うら)” の例文
やぶれたるせん棋士きしけう中やはたして如何に? どんな勝負せうふ事もはい後に生くわつ問題もんだいうら附けるとなれば一そう尖鋭化せんえいくわしてくる事は明かだが
友染いうぜんきれに、白羽二重しろはぶたへうらをかさねて、むらさきひもくちかゞつた、衣絵きぬゑさんが手縫てぬい服紗袋ふくさぶくろつゝんで、そのおくつた、しろかゞや小鍋こなべである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
信吉しんきちは、あのひとたちも、もうこのまちってしまったとおもいました。よるになると、うら野菜圃やさいばたけで、うまおいのこえがきこえました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其晩そのばん宗助そうすけうらからおほきな芭蕉ばせうを二まいつてて、それを座敷ざしきえんいて、其上そのうえ御米およねならんですゞみながら、小六ころくことはなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女等をんならみな少時しばし休憩時間きうけいじかんにもあせぬぐふにはかさをとつて地上ちじやうく。ひとつにはひもよごれるのをいとうて屹度きつとさかさにしてうらせるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
東海道線とうかいだうせんやませんがつして鐵道線路てつだうせんろ右手みぎて臺地だいちがそれで、大井おほゐ踏切ふみきりからけば、鐵道官舍てつだうくわんしやうらから畑中はたなかるのである。
ある日ちょんさんは、お友達ともだちといっしょにうらあそんでいました。するうち、どうかしたはずみで、ちょんさんは井戸いどちました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
渡島國凾舘住吉町をしまのくにはこたてすみよしてう後志しりべし國余市川村、石狩いしかり空知監獄署用地ソラチかんごくしようようち日高ひだか捫別舊會所もんべつきうくわいじようら等よりは石鏃せきぞくを入れたるまま土器どき掘出ほりだせし事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
バルブレンの顔を見るとよけいに心配がもるばかりであった。その目つきからにげるためにわたしはうら野菜畑やさいばたけへかけこんだ。
そのときはもう、うらにまわった透明人間が、物置ものおきからさがしだした手斧ておので、ガンガン、台所だいどころのドアをたたきこわしてるところだった。
取上て見れば牡丹ぼたんの繪にうらには詩をかいて有り又此通り親骨おやぼねに杉田三五郎と記してあれば全く敵は三五郎に相違無さうゐなし是によつて先生に助太刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「もういちど、うらのお庭へ行って、じょろのうしろにかくれているとかげを六ぴき、見つけていらっしゃい。」といいました。
私たちは今年三度目どめ、イギリス海岸へ行きました。瀬川せがわ鉄橋てっきょうを渡り牛蒡ごぼう甘藍かんらんが青白いうらをひるがえすはたけの間の細い道を通りました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
尽日じんじつ北の風が吹いて、時々つめたいほそい雨がほと/\落ちて、見ゆる限りの青葉が白いうらをかえして南になびき、さびしいうらかなしい日であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ぬめを漉したやうな日光が、うらの藪から野菜畑、小庭の垣根などに、万遍なく差して、そこに枯れ/\に立つてゐる唐辛とうがらし真赤まつかいろづいてゐた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
在所の年寄仲間は、御坊さんのうら竹林たけばやしなかにあるぬまぬし、なんでもむかし願泉寺の開基が真言のちからふうじて置かれたと云ふ大蛇だいじやたヽらねば善いが。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
獨樂こま自分じぶん一度いちどまはるはすなは地球ちきう自轉じてんといふものにて、行燈あんどうかたむきたる半面はんめんひるとなり、うら半面はんめんとなり、この一轉ひとまはり一晝夜いつちうやとするなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
たぶんはく者にはっきりとひびくように、また話を長くおもしろくするために、うらおもてと両面から、ていねいに説く習わしがあったのであろう。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえ思想は絶対的であっても、これを言葉に発するときには、思想の上も下も、前も後も、おもてうらも、ことごとく同時に言い現すことは出来ぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うら田圃たんぼへ出て見るとおくはうの物置きの中に素裸体すつぱだかとしころ三十二三になるをとこ棒縛ぼうしばりになつてるのを見て、和尚をしやうおどろき、なか飛込とびこんでて、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
洋服の男がそれまで云いかけたところで軽いゴムうらの音がした。謙作はふと顔をあげた。前の隅のテーブルにいた女が帰りかけているところであった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
つぎの朝はいつもより早くきだして、しろ公をつれて家のうらの丘の上へのぼり、入江の方を見ていました。が、おっかさんはかえってきませんでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
みみのほくろはいうにおよばず、あしうら筋数すじかずまで、みたいときめやすが、きょうのはそうはめえりやせん。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
されば禅師の大徳、一五七雲のうら、海の外にも聞えて、一五八初祖しよその肉いまだ乾かずとぞ称嘆しけるとなり。
