黄色きいろ)” の例文
かれは、懐中かいちゅうから、スケッチちょうして、前方ぜんぽう黄色きいろくなった田圃たんぼや、灰色はいいろにかすんだはやし景色けしきなどを写生しゃせいしにかかったのであります。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいはその手の指の先に(ニコティンは太い第二指の爪を何と云う黄色きいろに染めていたであろう!)おりに折られた十円札が一枚
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一二月いちにがつころのような小枝こえだに、黄色きいろはなけたり、また蝋梅ろうばいのようにもっとはやゆきなかかをりたかくほこるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それに、目を見れば、おそろしくなるばかりです。それは黄色きいろくて、そのうしろに火がもえてでもいるように、キラキラとかがやいています。
黄色きいろひかりこゝろよくあざやかに滿ちて晩秋ばんしうみづのやうなあはしもひそかにおりる以前いぜんからこと/″\くくる/\と周圍しうゐまくはじめて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
石疊いしだたみ穿下ほりおろした合目あはせめには、のあたりにさんするなんとかいふかに甲良かふら黄色きいろで、あしあかい、ちひさなのが數限かずかぎりなくむらがつてうごいてる。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
菫色の薔薇ばらの花、こじけた小娘こむすめしとやかさが見える黄色きいろ薔薇ばらの花、おまへの眼はひとよりも大きい、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
うですあつたかいうちに」と主人しゆじんつたので、宗助そうすけはじめてこの饅頭まんぢゆうしてもないあたらしさにいた。めづらしさうに黄色きいろかはながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うちそとあるまはつても、石垣いしがきのところには黄色きいろ木苺きいちごつてるし、竹籔たけやぶのかげのたか榎木えのきしたには、かんばしいちひさなちてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
口ぎたなくののしる声といっしょに、ぼーっとマッチのもえる音がして、黄色きいろなろうそくの光がゆらいだ。
そして、黄色きいろをムキだして、ゲタゲタと笑いながら、竹童の顔を、かたごしにのぞくようにしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさか医者の家へなんか集まっていることもあるまいが、ともかくのぞいてみようと思って、黄色きいろい葉のまじった豆畑のあいだを、徳一とくいち君の家の方へやっていった。
久助君の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
藍は藍がかりし雪の色(即ち明快なる藍)および空の黒さ(即ち濁りし藍)及び桃花とうかを照す月色げっしょく(即ち紅味を帯びたる藍)なり。黄色こうしょく蜂蜜はちみつの色(即ちあかる黄色きいろ)の如し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
見返みかへると、くろ黄色きいろしまのある大柄おほがらはちで、一たかあがつたのがまたたけ根元ねもとりてた。と、地面ぢべたから一しやくほどのたかさのたけかはあひだ蜘蛛くも死骸しがいはさんである。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
藻岩山さうがんざん紫色しゝよくになつてえるだらうとおもひますの、いまころはね、そして落葉松からまつ黄色きいろくなつて、もうちかけてるときですわね。わたしあの、藻岩山さうがんざんに三のぼつたことがあるんですわ。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
とびら表面ひやうめんには黄色きいろのペンキで「海底戰鬪艇かいていせんとうてい生命せいめい」なる數字すうじしるされてあつた。
あれは密柑みかんだ。梅「あの色はなんふんです。近「黄色きいろいてえのだ。梅「へえゝ……密柑みかんにはちがつたのがりますなア、かう細長ほそながいやうな。近「フヽヽあれは乾柿ころがきだ。梅「乾柿ころがき、へえゝあれは。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
むかし、ふくろうというとりは、染物屋そめものやでした。いろいろのとりがふくろうのところては、あかだの、あおだの、ねずみいろだの、るりいろだの、黄色きいろだの、いろいろなきれいないろからだめてもらいました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まだ黄色きいろ下葉したば裏葉うらば、あれも程なく枯れるであらう。ああ、秋もふけたと見てゐるうちに、もう褪せかけて、風もないのにはらはらと散る紅葉もある。それも寂しい私達には恰度程よい寂しさだ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きやしやな黄色きいろ椅子いすの前
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
きらめく林の黄色きいろい日
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
まつ黄色きいろ
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
金魚鉢きんぎょばちにいれてあるすいれんが、かわいらしい黄色きいろはなひらきました。どこからんできたかちいさなはちがみつをっています。
すいれんは咲いたが (新字新仮名) / 小川未明(著)
