始末しまつ)” の例文
わたくし、金がなければお前様まえさまとも夫婦になれず、お前様の腹の子の始末しまつも出来ず、うき世がいやになり候間そうろうあいだ、死んでしまいます。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ふふん、すると、あの人造人間が、錠をあけで逃げだしたとみえる。はてな、最後にあの人造人間を、どう始末しまつしておいたかしら」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつでも半分位で辛抱しんぼうしてろくに茶を飲むことも出来ず水を呑んで居るという始末しまつ。ですから赤い顔が青くなってだんだんせてしまう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
せめていへひとつて、ものをいはうとしても、それさへつてくれぬ始末しまつで、人々ひと/″\はいよ/\んでさわぐのでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
玄関番げんくわんばん書生しよせい不作法ぶさはふ取扱とりあつかひけると、其処そこ主人迄しゆじんまでがいやになる。著米ちやくべい早々さう/\始末しまつは、すくなからず僕等ぼくら不快ふくわいあたへた。(四月三日)
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
たぶんその思いが通じて、こんな始末しまつになったことなのでしょうから、とりもなおさず、私が殺したと同様なのでございます、というんだ。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それゆえせめてのこころから、あたしがいつもゆめるおまえのお七を、由斎ゆうさいさんに仕上しあげてもらって、ここまで内緒ないしょはこんだ始末しまつ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
勘次かんじいよ/\やとはれてくとなつたとき收穫とりいれいそいだ。冬至とうじちかづくころにははいふまでもなくはたけいもでも大根だいこでもそれぞれ始末しまつしなくてはならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
致して居しがまづ重疊ちようでふ左樣さやう御座らば立歸りよろこばせし上又あらためて出まする事に仕つれば何分なにぶん宜敷よろしくお頼申すとよろこびをのべわかれを告取散とりちらせし辨當など始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞすこ遠慮勝えんりよがちなのと、あまおほ口数くちかずかぬのが、なんとなくわたしには物足ものたりないので、わたしそれであるから尚更なほさら始末しまつわるい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かく一応はわしが意見しますよ、若いうちは迷ふだけにかへつて始末しまつのいゝものさ。今夜こんやにでも明日あしたにでも長吉ちやうきちに遊びに来るやうにつて置きなさい。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
御米およねはうから、すゝんでおとうと讒訴ざんそでもするやうだと、しかるにしろ、なぐさめるにしろ、かへつて始末しまついとかんがへるときもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、ぼく早速さつそく呶鳴どなりはしたものの、口へんには微苦笑びくせうおさへきれぬ始末しまつじつは二人の對局振たいきよくふりを如何にもへうし得てゐるのだ。
甚麼話どんなはなしるのでらうか、彼處かしこつても處方書しよはうがきしめさぬではいかと、彼方あつちでも、此方こつちでも、かれ近頃ちかごろなる擧動きよどう評判ひやうばん持切もちきつてゐる始末しまつ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このかね死後しご始末しまつをしてもらい、のこりは、どうか自分じぶんおなじような、不幸ふこう孤独こどくひとのためにつかってもらいたい。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどいくらいいうまでも、んだうまをかついでいくことはできないので、それには下男げなん一人ひとりあとのこして、んだうま始末しまつをさせることになりました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
右のごとき始末しまつにして、外国政府が日本の内乱にじょう兵力へいりょくを用いておおい干渉かんしょうを試みんとするの意志いしいだきたるなど到底とうていおもいも寄らざるところなれども
面白おもしろげなる顔色がんしよく千番せんばんに一番さがすにも兼合かねあひもうすやらの始末しまつなりしにそろ度々たび/″\実験じつけんなれば理窟りくつまうさず、今もしかなるべくと存候ぞんじそろ愈々いよ/\益々ます/\しかなるべくと存候ぞんじそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
ともに天をいただくを恥じとするとか極端の言葉を用い、あるいは某が某女性と関係したる始末しまつ細々こまごまと記してある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
単身たんしんさってその跡をかくすこともあらんには、世間の人も始めてその誠のるところを知りてその清操せいそうふくし、旧政府放解ほうかい始末しまつも真に氏の功名にすると同時に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
玉江嬢「私どもでも今年はトマトの苗を買って植えましたが沢山出来過ぎると始末しまつこまりますね」お登和嬢
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ると煎餅せんべいのやうなうすつぺらの蒲団ふとんつめ引掻ひつかくとポロ/\あかおちる冷たさうな蒲団ふとんうへころがつてるが、独身者ひとりものだからくすりぷくせんじてむ事も出来できない始末しまつ、金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これからは肝心かんじん飲食のみくいとなるのだが、新村入しんむらいりの彼は引越早々まだ荷も解かぬ始末しまつなので、一座いちざに挨拶し、勝手元に働いて居る若い人だちとおながら目礼して引揚げた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うやつて、奴凧やつこだこ足駄あしだ穿いて澁谷しぶやちたやうに、ふらついてるのも、つまこの手紙てがみのためで、……それなか文句もんくようではありません——ふみがらの始末しまつなんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此方こちらも会ふのが億劫おくゝふで、いつか/\と思ひながら、今だに着手ちやくしゆもせずにると始末しまつです、今日こんにちお話をるのはほん荒筋あらすぢで、年月ねんげつなどはべつして記憶きおくしてらんのですから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おほくではれだけで此處こゝ始末しまつがつくなれば、理由わけいてやはおほせらるまじ、れにつけても首尾しゆびそこなうてはらねば、今日けふわたしかへります、また宿下やどさがりは春永はるなが
