はこ)” の例文
それで、かれは、じっとして見守みまもっていました。ふねから、ひとがおりて、みぎわあるいて、ちいさなはこなみのとどかないすなうえにおろしました。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さうして座敷ざしきすみ瞽女ごぜかはつて三味線さみせんふくろをすつときおろしたとき巫女くちよせ荷物にもつはこ脊負しよつて自分じぶんとまつた宿やどかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ところが、そのはこはしずまないで、小舟こぶねのように、ぷかぷかうかんでいきました。そして、なかには水一てきはいりませんでした。
でも、それは、大きなはこを二つ三つ、すみっこに置くためだったのです。おかげで、モミの木は、すっかりかくれてしまいました。
といいながら、はこをあけますと、中からかわいらしいお人形にんぎょうさんやおもちゃが、たんと出てきました。むすめはだいじそうにそれをかかえて
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
てこら」とホモイのお父さんがガラスのはこおさえたので、きつねはよろよろして、とうとうはこいたままげて行ってしまいました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あのふさふさと巻いたかみが、あのせまくるしいはこの中に納められて、じめじめした地下のやみのなかにねむっているところを心にえがいた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
祖母おばあさんのかぎ金網かなあみつてあるおもくらけるかぎで、ひも板片いたきれをつけたかぎで、いろ/\なはこはひつた器物うつはくらから取出とりだかぎでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
といふ話をきいたことがあるが、今の自分はちようど高あつ電流の通ふはこの中にぢこめられた人間の樣なものであるとかんがへた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
饂飩うどん屋のガラスのはこの中にある饂飩の玉までがあざやかである。往来には軒先にむしろいたり、を置いたりして、それに消炭けしずみしてある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あけて内より白木しらきはこ黒塗くろぬりの箱とを取出し伊賀亮がまへへ差出す時に伊賀亮は天一坊に默禮もくれいうや/\しくくだんはこひもとき中より御墨附おんすみつきと御短刀たんたうとを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いえ、親分。そんなことをしたら、曲者は姿を隱して了ひます。私一人なら、馬鹿にしてこのはこを取る氣にもなりませう」
かくしてくにも、なんなかも、どんなはこ安心あんしんならず……じやうをさせば、此處こゝ大事だいじしまつてあると吹聽ふいちやうするも同一おなじります。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と云ふ風にふやして行つた結果、今では何でも六はこか七はこある。其うちの一箱ひとはこを年に一度いちどづゝ石から卸して蜂のために蜜を切り取ると云つてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とく國府津こふづどまりはこが三四りやう連結れんけつしてあるので紅帽あかばう注意ちゆういさいはひにそれにむとはたして同乘者どうじようしや老人夫婦らうじんふうふきりですこぶすいた、くたびれたのと
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「それではね、いちごを二はこと、それからなにかめずらしいものがあったら、いつものくらいずつ、とどけてくださいな。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
またこれらのはかからたくさん漆器しつきさかづきぼんはこなどがましたが、その漆器しつきには、これをつくつたとき年號ねんごうつくつた人達ひとたちこまかくりつけてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
少年は、すみっこのはここしかけて、たいくつまぎれに、わざと口から白い湯気をはいておもしろがっているが、じつは、何か食べたくてしようがないのだ。
それにぶあつな本をおしこんだはこが数えきれないほど、そのほかにもえたいのしれぬ荷物にもつが山とつまれている。
ただ、エレベエタアを一緒のはこで、身体からだれ合って降りたときと、挨拶あいさつ壇上だんじょうに登る際、降りて来たあなたとれちがったときとが、限りなく苦しかった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
埠頭は五階が同じ格好かくかうの屋根を揃へて一線にならんだのを遠望すると、大きな灰色の下駄はこを並べた様に醜かつたが、近づいて見ると其れ程不快な色でも無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
道子みちこはハンドバツグからピースのはこ取出とりだしながら、見渡みわたすかぎりあたりはぼんの十四日よつかよる人出ひとでがいよ/\はげしくなつてくのをながめた。(昭和廿八年十二月作)
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
スパスパやりながら餘念よねんもなく其邊そのへん見廻みまわしてうちるといま葉卷はまきはこつゝんであつた新聞紙しんぶんし
かいと謂ツても、ンの六でふで、一けん押入おしいれは付いてゐるが、とこもなければえんも無い。何のことはないはこのやうなへやで、たゞ南の方だけが中窓になツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
今も小木町には幾軒かのはこ屋があって、大きな鉄金具を打った桐箪笥を作ります。近年著しく金具が薄手になり弱まってきましたが、それでも地方的な趣きは現れます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
松明たいまつの火が火縄ひなわにうつり、その真下にんであった銃丸じゅうがんはこから火薬かやく威力いりょくはっしたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひと女房にようぼうにだけはならずにくだされと異見ゐけんはれしが、かなしきは女子をなご寸燐まつちはこはりして一人口ひとりぐちすぐしがたく、さりとてひと臺處だいどころふも柔弱にうじやく身體からだなればつとめがたくて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
