あつ)” の例文
家の中はまっくらで、しんとして返事へんじをするものもなく、そこらにはあつ敷物しきもの着物きものなどが、くしゃくしゃらばっているようでした。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
許され代々村長役たるべき旨仰付おほせつけられしかばよろこび物にたとへん方なく三浦屋の主人并びに井戸源次郎を始め其事に立障たちさはりし人々にあつく禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子供こどもは、たくさんの土産物みやげものと、おかねとをって、はるばると故郷こきょうかえってきたのであります。そして、むら人々ひとびとあつくおれいもうしました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これともうすもひとえ御指導役ごしどうやくのおじいさまのお骨折ほねおりわたくしからもあつくおれい申上もうしあげます。こののちとも何分なにぶんよろしうおたのもうしまする……。
「あのあおむけている首筋くびすじてやろうか。だいぶあつよろいているが、あの上から胸板むないたとおすぐらいさしてむずかしくもなさそうだ。」
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
平岡のうちまへた時は、くもつたあたまあつく掩ふかみ根元ねもと息切いきれてゐた。代助はいへに入るまへづ帽子をいだ。格子にはしまりがしてあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またこのほんくにあたつて、松本龍太郎まつもとりゆうたろうさんにいろ/\御厄介ごやつかいになつたことを、こゝであつくおれいまをしあげてきます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
やまにはおほきな檜木ひのきはやしもありますから、そのあつ檜木ひのきかはいたのかはりにして、小屋こや屋根やねなぞをくこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
申上もうしあげたいのは山々やまやまでござんすが、ちとあつかましいすじだもんでげすから、ついその、あっしのくちからも、申上もうしあげにくかったようなわけでげして」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして、柔和にゅうわで子供ずきな宮内の手当てあてあつかったために、こうしてふたりとも、もとのからだに近いまでに、健康をとりもどしてきたのだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふん、あつかましいお前さんの云ひさうなことだ。さうだらうと思つてゐた。お前さんがしきゐまたいだときに、それは、もう跫音あしおとで分つたからね。」
しからば何ゆえにこの例を掲げたかというに、ごろの行状をつつしみ、日常の信用をあつうするだけの慎みをなさねばならぬことを勧めたいからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
現今いまではそれがつたといふのは、一おそうた暴風ばうふうために、あつ草葺くさぶき念佛寮ねんぶつれうはごつしやりとつぶされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
威王ゐわう莊周さうしうけんなるをき、使つかひをして(三一)へいあつうしてこれむかへしめ、(三二)ゆるすにしやうすをもつてす。莊周さうしうわらつて使者ししやつていは
地の見える様な頭にも、昔は、左から分けたあつい黒々とした髪があったし、顔も油が多く、柔い白さを持って居た。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ゆめからめたおもひで、あつぼつたかつたかほでた、ひざいて、判然はつきり向直むきなほつたときかれいままでの想像さうざうあまりなたはけさにまたひとりでわらつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平顔の目の小さいくちびるのあつい、見たとおりの好人物こうじんぶつ、人と話をするにかならず、にこにことわらっている人だ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この冬季とうき寒威かんゐじつはげしく、河水かすゐごときはその表面へうめん氷結へうけつしてあつ尺餘しやくよいたり、人馬じんばともそのうへ自由じいうあゆ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
屋上やねの雪は冬のうちしば/\掘のくる度々に、木鋤こすきにてはからず屋上やねそんずる㕝あり。我国の屋上やねおほかたは板葺いたぶきなり、屋根板は他国にくらぶればあつひろし。
またいはには、青紫あをむらさきのちしまぎきょう、いはぎきょう、はな白梅はくばいて、まめのようにあつぼつたいいはうめ、鋸齒のこぎりばのある腎臟形じんぞうがた根元ねもとして
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
一々いち/\名状めいじやうすべからず。大は口徑一尺餘。小は口徑一寸許り。たかあつさ亦區々なり。圖版中右の上に畫く所は形状けいじやうしゆとす、大小の比例は必しも眞の如くならず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
端折はしょりを高く取って重ねあつの新刀を引き抜き、力に任せてプスーリ一刀いっとうあびせ掛けましたから、惣次郎もひらりと身を転じて、脇差の柄に手を掛け抜こうとすると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
で、濱島はまじま此時このとき最早もはやこのふねらんとてわたくしにぎりて袂別わかれ言葉ことばあつく、夫人ふじんにも二言ふたこと三言みことつたのち、その愛兒あいじをば右手めていだせて、その房々ふさ/″\とした頭髮かみのけでながら
鉄の格子こうしはがんじょうで、目が細かかった。かべは三じゃく(約一メートル)もあつみがあった。下のゆかは大きな石がしきつめてあった。ドアは厚い鉄板をかぶせてあった。
たいそうあつくて、美しいじゅうたんです。けれども、ニールスは、おしいことにひどく使い古してあるな、と思いました。じっさい、もうぼろぼろになっているのです。
その途端に侍の手が刀の柄前つかまえにかかったと思うと、かさあつの大刀が大袈裟おおげさに左近を斬り倒した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うから返したい/\と思ては居たがドウもう行かずに、ヤッと今年は少し融通が付いたから、この二朱のお金を大阪屋にもっいっあつう礼を述べて返して来いと申して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
