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雨戸
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あまど
ふりがな文庫
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雨戸
(
あまど
)” の例文
今
(
いま
)
まで
流
(
なが
)
し
元
(
もと
)
で
頻
(
しき
)
りに
鳴
(
な
)
いていた
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
が、
絶
(
た
)
えがちに
細
(
ほそ
)
ったのは、
雨戸
(
あまど
)
から
差
(
さ
)
す
陽
(
ひ
)
の
光
(
ひか
)
りに、おのずと
怯
(
おび
)
えてしまったに
相違
(
そうい
)
ない。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
自分
(
じぶん
)
の
蒲團
(
ふとん
)
の
側
(
そば
)
まで
射
(
さ
)
し
込
(
こ
)
む
日
(
ひ
)
に
誘
(
さそ
)
ひ
出
(
だ
)
されたやうに、
雨戸
(
あまど
)
の
閾際
(
しきゐぎは
)
まで
出
(
で
)
て
與吉
(
よきち
)
を
抱
(
だ
)
いては
倒
(
たふ
)
して
見
(
み
)
たり、
擽
(
くすぐ
)
つて
見
(
み
)
たりして
騷
(
さわ
)
がした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
門野
(
かどの
)
が
寐惚
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
を
擦
(
こす
)
りながら、
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けに
出
(
で
)
た時、代助ははつとして、此
仮睡
(
うたゝね
)
から
覚
(
さ
)
めた。世界の半面はもう赤い
日
(
ひ
)
に
洗
(
あら
)
はれてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そうだ、すずめかしらん。」と、
孝吉
(
こうきち
)
は、
思
(
おも
)
ったので、そっと
床
(
とこ
)
から
起
(
お
)
き
出
(
で
)
て、
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
たが、もうすずめの
姿
(
すがた
)
は、
見
(
み
)
えませんでした。
すずめの巣
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
世間を
憚
(
はゞか
)
るやうにまだ日の暮れぬ
先
(
さき
)
から
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めた
戸外
(
おもて
)
には、夜と共に
突然
(
とつぜん
)
強い風が吹き出したと見えて、
家中
(
いへぢゆう
)
の
雨戸
(
あまど
)
ががた/\鳴り出した。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「居間の一つらしい、暗くてよく分らないが、あそこからあかりがもれる。
雨戸
(
あまど
)
か窓か、とにかくあれをあけてみよう」
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とても
積
(
つも
)
らば
五尺
(
ごしやく
)
六尺
(
ろくしやく
)
雨戸
(
あまど
)
明
(
あ
)
けられぬ
程
(
ほど
)
に
降
(
ふ
)
らして
常闇
(
とこやみ
)
の
長夜
(
ちやうや
)
の
宴
(
えん
)
、
張
(
は
)
りて
見
(
み
)
たしと
縺
(
もつ
)
れ
舌
(
じた
)
に
譫言
(
たはごと
)
の
給
(
たま
)
ふちろ/\
目
(
め
)
にも
六花
(
りくくわ
)
の
眺望
(
ながめ
)
に
別
(
べつ
)
は
無
(
な
)
けれど
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
火
(
ひ
)
の
氣
(
け
)
を
考
(
かんが
)
へ、
考
(
かんが
)
へつゝ、
雨戸
(
あまど
)
を
繰
(
く
)
つて、
衝
(
つ
)
と
裏窓
(
うらまど
)
をあけると、
裏手
(
うらて
)
の
某邸
(
ぼうてい
)
の
廣
(
ひろ
)
い
地尻
(
ぢじり
)
から、ドス
黒
(
ぐろ
)
いけむりが
渦
(
うづ
)
を
卷
(
ま
)
いて、もう/\と
立
(
た
)
ちのぼる。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それは
何
(
なん
)
でも
夜更
(
よふ
)
けらしかった。僕はとにかく
雨戸
(
あまど
)
をしめた座敷にたった一人横になっていた。すると誰か戸を
叩
(
たた
)
いて「もし、もし」と僕に声をかけた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
今朝
(
けさ
)
になつて、お勝手の隣の
雨戸
(
あまど
)
が
開
(
あ
)
いてゐるので、下女のお近がびつくりして此處を覗いて見ると此有樣で、——何が何やら、私にも一向わかりません」
