つま)” の例文
ことしは芳之助よしのすけもはや廿歳はたちいま一兩年いちりやうねんたるうへおほやけつまとよびつまばるゝぞとおもへばうれしさにむねをどりて友達ともだちなぶりごともはづかしく
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くだん古井戸ふるゐどは、先住せんぢういへつまものにくるふことありて其處そこむなしくなりぬとぞ。ちたるふた犇々ひし/\としておほいなるいしのおもしをいたり。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ孤獨こどく落魄らくばくこれが僕の運命うんめいだ。僕見たいなものが家庭を組織そしきしたら何うだらう。つまにはなげきをには悲しみをあたへるばかりだ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つまをおさいといひ、俳名を翠仙すゐせんといふ、夫婦ともに俳諧をよく文雅ぶんがこのめり。此柏筵はくえんが日記のやうに書残かきのこしたるおいたのしみといふ随筆ずゐひつあり。
うしたときにはまたみょう不思議ふしぎ現象ことかさなるものとえまして、わたくし姿すがたがそのみぎ漁師りょうしつま夢枕ゆめまくらったのだそうでございます。
むかし、大和国やまとのくに貧乏びんぼう若者わかものがありました。一人ひとりぼっちで、ふたおやつま子供こどももない上に、使つかってくれる主人しゅじんもまだありませんでした。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、うちもんをはひらないまへに、かれはからつぽになつた財布さいふなかつま視線しせんおもうかべながら、その出來心できごころすこ後悔こうくわいしかけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「あちこちと歩きだしてから、もうぼつぼつ七年になります。つまと子どもをさがしているのですが、どうしても見つからないのです。」
金持かねもちのつまは、わたしがこれほどまでにせつないおもいをして、かみさまにねがっているのも、みんなんだ自分じぶん子供こどもがかわいいからのことだ。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう思って糟谷かすやはまたつまや子の寝姿ねすがたを見やった。なにかおもいものでしっかりおさえていられるようにつまや子どもは寝入ねいっている。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかしつまゆめのやうに、盜人ぬすびとをとられながら、やぶそとかうとすると、たちま顏色がんしよくうしなつたなり、すぎのおれをゆびさした。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やはり弘法大師が池の主を済度さいどしたという、かのせせらぎ長者のつま虎御前とらごぜんの話(同上四巻三三九頁)と相似たる話をのこしている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
家へ六七丁のへんまで辿たどり着くと、白いものが立って居る。それはつまであった。家をあけ、犬を連れて、迎に出て居るのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二十八日には抽斎が近習医者介きんじゅいしゃすけを仰附けられた。六月十四日には母寿松が五十五歳で亡くなった。十一月十一日にはつま定が離別せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
神聖たふとことば二人ふたりむすはしてくだされば、こひほろぼため此身このみ如何樣どのやうにならうとまゝ。つまぶことさへかなへば、心殘こゝろのこりはない。
それでも、どうにかして赫映姫かぐやひめ自分じぶんつまにしようと覺悟かくごした五人ごにんは、それ/″\いろいろの工夫くふうをして註文ちゆうもんしなつけようとしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
つまあをざめた顔色かほいろやうやはなのためにやはらぎ出した。しかし、やがて、秋風あきかぜが立ち出した。はな々はを落す前に、そのはならすであらう。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
老母、妻にも、こころざしは申し聞けず、様子にて、さとり候も不知しらず、いよいよ相果あいはて候わば、ははつまの儀、御芳志たのみ奉り候。
『これがわたくしつま春枝はるえ。』とわたくし紹介ひきあはせ、さら夫人ふじんむかつて、わたくしかれとがむかしおなじまなびのともであつたことわたくし今回こんくわい旅行りよかう次第しだい
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ここでは、つまが死んだら、夫はそれと一しょにうずめられるのです。そしてもし、夫の方が先に死ねば、妻がそれと一しょにうずめられるのです。
あのような女はすてた方がよい。お前がこれから出世をして、高い地位についた場合あの女はつまとしてふさわしくない。心は美しくとも知能ちのう程度ていどが低い。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
某は心中ふか立腹りつぷくして、ほかの事にかこつけて雲飛を中傷ちゆうしやうつひとらへてごくとうじたそして人を以てひそか雲飛うんぴつまに、じつは石がほしいばかりといふ内意ないゝつたへさした。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたしはつまおっと両親りょうしんや、かわいらしい天使のようなこどもたちの間にも、まさかとおもわれるようなことが、行われているのを見ました。——またわたしは
