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暖
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あたゝ
ふりがな文庫
“
暖
(
あたゝ
)” の例文
あはれ
新婚
(
しんこん
)
の
式
(
しき
)
を
擧
(
あ
)
げて、
一年
(
ひとゝせ
)
の
衾
(
ふすま
)
暖
(
あたゝ
)
かならず、
戰地
(
せんち
)
に
向
(
むか
)
つて
出立
(
いでた
)
つた
折
(
をり
)
には、
忍
(
しの
)
んで
泣
(
な
)
かなかつたのも、
嬉涙
(
うれしなみだ
)
に
暮
(
く
)
れたのであつた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
実際を云ふと
親爺
(
おやぢ
)
の所謂薫育は、此父子の
間
(
あひだ
)
に纏綿する
暖
(
あたゝ
)
かい情味を次第に冷却せしめた丈である。少なくとも代助はさう思つてゐる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
質請
(
しちうけ
)
して御主人を
暖
(
あたゝ
)
かに
休
(
やす
)
ませられよ
外
(
ほか
)
に思案は有まじと
貞節
(
ていせつ
)
を盡して申を聞き喜八も涙を流して
其志操
(
そのこゝろざし
)
を
感
(
かん
)
じ
僅
(
わづか
)
二分か三分の金故妻を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
卯平
(
うへい
)
は
固
(
もと
)
より
親方
(
おやかた
)
から
家
(
うち
)
の
容子
(
ようす
)
やおつぎの
成人
(
せいじん
)
したことや、
隣近所
(
となりきんじよ
)
のことも
逐
(
ちく
)
一
聞
(
き
)
かされた。
卯平
(
うへい
)
は
窪
(
くぼ
)
んだ
茶色
(
ちやいろ
)
の
眼
(
め
)
に
暖
(
あたゝ
)
かな
光
(
ひかり
)
を
湛
(
たた
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そこで
父子
(
おやこ
)
久しい
間
(
あひだ
)
反目
(
はんもく
)
の
形勢
(
けいせい
)
となツた。母夫人はまた、父子の間を
調停
(
てうてい
)
して、
冷
(
ひや
)
ツこい家庭を
暖
(
あたゝ
)
めやうとするだけ家庭主義の人では無かツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
かういふ
風
(
ふう
)
に、
土地
(
とち
)
の
高低
(
こうてい
)
や
位置
(
いち
)
の
相違
(
そうい
)
によつて、
寒
(
さむ
)
さ
暖
(
あたゝ
)
かさがちがふにつれて、
生
(
は
)
える
樹木
(
じゆもく
)
もそれ/″\ちがふのです。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
汝世を
暖
(
あたゝ
)
め、汝その上に照る、若し故ありて妨げられずば我等は汝の光をもて常に導者となさざるべからず。 一九—二一
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
晝のうちはあんなにほか/\と
暖
(
あたゝ
)
かくしてゐながら、なんとなく
袂
(
たもと
)
をふく
風
(
かぜ
)
がうそ
寒
(
さむ
)
く、
去年
(
きよねん
)
のシヨールの
藏
(
しま
)
ひ
場所
(
ばしよ
)
なぞを
考
(
かんが
)
へさせられたりしました。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
凍
(
こほ
)
る
手先
(
てさき
)
を
提燈
(
ちやうちん
)
の
火
(
ひ
)
に
暖
(
あたゝ
)
めてホツと
一息
(
ひといき
)
力
(
ちから
)
なく
四邊
(
あたり
)
を
見廻
(
みまは
)
し
又
(
また
)
一息
(
ひといき
)
此處
(
こゝ
)
に
車
(
くるま
)
を
下
(
おろ
)
してより
三度目
(
さんどめ
)
に
聞
(
き
)
く
時
(
とき
)
の
鐘
(
かね
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
少くとも今迄二三度見舞つた
暖
(
あたゝ
)
かい季節の京都よりも、冬の京都に京都らしい特色があつた。実際京都の冬は冬らしい静かな冬であつた。それが土井には
懐
(
なつ
)
かしかつた。
閾
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
暖
(
あたゝ
)
けえお
飯
(
まんま
)
を喰べちゃ斯うやって何不足なく居りやんすが、人は楽になると
直
(
じき
)
に難儀した事を忘れるもんですから、
私
(
わし
)
い其の難儀を忘れねえ為に、
見当
(
みあた
)
った此の
轡
(
くつわ
)
の紋で
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お留 まあ可いから、お父さんの歸るまでに、早く
暖
(
