匠ししやうなり義理有る養父なり實父よりは猶更大切たいせつに致さねば相成まじ然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たがひ身體しんたい丈夫じようぶでなければ何事なにごと出來できませんから、あたらしい空氣くうき呼吸こきゆうと、十分じゆうぶん日光浴につこうよくと、運動うんどうとによつて食物しよくもつをうまくべることが一番いちばん大切たいせつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うせものがしたところで、そんなにさわぐにはあたるまいとおもつた。が、さてくと、いやうして……色紙しきし一軸いちぢくどころではない。——大切たいせつ晩飯ばんめしさいがない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
めづらしく家内中うちゞうとのれになりけり、このともうれしがるは平常つねのこと、父母ちゝはゝなきのちたゞ一人の大切たいせつひとが、やまひのとこ見舞みまこともせで、物見遊山ものみゆさんあるくべきならず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其故それゆゑ地震ぢしん豫知問題よちもんだい研究けんきゆうおいみぎのような副原因ふくげんいん研究けんきゆうすることも大切たいせつであるが、しかしながら事實上じじつじよう問題もんだいとして引金ひきがね空外からはづしともいふべき場合ばあひすこぶおほいことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
古墳こふんをやたらにつたりすることはわるいことでありますが、なにかの拍子ひようしこはれたりして、なかからものときには大切たいせつにこれを保存ほぞんし、丁寧ていねいにこれを調しらべなくてはなりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それから和尚おしょうさんの大切たいせつにしているちゃわんを、わざとっ二つにって、自分じぶん布団ふとんをかぶって、うんうんうなりながら、いまにもにかけているようなふりをしていました。
和尚さんと小僧 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「あのとき、おれがひろってやれば、一ぴきにしろいぬいのちたすかったのだ。一ぽん洋傘こうもりより、ものいのちのほうが、どれほど大切たいせつかしれないのだ。」と、正直しょうじきおとこだけにさとったのでした。
犬と古洋傘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
カピ妻 では、機嫌きげんよう、とこいておやすみ、それがなによりも大切たいせつぢゃほどに。