一階目いつかいめゆかは、いまよぎつたに、とびらてまはしたとるばかりひろかつた。みじかくさ処々ところ/″\矢間やざまひと黄色きいろつきで、おぼろおなじやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みじかふゆはもうちかけて黄色きいろひかり放射はうしやしつゝ目叩またゝいた。さうして西風にしかぜはどうかするとぱつたりんでしまつたかとおもほどしづかになつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夜更よふけの往来はもやと云うよりも瘴気しょうきに近いものにこもっていた。それは街燈の光のせいか、妙にまた黄色きいろに見えるものだった。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くきうへ黄色きいろ五瓣ごべんはなをつけるみやまだいこんや、はゝこぐさにしろふらんねるのようなつてゐるみやまうすゆきそうなどえます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
同僚どうれう小形こがた黄色きいろ表紙へうし宗助そうすけまへして、こんなめうほんだとこたへた。宗助そうすけかさねてんなこといてあるかとたづねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
黄色きいろい、いなか道や、ぴかぴかした鉄道線路てつどうせんろや、青い運河うんがなどが、村々のあいだを、いとりしたように走っていました。
ナニ、あをいんでもかまひませんが、なるなら黄色きいろはうがいゝ。むぎじゆくするほど丈夫ぢやうぶですからね。このほそ麥藁むぎわら穗先ほさきはうかるつておきなさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かべには春画しゆんぐわめいた人物画じんぶつぐわがくがかゝつて、其下そのした花瓶くわびんには黄色きいろ夏菊なつぎくがさしてある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その四かく彼女かれいてる硝子窓がらすまどからは、黄色きいろ落葉松からまつはやしや、紫色むらさきいろ藻岩山さうがんざんえて、いつもまちこしをおろしてなみだぐむときは、黄昏たそがれ夕日ゆふひのおちるとき硝子窓がらすまどあかくそまつてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
猛惡まうあくなるさる本性ほんしやうとして、容易ようゐさない、あだかあざけごとく、いかるがごとく、その黄色きいろあらはして、一聲いつせいたかうなつたときは、覺悟かくごまへとはいひながら、わたくしあたまから冷水ひやみづびたやう戰慄せんりつした
そのとき黄色きいろちょうが一つごんごろがねをめぐって、土塀どべいそとえていった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
長く長く抱擁はうえうしたるあとの黄色きいろなる興奮こうふんに似て
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
明るい黄色きいろの日があたる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ともだちは、ふところからかきをして、少年しょうねんわたしました。二人ふたり子供こどもは、かわいた往来おうらいうえで、黄色きいろ果実かじつってたのしそうにあそんでいました。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
しか今度こんどのは半分はんぶん引切ひききつてあるどうからばかりのむしぢや、切口きりくちあをみびてそれ黄色きいろしるながれてぴくぴくとうごいたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
河楊かはやなぎせて、あかかくした枸杞くこえだがぽつさりとれて、おほきなたで黄色きいろくなつてきしふねはがさりとへさきんだのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さてうめはなをはりとなり、日毎ひごとかぜあたゝかになりますと、もゝ節句せつくもゝはな油菜あぶらなはながさきます。はたにはたんぽゝが黄色きいろくかゞやいてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
代助はそれを見た時一寸ちよつといやな心持がした。つちれないにはいろ黄色きいろひかる所に、ながい草が見苦しくえた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うした言葉ことばつうじないつばめも、むられて、家々いへ/\のきをつくり、くちばしの黄色きいろ可愛かあい子供こどもそだてる時分じぶんには、大分だいぶ言葉ことばがわかるやうになりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その上不思議な事にこの画家は、蓊鬱おううつたる草木を描きながら、一刷毛ひとはけも緑の色を使っていない。あし白楊ポプラア無花果いちじゅくいろどるものは、どこを見ても濁った黄色きいろである。
沼地 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あいみどりむらさき及び黄色きいろを以てなされたるこの図の色調は全体に緑がかりたる支那陶器の模様を
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
めづらかにうち眺めたる……足もとの黄色きいろなる花
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あちらには、獰猛どうもうけものの、おおきいのごとく、こうこうとした黄色きいろ燈火ともしびが、無気味ぶきみ一筋ひとすじせんよる奥深おくふかえがいているのです。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あゝ、あの、手遊てあそびの青首あをくびかもだ、とると、つゞいて、さまそでしたけたのは、黄色きいろに、艶々つや/\とした鴛鴦をしどりである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二人はもう黄色きいろった科長室のドアの前に立っていた。藤田大佐は科長と呼ばれる副校長の役をしているのである。保吉はやむを得ず弔辞に関する芸術的良心を抛擲ほうてきした。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
書齋しよさいはしらにはれいごとにしきふくろれた蒙古刀もうこたうがつてゐた。花活はないけには何處どこいたか、もう黄色きいろはなしてあつた。宗助そうすけ床柱とこばしら中途ちゆうとはなやかにいろどるふくろけて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)