あたゝ
)
かい火でもこしらへて置いておあげなさいよ。どれ、わたしも早く歸りませう。まあ、御覽なさい。
些
(
ちつ
)
との間に又積りましたよ。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或日、
天
(
そら
)
長閑
(
のどか
)
に晴れ渡り、
衣
(
ころも
)
を返す風寒からず、秋蝉の
翼
(
つばさ
)
暖
(
あたゝ
)
む
小春
(
こはる
)
の空に、瀧口そゞろに心浮かれ、常には行かぬ
桂
(
かつら
)
、
鳥羽
(
とば
)
わたり巡錫して、嵯峨とは都を隔てて
南北
(
みなみきた
)
、
深草
(
ふかくさ
)
の
邊
(
ほとり
)
に來にける。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
始
(
はじ
)
めて
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
に
小六
(
ころく
)
の
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
に
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた。
襯衣
(
しやつ
)
の
上
(
うへ
)
から
暖
(
あたゝ
)
かい
紡績織
(
ばうせきおり
)
を
掛
(
か
)
けて
貰
(
もら
)
つて、
帶
(
おび
)
をぐる/\
卷
(
ま
)
き
付
(
つ
)
けたが
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
おつぎは
庭葢
(
にはぶた
)
の
上
(
うへ
)
に
筵
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
いて
暖
(
あたゝ
)
かい
日光
(
につくわう
)
に
浴
(
よく
)
しながら
切干
(
きりぼし
)
を
切
(
き
)
りはじめた。
大根
(
だいこ
)
を
横
(
よこ
)
に
幾
(
いく
)
つかに
切
(
き
)
つて、
更
(
さら
)
にそれを
竪
(
たて
)
に
割
(
わ
)
つて
短册形
(
たんざくがた
)
に
刻
(
きざ
)
む。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
トもんどりを
打
(
う
)
つて
手足
(
てあし
)
を
一
(
ひと
)
つに
縮
(
ちゞ
)
めた
處
(
ところ
)
は、
瀧
(
たき
)
を
分
(
わ
)
けて、すとんと
別
(
べつ
)
の
國
(
くに
)
へ
出
(
で
)
た
趣
(
おもむき
)
がある、……そして、
透通
(
すきとほ
)
る
胸
(
むね
)
の、
暖
(
あたゝ
)
かな、
鮮血
(
からくれなゐ
)
の
美
(
うつく
)
しさ。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さて
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
も
終
(
をは
)
りとなり、
日毎
(
ひごと
)
に
風
(
かぜ
)
も
暖
(
あたゝ
)
かになりますと、
桃
(
もゝ
)
の
節句
(
せつく
)
の
桃
(
もゝ
)
の
花
(
はな
)
、
油菜
(
あぶらな
)
の
花
(
はな
)
がさきます。
野
(
の
)
や
畠
(
はた
)
にはたんぽゝが
黄色
(
きいろ
)
くかゞやいてきます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
私
(
わたし
)
はくら
暗
(
やみ
)
の
谷
(
たに
)
へ
突落
(
つきおと
)
されたやうに
暖
(
あたゝ
)
かい
日
(
ひ
)
の
影
(
かげ
)
といふを
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
りませぬ、はじめの
中
(
うち
)
は
何
(
なに
)
か
串談
(
じようだん
)
に
態
(
わざ
)
とらしく
邪慳
(
じやけん
)
に
遊
(
あそ
)
ばすのと
思
(
おも
)
ふて
居
(
を
)
りましたけれど
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
内端
(
うちは
)
な
女心
(
をんなごゝろ
)
の
泣
(
な
)
くにも
泣
(
な
)
かれず
凍
(
こほ
)
つてしまつた
檐
(
のき
)
の
雫
(
しづく
)
は、
日光
(
につくわう
)
を
宿
(
やど
)
したまゝに
小
(
ちひ
)
さな
氷柱
(
つらゝ
)
となつて、
暖
(
あたゝ
)
かな
言葉
(
ことば
)
さへかけられたら
今
(
いま
)
にもこぼれ
落
(
お
)
ちさうに、
筧
(
かけひ
)
の
中
(
なか
)
を
凝視
(
みつ
)
めてゐる。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
使に
遣
(
つかは
)
し奉行所に通じければ
直樣
(
すぐさま
)
捕方の者
駈來
(
かけきた
)
りしが
未
(
いまだ
)
夜
(
よ
)
は明ざるに