銭形平次捕物控:296 旅に病む女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
我家の
雨戸
(
あまど
)
も熱くなったと見え、火の子がいつまでもくいついている。もう駄目だ。町会長の
責任
(
せきにん
)
もすんだ。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
白粉花
(
おしろいばな
)
、
夜中
(
よなか
)
に表を
叩
(
たゝ
)
くから、
雨戸
(
あまど
)
を明けてふと見れば、墓場の上の
狐火
(
きつねび
)
か、
暗闇
(
くらがり
)
のなかにおまへの眼が光る。噫、おしろい、おしろい、
汚
(
よご
)
れた
夜
(
よる
)
の
白粉花
(
おしろいばな
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
雨戸
(
あまど
)
をすっかり閉めきっても、どこからかその風が吹いてくるので、どうにも
仕方
(
しかた
)
がありませんでした。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それを突っかけてすぐ庭に出ることが出来る、
夜分
(
やぶん
)
こそ
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めて家と庭との限界を
厳
(
きび
)
しくしますが、昼は
殆
(
ほとん
)
ど家と庭との境はないといってよいほどであります。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
雨戸
(
あまど
)
をさす
間
(
ま
)
もなく、
今
(
いま
)
まで
遠
(
とほ
)
くの
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
に
聞
(
きこ
)
えてゐた
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
は、
巨人
(
きよじん
)
の
手
(
て
)
の一
煽
(
あふ
)
りのやうに
吾
(
われ
)
にもない
疾
(
はや
)
さで
驅
(
かけ
)
て
來
(
き
)
て、その
勢
(
いきほ
)
ひの
中
(
なか
)
に
山
(
やま
)
の
雪
(
ゆき
)
を一
掃
(
は
)
き
捲
(
ま
)
き
込
(
こ
)
んでしまつた。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「寝よう乎」と寝返りしては
復
(
ま
)
た暫らくして、「どうも寝られない」と向き直ってポツリポツリと話し出し、とうとう
鶏
(
とり
)
の
音
(
ね
)
が聞えて
雨戸
(
あまど
)
の
隙
(
すき
)
が白んで来たまでも語り続けた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
何だか新しい
潮
(
うしほ
)
の滿ちて來るやうな、
旺
(
さか
)
んな、
爽快
(
たうかい
)
な感想が胸に
湧
(
わ
)
く。頭の上を見ると、
雨戸
(
あまど
)
の
節
(
ふし
)
穴や
乾破
(
ひわ
)
れた
隙間
(
すきま
)
から日光が射込むで、其の白い光が明かに
障子
(
しやうじ
)
に映ツてゐる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「きっと吉三郎だ。これはろくなことではない。」彼はもはやこう決め込みながら、寝間着の
襟
(
えり
)
をかき合わせて立ち上がった。そして、二歩ばかり歩いてその窓の
雨戸
(
あまど
)
をあけた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
要吉の
仕事
(
しごと
)
の第一は、
毎朝
(
まいあさ
)
、まっさきに
起
(
お
)
きて、
表
(
おもて
)
の重たい
雨戸
(
あまど
)
をくりあけると、年上の
番頭
(
ばんとう
)
さんを
手伝
(
てつだ
)
って、店さきへもちだしたえんだいの上に、いろんなくだものを、きれいに
水菓子屋の要吉
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
遠い縁のはずれで、にわかに
雨戸
(
あまど
)
を繰り出す大勢の声が、立ち騒いで聞えていた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
雨戸
(
あまど
)
引きあけると、何ものか影の如く
走
(
は
)
せ
去
(
さ
)
った。白は後援を得てやっと
威厳
(
いげん
)
を恢復し、二足三足あと
追
(
おい
)
かけて
叱
(
しか
)
る様に吠えた。野犬が肥え太った白を豚と思って喰いに来たのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そのころ、
大名行列
(
だいみょうぎょうれつ
)
といえば、
道
(
みち
)
ばたの
家
(
いえ
)
は
雨戸
(
あまど
)
をおろし、とおりかかったものは
道
(
みち
)
をよけて、とおくから
土
(
つち
)
の
上
(
うえ
)
にすわって、とのさまののったかごをおがまなければならないほどでした。
福沢諭吉:ペンは剣よりも強し
(新字新仮名)
/
高山毅
(著)
一方の
雨戸
(
あまど
)
が、しめきったままになっているうえ、もう日がくれるじぶんなので、広間の中は、うす暗く、ものの形もはっきり見わけられないくらいですが、その
