調とゝの)” の例文
以上のへんろ装束、並びに、持道具一切を、われ/\、四国第一番の札所は、阿波、霊山寺門前の浅野仏具店で調とゝのへることができた。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
かのユスティニアーノ汝のためにくつわ調とゝのへしかど、鞍空しくば何の益あらむ、この銜なかりせば恥は却つてすくなかるべし 八八—九〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
紫陽花あぢさゐはなのだん/\調とゝのつてくありさまが、よくんであります。そのうへに、いかにも紫陽花あぢさゐてきした氣分きぶんてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ば高弟にゆづり長兵衞長八兩人十四五日逗留の中に半四郎は支度を調とゝのへ長兵衞長八を連れて江戸屋清兵衞にわかれをつぐるに清兵衞も萬端世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで小部屋のふすまをぴつたり締め切つて、女房にだけわけを話し、奉公人に知らせぬやうに、食事を調とゝのへて運ぶことにした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
火を溝渠こうきよの中に焚きて食を調とゝのへたり。手に小鼓タムブリノりて、我等を要して卜筮ぼくぜいせんとしつれど、馭者は馬にむちうちて進み行きぬ。
無駄を言ひ乍らも平次は、手輕に支度を調とゝのへて、柳原土手の白い蝶々を追ひ乍ら、兩國を渡つて相生町にかゝつたことは言ふまでもありません。
自分じぶん内職ないしよくかね嫁入衣裳よめいりいしよう調とゝのへたむすめもなく実家さとかへつてたのを何故なぜかとくと先方さきしうと内職ないしよくをさせないからとのことださうだ(二十日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
手振り身振りのあざやかさと、眼鼻立めはなだちのキリヽとして調とゝのつたのとは、町中の人々を感心さして、一種のそねみとにくしみとを起すものをすら生じた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その夜、床に這入つてから、私は、熱い燒馬鈴薯やきじやがいもや、白いパンと新しい牛乳やを、パアミサイドの晩餐のやうに頭の中で調とゝのへるのを忘れてゐた。
この場合お冷水だらうが持参金つきの娘だらうが、相手の気に入る事なら、主人はどんな物でも調とゝのへようと思つてゐる。
小六ころくかく都合つがふ次第しだい下宿げしゆくはらつてあにいへうつこと相談さうだん調とゝのつた。御米およねは六でふけたくは鏡臺きやうだいながめて、一寸ちよつとのこしいかほをしたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
家の中では板の間や柱をつや/\と拭き込み、畳建具たてぐを新しく調とゝのえ、屏風びょうぶ几帳きちょうを動かして座敷の模様がえをする。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大抵たいてい五十年ごじふねんさだまつたいのち相場さうば黄金こがねもつくるはせるわけにはかず、花降はなふがくきこえて紫雲しうん來迎らいがうするあかつきには代人料だいにんれうにてこと調とゝのはずとはたれもかねてれたるはなし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或日の午後、彼女はそつ新造しんぞに其事を話して、くるわを脱け出ると土産物を少し調とゝのへて、両国から汽車に乗つた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かくてん雪催ゆきもよひ調とゝのふと、矢玉やだまおとたゆるときなく、うしとらたつ刻々こく/\修羅礫しゆらつぶてうちかけて、霰々あられ/\また玉霰たまあられ
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
林茂光りんもくわうがくるやうになつてから、だいぶすべてが調とゝのつてたが、ぼくはその時分じぶんから大概たいがいけなかつたよ。」
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こゝには腸のさはりを調とゝのへるに好い藥草もあると聞いて、試みにそのせんじ藥なぞを取りよせて飮んだ。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうして甲斐かひ/″\しく夕飯ゆふめし支度したく調とゝのへてゐるむすめをみると、彼女かのぢよ祕密ひみつくゐにまづむねをつかれる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
武田の重二郎が当家へ養子に来てくれる様にうから話はして置いたが、ようやく今日話が調とゝのったからお母様と相談して、善は急げで結納の取交とりかわせをしたいが、媒妁人なこうどは高橋をもってする積りで
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また博物館はくぶつかん學問がくもんをするのにいくらつごうよく出來できてゐても、館内かんない設備せつびがよく調とゝのはねばだめです。ふゆさむ暖房だんぼうがなかつたりしたら寒氣かんきのためにちついて勉強べんきようすることも出來できないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
私は少し許りの疊建具をひとに讓る事にして旅費を調とゝのへた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
同じく大椀に添へ山葵わさび大根ねぎ海苔のり等藥味も調とゝのひたり蕎麥は定めて太く黒きものならんつゆからさもどれほどぞとあなどりたるこそ耻かしけれ篁村一廉いつかどの蕎麥通なれど未だ箸には掛けざる妙味切方も細く手際よく汁加减つゆかげん甚はだし思ひ寄らぬ珍味ぞといふうち膳の上の椀へヒラリと蕎麥一山飛び來りぬ心得たりと箸を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
獸の群の女王をえんとて己をブオソ・ドナーティといつはり、その遺言書ゆゐごんしよを作りてこれを法例かたの如く調とゝのふるにいたれるに似たり —四五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それにもかゝはらず、神武天皇じんむてんのう時分じぶんに、ちゃんとあゝいふ調とゝのつた、景色けしきうたがあるといふことは、どうしても、不自然ふしぜんなようにかんがへられます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かくて江戸高輪の旅館りよくわん出來しゆつたいの由書状しよじやう到來せしかば一同に評議ひやうぎの上早々江戸下向と決し用意も既に調とゝのひしかば諸司代牧野丹波守殿まきのたんばのかみどのへ使者を以て此段を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
