)” の例文
南洋なんようのあまり世界せかいひとたちにはられていないしまんでいる二人ふたり土人どじんが、難船なんせんからすくわれて、あるみなといたときでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
泥濘ぬかるみ捏返こねかへしたのが、のまゝからいて、うみ荒磯あらいそつたところに、硫黄ゆわうこしけて、暑苦あつくるしいくろかたちしやがんでるんですが。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この花粉には色があって、それが着物にくと、なかなかその色が落ちないので困る。ゆえに、人によりユリの花をきらうことがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「よろしゅうございます。南十字サウザンクロスきますのは、つぎだい三時ころになります」車掌しゃしょうは紙をジョバンニにわたしてこうへ行きました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あいちやんは心配しんぱいさうに木々きゞあひだのぞまはつてゐましたが、やが其頭そのあたま眞上まうへにあつたちひさなとがつたかはに、ひよいときました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
旅人なら、夕陽ゆうひの光がまだ、雲間くもまにあるいまのうちに早くどこか、人里ひとざとまでたどりいておしまいなさい——と願わずにいられない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懸賞百兩ときいて其日から河にどぶん/\とび込む者が日に幾十人なんじふにんさながらの水泳場すゐえいぢやう現出げんしゆつしたが何人だれも百兩にありくものはなかつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『ああまだ膝小僧ひざこぞうにもとゞいてないよ。さうさな、やすみなしの直行ちよくかう夕方ゆふがたまでにはけるだらう。これからが大飛行だいひこうになるんだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
一二月いちにがつころのような小枝こえだに、黄色きいろはなけたり、また蝋梅ろうばいのようにもっとはやゆきなかかをりたかくほこるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
芸術上ばかりではない。私は文芸に関係が深いからとかく文芸の方から例を引くが、その他においても決してかないものはない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かねての約に従ひ短歌の批評を試みんと思ふに敷多くしていづれより手をけんかと惑はるるに先づ有名なる落合氏のより始めん。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
明治十二年めいじじゆうにねんふね横濱よこはまきまして、そのころ出來できてゐました汽車きしや東京とうきよう途中とちゆう汽車きしやまどからそこらへん風景ふうけいながめてをりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
床屋とこや伝吉でんきちが、笠森かさもり境内けいだいいたその時分じぶん春信はるのぶ住居すまいで、菊之丞きくのじょう急病きゅうびょういたおせんは無我夢中むがむちゅうでおのがいえ敷居しきいまたいでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
本妙寺にまつられてある、加藤清正公の神苑で、凱旋祝賀会があったときにも、私は白色銅葉章ようしょうと従軍徽章きしょうを胸にけた父と一緒に行った。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
ふねおかきますと、宝物たからものをいっぱいんだくるまを、いぬさきってしました。きじがつないて、さるがあとをしました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つばめうれしさうにとうさんを尻尾しつぽはね左右さいうふりながら、とほそらからやうやくこのやまなかいたといふはなしでもするらしいのでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
小使が行ってみると、若い先生が指を動かしてしきりに音を立てているかたわらに、海老茶えびちゃはかまけたひで子は笑顔えがおをふくんで立った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そのうち、女の子はある森にたどりきました。もうくらくなっていましたが、また、もうひとりこどもが出て来て、肌着はだぎをねだりました。
からだにぴったりついた、黒いシャツとズボンをけた黒ふくめんの男が、金庫の前にしゃがんで、なにかしているのです。
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
戸の隙間すきまから冷え冷えとみ込むようになって来たので、品子とリリーとは前よりも一層いて、ひしと抱き合って、ふるえながら寝た。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
正月のはじめ亜米利加アメリカに出帆して浦賀にくまでと云うものは風の便りもない、郵便もなければ船の交通と云うものもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
みんなは、じぶんの身の安全をよろこぶまえに、まず考えたことは、仲間なかまのものが、ぶじにいたかどうかということでした。
その外、都にて園に植うる滝菜たきな水引草みづひきそうなど皆野生す。しょうりょうという褐色かっしょくの蜻蜓あり、群をなして飛べり。るる頃山田の温泉にきぬ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いかにもその通り……按摩のくせに、千賀春なんぞに入揚げようというやつですから、のっぺりとして、柄にもねえ渋いものをけております」
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
