出掛でか)” の例文
しかわたしすこしも身體からだ異状いじやういです、壯健さうけんです。無暗むやみ出掛でかけること出來できません、何卒どうぞわたし友情いうじやうことなんとかしようさせてください。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ときどき銀座界隈へまで出掛でかけることもある。そうすると今度はニュー・グランドとか風月堂とかモナミとか、格のある店へ入る。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おれは小使にちょっと出てくると云ったら、何かご用ですかと聞くから、用じゃない、温泉へはいるんだと答えて、さっさと出掛でかけた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこでとうさんはお墓參はかまゐりにみちはうから、るべくつたひとはない田圃たんぼわきとほりまして、こつそりと出掛でかけてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日きょうまたにかかってようかしら……。』わたくしとしてはただそれぐらいのあっさりした心持こころもち出掛でかけたまでのことでございました。
それかと云って、厚着あつぎをして不形恰ぶかっこうに着ぶくれたどうの上に青い小さな顔がって居る此のへんな様子で人の集まる処へ出掛でかける気もしない。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
同月どうげつ二十八にちには、幻翁げんおう玄子げんしとの三にん出掛でかけた。今日けふ馬籠方まごめがた街道かいだうひだりまがつた小徑こみち左手ひだりてで、地主ぢぬしことなるのである。
おや大病たいびやうだか、ともだちが急病きふびやうだか、れたもんですか。……きみたちのやうにつちや、なにか、あやしいところへでも出掛でかけるやうだね。」
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だって君、習った事と商売とはちがうよ——まア、待っているさ、毎日俺も街へ出掛でかけているんだから、何とか方法はあるだろう。——学校を
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
おれこれがら出掛でかげてとうげさ行ぐまでに行ぎあって今夜のおどり見るべしてすすめるがらよ、なあにどごまで行がなぃやなぃようだなぃがけな。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とも二人ふたりでブラリといへた。もとより何處どこかうといふ、あてもないのだが、はなしにもきがたので、所在なさに散歩さんぽ出掛でかけたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
また新橋組と工部と仕合いたることもありしか。その後青山英和学校も仕合マッチ出掛でかけたることありしかど年代は忘れたり。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
似而非えせ賢者何程なにほどのことやあらんと、蓬頭突鬢ほうとうとつびん垂冠すいかん短後たんこうの衣という服装いでたちで、左手に雄雞おんどり、右手に牡豚おすぶたを引提げ、いきおいもうに、孔丘が家を指して出掛でかける。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
元來ぐわんらい自分じぶんだい無性者ぶしやうものにておもたつ旅行りよかうもなか/\實行じつかうしないのが今度こんどといふ今度こんど友人いうじん家族かぞくせつなる勸告くわんこくでヤツと出掛でかけることになつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
地球内部ちきゆうないぶにまで偵察ていさつ出掛でかけそれがふたゝ地球ちきゆう表面ひようめんあらはれて報告ほうこくをなしつゝあることが氣附きづかれたことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
過日絮談じょだんの折にお話したごとく某々氏瓢酒ひょうしゅ野蔬やそ春郊しゅんこう漫歩まんぽの半日をたのしもうと好晴の日に出掛でかける、貴居ききょはすでに都外故そのせつたずねしてご誘引ゆういんする
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いと今夜こんやかねてから話のしてある葭町よしちやうの芸者屋まで出掛でかけて相談をして来るとふ事で、道中だうちゆうをば二人一緒に話しながら歩かうと約束したのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
とき柳川君やながはくんきみ當分たうぶんこのみなと御滯在おとまりでせうねえ、それから、西班牙イスパニヤはうへでもおまはりですか、それとも、さらすゝめて、亞弗利加アフリカ探險たんけんとでもお出掛でかけですか。
とぴよこ/\出掛でかけましたが、おろかしいゆゑ萬屋よろづや左衛門ざゑもん表口おもてぐちから這入はいればよいのに、裏口うらぐちから飛込とびこんで、二ぢう建仁寺垣けんねんじがき這入はいり、外庭そとにはとほりまして、漸々やう/\庭伝にはづたひにまゐりますと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