入り口の障子しょうじをあけると、二つぼほどないたがある。そこが病畜診察所びょうちくしんさつじょけん薬局やっきょくらしい。さらに入院家畜にゅういんかちく病室びょうしつでもあろう、犬のはこねこの箱などが三つ四つ、すみにかさねあげてある。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
友愛塾では、開塾中に先輩せんぱいから陣中見舞じんちゅうみまいと称して、しばしば各地の名産が送られて来たが、この時も、ちょうど青森のりんごが三はこほど届いていたので、それもむろん食卓をかざった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
料理人クツク片手かたて胡椒こせうはこもつました、あいちやんはすでかれ法廷ほふていはいらぬまへに、戸口とぐちちかく、通路とほりみち人民じんみんどもが、きふくさめをしはじめたので、たゞちにそれがだれであつたかを推察すゐさつしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
はこふた
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「ねえ、おかよや、おまえ、この子守唄こもりうたをきいたことがあって?」といって、はこなかから一まいのレコードをいて、ばんにかけながら
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも、とうとうたれかが上がってきましたが、なにかふたつ三つ大きなはこを、すみのほうへほうりだして行ったばかりでした。
こういいのこしたおに言葉ことばつなわすれずにいました。それで万一まんいちかえされない用心ようじんに、つなうで丈夫じょうぶはこの中にれて、もんそと
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それからまたはこころがしたやうな、へだての障子しやうじさへちひさないへをんなをとこみちびくとて、如何どうしても父母ちゝはゝ枕元まくらもとぎねばらぬとき
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「じつは、いまから十四年ほどまえに、はこにいれられて、せきにながれつきましたのを、こなひきの小僧こぞうが水からひきあげたのでございます。」
そしてたいせつに紅雀べにすずめのむな毛につつんで、今までうさぎの遠めがねを入れておいた瑪瑙めのうはこにしまってお母さんにあずけました。そして外に出ました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あらため見るに我が居間ゐまえんの下より怪きはこさがし出しふたあけけるにおのれのろ人形ひとがたなれば大いに怒り夫より呪咀しゆそ始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「はてな。」とはじめていて、主人あるじわたしてつたかぎをガツチリ、狼狽眼うろたへまなこひらいてると、如何いかにはこそこから、階下した廊下らうか見通みとほしであつた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうさんがでもまはしながらあそびにつてますと、ながれてみづおほきなはこなかんでまつてます。そのみづはこからあふれてむらしもはうながれてきます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは日本につぽんにもちょっとられないすばらしいかたちのもので、下部かぶ長方形ちようほうけいはこのようにつくり、そのおほきいものになると、うへせてある一枚いちまい天井石てんじよういしながさが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
やがて半田はんだまちほうからおばあさんがひとり、乳母車うばぐるましてきました。はなってかえるところでしょう。おばあさんははこをとめて、しばらくふだをながめていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
公爵令嬢はこしを下ろして、あかい毛糸のたばはこから出すと、向いの椅子をわたしにさしてみせて、一生けんめい結び目を解きほぐしてから、それをわたしの両手に掛けた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それがまだ固くしぶい時分に枝からいで、なるべく風のあたらないところへ、はこかごに入れておく。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
濱島はまじまおくつてれたかずある贈物おくりものうち、四かく新聞しんぶんつゝみは、しや煙草たばこはこではあるまいかとかんがへたので、いそひらいてると果然くわぜん最上さいじやう葉卷はまき! 『しめたり。』とてんじて
用簟笥のくわんひゞかして、あかい天鵞絨でつたさいはこつてた。代助のまへすはつて、それをけた。なかには昔し代助のつた指環がちやんと這入はいつてゐた。三千代は、たゞ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし時間じかんればうごかぬわけにいかない人車鐵道じんしやてつだうさへをはれば最早もうゐたも同樣どうやうそれちからはこはひると中等ちゆうとう我等われら二人ふたりぎりひろいのは難有ありがたいが二時間半じかんはん無言むごんぎやうおそるとおもつてると
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
箪笥たんす長持ながもちはもとよりるべきいゑならねど、長火鉢ながひばちのかげもく、今戸燒いまどやきの四かくなるをおななりはこれて、これがそも/\此家このいへ道具だうぐらしきものけば米櫃こめびつきよし、さりとはかなしきなりゆき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんは當惑たうわくして、らず/\衣嚢ポケツト片手かたてれ、乾菓子ひぐわしはこ取出とりだし、(さいは鹹水しほみづ其中そのなか浸込しみこんでませんでした)褒美はうびとして周圍しうゐのものにのこらずれをわたしてやりました。丁度ちやうど一個ひとつ一片ひとかけづゝ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「ああ、ねじがはずれたのですか、ゆるむとよくとれましてね。」といって、たくさんねじのはいっているはこしてきました。
小さなねじ (新字新仮名) / 小川未明(著)