兩手りやうて)” の例文
新字:両手
兩手りやうてをわなわなふるはせて、肩でいきを切りながら、眼を、眼球がんきうまぶたの外へ出さうになる程、見開いて、唖のやうに執拗しうねく默つてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
紋着もんつきしろえりで盛裝せいさうした、えんなのが、ちやわんとはしを兩手りやうてつて、めるやうにあらはれて、すぐに一切ひときれはさんだのが、そのひとさ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「よきはどうしたんだ」おつぎはきしあがつてどろだらけのあしくさうへひざついた。與吉よきち笑交わらひまじりにいて兩手りやうてしてかれようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其晩そのばん郵便局長いうびんきよくちやうのミハイル、アウエリヤヌヰチはかれところたが、挨拶あいさつもせずに匆卒いきなりかれ兩手りやうてにぎつて、こゑふるはしてふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主人しゆじんはことさらにかたなはし兩手りやうてつて、つたりつたりする眞似まねをしてせた。宗助そうすけはひたすらにその精巧せいかうつくりをながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見物に交つた八五郎は、兩手りやうてを揉み合せて、獨りえつに入るのを、並んで見て居る平次が何遍ひぢで突いたかわかりません。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
せし天一樣は將軍樣の若君樣わかぎみさまなりしかさればこそ急にみすの中へ入せられ御住持樣ぢうじさまうちかはり御主人の樣に何事も兩手りやうてつい平伏へいふくなさると下男共は此等の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其時そのときは、俵形たはらがた土器どき兩手りやうてつて、眞先まつさきにあなから飛出とびだすと、高等野次馬かうとうやじうまこゑそろへて。
そこあいちやんは恰度ちやうど稽古けいこときのやうに前掛まへかけうへ兩手りやうてんで、それを復習ふくしうはじめました、が其聲そのこゑ咳嗄しわがれてへんきこえ、其一語々々そのいちご/\平常いつもおなじではありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一艘に一人づつともに腰かけて、花やかな帶の端を水の上へ垂らし、兩手りやうてには二本のさをを持つて、水中へさしんではくる/\廻して引き上げると、藻くがからまつてあがつて來る。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
と、しやがんでひざにぢつと兩手りやうてをついたまま、敏樹としきなにおそれるやうなこゑささやいた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
此子このこ笑顏ゑがほのやうに直接ぢかに、眼前まのあたり、かけあしとゞめたり、くるこゝろしづめたはありませぬ、此子このこなん小豆枕あづきまくらをして、兩手りやうてかたのそばへ投出なげだして寢入ねいつてとき其顏そのかほといふものは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこではうへにかけたおちや兩手りやうてんでひとがあります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
賓人まれびとよ、おねがひでござります。』と兩手りやうてあはせてわたくしあほた。
……此處こゝます途中とちうでも、しててばひとる……たもとなか兩手りやうてけば、けたのが一層いつそ一片ひとひらでも世間せけんつてさうでせう。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いぬゐはう垣根かきねそばとき内儀かみさんは、垣根かきねつちいたところ力任ちからまかせにぼり/\とやぶつた。おつぎも兩手りやうてけてやぶつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくし外套ぐわいたうのポケットへぢつと兩手りやうてをつつこんだまま、そこにはひつてゐる夕刊ゆふかんしてようと元氣げんきさへおこらなかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつでも涙を溜めて居るやうな、大きいうるんだ眼、口許に女の兒のやうな愛嬌あいけうがあつて、手足が不安定で、引つきりなしに、兩手りやうてみ合せて居ります。
イワン、デミトリチは昨日きのふおな位置ゐちに、兩手りやうてかしらかゝへて、兩足りやうあしちゞめたまゝよこつてゐて、かほえぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうして兩手りやうてはして、其中そのなかくろあたまんでゐるから、ひぢはさまれてかほがちつともえない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あいちやんはなんにもはず、兩手りやうてかほおさえてすわみました、うなることかと心配しんぱいしながら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さて奧方ある夜のゆめ日輪にちりん月輪ぐわつりん兩手りやうてにぎると見給みたまひ是より御懷姙ごくわいにん御身おんみとはなり給ふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きやうさん母親おふくろ父親おやぢからつきりあていのだよ、おやなしでうまれてがあらうか、れはうしても不思議ふしぎでならない、とやきあがりしもち兩手りやうてでたゝきつゝいつもふなる心細こゝろぼそさを繰返くりかへせば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しま羽織はおり筒袖つゝそでほそた、わきあけのくちへ、かひなげて、ちつさむいとつたていに、兩手りやうて突込つツこみ、ふりのいたところから、あか前垂まへだれひもえる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