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の上に、大きな黒いものが
鉄塔の怪人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
雨戸
(
あまど
)
を引いて外の
格子
(
かうし
)
をがらがらツと明けまして
燈明
(
あかり
)
を
差出
(
さしだ
)
して見ると、見る影もない
汚穢
(
きたな
)
い
乞食
(
こじき
)
の
老爺
(
おやぢ
)
が、
膝
(
ひざ
)
の
下
(
した
)
からダラ/″\血の出る所を
押
(
おさ
)
へて
居
(
ゐ
)
ると、
僅
(
わづ
)
か
五歳
(
いつゝ
)
か
六歳
(
むツつ
)
ぐらゐの
乞食
(
こじき
)
の
児
(
こ
)
が
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
隣家
(
りんか
)
からの
延燒
(
えんしよう
)
を
防
(
ふせ
)
ぐに、
雨戸
(
あまど
)
を
締
(
し
)
めることは
幾分
(
いくぶん
)
の
效力
(
こうりよく
)
がある。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
重たげに
雨戸
(
あまど
)
繰
(
く
)
る
音
(
おと
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
坊主
(
ぼうず
)
は、たてつけの
悪
(
わる
)
い
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けて、ぺこりと一つ
頭
(
あたま
)
をさげた。そこには
頭巾
(
ずきん
)
で
顔
(
かお
)
を
包
(
つつ
)
んだおせんが、
傘
(
かさ
)
を
肩
(
かた
)
にして
立
(
た
)
っていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
みそ
萩
(
はぎ
)
の
側
(
そば
)
には
茶碗
(
ちやわん
)
へ一
杯
(
ぱい
)
に
水
(
みづ
)
が
沒
(
く
)
まれた。
夕方
(
ゆふがた
)
近
(
ちか
)
く
成
(
な
)
つてから三
人
(
にん
)
は
雨戸
(
あまど
)
を
締
(
しめ
)
て、
火
(
ひ
)
のない
提灯
(
ちやうちん
)
を
持
(
も
)
つて
田圃
(
たんぼ
)
を
越
(
こ
)
えて
墓地
(
ぼち
)
へ
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
太郎
(
たろう
)
のお
父
(
とう
)
さんも
困
(
こま
)
ってしまって、ある
晩
(
ばん
)
のこと、こらしめのために、
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めて、
太郎
(
たろう
)
を
家
(
うち
)
に
入
(
い
)
れませんでした。
竹馬の太郎
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けて
欄干
(
らんかん
)
から
外
(
そと
)
を
見
(
み
)
ると、
山気
(
さんき
)
が
冷
(
ひやゝ
)
かな
暗
(
やみ
)
を
縫
(
ぬ
)
つて、
橋
(
はし
)
の
上
(
うへ
)
を
提灯
(
ちやうちん
)
が
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ、どや/\と
人影
(
ひとかげ
)
が、
道
(
みち
)
を
右左
(
みぎひだり
)
へ
分
(
わか
)
れて
吹立
(
ふきた
)
てる
風
(
かぜ
)
に
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「八、手前これで外から
雨戸
(
あまど
)
を引いて見な、泥棒になつたつもりで、出來るだけ靜かにやるんだよ」
銭形平次捕物控:014 たぬき囃子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
客は、余をのぞくのほかほとんど
皆無
(
かいむ
)
なのだろう。
〆
(
しめ
)
た部屋は昼も
雨戸
(
あまど
)
をあけず、あけた以上は夜も
閉
(
た
)
てぬらしい。これでは表の戸締りさえ、するかしないか解らん。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
足
(
あし
)
を
取
(
と
)
られて
幽靈
(
ゆうれい
)
ならぬ
身
(
み
)
の
戸
(
と
)
のすき
間
(
ま
)
より
出
(
いづ
)
る
事
(
こと
)
もなるまじとて
今宵
(
こよひ
)
は
此處
(
こゝ
)
に
泊
(
とま
)
る
事
(
こと
)
となりぬ、
雨戸
(
あまど
)
を
鎖
(
とざ
)
す
音
(
おと
)
一しきり
賑
(
にぎ
)
はしく、
後
(
のち
)
には
透
(
す
)
きもる
燈火
(
ともしび
)
のかげも
消
(
き
)
えて
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
蘿月
(
らげつ
)
は
仕方
(
しかた
)
なしに
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めて、再びぼんやり
釣
(
つるし
)
ランプの
下
(
した
)
に
坐
(
すわ
)
つて、続けざまに
煙草
(
たばこ
