大根だいこん)” の例文
「あいつは自慢じまんしていたが、こんな大根だいこんがいくらするもんだ。まちへいってったって、れている。」と、地主じぬしはつぶやきました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ありったけの大根だいこんのこらずやってしまったので、馬吉うまきちはあとをもずに、うまの口をぐいぐいっぱって、してこうとしました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのいろいろの飾り物の中で、例のおかめの面、大根だいこんじめ、積み俵は三河島が本場(百姓が内職にしている)だから、そっちから仕入れる。
一體いつたい、これには、きざみねぎ、たうがらし、大根だいこんおろしとふ、前栽せんざいのつはものの立派りつぱ加勢かせいるのだけれど、どれもなまだからわたしはこまる。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蕎麥そば里芋さといもをまぜてつくつたその燒餅やきもちげたところへ大根だいこんおろしをつけて焚火たきびにあたりながらホク/\べるのは、どんなにおいしいでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
店に出てひげをやした農学校の先生が『大根だいこん栽培の理論と実際』というような、むつかしい名前の本を番頭に注文するところを、じっと見ていたりした。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
パイ軍曹は、塩びきの鮭のように、ぶら下っていたし、ピート一等兵は放りだされた大根だいこんのように倒れていた。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大根だいこんは、一たん地上ちじやうみどりうばうて透徹とうてつしたそら濃厚のうこうみどり沈澱ちんでんさせて地上ちじやういた結晶體けつしやうたいでなければならぬ。晩秋ばんしう只管ひたすらしづまうとのみしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たい日本にほんをんなの足とたら、周三所謂いはゆる大根だいこんで、不恰好ぶかつかうみぢかいけれども、お房の足はすツと長い、したがツてせいたかかツたが、と謂ツて不態ぶざま大柄おほがらではなかツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
宗助そうすけ樂々らく/\火鉢ひばちそば胡坐あぐらいて、大根だいこんこうものみながら湯漬ゆづけを四はいほどつゞけざまんだ。それからやく三十ぷんほどしたら御米およねがひとりでにめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとえば一つのかめかもした酒、一つのこしきした強飯こわめし、一つのうすもちや一畠のうり大根だいこんを、分けて双方そうほうの腹中に入れることは、そこに眼に見えぬ力の連鎖を作るという
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「私は三十まで大根だいこんと言われていました。そうして、いまでも私は自分を大根だと思っています。」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
橋本の敬さんが、実弟の世良田せらだぼうを連れて来た。五歳いつつの年四谷よつやに養子に往って、十年前渡米し、今はロスアンゼルスに砂糖さとう大根だいこん八十町、セロリー四十町作って居るそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大根だいこん河岸の市場はわいわいとさかんだ。金、金、金と突ンのめるほど町人たちは首を前へ出して駈け歩いている。登城する騎馬の侍だの、駕籠の列にも意地わるくよく行き会う。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……カステラを喰べ散らすやら、かぶ大根だいこんを噛んで吐き出すやら、なかんずく、人参と来ましたら、一倍と好みがやかましく、ありふれた長人参では啣えてみようともいたしませぬ。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玉菜たまな赤茄子あかなすねぎ玉葱たまねぎ大根だいこんかぶ人参にんじん牛蒡ごぼう南瓜かぼちゃ冬瓜とうがん胡瓜きゅうり馬鈴薯ばれいしょ蓮根れんこん慈姑くわい生姜しょうが、三つ葉——あらゆる野菜に蔽われている。蔽われている? 蔽わ——そうではない。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「小僧の八百吉だよ。たつた十四だといふが、大變な身體だ。八百屋の伜で、人蔘にんじん大根だいこんよりは、藥草の方が良からうと、此家へ奉公させられてゐるが、正直な働き者で、評判の良い小僧だ」
大根だいこん 九三・九〇 〇・九〇 〇・一〇 三・七〇 〇・八〇 〇・六〇
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大根だいこんの花白きゆふぐれ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しょうは、たくさんの大根だいこんなかから、いちばんできのいいのを十ぽんばかりって、それをむら地主じぬしのところへってまいりました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
諸君しよくんかずや、むかし彌次郎やじらう喜多八きたはちが、さもしいたびに、いまくひし蕎麥そば富士ふじほど山盛やまもりにすこしこゝろ浮島うきしまがはら。やまもりに大根だいこんおろし。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふゆさむい日でした。馬子まご馬吉うまきちが、まちから大根だいこんをたくさんうまにつけて、三さき自分じぶんむらまでかえって行きました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はたけくろつちにはぽつ/\と大根だいこんしげつてる。周圍しうゐえたあをもの大根だいこんのみである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その心持こころもちが今も子どもの中に伝わっているごとく感じたからである。ふたまた大根だいこんなどは近頃の話だが、もとは「またぶり」というまたになったつえを、旅のひじりなどは皆ついていた。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三度さんどとも宜道ぎだう好意かうい白米はくまいかしいだのをべたにはべたが、副食物ふくしよくぶつつては、たのか、大根だいこんたのぐらゐなものであつた。かれかほおのづからあをかつた。まへよりも多少たせう面窶おもやつれてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大根だいこんフロフキ 春 第四十一 田毎豆腐たごとどうふ