付
(
つき
)
四方へ
手配
(
てくば
)
りをなし山同心をも
借集
(
かりあつめ
)
て取卷せ夜明方に
原田平左衞門
(
はらだへいざゑもん
)
始
(
はじめ
)
踏込
(
ふみこみ
)
見
(
み
)
るに
夜具
(
やぐ
)
も
暖
(
あたゝ
)
かに
着
(
き
)
て二人
眠
(
ねむ
)
り居る故是程の
騷
(
さわ
)
ぎを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
所
(
ところ
)
がそれから
又
(
また
)
二日
(
ふつか
)
置
(
お
)
いて、
三日目
(
みつかめ
)
の
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
に、
獺
(
かはうそ
)
の
襟
(
えり
)
の
着
(
つ
)
いた
暖
(
あたゝ
)
かさうな
外套
(
マント
)
を
着
(
き
)
て、
突然
(
とつぜん
)
坂井
(
さかゐ
)
が
宗助
(
そうすけ
)
の
所
(
ところ
)
へ
遣
(
や
)
つて
來
(
き
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
從來
(
じうらい
)
彼
(
かれ
)
が
遠
(
とほ
)
く
奉公
(
ほうこう
)
に
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
て
幾
(
いく
)
らでも
慰藉
(
ゐしや
)
の
途
(
みち
)
を
發見
(
はつけん
)
して
居
(
ゐ
)
たのは
割合
(
わりあひ
)
に
暖
(
あたゝ
)
かな
懷
(
ふところ
)
を
殆
(
ほと
)
んど
費
(
つひや
)
しつゝあつたからである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
三日
(
みつか
)
つゞき、
五日
(
いつか
)
、
七日
(
なぬか
)
つゞいて、
飜
(
ひるがへ
)
り
且
(
か
)
つ
飛
(
と
)
んで、
窓
(
まど
)
にも
欄干
(
らんかん
)
にも、
暖
(
あたゝ
)
かな
雪
(
ゆき
)
の
降
(
ふ
)
りかゝる
風情
(
ふぜい
)
を
見
(
み
)
せたのである。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たゞ
常緑樹
(
じようりよくじゆ
)
のすぎやひのきの
木
(
き
)
だけが
黒
(
くろ
)
ずんだ
葉
(
は
)
をつけたまゝ
暖
(
あたゝ
)
かい
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
が
再
(
ふたゝ
)
び
廻
(
まは
)
つてくるのを
待
(
ま
)
つてゐます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
さうしみ/″\
思
(
おも
)
つた
時
(
とき
)
に、
涙
(
なみだ
)
らしいものが
暖
(
あたゝ
)
かく
私
(
わたし
)
の
瞳
(
ひとみ
)
をうるほしてゐた。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
起
(
おこ
)
し今朝は
寒
(
さむ
)
ければ早く起て
朝湯
(
あさゆ
)
へ
行
(
ゆき
)
暖
(
あたゝ
)
まらんと呼覺す聲を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
醫者
(
いしや
)
に
診
(
み
)
て
貰
(
もら
)
ふと、
發育
(
はついく
)
が
充分
(
じゆうぶん
)
でないから、
室内
(
しつない
)
の
温度
(
をんど
)
を
一定
(
いつてい
)
の
高
(
たか
)
さにして、
晝夜
(
ちうや
)
とも
變
(
かは
)
らない
位
(
くらゐ
)
、
人工的
(
じんこうてき
)
に
暖
(
あたゝ
)
めなければ
不可
(
いけ
)
ないと
云
(
い
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
……
旅
(
たび
)
の
単衣
(
ひとへ
)
のそゞろ
寒
(
さむ
)
に、
膚
(
はだ
)
にほの
暖
(
あたゝ
)
かさを
覚
(
おぼ
)
えたのは一
杯
(
ぱい
)
のカクテルばかりでない。
焚火
(
たきび
)
は
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
である。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
凝乎
(
じいつ
)
と、
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
の
中
(
なか
)
に
横
(
よこた
)
へられた
私
(
わたし
)
の
體
(
からだ
)
の
中
(
なか
)
で、
柔
(
やはら
)
かな
暖
(
あたゝ
)
かさに
包
(
つゝ
)
まれながら、
何
(
なん
)
といふもの
寂
(
さび
)
しい
聲
(
こゑ
)
をたてゝ
私
(
わたし
)
のこゝろの
唄
(
うた
)
ふ
事
(
こと
)
だらう!
