うち)” の例文
あるときは、つくえまえったり、すわったりしました。いえうちあるいてみました。どうかして、それをおもそうとこころみました。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
どのみち余計なことだけれど、お前さんを見かけたから、つい其処そこだし、彼処あそこうちの人だったら、ちょいと心づけてこうと思ってさ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うちよりけておもていだすは見違みちがへねどもむかしのこらぬ芳之助よしのすけはゝ姿すがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かたつかんで、ぐいとった。そので、かおさかさにでた八五ろうは、もう一おびって、藤吉とうきち枝折戸しおりどうちきずりんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なあおすみ、お豊がこう化粧おつくりした所は随分別嬪べっぴんだな。色は白し——姿なりはよし。うちじゃそうもないが、外に出りゃちょいとお世辞もよし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
宗助そうすけ二人ふたり七條しちでうまで見送みおくつて、汽車きしやまでへやなか這入はいつて、わざと陽氣やうきはなしをした。プラツトフオームへりたときまどうちから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取ても卅二歳少々ちと婆々ばゝすぎますけれども其代りしうと厄介やくかいも子供もなくうちは其女獨りにて若御内儀おかみさんに成ならば其こそ/\貞女ていぢよ御亭主ごていしゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上邸うちの久太夫のお長屋は、割場わりばといっていたもとの会所の跡で、板敷のところを道場にして、そこに久太夫が一人で住んでいる。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
花下かかにある五萼片がくへん宿存しゅくそんして花後かごに残り、八へんないし多片の花弁かべんははじめうちかかえ込み、まもなく開き、かおりを放って花後に散落さんらくする。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ただ今の時勢人情にては、遠国へ渡海して数多あまたの国々を検査し、うち善悪をえらび開業に掛ることは、日本国の人情においていまだきざさず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
山野のうちのお雪という小間使が僕の腹心なんだ。二度目にあすこへ行って雇人達を一人一人調べた時、適当なのを選り出したのだ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
、三このいのりをりかえしてうちに、わたくしむねには年来ねんらいみこと御情思おんなさけがこみあげて、わたくし両眼りょうがんからはなみだたきのようにあふれました。
わたくしは遠江とおとうみ浜松はままつにご在城ざいじょうの、徳川家康とくがわいえやすさまのおんうちでお小姓こしょうとんぼぐみのひとり、万千代まんちよづきの星川余一ほしかわよいちというものでござります
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なおも並木で五割酒銭さかては天下の法だとゆする、あだもなさけも一日限りの、人情は薄き掛け蒲団ぶとん襟首えりくびさむく、待遇もてなしひややかひらうち蒟蒻こんにゃく黒し。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日本人にほんじん歐文おうぶん場合ばあひ、この慣例くわんれい尊重そんちようして、せうよりだいるのは差支さしつかへないが、そのうち固有名こいうめい斷然だんぜんいぢくられてはならぬ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
當時の武鑑をけみするに、連歌師の部に淺草日輪寺其阿きあと云ふものが載せてあつて、壽阿彌は執筆日輪寺うち壽阿曇奝どんてうと記してある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
子供達の心は、たちまちのうちに兄に対する憎しみの心で満ち満ちたものと見え、一番気の強そうな、額の大きな子が、とがった声で
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
其間そのあひだかほあはせることがあつても、くちでは其事そのことんにもはない。そしてうちかへつてから葉書はがきす。チヨイト面白おもしろいものだよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
一方いつぽう屋外おくがい避難ひなんせんとする場合ばあひおいては、まだきらないうち家屋かおく倒潰とうかいし、しか入口いりぐちおほきな横木よこぎ壓伏あつぷくせられる危險きけんともなふことがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何うかしたかのなんのという騒ぎじゃございやせん、わっちも先生もうやって萩原様の地面うち孫店まごだなを借りて、お互いにすまっており
『いや、いや、如何どうかんがへても今時分いまじぶんあんなふねこの航路かうろ追越おひこされるはづはないのだ。』とる/\うち不安ふあん顏色いろあらはれてた。
父の茶道はもとよりしかるべきやぶうちの宗匠について仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性はいたずらな風流を欲しなかった。
さうするとむきつたあとまめ陸穗をかぼかつしたくちつめたいみづやういきほひづいて、四五にちうちあをもつはたけつち寸隙すんげきもなくおほはれる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その暗いまるうちやみの中のところどころに高くそびえたアーク燈が燦爛さんらんたる紫色の光を出してまたたいていたような気がする。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
