この)” の例文
このむが故に山口惣右衞門始め三人の頼みに因て藤五郎兄弟並びに伴建部の夫婦ども上下じやうげ六人を我が家に連歸つれかへり何くれとなく厚く周旋せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
李克りこくいはく、『たんにしていろこのむ。しかれどもへいもちふるは、司馬穰苴しばじやうしよぐるあたはざるなり』と。ここおい文矦ぶんこうもつしやうす。
樹木じゆもくには、それ/″\日陰地ひかげちにもよくそだや、また日陰ひかげ日陽ひなた中間ちゆうかんのところをこのなど種類しゆるいによつて、土地とちてき不適ふてきがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それをミリガン夫人ふじんやアーサに知られることをこのまなかった。それを知られたら、あの人たちはわたしをきらうようになるだろう。
生徒のある者は無智であると同時に無作法ぶさはふで粗暴で手におへぬが、他の子達は素直で勉強する心があり、このましい性質を表はしてゐる。
なんでも、しんとした、みわたったよるが、ほしたちには、いちばんきなのです。ほしたちは、さわがしいことはこのみませんでした。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのうへ個人こじんには特殊とくしゆ性癖せいへきがあつて、所謂いはゆるきらひがあり、かふこのところおつきらところであり、所謂いはゆるたでむしきである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
これにてつみ成立せいりつし、だいくわい以後いごはそのつみによりていかなる「ばつ精神的せいしんてきばつ心中しんちうおに穿うがでゝます/\せいます/\めうなり。多言たげんするをこのまず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
とにかく大変人は模倣を喜ぶものだということ、それは自分の意志からです、圧迫ではないのです。このんで遣る、好んで模倣をするのです。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分のこのみ、自分の思想、などと云うものはまだそうよく知り合わない千世子に明す事は一寸もないと云って好い位だった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
羊よりは、わかい牝牛めうしこのむというのは初耳で、わたしは話をそこへ向けると、若者わかものは、先年、ロボが牝牛をとり殺したという実見談をはじめた。
ひと交際かうさいすることかれいたつてこのんでゐたが、其神經質そのしんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆゑに、みづかつとめてたれとも交際かうさいせず、したがつまた親友しんいうをもたぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
或る人民のこのんでくらふ物を他の人民はててかへりみず、或る人民の食ふ可からずとするものを他の人民はよろこんで賞玩せうくわんするの類其れいけつして少からす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「ああ! どうぞ勘弁かんべんしてください!」とおとここたえた。「このんでいたしたわけではございません。まったくせっぱつまって余儀よぎなくいたしましたのです。 ...
これから土産みやげつてく、西片町にしかたまち友染いうぜんたちには、どちらがいかわからぬが、しかず、おのこのところつてせんには、と其處そこあんのをあつらへた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほどこのもしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それからもうひと道中どうちゅう姿すがたくてはならないのが被衣かつぎ……わたくし生前せいぜんこのみで、しろ被衣かつぎをつけることにしました。履物はきものあつ草履ぞうりでございます。
けつしてこゝろよく解決かいけつされるはずでないことをつて人々ひとびといくおろかでもみづかこのんで難局なんきよくあたらうとはしないのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
城内じょうないの者ならば、なにも、このんであんなところにひそんでいる必要ひつようはあるまい。第一、なんだかそのかげ大人おとななみの人間にしてはすこし小さい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。
わが日頃ひごろちかひそむくものなればおほせなれども御免下ごめんくだされたし、このみてするものはなきいやしきわざの、わが身も共々とも/″\牛馬ぎうばせらるゝをはぢともせず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「じゃまあ! 近藤氏の世話にでもなるか。学校なんかどうだっていいのだが、好きこのんでよすにも当らないからな」
青木の出京 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
といっているとき、大音響だいおんきょう大閃光だいせんこうとに着飾ってこのましからぬ客がわれわれの頭の上からとび込んできたのであった。
ころは夏なりしゆゑ客舎やどりしいへにはかげにむしろをしきて納涼すゞみ居しに、主人あるじは酒をこのむ人にて酒肴しゆかうをこゝに開き、は酒をばすかざるゆゑ茶をのみて居たりしに
藥種屋 (藥瓶を渡しながら)これをばおこのみの飮料いんれうれてませられい。たとひ二十人力にんりきおじゃらしませうとも、立地たちどころ片附かたづかッしゃりませう。
鼻をこのもしい香りに、編笠をかかげて見返えりますと、僕の肩にかたげられたは、今ての園咲そのざきの白つつじが、白く涼しく匂っているのです。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ちょうど袖子そでこがあの人形にんぎょうのためにいくつかのちいさな着物きものつくってせたように、とうさんはまた袖子そでこのために自分じぶんこのみによったものをえらんでせていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うもへるさ』とつて三月兎ぐわつうさぎ附加つけくわへました、『「わたしふところのものこのむ」とつても、「わたしこのむところのものふ」とつてもおなことだ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
