さふらふ)” の例文
御免蒙ごめんかうむらう。昨日まで親友でさふらふの何のと云つて居ながら、詰らない愚にも付かぬ瑣小事させうじで直ぐ絶交騒ぎだ。成程、僕は我儘だつたよ。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
「さればにてさふらふ別段べつだんこれまをしてきみすゝたてまつるほどのものもさふらはねど不圖ふと思附おもひつきたるは飼鳥かひどりさふらふあれあそばして御覽候ごらんさふらへ」といふ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十二時に近き頃より波の起伏おきふしのせはしくおどろしくなり申しさふらひしか、食事に参るとて安達夫人私の手をとりて甲板かふばんをおおろし下されさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「エレベータとエスカレータの研究のため急に東京に参りさふらふ、御不便ながら研究すむうちあの請負の建物はそのまゝお使ひ願ひ候」
革トランク (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
小生は勿論「けふの自習課題」の作者に芸術的嫉妬しつとを感じさふらふ。然れども恍惚くわうこつたる少女の顔には言ふからざる幸福を感じ候。
伊東から (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何時いつともいてないがね。なにしろとほからぬうちには歸京ききやうつかまつるべくさふらふあひだいてあるから、もうぢきかへつてるんだらう」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
むぎ一箱、いゑのいも(里芋さといも)一かご、うり一籠、はたもの、六月三日に給ひ候ひしを、今迄御返事申候はざりし事恐入おそれいりさふらふ
御主意ごしゆい御尤ごもつともさふらふ唱歌しやうかおもまりさふらふあさましいかな教室けうしつさふらふしたがつてこゝろよりもかたちをしへたく相成あひなかたむ有之これあり以後いご御注意ごちゆうい願上候ねがひあげさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其庵の側に一つのさゝやかなる新塚あり、主が名は言はで、此の里人は只〻戀塚こひづか々々と呼びなせり。此の戀塚のいはれに就きて、とも哀れなる物語のさふらふなり
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いろ/\の抱負もさる事ながら、一人前ひとりまへに自分の口をのりすることが先決問題かと被存候ぞんぜられさふらふ。この頃つく/″\その様な事を考へるやうに相成あひなさふらふ。(後略)
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
昨日は、参内さんだい候て、ことに申し沙汰、ひとしほ忘れがたく思ひ給ひ候。終日、みこころを慰まれ候事、つくし難く候。上洛候折りふしは、再々さいさい、待ちおぼめしさふらふ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の御方を母とし、御前様おんまへさまを夫と致候て暮し候事も相かなひ候はば、私は土間にね、むしろまとさふらふても、其楽そのたのしみぞやと、常に及ばぬ事をこひしく思居りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ねえさん、にいさんがさう云ひましてね、お逢ひ致さずさふらふと書いて玄関へ張つたのですよ。もう安心ですわ。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
翌日よくじつ牛込改代町うしごめかいたいちやうたふさふらふせつは、ぜに貫文くわんもん海苔鮨のりずしぼんそれより午過ひるすぎ下谷上野町したやうへのまちたふさふらふせつたゞきう
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「この度の吟味は、人間の皮をかぶりさふらふ者にては出来申さず……」と書いてゐる位ひどかつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
締めたまゝ脱け出すのは、八五郎親分にはむづかしからう——つてね。すると、鈴川の主人の良い男の主水とか言ふのが、ウハツハツハツハと『にてさふらふ』の調子で笑ひましたよ
それでも原田の妻と言はれたいか、太郎の母でさふらふと顔おしぬぐつてゐる心か、我身ながら我身の辛棒がわかりませぬ、もうもうもう私は良人つまも子も御座んせぬ嫁入せぬ昔しと思へばそれまで
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この浮世から手を洗ふべくさふらふ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
駿馬しゆんめ威徳ゐとく金銀こんごんさふらふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
頼みかくまおき候と相見え候然すれば藤五郎樣御兄弟は須田町一丁目なる陸尺の七右衞門の方にかくまひ置くにまぎれ御座なくさふらふとしたり顏にて言ひければ主税之助大いに喜び成ほど其方が穿鑿せんさくよくも行屆きたり扨々にく奴輩やつばらかな此儘捨置すておく時は事の破れなれば假令たとへ病氣なりとも直樣すぐさま惣右衞門めを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いや、なにまをうちに、ハヤこれはさゝゆきいてさふらふが、三時さんじすぎにてみせはしまひ、交番かうばんかどについてまがる。このながれひとつどねぎあらへり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼処かしこにて恋人のふみる人もあるべしなど、あやにくなることの思はれさふらて、ふと涙こぼさふらふなど、いかにもいかにも不覚なるわたくしさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
秀林院しうりんゐん様(細川越中守忠興ただおきの夫人、秀林院殿華屋宗玉大姉くわをくしゆうぎよくだいしはその法諡ほふしなり)のお果てなされさふらふ次第のこと。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日まで懕々ぶらぶら致候いたしさふらふて、唯々なつかし御方おんかたの事のみ思続おもひつづさふらふては、みづからのはかなき儚き身の上をなげき、胸はいよいよ痛み、目は見苦みぐるし腫起はれあがり候て、今日は昨日きのふより痩衰やせおとろ申候まをしさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
就中なかんづく、夫婦共に法華ほつけ持者ぢしやなり。法華經流布るふあるべきたねをつぐ所の、玉の子出生、目出度覺候ぞ。色心二法しきしんにほふをつぐひとなりいかでかをそなはりさふらふべき。とくとくこそうまさふらはむずれ。
れでも原田はらだつまはれたいか、太郎たらうはゝさふらふかほおしぬぐつてこゝろか、我身わがみながら我身わがみ辛棒しんぼうがわかりませぬ、もう/\もうわたし良人つま御座ござんせぬ嫁入よめいりせぬむかしとおもへばれまで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
