自由じいう)” の例文
八百八しましまあひだを、自由じいう青畳あをだゝみうへのやうにぐんだとふから、しま一つ一つおもむきのかはるのも、どんなにいゝかれやしない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつゆびさきへでも、ひらうへへでも自由じいうしりすわる。それがしりあな楊枝やうじやうほそいものをむとしゆうつと一度いちど收縮しうしゆくして仕舞しまふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
卯平うへいはそれととも乾燥かんさうした肌膚はだ餘計よけいれて寒冷かんれいほねてつしたかとおもふとにはか自由じいううしなつてたやうに自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わが國名こくめいは「ニホン」または「ニツポン」である。外人ぐわいじんおもひ/\に勝手かつて稱呼せうこもちゐてゐるが、それは外人ぐわいじん自由じいうである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
どんな書物しよもつでもといふことは、はなはだボンヤリしてゐるやうであるが、實際じつさい、一たい書物しよもつなり、書物しよもつ選擇せんたくといふものは、各人かくじん自由じいうまかせるほかはない。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人生じんせい解悟かいごむかつて自由じいうなるふか思想しさうと、おろかなるさわぎたいする全然ぜん/\輕蔑けいべつすなは人間にんげん以上いじやうのものを未甞いまだかつらぬ最大幸福さいだいかうふくです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この冬季とうき寒威かんゐじつはげしく、河水かすゐごときはその表面へうめん氷結へうけつしてあつ尺餘しやくよいたり、人馬じんばともそのうへ自由じいうあゆ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
今日けふしかし、其博士そのはかせ先導せんだうであるから、我々われ/\自由じいう内部ないぶまでるをた。たゞし、五六人宛にんづゝ交代かはりがはりである。
が、もうひとつは氣質きしつ相違そうゐによるものだらう。へると、支那人しなじん技法ぎはふ巧拙かうせつ別問題べつもんだいとして、可成かな自由じいうびと麻雀マージヤンあそたのしむからではあるまいか?
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わかときは二はない』としようしてあらゆる肉慾にくよくほしいまゝにせんとする青年男女せいねんだんぢよ自由じいう干渉かんせふるぞ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此處ここはどこなのかしら——彼女かのぢよあがらうと意識いしきなかでは藻掻もがいたが、からだ自由じいうにならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
道子みちこはふと松戸まつどてらはうむられた母親はゝおやことおもおこした。その当時たうじ小岩こいはさかはたらいてゐたゝめ、主人持しゆじんもち自由じいうがきかず、ひまもらつてやつと葬式とむらひつたばかり。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
べつ特別とくべついたむわけでもなく外面ぐわいめんからも右足うそく膝關節しつくわんせつは、なんの異常いじやうもなかつたのであるけれども、自由じいう曲折きよくせつ出來できないめに、學校がくかうでは作法さはふ體操たいさうやすまなければならなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ことあたらしく今更に道十郎が後家に告口つげぐちなし此長庵がいのちちゞめさせたるは忝けないともうれしいともれい言盡いひつくされぬ故今はくゝられた身の自由じいうならねばいづ黄泉あのよからおのれも直に取殺し共に冥土めいどつれゆき禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ベンヺ もッと自由じいうあたへて、あちこちのほか美人びじんたらよからう。
「それがわかつたら、すべてはそち自由じいうまかせる」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