昔時むかしシヽリーといふ島のダイオインシアスといふ国王こくわうがございました。の王がこのんで詩を作りますが、ぞくにいふ下手へた横好よこずきで、一かう上手じやうずでございません。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しからば金解禁きんかいきん決行けつかうせられた一ぐわつ十一にち以後いご經濟界けいざいかいはどうなるであらうか。爲替相場かはせさうば動搖どうえうため物價ぶつか動搖どうえうすることは、商賣社會しやうばいしやくわいもつとこのまざることである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
とまれ、十年前ねんまへあきの一乳色ちゝいろ夜靄よもやめた上海シヤンハイのあの茶館ツアコハン窓際まどぎはいた麻雀牌マアジヤンパイこのましいおといまぼく胸底きようていなつかしい支那風しなふうおもさせずにはおかない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なになにやら、一こう見当けんとうかなくなった藤吉とうきちは、つぎってかえすと、箪笥たんすをがたぴしいわせながら、春信はるのぶこのみの鶯茶うぐいすちゃ羽織はおりを、ささげるようにしてもどってた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
誰が、好きこのんでやってるわけじゃあるまいし、出来るものなら、さっさと足を洗いたいじゃないか
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
りわたったなつの日、風の夜、ながれる光、星のきらめき、雨風あめかぜ小鳥ことりの歌、虫の羽音はおと樹々きぎのそよぎ、このましいこえやいとわしい声、ふだんきなれている、おと、戸の音
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
わたくしはこの小娘こむすめ下品げひんかほだちをこのまなかつた。それから彼女かのぢよ服裝ふくさう不潔ふけつなのもやはり不快ふくわいだつた。最後さいごにその二とうと三とうとの區別くべつさへもわきまへない愚鈍ぐどんこころ腹立はらだたしかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
国々の珍しい切手ばかしをこのみをするのだが、池田氏のはそんな事には頓着なく、どんな有り触れた物でも構はない、手当り次第に集めるので、かうして掻き集めたのが
それは下町の町人の娘で、文政ぶんせい四年生れの今年十三になるのであるが、ういふわけか此世このよに生れ落ちるとから彼女かれは明るい光を嫌つて、いつでも暗いところにゐるのをこのんだ。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
祇園精舍の鐘われがねならば、聞くものこれをいとはしとし、われがねならずばこのましとせむ。沙羅雙樹の花しほればなならば、見る人これより去り、しほれ花ならずばこれに就かむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あのこのんでなった狗の形に、再び戻して遣ってくれぬか。そうしたら己は、沙の上を腹這って、己の前に来た時、この廃れものを、この脚で踏み附けて遣ることが出来よう。
理論だけの無政府主義的な思想(あるひは、このみ)もかなり持つてゐたやうである。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
ことに友達は目立ない澁いつくりを好んだ。流行や周圍に負ける人ではなかつた。吟味のゆき屆くたちだつた。西洋のお婆さんになつたとしても、このみのよいことにちがひはない筈だ——
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「何もわたし、女だてらに好きこのんで、探偵なぞになったわけではありませんのよ。別段この仕事に、意義を感じてるわけでもありませんし……ただ……父が亡くなったもんですから」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
先生、諭吉に序文じょぶんめいず。諭吉は年来ねんらい他人の書にじょするをこのまずして一切そのもとめ謝絶しゃぜつするの例なれども、諭吉の先生における一身上しんじょう関係かんけいあさからずして旧恩きゅうおんの忘るべからざるものあり。
それと同じように、天下を取るというような連中も、人殺しをするような連中も、自分でいてこのんでやるわけではない、どうでもそう行かなければならないように糸であやつられている。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ある商人の書画をこのみてもてあそぶものありしが、その購入する所を聞くに、金岡かなおかが観音の像一てい代価千両なり。徽宗きそうの桃に鳩の絵わずかに長さ五、六寸に広さ六、七寸なる小幅が同じく千両なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
民情に通じ、下賤げせんきわめることをもって奉行職の一必要事とかんじている越前守は、お役の暇を見てよくこうして江戸の巷を漫然まんぜんと散策することを心がけてもいたし、またこのんでもいたのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
巌谷いはや紹介せうかいで入社したのが江見水蔭えみすゐいんです、この人は杉浦氏すぎうらし称好塾せうこうじゆくける巌谷いはや莫逆ばくぎやくで、素志そしふのが、万巻ばんくわんの書を読まずんば、すべから千里せんりの道をくべしと、つねこのんで山川さんせん跋渉ばつせふ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
檐頭えんとうに立寄りて、何にてもよし食ふべきものありやと問ふに、素麺そうめんの外には何物もあらずと答ふ。止むなくこれを冷させて食ふ。常は左程このまざるものなれど、そのうまきことたとふるにもの無し。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
それで、野村は悪友達から二川の事をいわれるのをあまこのまなかった。