が、しばらくすると中根なかねはなしにもきがた。そして、三十ぷんたないうちにまた兵士達へいしたち歩調ほてうみだれてた。ゐねむりがはじまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そとの弓うちの弓より生る、そのさまかの流離さすらひの女、日の爲に消ゆる霧かとばかり戀の爲に消たる者の言葉に似たり) 一三—一五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そのうちにやつとがついてると、あのこん水干すゐかんをとこは、もう何處どこかへつてゐました。あとにはただすぎがたに、をつとしばられてゐるだけです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けれども妙に間が合わなくなった夫婦の気持は、二た幕目の「治兵衛うちの場」を見ている内に一層変にさせられてしまった。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
路地ろじうちしんとしているので、向側むこうがわの待合吉川で掛ける電話のりんのみならず、仕出しを注文する声までがよく聞こえる。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このはもと根株ねかぶからなゝつのみきわかれてゐましたが、うち五本ごほん先年せんねん暴風ぼうふうれていま二本にほんみきだけとなつてしまひました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
然し随意に暇の得られない自分は進んで之を払おうともしなかったうちに、金峰山図幅が出版されて、奥仙丈の位置や朝日岳の名が公表された。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
仮小屋かりごやまくうちまたは青空の下で、賞翫しょうがんする場合のほうが昔から多く、それはまたわたしたちの親々の、なにか変った仕事をする日でもあった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
余所目よそめにもうらやまるゝほどしたしげに彼れが首に手を巻きて別れのキスを移しながら「貴方あなた、大事をおとりなさい、うちにはわたくしが気遣うて待て居ますから」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
最近まるうち辺りの会社に勤めだしたらしい。彼は白麻の背広をかなぐりすてながら、慌て気味にバルコニーへ出てきた。
街頭の偽映鏡 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
モン長 わしはもとより、したしいれにもさぐらせたれども、せがれめは、たゞもうそのむねうちに、何事なにごとをもかくして、いっかな餘人よじんにはらせぬゆゑ
今の社会は隅から隅まで腐敗してゐるが、云ふうち何が一番腐敗してゐるだらうと云つたら政治家と宗教家だ子。此二つは殆んどお咄しにならん子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
もんれいとほあけぱなしだからたゝ世話せわいらず、二人ふたりはずん/\とうちはひつてたが草木くさき縱横じゆうわうしげつてるのでラクダルの居所ゐどころ一寸ちよつとれなかつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこで出る所を知らないで困つている時に、鼠が來て言いますには、「うちはほらほら、そとはすぶすぶ」と言いました。
風「常談は措いて、いづれ四五日うちとくと話を付けるから、今日のところは、久しぶりで会つた僕等の顔を立てて、何も言はずに帰つてくれ給へな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
主翁はその音を聞きながら苦笑をうかべて、何か口のうちでぶつぶつ云った。そのうめきが女房の耳におかしく聞えた。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
むかしの東海道の日坂にっさか宿しゅくは、今日では鉄道の停車場ていしゃじょうになつてゐない。今日のくだり列車は金谷かなやほりうち掛川かけがわの各停車場を過ぎて、浜松へ向つてゆく。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
然うなると周三はさすがにうちかへりみて心にづる、何だか藝術の神聖をがすやうにも思はれ、またお房に藝術的良心りやうしん腐蝕ふしよくさせられるやうにも感ずる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たまりかねてその子家鴨こあひる自分じぶん棲家すみかをとびしてしまいました。その途中とちゅうさくえるときかきうちにいた小鳥ことりがびっくりしてったものですから
くれのお席書せきがきの方が、試験よりよっぽど活気があった。十二月にはいると西にしうち一枚を四つに折ったお手本が渡る。
なおそのうち尼が五十名で男の坊さんは六十余名、いずれも旧教派の僧侶ですから酒を飲み肉を喰うことは平気です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
即刻そっこく間諜座かんちょうざおもむキ、「レビュー・ガール」のうちヨリ左眼ニ義眼ヲ入レタル少女ヲ探シ出シ、彼女ノ芸名ヲ取調ベ
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
矢は如何なる物のうちに入れおききしかつまびらかならざれど、獸皮じゆうひ或は木質もくしつを以て作りたる一種の矢筒やづつりしは疑無うたがいなからん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
明治二十六年の夏、子等の集ひきて、祖先を初め、無縁となれるうちの亡き魂をまつりて供養しけるうれしさに。
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
なあに構うものか、乃公おれしにも何もせぬからうちのおッさんによろしくいっれ、ただ江戸に参りましたとえばれで分る。鉄屋くろがねやも何とも云うことが出来ぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(三六)かうきよき、(三七)かたちそむいきほひきんずれば、すなはおのづかめにけんのみいまりやうてう相攻あひせむ。輕兵けいへい鋭卒えいそつかならそとき、(三八)老弱らうじやくうちつかれん。