飛込とびこ)” の例文
四谷よつやとほりへ食料しよくれうさがしにて、煮染屋にしめやつけて、くづれたかはら壁泥かべどろうづたかいのをんで飛込とびこんだが、こゝろあての昆布こぶ佃煮つくだにかげもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただその周囲の処に人がドヤ/″\群集ぐんしゅうして居るだけである。れゆえ大きな声を出して蹴破けやぶって中へ飛込とびこみさえすれば誠に楽な話だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
此時このときうれしさ! ると一しやくぐらいのあぢで、巨大きよだいなる魚群ぎよぐんはれたために、偶然ぐうぜんにも艇中ていちう飛込とびこんだのである。てんたまものわたくしいそ取上とりあげた。
途方とはうにくれてよめ塩原しほばら内井戸うちゐど飛込とびこんで幽霊いうれいに出るといふのがつぶはじめで、あの大きなうちつぶれてしまつたが、なんとこれは面白おもしろ怪談くわいだんだらう
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「誰も口外してはならぬぞ——こいつは面倒なことになる、よいか、当人はこの間から気が変になっていて、潮入の井戸に飛込とびこんだことにするのだ」
にわかに天井に白い泡がたって、青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾てっぽうだまのようなものが、いきなり飛込とびこんで来ました。
やまなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
貞吉ていきちという小僧が、こくりこくりと居寐いねむりをしていたので、急いで内へ飛込とびこんで、只今ただいまと奥へ挨拶をすると主人は「大分だいぶ今夜は遅かったね」と云うから
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
ときは、警察けいさつ飛込とびこんでもみたさうですけれど、大久保おほくぼさんのおつしやることが、やはり真実しんじつらしくきこえたものでせうか、そのときもどされてしまひました。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
隙間すきまもなうくろとばり引渡ひきわたせ、こひたすくるよるやみそのやみまちものふさがれて、ロミオが、られもせず、うはさもされず、わしこのかひななか飛込とびこんでござらうやうに。
お葉の火の手が折角しずまりかかった処へ、又もやんな狂気婆きちがいばばあ飛込とびこんで来て、横合よこあいから余計なわらべる。重ね重ねの面倒に小悶こじれの来た市郎は、再び大きい声で呶鳴どなり付けた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
又、鉄製のたるの中へ入ってナイヤガラのたき飛込とびこんだ男の話を聞いたことがある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
老婆ばあさんは中風ちゆうふうぬし、おきぬさんはおよめくをいやがつてうら井戸ゐど飛込とびこんで仕舞しまつた、おまへ不人情ふにんじやうれをてゝくし、もうなにもつまらない、なん傘屋かさやあぶらひきなんぞ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白襯衣君が、肩をそびやかして突立つったって、窓から半身はんしん乗出のりだしたと思うと、真赤な洋傘こうもりが一本、矢のように窓からスポリと飛込とびこんだ。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其事そのことこの虎髯ひげがおはなしもうすのが順當じゆんたうでせう。』と不意ふゐ室内しつない飛込とびこんでたのは、れい磊落らいらくなる虎髯大尉こぜんたいゐ本名ほんめい轟大尉とゞろきたいゐであつた。
うら田圃たんぼへ出て見るとおくはうの物置きの中に素裸体すつぱだかとしころ三十二三になるをとこ棒縛ぼうしばりになつてるのを見て、和尚をしやうおどろき、なか飛込とびこんでて、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
不意に、障子を蹴開いて、鞠のような感じのする男が飛込とびこみました。真弓の許婚いいなずけ、祝言の盃事をするばかりになって居る半沢良平の、嫉妬に狂う浅ましい姿です。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
大愉快おほゆくわい最中もなか正太しようた飛込とびこしなるに、やあしようさんいままへをばさがしてたのだ、れは今日けふ大分だいぶもうけがある、なにおごつてあげやうかとへば、馬鹿ばかをいへ手前てめへおごつてもられではいわ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
惡黨あくたう! なん眞中まんなか飛込とびこんだんぢゃ足下おぬしは! 足下おぬしうでしたでやられた。
身をかわす間もあらばこそ、の怪物は早くも市郎の前に飛込とびこんで来て、左の外股そとももあたりはたと打った。敵は兇器を持っているらしい、打たれた所はただならぬ疼痛いたみを感じて、市郎は思わず小膝を突いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いへ小路せうぢ引込ひつこんで、とほりのかどに「蒲燒かばやき」といた行燈あんどうばかりあり。はややつがむやみと飛込とびこむと仕立屋したてやなりしぞ不思議ふしぎなる。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つゞいて飛込とびこまんとする獅子しゝ目掛めがけて、わたくし一發いつぱつドガン、水兵すいへい手鎗てやり突飛つきとばす、日出雄少年ひでをせうねん素早すばやをどらして、入口いりくちとびらをピシヤン。
つてゐるうちに、れないから足を踏外ふみはづして三途川づのかはさかトンボを打つてドブーリ飛込とびこむと、岩
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
飛込とびこんだ松根余吾之介、一刀の背を返して、あッという間に二三人叩き伏せました。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
喧嘩けんくわではい、とて流石さすがひかねてくちつぐめば、でもおまへ大層たいさうらしく飛込とびこんだかられは一喧嘩けんくわかとおもつた、だけれどしようさん今夜こんやはじまらなければれから喧嘩けんくわおこりッこはいね
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
海からさっと吹く風に、本のペエジを乱しながら、例のちよこ/\、をばさん、つうちやんと呼びざまに、からりとけて飛込とびこんだ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とぴよこ/\出掛でかけましたが、おろかしいゆゑ萬屋よろづや左衛門ざゑもん表口おもてぐちから這入はいればよいのに、裏口うらぐちから飛込とびこんで、二ぢう建仁寺垣けんねんじがき這入はいり、外庭そとにはとほりまして、漸々やう/\庭伝にはづたひにまゐりますと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その日の夜汽車で、同じ宿屋に飛込とびこんだ矢留瀬苗子は、女中の姿が見えなくなると