與吉よきちかべ何處どこともなくてはいたやうにふるはしていてひしとおつぎへきつく。おつぎは與吉よきちひざいてむまでは兩手りやうておほうてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すると丁度ちやうどハヾトフもブローミウム加里カリびんたづさへてつてた。アンドレイ、エヒミチはおもさうに、つらさうにおこしてこしけ、長椅子ながいすうへ兩手りやうて突張つツぱる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其内そのうちじつとしてゐる身體からだも、膝頭ひざがしらからいたはじめた。眞直まつすぐばしてゐた脊髓せきずゐ次第々々しだい/\まへはうまがつてた。宗助そうすけ兩手りやうてひだりあしかふかゝえるやうにしてしたおろした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つて兩手りやうてると、おどろくまいことか、あいちやんははなしをしてるうち何時いつうさぎちひさなしろ山羊仔皮キツド手套てぶくろ穿めてたのです。『うして穿めたのかしら?』とおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると、老婆らうばは、松の木片を、床板の間にして、それから、今まで眺めてゐた屍骸の首に兩手りやうてをかけると、丁度、猿の親が猿の子のしらみをとるやうに、その長いかみを一本づゝ拔きはじめた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かへりはれいまどたゝいてと目算もくさんながら横町よこちやうまがれば、いきなりあとよりひすがるひとの、兩手りやうてかくしてしのわらひするに、れだれだとゆびでゝ、なんだおきやうさんか、小指こゆびのまむしがもの
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
傳助は兩手りやうてを合せながら、ズルズルと土間を引摺られるのでした。
ニヤゴとまたく。みゝについてうるさいから、シツ/\などとつて、ながら兩手りやうてでばた/\とつたが、矢張やつぱりきこえる。ニヤゴ、ニヤゴと續樣つゞけざま
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と三つ四つにりて甚之助じんのすけ懷中ふところおしいれしが、無心むしんところなんともづかはしく、おとさぬやうにひとせぬやうにと呉々くれ/\をしへ、はやくおでなされとへば、兩手りやうてむねいだきて一しん甚之助じんのすけ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ニヤゴとまたく。みゝについてうるさいから、しツ/\などとつて、ながら兩手りやうてでばた/\とつたが、矢張やはりきこえる、ニヤゴ、ニヤゴーとつゞくやうで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或時あるとききしにおたかおなじくなみだになりてわたしこゝろるものは和女そなたばかりよしさまのことはおもりても御兩親ごりやうしん行末ゆくすゑ心配しんぱいなり明日あすえんきなばかく自由じいうかなふまじ其時そのときたのむは和女そなたぞかしとゝさまのおこゝろよくりて松澤まつざはさまとのなかむかしとほりにしてしゝひとつがおたのみぞとて兩手りやうて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この根際ねぎはひざをついて、伸上のびあがつてはろし、伸上のびあがつてはろす、大鋸おほのこぎり上下うへしたにあらはれて、兩手りやうてをかけた與吉よきち姿すがたは、のこぎりよりもちひさいかのやう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あしすそへ、素直まつすぐそろへたつきり兩手りやうてわきしたけたつきり、でじつとして、たゞ見舞みまひえます、ひらきくのを、便たよりにして、入口いりくちはうばかり見詰みつめてました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つて、むくと起返おきかへ背中せなかに、ひつたりとかさをかぶつて、くび兩手りやうてをばた/\とうごかした……
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大漢子おほをのこ兩手りやうては、のびをして、天井てんじやう突拔つきぬごとそらざまにたなかゝる、と眞先まつさきつたのは、彈丸帶たまおびで、外套ぐわいたうこしへぎしりとめ、つゞいてじうろして、ト筈高はずだかにがツしとけた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……鷹揚おうやうに、しか手馴てなれて、迅速じんそく結束けつそくてた紳士しんしは、ためむなしく待構まちかまへてたらしい兩手りやうてにづかりと左右ひだりみぎ二人ふたりをんなの、頸上えりがみおもふあたりを無手むずつかんで引立ひつたてる、と
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……う、まで骨々ほね/″\しうせもしない兩手りやうて行儀ぎやうぎよくひざうへんだんですが、そのあゐがかつた衣服きもの膝頭ひざがしらへするりと、掻込かいこみました、つまそろつて、ちういたしたゆかへ、すつと
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それからむすめが、手傳てつだつて、女房かみさんは、それをその、むねところへ、兩手りやうていた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゑ引緊ひきしめるやうに、むねつて兩手りやうてをかけた。痩按摩やせあんまじつあんじて
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兩手りやうて炬燵こたつにさして、俯向うつむいてました、れるやうになみだます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手眞似てまねせた、與吉よきち兩手りやうて突出つきだしてぐつといた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
う、ながらわたしは、兩手りやうてはせて囘向ゑかうをしました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
釣針つりばりをね、う、兩手りやうていたかたち
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞面目まじめにぬつと兩手りやうてす。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)