ゆゑ)” の例文
も勤め此家の番頭ばんとうよばれたるちう八と云者何時いつの程にかお熊と人知ひとしらぬ中となりけるが母のお常は是を知ると雖も其身も密夫みつぷあるゆゑかれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此書このしよ全部ぜんぶ六巻、牧之老人ぼくしらうじんねふりかる漫筆まんひつあづさまたざるの稿本かうほんなり。ゆゑ走墨乱写そうぼくらんしやし、また艸画さうぐわなり。老人らうじんしめして校訂かうていふ。
とき繰返くりかへすやうだけれども、十圓じふゑんたい剩錢つりせん一錢いつせんなるがゆゑに、九圓九十九錢きうゑんきうじふきうせんわかつたが、またなんだつて、員數ゐんすうこまかきざんだのであらう。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不可能ふかのうで、また其目的そのもくてきのみの大學だいがくでもなし博物館はくぶつくわんでもない、ゆゑ今一息いまひといきといふ岡目をかめひやう其所そこ突入とつにふするだけの餘地よちいでもい。
(前略)余はふとした機会で思はしき手頃の土地見当りしゆゑ、今冬より満四ヶ年の契約にて借受け、試み旁々かた/″\事業着手のことにいたさふろふ
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
それゆゑ二階にかいあるひ三階さんがい居合ゐあはせたひとが、階下かいかとほることの危險きけんおかしてまで屋外おくがいさうとする不見識ふけんしき行動こうどう排斥はいせきすべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何のゆゑとも知らねども正太はあきれて追ひすがり袖をとどめては怪しがるに、美登利顔のみ打赤めて、何でも無い、と言ふ声理由わけあり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此書このしよ全部ぜんぶ六巻、牧之老人ぼくしらうじんねふりかる漫筆まんひつあづさまたざるの稿本かうほんなり。ゆゑ走墨乱写そうぼくらんしやし、また艸画さうぐわなり。老人らうじんしめして校訂かうていふ。
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに柘榴ざくろ花弁はなびらの如く附きたるに、貴婦人は懐鏡ふところかがみ取出とりいだして、むことの過ぎしゆゑぞと知りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
少年労働者の中でも彼は頑強で気が荒いので幅をきかせでゐた、それゆゑ他の少年等も彼の云ふことには一々もつともだと云つてそれに味方した。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
これらみな詛ひの魂にて滿たさる、されどこの後汝たゞ見るのみにて足れりとするをえんため、彼等の繋がるゝさまゆゑとをきけ 一九—二一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それが睡眠中すゐみんちう身體からだきやうで一變調へんてうきたしたのだかどうだかわからないにもかゝはらず、かれたゞ病氣びやうきゆゑだとめてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ゆゑ日本國中につぽんこくちう人民じんみん此改暦このかいれきあやしひとかなら無學文盲むがくもんまう馬鹿者ばかものなり。これをあやしまざるものかなら平生へいぜい學問がくもん心掛こゝろがけある知者ちしやなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
ひと交際かうさいすることかれいたつてこのんでゐたが、其神經質そのしんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆゑに、みづかつとめてたれとも交際かうさいせず、したがつまた親友しんいうをもたぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この「海鳥」一篇ほど、そのころの私のこの詩人へのゆゑしれぬ思慕のやうなものを切實に語つてゐるものはないだらう。
「青猫」について (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
それゆゑ日本にほん經濟けいざい立直たてなほ必要ひつえうがあるのであるが、經濟けいざい立直たてなほしが出來でき累年るゐねんつゞ輸入超過ゆにふてうくわげん國際貸借こくさいたいしやく改善かいぜんせられてはじめきん解禁かいきん出來でき
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
たゞこの植物の形が丁度支那の人参にんじんと等しく人間の形をして居るために(即ち根が又をなして人の脚の形をして居るゆゑ
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
ボウダの国のわが友の、思ひも寄らぬまがつみに、かゝりて今は石壁いしかべの、ひとやのうちにしばられて、われのゆゑにぞ苦しむと、聞く憂事うきごとのあぢきなき
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
廉直れんちよくの・(五三)邪枉じやわうしんれられざるをかなしみ、(五四)往者得失わうしやとくしつへんる、ゆゑ(五五)孤憤こふん・五内外儲ないぐわいちよ説林せつりん説難ぜいなん、十餘萬言よまんげんつくる。
ロミオ 領主りゃうしゅには近親きんしんたる信友しんいうのマーキューシオーが俺故おれゆゑあのやうな重傷ふかでひ、おれはまたたゞ時程ときほど縁者えんじゃとなったあのチッバルトゆゑ汚名をめいけた。
それゆゑ規則きそくでやつたこと何處どこへも通用つうようするといふわけにはまゐりません。矢張やはり本人ほんにん獨立心どくりつしんまかせなければなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
窮理きゆうりけつしてなるにあらず実践じつせんなんあさしと云はんや。魚肴さかな生臭なまぐさきがゆゑやすからず蔬菜やさい土臭つちくさしといへどもたふとし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
今天下平均儀、まことに御忠節ゆゑ存候云云ぞんじそろうんぬん、御子孫永く疎略之儀有之間敷候これあるまじくそろと云ふ文句のある一札である。利章はこれを梶原平十郎景尚に渡して云つた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
をんなよわいものゆゑにたやすく失望しつばうをし、そしてたやすく自棄やけにもなります。やがて私達にもそれがやつて來ました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