力尽ちからつきたしし、つばさの自由を失ったわし、またはめすを失ったはとのように、ロボもつまのブランカにさきだたれて力をおとし、この世に望みを絶ったのであろう。
長谷はつせ五百槻ゆつきもとかくせるつまあかねさしれる月夜つくよひとてむかも 〔巻十一・二三五三〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おかえりなさいまし」お内儀かみのおつまは、夫の手から、印鑑いんかん書付かきつけの入った小さい折鞄おりかばんをうけとると、仏壇ぶつだんの前へ載せ、それから着換きがえの羽織を衣桁いこうから取って
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つまや子どもともわかれて、いままで持っていた猟場りょうばや、住居すまいや、かくから立ちのくように言われました。いよいよ、よその国で幸福こうふくをさがさなければなりません。
これだけわたしのむかしの友だちの集まるということが、わたしのつまをおどろかした。かの女はこの一夜に、父親と、あねと、兄と、おばさんに会うはずであった。
稽古けいこの男は小稲半兵衛こいなはんべゑをさらつたのち同じやうなおつま八郎兵衛はちろべゑ語出かたりだしを二三度繰返くりかへして帰つて行つたのである。蘿月らげつもつともらしくすわなほして扇子せんすで軽くひざたゝいた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
だからちゝが、自分の自然にさからつて、ちゝの計画通りを強ひるならば、それは、去られたつまが、離縁状をたてに夫婦の関係を証拠てやうとすると一般であると考へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勿論もちろん彼女かれをつとは、彼女かれ以上いじやう、あきらめてゐるにちがひない。かれは、松葉杖まつばつえにすがつた、さびしい乙女おとめであつた彼女かれあはれなつまである彼女かれよりも、らないのであつたから。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
又左衛門は三年前に本妻が死んで、子供のない淋しさを慰めるために、長く外に囲っていためかけのおつまを家へ入れました。これは二十七八の水のしたたるような美しい女です。
呉起ごき衞人也ゑいひとなりこのんでへいもちふ。かつ曾子そうしまなび、魯君ろくんつかふ。齊人せいひとむ。呉起ごきしやうとせんとほつす。呉起ごきせいぢよめとつてつまし、しかうしてこれうたがへり。
「え、ありがとう、うれしいなあ、僕もお約束しますよ。あなたはきっと、私の未来みらいつまだ」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いくすぢものくもが、どん/\とのぼつてゐる。そのあらはれてゐるくもめぐつてつくつた、幾重いくへかきのようなくもわたしつまなかれるために、幾重いくへものかきつくつてゐる、その幾重いくへものかきよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「こんなものを少しやってみたことがありますか。つまという琴などは弾いたでしょう」
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ひとゆえつまを逐はれて、心悲しくあそびに來た友達と、あかつきふかく湖上にうかんだ時である。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
まち小學校せうがつかう校長かうちやうをしてゐた彼女かのぢよをつとは、一年間ねんかんはいんで、そして二人ふたり子供こどもわかつま手許てもとのこしたまゝんでいつた。のこつたものは彼女かのぢよおも責任せきと、ごくわづかなたくはへとだけであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
並につま由其の関係の者一同をお呼出しになって白洲を立てられました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
医者いしゃ玄庵げんあんをはじめ、つまのおむら、座元ざもと羽左衛門うざえもん、三五ろうひころう、その人達ひとたちが、ぐるりと枕許まくらもと車座くるまざになって、なにかひそひそとかたっているこえが、とおくに出来事できごとのようにきこえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
若いつまや、幼い子供を連れて、箱根や日光へ行つた時の光景さまが描き出された。土産みやげたのしみにしながら留守るすをしてゐるものゝことが、しきりに考へられた。二年も居る下女の顏までが眼の前に浮び出た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
飮酒いんしゆかの非職官吏ひしよくくわんりころしつゝあるにあらずや非職官吏ひしよくくわんり放蕩懶惰はうとうらんだそのあいらしきつまころしつゝあるにあらずやその無邪氣むじやきむすめころしつゝあるにあらずや、婬賣と名け肺病と名け、※慢と名つくるもの
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
かたつたし、メッキ工場こうじょう中内技師なかうちぎしは、自宅じたくでそのつまたい
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
高山の雪に火縄の火のなとをがひのるはかなつまばかり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「よろしい、では、お別れいたす。……おつま行こう」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
にあらばとしきりにつまなるおにのゝしりぬ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つまいへのあたり。 (歌謠番號七七)