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此上は佛の始末しまつをして、お寺に屆ける外はありませんが、女の手一つでは、それもむづかしいらしく、投込みとむらひをするにしても、人手がなければどうすることも出來ません。
「さあ、犬とさるをれて出て行ってくれ。親方の荷物はあずかっておく。親方が刑務所けいむしょから出て来れば、いずれここへるだろうし、そのときこちらの始末しまつもつけてもらおう」
平助は正覚坊の背中をでながら、さてその始末しまつに困りました。家に置いておけば、自分がりょうに出た不在中るすに、村のいたずら小僧こぞうどもからどんな目にあわされるかわかりません。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
頃日けいじつ脱稿だっこうの三十年史は、近時きんじおよそ三十年間、我外交がいこう始末しまつにつき世間につたうるところ徃々おうおう誤謬ごびゅう多きをうれい、先生が旧幕府の時代よりみずから耳聞じぶん目撃もくげきして筆記にそんするものを
陪審官等ばいしんくわんら身體からだふるえがとまるやいなや、ふたゝ石盤せきばん鉛筆えんぴつとをわたされたので、みんな一しんこと始末しまつしました、ひと蜥蜴とかげのみは其口そのくちいたまゝ、いたづらに法廷はふてい屋根やね見上みあげて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
儀一ぎいちはあのとおりものにならない。あとはきさまひとりをたよりに思ってれば、この始末しまつだ、警察けいさつからまで、きさまのためには注意ちゅういけてる。夜遊よあそびといえばなにほどいってもやめない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
『これは/\。如何どうもマツチをわすれたといふやつは始末しまつにいかんもので。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あやしふね双眼鏡さうがんきやう一件いつけん印度洋上インドやうじやう大遭難だいさうなん始末しまつ其時そのとき春枝夫人はるえふじん殊勝けなげなる振舞ふるまひ、さては吾等われら三人みたり同時どうじに、弦月丸げんげつまる甲板かんぱんから海中かいちう飛込とびこんだのにかゝはらず、春枝夫人はるえふじんのみは行方ゆくかたれずなつたこと
それであたりはミルクだらけという始末しまつ。おかみさんがおもわずたたくと、それはなおびっくりして、今度こんどはバタのおけやら粉桶こなおけやらにあしんで、またしました。さあ大変たいへんさわぎです。
きいきいごえで けされる始末しまつ
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
忠明ただあき発狂はっきょう始末しまつ
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、ざっとこう言う始末しまつなの。——ああ、それから姉さんにわたしから手紙を上げたことね、あのことは大村にも話して置いたの。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、新機を補充しなくなったばかりか、これまで敵国が保有していた軍用機も、最近一年は、こわれ放題にしてある始末しまつである。
東隣ひがしどなり主人しゆじんにはには村落むらもの大勢おほぜいあつまつておほきな燒趾やけあと始末しまつ忙殺ばうさつされた。それでその人々ひと/″\勘次かんじにはさうとはしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その時宿主らの連れて居る猟犬は兎狩うさぎがりに行って兎を喰殺して帰って来るという始末しまつで大変に殺伐さつばつな光景が現われて来た。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
道子みちこ其辺そのへんのアパートをさがして一人暮ひとりぐらしをすることになつたが、郵便局いうびんきよく貯金ちよきんはあらかた使つかはれてしまひ、着物きものまで満足まんぞくにはのこつてゐない始末しまつ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
どんなはなしをするのであろうか、彼処かしこっても処方書しょほうがきしめさぬではいかと、彼方あっちでも、此方こっちでも、かれ近頃ちかごろなる挙動きょどう評判ひょうばん持切もちきっている始末しまつ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あらため見るに我が居間ゐまえんの下より怪きはこさがし出しふたあけけるにおのれのろ人形ひとがたなれば大いに怒り夫より呪咀しゆそ始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれあにいへ厄介やくかいになりながら、もうすこてば都合つがふくだらうとなぐさめた安之助やすのすけ言葉ことばしんじて、學校がくかう表向おもてむき休學きうがくていにして一時いちじ始末しまつをつけたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちっともはや返事へんじくて、帳場格子ちょうばこうしと二かいあいだを、九十九かよった挙句あげく、とうとう辛抱しんぼう出来できなくなったばっかりに、ここまで出向でむいて始末しまつさ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かれは、つかのこりのしょうゆや、みそや、さけや、お菓子かしなどの始末しまつもつけなければならぬとおもっていました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それはおどくですね。ではうまはわたしがけて、なんとか始末しまつしてげますから、わたしにゆずってくださいませんか。そのわりにこれをげましょう。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしこうして幕府解散の始末しまつは内国の事に相違なしといえども、おのずから一例を作りたるものというべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なにしろ会場における不満連ふまんれんの総大将けん黒幕くろまくとしてはルーズヴェルト氏みずか采配さいはいを取っているという始末しまつであるから、我々の考えでは珍事ちんじなしには終らぬと気遣きづかったのも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)