我等が神を信ずと言ひて、尚ほ自ら顧みて、どことなく其の信念の充実せざるを感ずることあるは、是れ尚ほ未だ面相接して神を見ざるがゆゑにあらずや。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
ゆゑこの攝養法せつやうはふひろおこなはれ、戰後せんごてふ大任たいにんへるわが國民こくみん體力たいりよく一層いつそう強固きやうこならしめ、各自かくじ職責しよくせき遺憾ゐかんなく遂行すゐかうせられんことをふか希望きばうするところなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
三三ゆゑなき所に永くらじと、三四おのが身ひとつをぬすみて国にかへみちに、此のやまひにかかりて、思ひがけずも師をわづらはしむるは、身にあまりたる御恩めぐみにこそ。
吾が力をたのむほどの自信もなし。かるがゆゑに人のかみに立たんなどの身に過ぎる事に志すべからず。よろづ吾が程を知りて、分に安んじなば身も安全なるべし。
も一朝一夕のゆゑに非らずサ、つひ石心木腸せきしんもくちやうなる井上与重の如きをして、物や思ふと問はしむる迄に至つたのだ、僕の如きはとくの昔から彼女をして義人を得
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
足袋たび股引もゝひき支度したくながらに答へたるに人々ひと/\そのしをらしきを感じ合ひしがしをらしとはもと此世このよのものにあらずしをらしきがゆゑ此男このをとこ此世このよ車夫しやふとは落ちしなるべし。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
もとより此度このたび御大喪ごたいさうは、是迄これまでにない事でございますから、うかしてはいしたいとぞんじてりましたところへ、円生ゑんしやう円遊ゑんいうたのまれましたことゆゑはらうちでは其実そのじつ僥倖さいはひ
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ゆゑに「舞姫」を批評せんと欲せばづ其人物(太田豊太郎)と境遇との関係を精査するを必要となす。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
それゆゑ行うた女房の中からも、読人・方人カタウドを出して、男歌人に立ちまじらせた歌合せ——七条後宮歌合せ・亭子院歌合せなど——は、かうした流行に圧されて行つた。
しかるに希臘ぎりしや化物ばけものおほくはかくごと繼合つぎあはものである。ゆゑしん化物ばけものふことは出來できないのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
朝影あさかげはなりぬたま耀かぎるほのかにえてにしゆゑに 〔巻十一・二三九四〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それゆゑランプの時にも、「又あれだな」と思ひながら、彼はもうそれを捜すことを一先づ断念することにした。それは、妙に、断念すればする程早く出て来るやうだから。
釋尊、八幡のうまれ替りとや申さん。日蓮は凡夫なればよくしらず。これしかし、日蓮がまゐらせしゆゑなり。さこそ父母ふぼよろこ給覽たまふらん。誠に御祝として、餅、酒、鳥目てうもく貫文くわんもん送給候畢おくりたまひさふらひぬ
そのよく無なるがゆゑらざる処なく、働かざる所がないのである。(善の研究——二の十)
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
成程なるほど海中かいちう潜行せんかうするがゆゑ潜水艇せんすいてい虚僞うそではないにしても、從來じゆうらい實例じつれいでは、是等これら潜行艇せんかうてい海水かいすい壓力あつりよくめと空氣くうき缺乏けつぼうため海底かいていフヒート以下いか沈降ちんかうするものはまれ
爾來じらい數年すねん志村しむらゆゑありて中學校ちゆうがくかう退しりぞいて村落そんらくかへり、自分じぶんくにつて東京とうきやう遊學いうがくすることゝなり、いつしか二人ふたりあひだには音信おんしんもなくなつて、たちまち又四五年つてしまつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
喫茶部きつちやぶのツンとすました女ゆゑまたコオヒイのうまき味かな(北海ホテル茶房にて)
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
何のゆゑに? 一つと一つと合つたものも矢張もとは二つのもので、永久に一つであることは出来ないが故に——。一つと二つと合つたものも、つひには一に帰さなければならないが故に——。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
末望みなき落人おちうどゆゑの此つれなさと我を恨み給はんことのうたてさよ。あはれ故内府在天の靈も照覽あれ、血を吐くばかりの瀧口が胸の思ひ、聊か二十餘年の御恩に酬ゆるの寸志にて候ぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「彼は何ゆゑにあの如く黙つてゐるのか、何か不機嫌な理由でもあるのか?」
ガール・シヤイ挿話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ソクラテス、雅典アテーネの子弟を迷はすのゆゑを以て法廷に引かるゝや、曰く、我は雅典の光なり、罪すべくんば罪せよと。又再び物言はず。かくて遂に死せりき。日蓮が首の座に据ゑらるゝや又同じ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ねこあたまれがつてしまうとはじめて、れが公爵夫人こうしやくふじんともなきたつたときに、それがまつたせてました、それゆゑ王樣わうさま死刑執行者しけいしつかうしやとは、其他そのた仲間なかま者等ものらみん競技ゲームかへつてつたあと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ちゝこんぜざる濃茶のうちやよろこび、みづらざる精酒せいしゆみ、沈鬱ちんうつにして敢爲かんいかた國立こくりつ宗教しゆうきようし、ふか祖先そせんげふおもんず、工業こうげうはなはさかんならざるがゆゑ中等社界ちうとうしやくわいそんするところおほくは粗朴そぼくなる農民のうみんにして
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「知らねどもむさし野とへばかこたれぬよしやさこそは紫のゆゑ
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ゆゑもなく處移されて知らぬ人の與ふる食を拒みけむかも
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
けて退く人を弱しと思ふなよ智恵ちゑの力の強きゆゑなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)