一寸
(
ちよつと
)
でも
身動
(
みうご
)
きをしたらその
聲
(
こゑ
)
はすぐに
消
(
き
)
えよう
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
今年
(
ことし
)
は例年より気候がずつと
緩
(
ゆる
)
んでゐる。殊更
今日
(
けふ
)
は
暖
(
あたゝ
)
かい。三四郎は
朝
(
あさ
)
のうち湯に行つた。
閑人
(
ひまじん
)
の
少
(
すく
)
ない世の
中
(
なか
)
だから、午前は
頗
(
すこぶ
)
る
空
(
す
)
いてゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
鮨
(
すし
)
、お
辨當
(
べんたう
)
、
鯛
(
たひ
)
めしの
聲々
(
こゑ/″\
)
勇
(
いさ
)
ましく、
名古屋
(
なごや
)
にて
夜
(
よ
)
は
全
(
まつた
)
く
明
(
あ
)
けて、
室内
(
しつない
)
も
聊
(
いさゝ
)
か
寛
(
くつろ
)
ぎ、
暖
(
あたゝ
)
かに
窓
(
まど
)
輝
(
かゞや
)
く。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
三四郎は
寒
(
さむ
)
いのを我慢して、しばらく此
赤
(
あか
)
いものを
見詰
(
みつめ
)
てゐた。其時三四郎の
頭
(
あたま
)
には運命があり/\と
赤
(
あか
)
く
映
(
うつ
)
つた。三四郎は又
暖
(
あたゝ
)
かい
布団
(
ふとん
)
のなかに
潜
(
もぐ
)
り込んだ。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
九月
(
くぐわつ
)
の
二十日
(
はつか
)
前後
(
ぜんご
)
に、からりと
爽
(
さわや
)
かにほの
暖
(
あたゝ
)
かに
晴上
(
はれあが
)
つた
朝
(
あさ
)
、
同
(
おな
)
じ
方角
(
はうがく
)
から
同
(
おな
)
じ
方角
(
はうがく
)
へ、
紅舷
(
こうげん
)
銀翼
(
ぎんよく
)
の
小
(
ちひ
)
さな
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
りつゝ、
碧瑠璃
(
へきるり
)
の
空
(
そら
)
をきら/\きら/\と
幾千萬艘
(
いくせんまんそう
)
。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さうして出来る丈
暖
(
あたゝ
)
かい言葉を使つて感謝の意を表した。代助が
斯
(
か
)
う云ふ気分になる事は
兄
(
あに
)
に対してもない。
父
(
ちゝ
)
に対してもない。世間一般に対しては固よりない。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
祭
(
まつり
)
の
時
(
とき
)
のお
小遣
(
こづかひ
)
を
飴買錢
(
あめかひぜに
)
と
云
(
い
)
ふ。
飴
(
あめ
)
が
立
(
た
)
てものにて、
鍋
(
なべ
)
にて
暖
(
あたゝ
)
めたるを、
麻殼
(
あさがら
)
の
軸
(
ぢく
)
にくるりと
卷
(
ま
)
いて
賣
(
う
)
る。
飴
(
あめ
)
買
(
か
)
つて
麻
(
あさ
)
やろか、と
言
(
い
)
ふべろんの
言葉
(
ことば
)
あり。
饅頭
(
まんぢう
)
買
(
か
)
つて
皮
(
かは
)
やろかなり。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
代助は机の上の書物を伏せると立ち
上
(
あ
)