)
を
喫
(
の
)
んでは
柱時計
(
はしらどけい
)
の針の動くのを
眺
(
なが
)
めた。時々
鼠
(
ねずみ
)
が
恐
(
おそろ
)
しい
響
(
ひゞき
)
をたてゝ
天井裏
(
てんじやううら
)
を走る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その
音
(
おと
)
づれにすつかり
目
(
め
)
を
覺
(
さま
)
した
地上
(
ちじやう
)
の
雪
(
ゆき
)
は、
煽
(
あふ
)
られ/\て
來
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
の
中
(
なか
)
にさら/\と
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
り、くる/\と
卷
(
ま
)
かれてはさあつと
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
の
雨戸
(
あまど
)
や
屋根
(
やね
)
を
打
(
う
)
つ
事
(
こと
)
に
身
(
み
)
を
委
(
まか
)
してゐる。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
ダリアは
割合
(
わりあい
)
に元気に窓のところに歩みよっては、パタンパタンと
蝶番式
(
ちょうつがいしき
)
にとりつけてある
雨戸
(
あまど
)
を合わせてピチンと
止
(
と
)
め
金
(
がね
)
を
下
(
お
)
ろし、その内側に二重の黒カーテンを引いていった。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
雨戸
(
あまど
)
もすっかり閉め切ってあるのに、家の中に強い風が起こって、ろうそくの火が皆一度に消えて、まっ暗となりました。
爺
(
じい
)
さんはそれを待ち
構
(
かま
)
えていたのです。すぐに大きな声で言いました。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
季節
(
きせつ
)
に
埃
(
ほこり
)
を
捲
(
ま
)
いて
來
(
く
)
る
西風
(
にしかぜ
)
は
先
(
ま
)
づ
何處
(
どこ
)
よりもおつぎの
家
(
いへ
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
今日
(
けふ
)
も
來
(
き
)
たぞと
叩
(
たゝ
)
く。それは
村
(
むら
)
の
西端
(
せいたん
)
に
在
(
あ
)
るからである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
由斎
(
ゆうさい
)
の
声
(
こえ
)
を
聞
(
き
)
きながら、ひと
足
(
あし
)
ずつ
後
(
あと
)
ずさりしていたおせんは、いつか
磔
(
はりつけ
)
にされたように、
雨戸
(
あまど
)
の
際
(
きわ
)
へ
立
(
た
)
ちすくんでいた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
きっと、
村
(
むら
)
の
人
(
ひと
)
が、なにか
用事
(
ようじ
)
があっておそくなり、そして、いま
帰
(
かえ
)
るのだろう……と、こう
思
(
おも
)
って、
彼
(
かれ
)
は、
立
(
た
)
って
雨戸
(
あまど
)
を
細
(
ほそ
)
めにあけて、のぞいたのです。
般若の面
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
カタ/\/\カタ、さーツ、さーツ、ぐわう/\と
吹
(
ふ
)
くなかに——
見
(
み
)
る/\うちに
障子
(
しやうじ
)
の
棧
(
さん
)
がパツ/\と
白
(
しろ
)
く
成
(
な
)
ります、
雨戸
(
あまど
)
の
隙
(
すき
)
へ
鳥
(
とり
)
の
嘴程
(
くちばしほど
)
吹込
(
ふきこ
)
む
雪
(
ゆき
)
です。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さあ
最
(
も
)
う
起
(
お
)
きて
頂戴
(
ちようだい
)
」に
變
(
かは
)
る
丈
(
だけ
)
であつた。
然
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
昨夕
(
ゆうべ
)
の
事
(
こと
)
が
何
(
なん
)
となく
氣
(
き
)
にかゝるので、
御米
(
およね
)
の
迎
(
むかひ
)
に
來
(
こ
)
ないうち
宗助
(
そうすけ
)
は
床
(
とこ
)
を
離
(
はな
)
れた。さうして
直
(
すぐ
)
崖下
(
がけした
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
繰
(
く
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
急
(
いそ
)
ぎ
足
(
あし
)
に
沓脱
(
くつぬぎ
)
へ
下
(
お
)
りて
格子戸
(
かうしど
)
に
添
(
そ
)
ひし
雨戸
(
あまど
)
を
明
(
あ
)
くれば、お
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さまと
言
(
い
)
ひながらずつと
這入
(
はい
)
るは
一寸法師
(
いつすんぼし
)
と