列車がく時間になると、表の通りに出て行ってもうそろそろ来る時分だが、お客でもあったのかと独り言をいい、落ち着かずそわそわしていた。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それでも予定よてい場所ばしょころまでには、すこしはわたくしはらすはってまいりました。『縦令たとえ何事なにごとありともなみだすまい。』——わたくしかたくそう決心けっしんしました。
あるいは実業家になりたいというは、いかなるところより起こった考えかとせんじつめると、実業家は美服をけ茶屋に行ってドンチャンやるにある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかしうち連中やつらは女子供ばかりだから屹度きっと気がかぬに相違ない。お前に頼むから『木』の字を『本』に直してくれ
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
それが瓢形ひさごがた駒岡こまをか記入きにふしたる銀鍍金ぎんめつき徽章きしやうを一やうけ、おなしるし小旗こはたてたくるま乘揃のりそろつて、瓢簟山ひようたんやまへと進軍しんぐん?したのは、なか/\のおまつさはぎ※
「ふん。不実同士そろッてやがるよ。平田さん、私がそんなにこわいの。きゃしませんからね、安心しておいでなさいよ。小万さん、いでおくれ」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
きしくさなかかはづ剽輕へうきんそのはないて、それからぐつとうしろあしみづいてむかふきしいてふわりといたまゝおほきなみはつてこちらをる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
市街まちはづれの停車塲ステーシヨンから客待きやくまち馬車ばしやで、海岸かいがん附近まぢかある旅亭はたごやき、部室へやさだまりやが晝餉ひるげもすむと最早もはやなにことがない、ふね出港しゆつこうまではだ十時間じかん以上いじやう
鈴生すゞなりにひとせたふねが、對岸たいがんくまで、口惜くやしさうにしてつた天滿與力てんまよりきの、おほきなあかかほが、西日にしびうつつて一そうあか彼方かなたきしえてゐた。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
この一舞踏ひとをどりんだなら、ひめ居處ゐどころけ、このいやしいを、きみ玉手ぎょくしゅれ、せめてもの男冥利をとこみゃうりにせう。
何處どこからかうおまへのやうなひとれの眞身しんみあねさんだとかつてたらどんなにうれしいか、くびたまかじいてれはそれぎり往生わうじやうしてもよろこぶのだが
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いくら釣っても、ざすふなはかゝらず、ゴタルと云うはぜの様な小魚こざかなばかり釣れる。舟を水草みずくさの岸にけさして、イタヤの薄紅葉うすもみじの中を彼方あち此方こちと歩いて見る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ドーレ。と木綿もめんはかまけた御家来ごけらいが出てましたが当今たゞいまとはちがつて其頃そのころはまだお武家ぶけえらけんがあつて町人抔ちやうにんなど眼下がんか見下みおろしたもので「アヽ何所どこからたい。 ...
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
けるに伴なって雪は巧くけて落ちた。左足の方は済んだ。今度は右のをと、左足を少し引いて、又
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
謙作はこせこせとワイシャツを着、ズボンをけ、靴もあるので靴も穿き、それから上衣うわぎに手をしながら見ると、時計も紙入かみいれもちゃんと箱の中に入れてあった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
麒麟という奴は何だってんな長い首をけているんだろう。彼奴あいつに洋服を着せたら、随分ハイカラになるだろうなんて思っている中に、忠公が鸚鵡おうむに手を突付かれた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
け方は石鏃に笴を着くるとことなる所無からん。ふくらみ有る物はことを固着するに適したり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
さうしたら此陰気な法衣に包まれてゐる代りに、外の美しい騎士のやうに絹と天鵞絨の袍を着て、金の鎖を下げて、剣を佩いて、美しい鳥の羽毛をけるやうになるだらう。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
やう/\のこと、くに役人やくにん世話せわ手輿てごしせられていへきました。そこへ家來けらいどもがけつけて、お見舞みまひをまをげると、大納言だいなごんすもゝのようにあかくなつたひらいて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
大原満は父母を捜して此方こなたへ来り「これは阿父おとっさんも阿母おっかさんもお揃いでオヤ伯父おじさんも、オヤ伯母おばさんも」と驚きたる時横合より「満さーん」と懐かしそうにすがく娘
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いっそう惨酷さんこくなのは、この妙齢の女ののろわれたのが、ただその顔面だけにとどまるということです。けている衣裳は大名の姫君にも似るべきほどの結構なものでありました。
児をいつけたるひもは藤のつるにて、たる衣類は世の常の縞物しまものなれど、すそのあたりぼろぼろに破れたるを、いろいろの木の葉などを添えてつづりたり。足は地にくとも覚えず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大君おほきみみことかしこみればきていひしなはも 〔巻二十・四三五八〕 防人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
土井は最初そこへいたばん、筆を執るやうな落着きがないのに、ちよつと失望しつばうしたが、家主やぬしすまつてゐる家のはなれを一しつりておいたからと、甥が言ふので、彼はそれを信じて
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかし、これでやっと東京へいたのだ、と思うと、かれはやはりうれしくなりました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)