がらうとする拍子ひやうしに、小六ころくてた下駄げたうへへ、かずにあしせた。こゞんで位置ゐち調とゝのへてゐるところ小六ころくた。臺所だいどころはうで、御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もう四五年で七十のこじりを取らうとする年の割には、皺のすくない、キチンと調とゝのつた顔に力んだ筋を見せて、お梶は店の男女や客にまで聞える程の声を出した。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
此方こちらから強請ねだつわけではなけれど支度したくまで先方さき調とゝのへてはゞ御前おまへ戀女房こひによぼうわたし父樣とゝさん遠慮ゑんりよしてのみは出入でいりをせぬといふもいさむさんの身分みぶんおそれてゞは
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
用意の調とゝのつた頃、奥様は台所をひとに任せて置いて、丑松の部屋へ上つて来た。丑松も、銀之助も、文平も、この話好きな奥様の目には、三人の子のやうに映つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
司馬相如しばさうじよつま卓文君たくぶんくんは、まゆゑがきてみどりなることあたか遠山とほやまかすめるごとし、づけて遠山ゑんざんまゆふ。武帝ぶてい宮人きうじんまゆ調とゝのふるに青黛せいたいつてす、いづれもよそほふに不可ふかとせず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分のくつしたを買ひにか、それとも貞奴さだやつこへの進物を調とゝのへにか、そんな詮議は牧師か女中かのする事で、自分達のやうな忙しい人間のする事ぢやない。とにかく福沢氏は三越へ往つた。
えゝ此品これは(と盆へ載せた品を前へ出し)なんぞと存じましたが、御案内の通りで、下屋敷しもやしきから是までまいる間には何か調とゝのえます処もなく、殊に番退ばんひけからを見て抜けて参りましたことで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はるになるいろといふのは、まだはるになりつてゐるわけではありません。はる樣子ようす調とゝのつてつてゐることをいふのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
調とゝのさふらひ兩人に提灯持鎗持草履取三人越前守主從しゆじう四人都合十人にて小石川こいしかは御屋形を立出たちいで數寄屋橋御門内なる町奉行御役宅をさしいそゆくはやこく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
片言をいふ間母を愛しこれに從ふ者も、言語ことば調とゝのふ時いたれば、これが葬らるゝを見んとねがふ 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と、芥川あくたがはさんがえいじて以来いらい、——東京府とうきやうふこゝろある女連をんなれんは、東北とうほく旅行りよかうする亭主ていしゆためおかゝのでんぶと、焼海苔やきのりと、梅干うめぼしと、氷砂糖こほりざたう調とゝのへることを、陰膳かげぜんとゝもにわすれないことつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かりしはそののさまなり、くるま用意よういなにくれと調とゝのへさせてのち、いふべきことあり此方こなたへと良人をつとのいふに、いまさらおそろしうて書齋しよさいにいたれば、今宵こよひより其方そなた谷中やなかうつるべきぞ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まず先方で縁談が調とゝのうかいなかを聞いてくわしくは云わんで、しかるべき為になるうちぐらいの事を云って、お前くか、はい参りますとぼんやりでも云ったら、そく/\姓名を打明けて云ってもいが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、自分の行くべきさき天下中てんかぢう何処どこにもい様な気がした。しかし、代助は無理にも何処どこかへかうとした。それには、支度を調とゝのへるにくはないと極めた。代助は電車に乗つて、銀座ぎんざた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
無残むざんや、なかにもいのちけて、やつ五躰ごたい調とゝのへたのが、ゆびれる、乳首ちくびける、みゝげる、——これは打砕うちくだいた、をのふるつたとき、さく/\さゝらにざう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
淡泊あつさり仕舞しまふて殊更ことさら土産みやげをり調とゝのへさせ、ともには冷評ひようばん言葉ことばきながら、一人ひとりわかれてとぼ/\と本郷ほんごう附木店つけぎだな我家わがやもどるに、格子戸こうしどにはしまりもなくして、うへへあがるに燈火ともしびはもとよりのこと
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代助は二三の唐物ひやかして、入用いりやうしな調とゝのへた。其中そのなかに、比較的たかい香水があつた。資生堂で練歯磨ねりはみがきを買はうとしたら、わかいものが、しくないと云ふのに自製のものをして、しきりすゝめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
積薪せきしん夕餉ゆふげ調とゝのをはりてりぬ。一間ひとまなるところさしめ、しうとよめは、二人ふたりぢてべつこもりてねぬ。れぬ山家やまがたび宿やどりに積薪せきしん夜更よふけてがたく、つてのきづ。ときあたか良夜りやうや
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はゞやと奔走ほんそうせしかどそれすらも調とゝのはずして新田につた首尾しゆびよくかち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちゝ歎息たんそくして、無理むりい、居愁ゐづらくもあらう、こまつたなかつたものよと暫時しばらく阿關おせきかほながめしが、大丸髷おほまるまげ金輪きんわきて黒縮緬くろちりめん羽織はをりなんしげもなく、むすめながらもいつしか調とゝの奧樣風おくさまふう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ますにわたかぜさだかにきこえぬさて追手おつてにもあらざりけりおたか支度したく調とゝのひしか取亂とりみださんはのちまでのはぢなるべし心靜こゝろしづかにといましめることばふるひぬいたましゝ可惜あたら青年せいねんはなといはゞつぼみえだいまおこらん夜半よは狂風きやうふう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)