或時あるとききしにおたかおなじくなみだになりてわたしこゝろるものは和女そなたばかりよしさまのことはおもりても御兩親ごりやうしん行末ゆくすゑ心配しんぱいなり明日あすえんきなばかく自由じいうかなふまじ其時そのときたのむは和女そなたぞかしとゝさまのおこゝろよくりて松澤まつざはさまとのなかむかしとほりにしてしゝひとつがおたのみぞとて兩手りやうて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前様めえさまもの、祖父殿おんぢいどん真似まねをするだ、で、わし自由じいうにはんねえだ。間違まちがへて先生せんせいだ、師匠ししやうはつしやるなら、祖父殿おんぢいどんばらつせえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ自由じいううしなうたその手先てさきあたゝかはるつもつて漸次だん/\やはらげられるであらうといふかすかな希望のぞみをさへおこさぬほどこゝろひがんでさうしてくるしんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いし自由じいうになるところだけに、比較的ひかくてきおほきなのが座敷ざしき眞正面ましやうめんゑてあつた。其下そのしたにはすゞしさうなこけがいくらでもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いく丁斑魚めだかでも滿足まんぞくられんなら、哲學てつがくずにはられんでせう。いやしく智慧ちゑある、教育けういくある、自尊じそんある、自由じいうあいする、すなはかみざうたる人間にんげんが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
また將相達しやうしやうたちはなぜあれほど主權しゆけんあらそふのか? おほくの婢妾ひせうにくきたいために、ばくちにふけ悠悠いういう閑日月かんにちげつ自由じいうにしたいために、豪華がうくわ廊房らうばう阿片あへんゆめひたりたいために。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ねんばかりまへのことである、まちは、まだ赤色あかいろのリボンをかけた少女せうぢよですこやかに自由じいう身體からだで、いま現在げんざいのやうな未來みらいることなどは、ゆめにもおもふことなくクローバーのはら
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
し、諸君しよくんにして中江兆民なかえてうみん先生せんせいどうしゆであつて、十八零圍氣れいゐき振舞ふりまはして滿足まんぞくしてるならば、諸君しよくんなん權威けんゐあつて、『はるみじかなに不滅ふめついのちぞと』云々うん/\うたひと自由じいう干渉かんせふるぞ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けよ! このむねよ! 破産はさんした不幸みじめこゝろよ、一思ひとおもひにけてしまうてくれい! 此上このうへらうはひれ、もう自由じいうるな! けがらはしい塵芥ちりあくため、もと土塊つちくれかへりをれ、きてはたらくにはおよばぬわい
思ひ付たれば或夜おかねと忍びの物語りに我等如何なるえんりてか其の方とかく深き中なりと腹に子まで妊せし上は末長すゑながく夫婦に成べき所存しよぞんなり然ながら今は互に奉公ほうこうゆゑ自由じいうには成難し然れども追々月もかさなりては奉公ほうこうも成まじ因て一先宿へ下りおろすともうむともして又々奉公に出られよ尤も宿へ下るに只は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いや不束ふつゝかではございますが、こしらへましたもの、貴下あなたのおゆるしがありませんでも、開閉あけたて自由じいうでございます。」
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
法律はふりつてらしても明白あきらかだ、何人なにびといへども裁判さいばんもなくして無暗むやみひと自由じいううばこと出來できるものか! 不埒ふらちだ! 壓制あつせいだ!
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからまた日目かめほとけおくつて村落むらもの黄昏たそがれ墓地ぼちうた。へび猶且やつぱり棺臺くわんだいかげらなかつた。へび自由じいう匍匐はらばふにはあまりに瘡痍きずおほきかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なんでも石油せきゆいて、それでふね自由じいうにする器械きかいなんださうですが、いてると餘程よつぽど重寶ちようはうなものらしいんですよ。それさへければ、ふね手間てままるはぶけるとかでね。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蒼蠅あをばへでもうすることをロミオばかりはうせぬ、彼奴等あいつら自由じいう吾等われら追放つゐはう! これでも足下おぬし追放つゐはう死罪しざいでないとおしゃるかいの? 調合てうがふしたどくはないか、ぎすましたやいばはないか
……こゝではまちも、もりも、ほとんど一浦ひとうらのなぎさのばんにもるがごとく、全幅ぜんぷく展望てんばう自由じいうだから、も、ながれも、かぜみちも、とり行方ゆくへれるのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しつはがらりといて、それでも七八にん乗組のりこんだらう。女気をんなげなし、たてにもよこにも自由じいうられる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
成程なるほどきにいたうへにも、寝起ねおきにこんな自由じいうなのはめづらしいとおもつた。せき片側かたがはへ十五ぐらゐ一杯いつぱいしきつた、たゞ両側りやうがはつてて、ながらだと楽々らく/\ひぢけられる。脇息けふそくさまがある。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)