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いままでの、なが年月としつきに、おばあさんは、たくさんの大根だいこんたけれど、いまだにこんなおおきなのをたことがなかったのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もつと便たよりよきはとしこそつたれ、大根だいこんく、屋根やねく、みづめばこめく、達者たつしやなればと、この老僕おやぢえらんだのが、おほいなる過失くわしつになつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬吉うまきちがだまって大根だいこんを一ぽんいてわたしますと、おばあさんはみみまでけているかとおもうような大きな、くちをあいて、大根だいこんをもりもりべはじめました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひとさわやかなみどりあたへられた大根だいこんも、いく成長せいちやうしてもつよめる晩秋ばんしうけてにひつゝくやうにしてやつなゝめひろがるのみで、すこしでもたかのぼることを許容ゆるされてらぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
雑煮ぞうに大根だいこん 春 第一 腹中ふくちゅうの新年
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かぜは、いくたびもおばあさんをたおそうとしました。おばあさんは、二ほん大根だいこんをしっかりといて、かぜたおされまいとあるきました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふ。其処そこしぶりながら備中守びつちうのかみ差出さしだうでを、片手かたて握添にぎりそへて、大根だいこんおろしにズイとしごく。とえゝ、くすぐつたいどころさはぎか。それだけでしびれるばかり。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぶた大根だいこん 春 第十一 門違かどちが
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうした、ようようのほねおりで、大根だいこんは、こんなにみごとにできたのであります。百しょうは、かんがえるとうれしくてたまらなかったのであります。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、りのある賣女屋ばいぢよやまへかさかたむけて、狐鼠々々こそ/\かくれるやうにしてとほつたが、まだ何處どこきてはない、はるこまやかにもんとざして、大根だいこんゆめ濃厚こまやか
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おばあさんは、展覧会てんらんかいにきて、一等賞とうしょうをとった大根だいこんつめて、これよりは八百屋やおや店頭みせさきにあったのがおおきいとおもいました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あとくと、とんさんの苦心くしんは、大根だいこんおろし。まだ御馳走ごちそうもないまへに、あへ消化せうくわたすけるためではない。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こちらからると、なすや、きゅうりや、大根だいこんなどが、店先みせさきにならべられて、午後ごご赤色あかいろをしたひかりけていました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
仕丁 (揚幕あげまくうちにて——突拍子とっぴょうしなるさるの声)きゃッきゃッきゃッ。(すなわ面長つらなが老猿ふるざるの面をかぶり、水干すいかん烏帽子えぼし事触ことぶれに似たるなりにて——大根だいこん牛蒡ごぼう太人参ふとにんじん大蕪おおかぶら。 ...
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょっと、あちらの野原のはらまでてごらんなさい。みかんをたくさんんだそりがとおるし、大根だいこんや、ごぼうや、おさかななどをせたそりがとおりますよ。
からすとうさぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
はしむかぎはに、あさきしながれのぞんで、たばがみ襟許えりもとしろく、褄端折つまはしよりした蹴出けだしのうすあをいのが、朦朧もうろうとして其處そこ俯向うつむいてあらふ、とた。大根だいこんとはちがふ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おじいさんは、くるまに、いも大根だいこんをのせて、まだくらいうちから、提燈ちょうちんをつけて、それをげて、むらから四ばかりへだたったまちいてゆきました。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
よた/\と引返ひきかへし「おつけのなんとかいつたね。さう、大根だいこんか。大根だいこん大根だいこん大根だいこんでセー」とはなうたで、ひとつおいた隣座敷となりざしきの、をとこ一人客ひとりきやくところへ、どしどしどしん、すわんだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おきぬは、四つになる長吉ちょうきちをつれて、やまはたけ大根だいこんきにまいりました。やがて、ふゆがくるのです。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
第一だいいち相坂あひざかたしかでない。何處どこくのだつけ、あやふやなものだけれど、日和ひよりし、かぜぎ、小川をがはみづものんどりとして、小橋際こばしぎはちらばつた大根だいこんにも、ほか/\とあたる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
した黒土くろつちには、ばんだ大根だいこんが、きれいにあたまならべていました。おきぬは子供こどもがかぜぎみであることをっていました。ってくるはずのねんねこをわすれてきたのにがついて
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宛如さながらあき掛稻かけいねに、干菜ほしな大根だいこんけつらね、眞赤まつか蕃椒たうがらしたばまじへた、飄逸へういつにしてさびのある友禪いうぜん一面いちめんずらりと張立はりたてたやうでもあるし、しきりに一小間々々ひとこま/\に、徳利とくりにお猪口ちよく、おさかなあふぎ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれは、みんなからはなれて、ひとり台所だいどころてきました。たなのうえには、大根だいこんや、いもなどがざるのなかにいれて、のせてありました。また、だなのなかには、さかなや、まめなどがはいっていました。
ねずみとバケツの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大根だいこん時雨しぐれ干菜ほしなかぜとびからすせはしきそらを、くものまゝにつゝけば、霜林さうりん一寺いちじいだきてみねしづかてるあり。かねあれどもかず、きやうあれどもそうなく、しばあれどもひとず、師走しはすまちはしりけむ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)