仇名
(
あだな
)
のある
町内
(
ちやうない
)
の
暴
(
あば
)
れ
者
(
もの
)
、
傘屋
(
かさや
)
の
吉
(
きち
)
とて
持
(
も
)
て
餘
(
あま
)
しの
小僧
(
こぞう
)
なり
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お座敷の方を
空虚
(
くうきょ
)
にして置いただけで、電話が終ると酒田と婆やさんとは再びお座敷の方へ戻って来て、婆やさんは
雨戸
(
あまど
)
の残りを戸袋から
繰
(
く
)
り出すし、酒田はラジオをちょっとひねって
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
表
(
おもて
)
の
窓際
(
まどぎは
)
まで
立戻
(
たちもど
)
つて
雨戸
(
あまど
)
の一枚を
少
(
すこ
)
しばかり引き
開
(
あ
)
けて
往来
(
わうらい
)
を
眺
(
なが
)
めたけれど、
向側
(
むかうがは
)
の
軒燈
(
けんとう
)
には酒屋らしい
記号
(
しるし
)
のものは一ツも見えず、
場末
(
ばすゑ
)
の
街
(
まち
)
は
宵
(
よひ
)
ながらにもう
大方
(
おほかた
)
は戸を
閉
(
し
)
めてゐて
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
毛布
(
けつと
)
を
撥
(
は
)
ねてむつくり
起上
(
おきあが
)
つた——
下宿
(
げしゆく
)
を
燒
(
や
)
かれた
避難者
(
ひなんしや
)
の
濱野君
(
はまのくん
)
が、「
逃
(
に
)
げると
極
(
き
)
めたら
落着
(
おちつ
)
きませう。いま
火
(
ひ
)
の
樣子
(
やうす
)
を。」とがらりと
門口
(
かどぐち
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けた。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した
樣
(
やう
)
に
立
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がつて、
座敷
(
ざしき
)
の
雨戸
(
あまど
)
を
引
(
ひ
)
きに
縁側
(
えんがは
)
へ
出
(
で
)
た。
孟宗竹
(
まうそうちく
)
が
薄黒
(
うすぐろ
)
く
空
(
そら
)
の
色
(
いろ
)
を
亂
(
みだ
)
す
上
(
うへ
)
に、
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つの
星
(
ほし
)
が
燦
(
きら
)
めいた。ピヤノの
音
(
ね
)
は
孟宗竹
(
まうそうちく
)
の
後
(
うしろ
)
から
響
(
ひゞ
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ハタとたて
切
(
き
)
る
雨戸
(
あまど
)
の
閾
(
しきゐ
)
くちしは
溝
(
みぞ
)
か
立端
(
たちは
)
もなくわつと
泣
(
な
)
く
空
(
そら
)
に
闇
(
やみ
)
を
縫
(
ぬ
)
ひ
行
(
ゆ
)
く
烏
(
からす
)
の
兩三聲
(
りやうさんせい
)
。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その
羽
(
は
)
ばたきが、あまりたびたび
聞
(
き
)
こえましたので、なんであろうと、
太郎
(
たろう
)
は
起
(
お
)
きて、
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けて
外
(
そと
)
を
見
(
み
)
ますと、
空
(
そら
)
は
真
(
ま
)
っ
暗
(
くら
)
で
星
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
ひとつ
見
(
み
)
えずに、
波
(
なみ
)
が
高
(
たか
)
く
騒
(
さわ
)
いでいました。
薬売り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
終
(
しまひ
)
には
猫又
(
ねこまた
)
が
化
(
ば
)
けた、
妾
(
めかけ
)
のやうに、
日
(
ひ
)
の
目
(
め
)
を
厭
(
いと
)
うて、
夜
(
よる
)
も
晝
(
ひる
)
も、
戸障子
(
としやうじ
)
雨戸
(
あまど
)
を
閉
(
し
)
めた
上
(
うへ
)
を、二
重
(
ぢう
)
三
重
(
ぢう
)
に
屏風
(
びやうぶ
)
で
圍
(
かこ
)
うて、
一室
(
ひとま
)
どころに
閉籠
(
とぢこも
)
つた
切
(
きり
)
、と
言
(
い
)
ひます……
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“雨戸”の解説
雨戸(あまど)は、防風・防犯・遮光・目隠しといった目的のために建物の開口部に設置する建具。日本の住宅において用いられるもので、建築史上は16世紀後半からみられるようになったとされる。なお、欧米の住宅では同様の機能でスチールシャッターを用いるものや二重や三重のガラス戸とするものがある。
(出典:Wikipedia)
雨
常用漢字
小1
部首:⾬
8画
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
“雨戸”で始まる語句
雨戸外