がつた。
縁側
(
えんがは
)
の
硝子戸
(
がらすど
)
を
細目
(
ほそめ
)
に
開
(
あ
)
けた
間
(
あひだ
)
から
暖
(
あたゝ
)
かい陽気な風が吹き込んで
来
(
き
)
た。さうして鉢植のアマランスの赤い
瓣
(
はなびら
)
をふら/\と
揺
(
うご
)
かした。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯
(
ト
)
、
夫人
(
ふじん
)
の
居室
(
ゐま
)
に
當
(
あた
)
る、
甘
(
あま
)
くして
艷
(
つや
)
つぽく、
色
(
いろ
)
の
濃
(
こ
)
い、
唐
(
から
)
の
桐
(
きり
)
の
花
(
はな
)
の
咲
(
さ
)
いた
窓
(
まど
)
の
下
(
した
)
に、
一人
(
ひとり
)
影
(
かげ
)
暖
(
あたゝ
)
かく
彳
(
たゝず
)
んだ、
少年
(
せうねん
)
の
書生
(
しよせい
)
の
姿
(
すがた
)
がある。
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
、
形容
(
けいよう
)
、
都
(
と
)
にして
麗
(
れい
)
なり、と
書
(
か
)
いてある。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
故に無事なるものは午砲を聞きて昼飯を食ひ、忙しきものは
孔席
(
こうせき
)
暖
(
あたゝ
)
かならず、
墨突
(
ぼくとつ
)
黔
(
けん
)
せずとも云ひ、変化の多きは
塞翁
(
さいをう
)
の馬に
辶
(
しんにう
)
をかけたるが如く、不平なるは放たれて
沢畔
(
たくはん
)
に吟じ
人生
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
山家
(
やまが
)
、
村里
(
むらざと
)
は
薄紅
(
うすくれなゐ
)
の
蕎麥
(
そば
)
の
霧
(
きり
)
、
粟
(
あは
)
の
實
(
み
)
の
茂
(
しげ
)
れる
中
(
なか
)
に、
鶉
(
うづら
)
が
鳴
(
な
)
けば
山鳩
(
やまばと
)
の
谺
(
こだま
)
する。
掛稻
(
かけいね
)
の
香
(
か
)
暖
(
あたゝ
)
かう、
蕪
(
かぶら
)
に
早
(
はや
)
き
初霜
(
はつしも
)
溶
(
と
)
けて、
細流
(
せゝらぎ
)
に
又
(
また
)
咲
(
さ
)
く
杜若
(
かきつばた
)
。
晝
(
ひる
)
の
月
(
つき
)
を
渡
(
わた
)
る
雁
(
かり
)
は、また
戀衣
(
こひぎぬ
)
の
縫目
(
ぬひめ
)
にこそ。
五月より
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
暖
(
あたゝ
)
かい
汁
(
しる
)
の
香
(
か
)
を
嗅
(
か
)
いでゐる時に、又
故里
(
ふるさと
)
の母からの書信に接した。又例の
如
(
ごと
)
く
長
(
なが
)
かりさうだ。洋服を着換へるのが面倒だから、
着
(
き
)
たまゝの
上
(
うへ
)
へ袴を
穿
(
は
)
いて、
懐
(
ふところ
)
へ手紙を入れて、
出
(
で
)
る。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
“暖”の意味
《名詞》
(ダン 例示の成句で)あたたまること。
(出典:Wiktionary)
暖
常用漢字
小6
部首:⽇
13画
“暖”を含む語句
暖炉
生暖
温暖
暖炉棚
暖爐
瓦斯暖炉
暖簾
暖味
暖気
繩暖簾
暖室
暖房
瓦斯暖爐
御暖
縄暖簾
紺暖簾
暖簾口
寒暖
花暖簾
店暖簾
...