どうかして、座敷へ飛込とびこんで戸惑いするのをつかまえると、てのひらで暴れるから、このくらい、しみじみと雀の顔を見た事はない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
突然いきなり人のとこ飛込とびこんで硝子戸へ衝突ぶツかり、障子を打毀うちこわすなどという乱暴なのもありますが、この三八は誠に人のい親切な男で、真実まめに世話をするので人に可愛がられますけれども
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斬られたのは、佐の市ではなくて、刃の下へ飛込とびこんで来た妾のお元
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
はだか飛込とびこんだ、侍方さむらひがたふねりはつたれども、ほのほせぬ。やつとのおもひでふねひつくらかへした時分じぶんには、緋鯉ひごひのやうにしづんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これ日本にほんの事で、或旅僧あるたびそうたうげえてますと、寒風かんぷうはげしくフーフーツ吹捲ふくまくりますのでたまねて杉酒屋すぎさかやといつて、のきしたに杉を丸く作つて、出してありまする居酒屋ゐざかや飛込とびこんで、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
パッと飛込とびこんだ美奈子は、しばらく得意の綺麗なブレストを見せておりましたが、やがて沖から小山のように押し寄せて来た巨大な浪が、数十尺の真黒な屏風びょうぶを押し倒したように、あっという間もなく
三度そっしおをはねたが、またちょこちょこと取って返して、かしら刎退はねのけ、衣類きものを脱いで、丸裸になって一文字に飛込とびこんだ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たゞ姿すがただけせればい。温泉宿ゆのやど二階にかいたかし。あの欄干らんかんから飛込とびこませろ、……女房にようばうかへらぬぞ、女房にようばうかへらぬぞ、とはね天井てんじやうをばさばさらせろ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われさ行水ぎょうずいするだらかえる飛込とびこ古池ふるいけというへ行けさ。化粧部屋のぞきおって白粉おしろいつけてどうしるだい。白鷺しらさぎにでも押惚おっぽれたかと、ぐいとなやして動かさねえ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やれ、おくれた。みづあさいで、飛込とびこめばたすかつたに。——なんまをさうやうもない、旦那だんながおつれかたでがすかの。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だれだとおもふ、かゝあながわづらひでなけりや、小兒がきなんぞれちやねえ。う、やつこ思切おもひきつて飛込とびこめ。生命いのちがけで突入つツぺえれ! てめえにやあついたつて、ちやんにはぬるいや。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
怒鳴どなつた。うちてきありとて、ぐにいのしゝごと飛込とびこまないのが、しかし色男いろをとこ身上しんしやうであるとおもへ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
池で、船の中へ鯉が飛込とびこむと、弟子たちが手をつ、立騒たちさわぐ声が響いて、最初は女中が小船こぶねで来た。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、堤尻どてじり駈上かけあがつて、掛茶屋かけぢゃやを、やゝ念入りな、間近まぢかいちぜんめし屋へ飛込とびこんだ時は、此の十七日の月の気勢けはいめぬ、さながらの闇夜あんやと成つて、しのつく雨に風がすさんだ。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やうな大魚たいぎょしかし出世魚しゅっせうおと申す鯉魚りぎょの、お船へ飛込とびこみましたと言ふは、類希たぐいまれな不思議な祥瑞しょうずい
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのしたにありける露地ろぢいへ飛込とびこんで……打倒うちたふれけるかはりに、二階にかい駈上かけあがつたものである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
身のおきどころがなく成つて、紫玉のすそが法壇に崩れた時、「ざまを見ろ。」「や、身を投げろ。」「飛込とびこめ。」——わツと群集の騒いだ時、……たまらぬ、と飛上とびあがつて、紫玉をおさへて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其の事をごとに、姉はおもておお習慣ならい、大方もの身体からだから姉の顔をかすめて、暖簾のれんくぐつて、部屋ここまで飛込とびこんで来たのであらう、……其よ、ひやうのないいや臭気においがするから。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一度いちどは、あまりのくるしさに、三國沿岸みくにえんがんで……げて……いや、これだと女性ぢよせいちかい、いきなり飛込とびこんでなうとおもつた、とふほどであるから、一夏ひとなつ一人旅ひとりたびで、山神さんじんおどろかし、へびんで
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにより、いやな、可恐おそろしかみなりつたのです。たゞさへれようとする心臟しんぞうに、動悸どうきは、破障子やれしやうじあふるやうで、ふるへるみづの、みづよりさき無數むすうが、くちはな飛込とびこんだのであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わしたまらず真逆まツさかさまたきなか飛込とびこんで、女瀧めたきしかいたとまでおもつた。がつくと男瀧をたきはうはどう/\と地響ぢひゞきたせて、山彦やまびこんでとゞろいてながれてる、あゝちからもつ何故なぜすくはぬ、まゝよ!
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふさいで飛込とびこまうとしたけれども、あかるかつたからおどいて退さがつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(やあおとっさん——彼処あすこおっかさんと、よその姉さんが。……)——後々のちのち私は、何故、あの時、その船へ飛込とびこまなかったろうと思う事が度々たびたびあります。世をはかなむ時、病にくるしんだ時、恋に離れた時です。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)