には)” の例文
月は一庭のじゆらし、樹は一庭の影を落し、影と光と黒白こくびやく斑々はん/\としてにはつ。えんおほいなるかへでの如き影あり、金剛纂やつでの落せるなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
建續たてつゞいへは、なぞへにむかうへ遠山とほやまいて、其方此方そちこちの、には背戸せど空地あきちは、飛々とび/\たにともおもはれるのに、すゞしさは氣勢けはひもなし。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いま廿日はつかつきおもかげかすんで、さしのぼには木立こだちおぼろおぼろとくらく、たりや孤徽殿こきでん細殿口ほそどのぐちさとしためにはくものもなきときぞかし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おい昨夜ゆうべ枕元まくらもとおほきなおとがしたのはぱりゆめぢやなかつたんだ。泥棒どろぼうだよ。泥棒どろぼう坂井さかゐさんのがけうへからうちにはりたおとだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しなおもて大戸おほどけさせたときがきら/\と東隣ひがしどなりもりしににはけてきつかりと日蔭ひかげかぎつてのこつたしもしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
折々をり/\には會計係くわいけいがゝり小娘こむすめの、かれあいしてゐたところのマアシヤは、せつかれ微笑びせうしてあたまでもでやうとすると、いそいで遁出にげだす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はとはおなかいてゐました。あさでした。羽蟲はむしを一つみつけるがはやいか、すぐ屋根やねからにはびをりて、それをつかまえました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
このふたつの種類しゆるいはみなさまのおうちのにはでも、公園こうえんや、やまや、どこへつてもられます。ぎには樹木じゆもくかたちによつても區別くべつされます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
とまだあをくてかきが、おとなりのかきひました。このあをかきと、あかかきとは、お百姓ひやくしやううちにはにある二ほんかきえだつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さてまた憑司は其夜昌次郎を立せやり草履ざうりに血の付たるをもちて傳吉宅へしのこみには飛石とびいしへ血を付置き夫より高田の役所へ夜通よどほしに往てうつた捕方とりかた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その色青みありて黒く甚だなめらかなり、農夫のうふこれをもつてわらをうつばんとなす、其夜妻にはいでしに燦然さんぜんとして光る物あり、妻妖怪ばけものなりとしておどろきさけぶ
たゞかん中庭なかにはにはあのどるめんのちひさいものを、原状げんじようのまゝつてゑてありますから、後程のちほどには御覽下ごらんください。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
寢轉ねころんで讀書どくしよしてゐる枕頭まくらもとにお行儀げうぎよくおちんをしてゐる、しかつてもげない、にはへつまみす、また這入はいつてくる、汚物をぶつをたれながす、下女げぢよおこる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
しづかなよひで、どことはなしに青をにほはせたかぐはしい夜風よかぜには先からながれてくる。二人のあひだにはそのまましばらくなんの詞も交されなかつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
次に阿須波あすはの神。次に波比岐はひきの神。次に香山戸臣かぐやまとみの神。次に羽山戸はやまとの神。次にには高津日たかつひの神。次に大土おほつちの神。またの名はつち御祖みおやの神(九神)。
なお、人麿の覉旅歌には、「飼飯けひの海のにはよくあらしかりごものみだれいづ見ゆ海人あまの釣船」(巻三・二五六)というのもあり、棄てがたいものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
道翹だうげうかゞめて石疊いしだゝみうへとら足跡あしあとゆびさした。たま/\山風やまかぜまどそといてとほつて、うづたかには落葉おちばげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
昼過ひるすぎからすこ生温なまあたゝかかぜやゝさわいで、よこになつててゐると、何処どこかのにはさくらが、霏々ひら/\つて、手洗鉢てあらひばちまはりの、つはぶきうへまでつてる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
つぎせつねがひます』とグリフォンがふたゝひました、『それは「にはとほとき」とふのがはじめだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
奧庭もさほど深い感銘がなかつたが、隱れたところで偶然かにはの奧に筧の落ちる音がしてゐた。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
には古池ふるいけつて、そのほとりおほきな秋田蕗あきたふきしげつてたので、みな無理むりふき本宗匠もとそうせうにしてしまつたのです、前名ぜんめう柳園りうゑんつて、中央新聞ちうわうしんぶん創立そうりつころ処女作しよぢよさくを出した事が有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うはさには毎度まいどうけたまはつてりましたよ、立派りつぱなお住宅すまひでおにはう、なにうと、くまア、んでございますよ、名草屋なくさやきん七といふ道具屋だうぐやまゐりまして始終しじううはさでございますよ。
俊男としをは見るともなくおのづにははびこツたくさむらに眼を移して力なささうに頽然ぐつたり倚子いすもたれた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
戸外とのもにはカリンのがうはつて、淡紅うすくれなゐはなくらあめにはにたちまよふてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
人間のうち君めづる人あるにはに——引き行くか?