私共わたしどもはこのしゆ土器どき彌生式土器やよひしきどきんでをりますが、それは最初さいしよ東京とうきよう本郷ほんごう帝國大學ていこくだいがくうらところあた彌生町やよひちようにあつた貝塚かひづかから土器どきからつたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
と、白旗しらはたみやうらから、よろばいだした法師武者ほうしむしゃがある。こなたの混乱こんらんに乗じて、そこなる馬に飛びつくやいな、死にものぐるいであなたへむかって走りだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あしたは克巳が、町へ帰るという日の昼さがりには、三人でたらいをかついでうら山の絹池きぬいけにいきました。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こたへいはく、地気天に変格へんかくして雪となるゆゑ天のまるきと地のかくなるとを併合あはせ六出むつかどをなす。六出りくしゆつ円形まろきかたちうら也。
火鉢ひばちあかいのも、鐵瓶てつびんやさしいひゞきに湯氣ゆげてゝゐるのも、ふともたげてみた夜着よぎうらはなはだしく色褪いろあせてゐるのも、すべてがみなわたしむかつてきてゐる——このとし
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
こないだの關東かんとう大震災だいしんさいのときには、淺草あさくさ觀音かんのんのおどううらのいてふの片側かたがは半分はんぶんけても、半分はんぶん枝葉えだはのためにがおどうえうつるのをふせぎました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そのとき黒装束くろせうぞく覆面ふくめんした怪物くわいぶつが澤村路之助丈えとめぬいたまくうらからあらはれいでヽあか毛布けつとをたれて、姫君ひめぎみ死骸しがいをば金泥きんでいふすまのうらへといていつてしまつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
黒縮くろちりつくりでうらから出て来たのは、豈斗あにはからんや車夫くるまやの女房、一てうばかりくと亭主ていしが待つてて、そらよと梶棒かぢぼう引寄ひきよすれば、衣紋えもんもつんと他人行儀たにんぎようぎまし返りて急いでおくれ。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
少しうらたいらみて、長きところ五寸余り、幅は四寸ばかりにて、ところどころ高低ありて形を失い、裁ち割りて見るに、玉の性変じていたく色も乱れ、いまや腐れ出ずべきさまなり。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
せっかくの悪企わるだくみも水のあわになり定めし其奴そやつは案に相違していることでござりましょうほんにわたくしは不仕合わせどころかこの上もなく仕合わせでござります卑怯ひきょうな奴のうらき鼻を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
りこうぶった私の計略けいりゃくは、狼王ろうおうロボのためにすっかりうらをかかれてしまったのである。
軌道レール直角ちよくかく細長ほそなが茅葺くさぶき農家のうかが一けんあるうらやまはたけつゞいてるらしい。いへまへ廣庭ひろにはむぎなどをところだらう、廣庭ひろにはきあたりに物置ものおきらしい屋根やねひく茅屋くさやがある。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
お政はそこをおりていったが、うらのほうからすぐ長女の七つになるのをれてきた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たいぎんずることのすきひとで、うら僧院そうゐんでも、よるになるとぎんぜられました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いままで前面ぜんめんてゐた五月山さつきやまうらを、これからは後方うしろりかへるやうになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
聽衆てうしゆうあいちやんが毛蟲けむしに、『うら老爺ぢいさん』を復誦ふくせうしてかすだんになるまでは、まつたしづかにしてゐましたが、全然まるで間違まちがつたことばかりふので、海龜うみがめあきかへつて、『可笑をかしなこと』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
遠いところでんでいるのが、だんだん近くなって来て、ふとい声が耳のそばでひびくのを聞いた時に、清造は、はっとわれに返りました。気がついてみると、それは凧屋たこやの店のうらでした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
この人は我楽多文庫がらくたぶんこだいころすでに入社してたのであるが、文庫ぶんこには書いた物を出さなかつた、俳諧はいかい社中しやちう先輩せんぱいであつたから、たはむれ宗匠そうせうんでた、神田かんだ五十稲荷ごとふいなりうらんで
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此の相續人になツた資格のうらには、種馬たねうまといふ義務ぎむになはせられてゐた。それで彼が甘三四と]なると、もう其の候補者こうほじやまでこしらへて、結婚をまられた。無論周三は、此の要求を峻拒した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
遂々とう/\、おかみさんははらてて、それをすつかりうら竹藪たけやぶにすてました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「根岸の御隱殿ごいんでんうらの市太郎殺しの後日物語があるんで——」
それはういう次第しだいじゃ。すべてものにはおもてうらとがある。
そのうらの寂しい生活くらしをさしのぞくやうに
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
釣針はおもてからうらへ突き通っていた。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)