貴重品きちようひん一時いちじ井戸ゐどしづめることあり。地中ちちゆううづめる場合ばあひすなあつ五分ごぶほどにても有效ゆうこうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
宗忠の持ってきた怪しげな縞毛布が、二人に一枚かけられてある。私は、彼らが手にとって見て、ゾッキ毛糸だと驚いたあつ羅紗らしゃの外套を着たまま、有合せの蒲団を恐る恐るかけた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
まいまい名工めいこうがのみでってつけたような、あつかたかんじで、くろえるほどの濃緑色のうりょくしょくは、エナメルをぬったようにつややかで、のあたるほういたいくらいひかり反射はんしゃするのだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
羽二重はぶたへ小袖羽織こそでばおり茶宇ちやうはかま、それはまだおどろくにりないとして、細身ほそみ大小だいせうは、こしらへだけに四百兩ひやくりやうからもかけたのをしてゐた。こじりめたあつ黄金きん燦然さんぜんとして、ふゆかゞやいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
けてもいいんだけれど、よく、ほら、街なんかに足なえの乞食がいるだろう、あの人達がね、膝の頭に袋をめているのを思い出して厭なんだ。ぼろ布のあつぽったい奴をくっ附けているのを
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
白粉おしろいあつしはづらにちからなくすすり泣きつつ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きつはなして急催促きふさいそく言譯いひわけすべきほどもなくたちま表向おもてむきの訴訟沙汰そしようざたとはれりけるもと松澤まつざは數代すだい家柄いへがら信用しんようあつければ僅々きん/\せん二千にせんかね何方いづかたにても調達てうたつ出來得できうべしと世人せじんおもふは反對うらうへにて玉子たまご四角しかくまだ萬國博覽曾ばんこくはくらんくわいにも陳列ちんれつ沙汰さた
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こんなにあつい葉
ゆづり葉 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
つくすべしとあつさとされし上早速其所の地主嘉兵衞と其家主いへぬしを呼寄られ城富を引渡ひきわたしとなり隨分ずゐぶん心付けつかはすべき由申付けられけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いまのは勝負しょうぶなしにすんだので、また、四五にんのお役人やくにんが、大きなお三方さんぽうなにせて、その上にあつぬのをかけてはこんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おうさまは、そのはなしかれると、どくおもわれ、あつくおじいさんをいたわられて、ふねせて故郷こきょうかえしてやられました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
「是はなんでせう」と云つて、仰向あほむいた。あたまうへには大きなしいの木が、日のらない程あつい葉をしげらして、丸いかたちに、水際みづぎは迄張り出してゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これらの貝塚かひづかひろさは、おほきなのになると一町歩以上いつちようぶいじようのものもあつて、貝殼かひがらのつもつたあつさは數尺以上すうしやくいじようたつしてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それからもうひと道中どうちゅう姿すがたくてはならないのが被衣かつぎ……わたくし生前せいぜんこのみで、しろ被衣かつぎをつけることにしました。履物はきものあつ草履ぞうりでございます。
幾抱いくかかえあるかわからないような老木ろうぼくだ。まるで、青羅紗あおラシャふくでもきているように、一面にあつぼったいこけがついていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋上やねの雪は冬のうちしば/\掘のくる度々に、木鋤こすきにてはからず屋上やねそんずる㕝あり。我国の屋上やねおほかたは板葺いたぶきなり、屋根板は他国にくらぶればあつひろし。
こっちやこっちの方はガラスがあついので、光るつぶすなわち星がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるという、これがつまり今日の銀河ぎんがせつなのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ひげ旦那だんなは、まゆうすい、ほゝふくれた、くちびるあつい、目色めつきいかつ猛者構もさがまへ出尻でつちりで、ぶく/\ふとつた四十ばかり。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五寸かくの土台数十丁一寸あつみの松板まついた数十枚は時を移さず、牛舎に運ばれた。もちろん大工を呼ぶ暇は無い。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私がこのやうに見知らぬ人に、どうして斯うあつかましく話しかけるやうになれたか、自分にもよく分らなかつた。——この行動は私の性質と習慣に反してゐた。
いろ/\のあつ待遇もてなしけたのちよるの八ごろになると、當家たうけ番頭ばんとう手代てだいをはじめ下婢かひ下僕げぼくいたるまで、一同いちどうあつまつて送別そうべつもようしをするさうで、わたくしまねかれてそのせきつらなつた。
かみにはしろ手拭てぬぐひかぶつてかさ竹骨たけぼねかみおさへるとき其處そこにはちひさな比較的ひかくてきあつ蒲團ふとんかれてある。さういふ間隔かんかくたもつて菅笠すげがさ前屈まへかゞみにたかゑられるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
剣術遣は重ねあつの新刀を引抜いて三人が大生郷の鳥居前の所へびらつくのをげて出ましたから、大概な者は驚いて逃げるくらいでありますが、逃げなどは致しません
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)