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
木々きゞみなぬとにはに、ひとりしづか
夏の日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
御蔭みかげにはばたきのはたとどよみて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
には鶏頭けいとうにやすみませう
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
テン太郎や にはへ出ておいで
早速さつそくにはにとまる。
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
には土面つちも附黒子つけぼくろ
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
には逍遙せうえうれて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
暮春ぼしゆんには
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
禮心れいごころに、あかりけておともをしませう……まち𢌞まはつて、かどまでおむかひにまゐつてもうござんす……には御覽ごらんなさいませんか。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しばらくたつてからおしなにはでおつぎがざあとみづんではまたあひだへだてゝざあとみづんでるのをいた。おつぎは大根だいこあらつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此間このあひだうまれたすゑをとこが、ちゝ時刻じこくたものか、ましてしたため、ぞく書齋しよさいけてにはげたらしい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぎたる紅葉もみぢにはさびしけれど、かき山茶花さゞんかをりしりかほにほひて、まつみどりのこまやかに、ひすゝまぬひとなきなりける。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とうさんのおうちにはにはいろ/\なうゑてありました。とうさんはその自分じぶんのお友達ともだちのやうにおもつておほきくなりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ながめてゐるが此身のくすりで有ぞかしと言を忠兵衞押返おしかへは若旦那のお言葉ともおぼえずおにはと雖も廣くもあらずましてや書物にこゝろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると其處そこ院長ゐんちやうは六號室がうしつるとき、にはからすぐ別室べつしつり、玄關げんくわん立留たちとゞまると、丁度ちやうど恁云かうい話聲はなしごゑきこえたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つままどのもとに喰伏くひふせられあけにそみ、そのかたはらにはちゞみの糸などふみちらしたるさまなり。七ツの男の子はにはにありてかばねなかくはれたり。
つぎには紅葉もみぢするは、どんなかといひますと、日本につぽんでは普通ふつうもみぢ(槭樹せきじゆ)がいちばんおほいのです。なかでも、やまもみぢはにはにもよくゑられます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
富豪ものもちいへでは蟲干むしぼしで、おほきな邸宅やしきはどの部屋へやも一ぱい、それがにはまであふれだしてみどり木木きゞあひだには色樣々いろさま/″\高價かうかなきもの がにほひかがやいてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
言葉ことばはそれなりに途切とぎれて、青木さんはにはくらやみのはうながめ入り、おくさんははりふたゝうごかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ねこ姿すがたえないので障子せうじけた、うみからくるかぜには木立こだちふるはれて爽味さうみをもつてくる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
背子せこいまいまかとれば沫雪あわゆきふれりにはもほどろに 〔巻十・二三二三〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかしちょっとおにはて、わたしはたばこをいつぷくのみ、みなさんも一休ひとやすみといたしませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
もし出雲いづも石𥑎いはくまの宮二〇にます、葦原色許男あしはらしこをの大神二一をもちいつはふりが大には二二
口三味線くちさみせん浄瑠璃じやうるりには飛石とびいしづたひにちかづいてくるのを、すぐわたしどもはきヽつけました。五十三つぎ絵双六ゑすごろくをなげだして、障子しやうじ細目ほそめにあけたあねたもとのしたからそつと外面とのもをみました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
彼は楊子をくはへながら、ぐ家主のにはさかひにある井戸端へ出て行つた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)