新聞記者の二三人が来て帰つたあとで清とお照は相談をひそひそとして居たが、それから清はお照の持つて来た硯で、紙にお逢ひ致さずさふらふと書いた。それをお照が御飯粒で玄関の外へ張つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
東京とうきやうにも歌人うたよみ大家先生たいかせんせい澤山たくさんあれど我等われらのやうに先生せんせい薫陶くんたう大島小學校おほしませうがくかうもんまなさふらふものならで、我等われら精神感情せいしんかんじやう唱歌しやうかうたいだるものるべきや、はなは覺束おぼつかなく存候ぞんじさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あゝら有難ありがた我身わがみさふらふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
やがて退しさりて、つかへ、は、は、申上まをしあたてまつる。おうなんとぢや、とお待兼まちかね。名道人めいだうじんつゝしんで、微妙いみじうもおはしましさふらふものかな。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
足音などあるひは聞き給ひけん。もすがら眠らず、前の甲板かふばんの朝掃除の音をそれと聞きしのち、私は火の山見るべく甲板かふばんのぼさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
或は少し感じた通りに書きさふらふと云ふ気味があるかも知れず。されど珍品は珍品なり。こんな文章を書く人はほか一人ひとりもあるまい。読んでい事をしたりと思ふ。(八月二十日)
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若童うまれさせ給由承候たまひしよしうけたまはりさふらふ。目出たく覺へさふらふまことに今日は八日やうかにてさふらふも、かれいひこれいひ所願しよぐわんしほ(潮)の指す如く、春の野に華の開けるが如し。然れば、いそぎいそぎをつけたてまつる。
さりながら、何程思続け候とても、水をもとめていよいほのほかれ候にひとし苦艱くげんの募り候のみにて、いつ此責このせめのがるるともなくながらさふらふは、孱弱かよわき女の身にはあまりに余に難忍しのびがたき事に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御依頼ごいらい唱歌しやうかけん我等われら三人さんにんとも同意どういいたさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かしまじき御使者おんししやさふらふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
オヽおもしろし覺悟かくごとはなん覺悟かくご許嫁いひなづけ約束やくそくいてしゝとのおのぞみかそれは此方このはうよりもねがことなりなんまはりくどい申上まをしあぐることのさふらふ一通ひととほりも二通ふたとほりもることならずのちとはいはずまへにてれてるべしれてらん他人たにんになるは造作ぞうさもなしと嘲笑あざわらむねうちくは何物なにもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おほせまでもさふらはず、江戸表えどおもてにて將軍しやうぐん御手飼おてがひ鳥籠とりかごたりとも此上このうへなんとかつかまつらむ、日本一につぽんいちにてさふらふ。」と餘念よねんていなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なん武器ぶきなどのさふらふべき
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
坐頭ざとういて、はしむかし聖徳太子しやうとくたいし日本につぽん六十余州よしうへ百八十のはし御掛おかけなされしうちにてさふらふよしつたへうけたまはりさふらふまことにてさふらふや、とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幼君えうくん其時そのとき「これにてよきか」とものたづねたまへり。「天晴あつぱれ此上このうへさふらふ」と只管ひたすらたゝへつ。幼君えうくんかさねて、「いかになんじこゝろかなへるか、」
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、いさんだのさふらふの、瓜井戸うりゐどあねはべたりだが、江戸えどものはコロリとるわ、で、葛西かさいに、栗橋北千住くりはしきたせんぢゆどぢやうなまづを、白魚しらをつて、あごでた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、いさんだのさふらふの、瓜井戸うりゐどあねえは、べたりだが、江戸えどものはころりとるわ、で、葛西かさいに、栗橋くりはし北千住きたせんぢゆ鰌鯰どぢやうなまづを、白魚しらうをつて、あごでた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りながら、君主との無禮なめなるにはさふらへども、ひめ殿との夫人ふじんとならせたまふまへに、餘所よそをつとさふらふぞや。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一度いちどつてようようで、まだかけたことのない堀切ほりきりへ……いそさふらふほどに、やがてくと、きぞわづらはぬいづれあやめが、はゞかりながらばかりでびてた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときふゆ小春日こはるびかへざきにもあや何處いづこにかたる。昌黎しやうれいきつおもてにらまへてあり。韓湘かんしやう拜謝はいしやしていはく、小姪せうてつ藝當げいたうござさふらふりてしよまずまたまなばざるにてさふらふ
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お村殿には御用人何某と人目を忍ばれさふらふ」とあざむきければ、短慮無謀の平素ひごろを、酒に弥暴いやあらく、怒気烈火のごとく心頭に発して、岸破がば蹶起はねおき、枕刀まくらがたな押取おつとりて、一文字に馳出はせい
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かしこまつてさふらふと、右左みぎひだりから頸首えりくびつてのめらせる、とおめかけおもておほうたとき黒髯くろひげまゆひそめて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處そこ薄汚うすよごれたしたぐつつて、かたからひさしへ、大屋根おほやね這上はひあがつて、二百十日にひやくとをかかたちで、やつとこな、と帽子ばうしつかむと、したやつ甜瓜まくはかじりにくつつかんで、一目散いちもくさん人込ひとごみなかへまぎれてさふらふ
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のほか色々いろ/\うたはべるよしうけたまはさふらふふ。——物語ものがたり優美いうびうち幻怪げんくわいあり。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)