りよ前日ぜんじつ下役したやくのものにつていて、今朝けさはやきて、天台縣てんだいけん國清寺こくせいじをさして出掛でかけることにした。これは長安ちやうあんにゐたときから、台州たいしういたら早速さつそくかうとめてゐたのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
高梨夫妻が誘いに来たので出掛でかけた。あの留さんも一緒だった。縁日は大変ににぎやかだった、娘達が大胆である、驚いてしまった。十五位の身重の少女を見た。弟と「きく」とに手紙を書いた。
『そうですか。で、御主人は一人で出掛でかられたんですね?』
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
痘痕あばたのある柔和にうわかほで、どくさうにわたした。がくちかないでフイとかどを、ひとからふりもぎる身躰からだのやうにづん/\出掛でかけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
与平はやがて支度が出来たのか、隆吉の自転車にリヤカアをくくりつけて、「夜にゃア戻って来る」と云って出掛でかけて行った。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
帰りはもう自由だからみんなで手をつながなくてもいいんだ。気の合った友達と二人三人ずつ向うのき次第出掛でかけるだろう。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『おじいさま、ういうものか今日けふ落付おちつかないでこまるのでございます……。わたくしはどこかへあそびに出掛でかけたくなりました。』
しかしわたしすこしも身体からだ異状いじょういです、壮健そうけんです。無暗むやみ出掛でかけることは出来できません、どうぞわたし友情ゆうじょうのことでなんとかしょうさせてください。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これからまたれいとほ出掛でかけなければなりませんから」とげると、主人しゆじんはじめていたやうに、いそがしいところめた失禮しつれいしやした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其処そこに息子と仲好なかよしの女達も沢山たくさん居て、かの女もその女達が可愛かわいくてひまさえあれば出掛でかけて行って紙つぶてを投げ合って遊んだことを懐しく想い出した。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
冐險鐵車ぼうけんてつしや——左樣さやう自動仕掛じどうじがけの鐵檻てつおりくるま製造せいぞうして、れにつて、山奧やまおく出掛でかけやうといふんです。』
病氣びやうきくない、』『あめりさうですから』など宿やどものがとめるのもかず、ぼく竿さをもつ出掛でかけた。人家じんかはなれて四五ちやうさかのぼるとすでみちもなければはたけもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さればと謂つて、審判官アンパイアーとなツて、一家の爲に何れとも話をまとめるといふことも無く、のんきに高處たかみの見物と出掛でかけた。勿論もちろん母夫人は、華族でもなければ、藝術家でも無い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
翌日あくるひ午後ひるすぎまたもや宮戸座みやとざ立見たちみ出掛でかけた。長吉ちやうきちは恋の二人が手を取つてなげく美しい舞台から、昨日きのふ始めて経験したふべからざる悲哀ひあいの美感にひたいと思つたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と唄い終ったが、末の摘んで取ろの一句だけにはこちらの少年も声を合わせて弥次馬やじうま出掛でかけたので、歌の主は吃驚びっくりしてこちらをかしてたらしく、やがて笑いを帯びた大きな声で
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
東皐子とうくわうしはそれをいて、手紙てがみで『おもなほしていかとり枯木かれきに二とまる』とつて寄越よこす。幻翁げんおうもすゝめる。のゝしりながらもじつきたいので、また出掛でかける。相變あひかはらずなにい。
へえこれ下駄げたいてとほると、がら/\音がしますからわかりますが、これ盲人まうじんが歩きいゝやうに何処どこへでもいてるのでせう。近江屋「なアに社内しやないばかりだアね、そろ/\出掛でかけようか。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
今朝あけ方近くなってから、兄弟三人で出掛でかけたそうでございます。いつも人の来るような処ではなかったのでございます。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もなく小六ころくかへつてて、醫者いしや丁度ちやうど徃診わうしん出掛でかけるところであつた、わけはなしたら、ではいまから一二けんつてすぐかうとこたへた、とげた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちにとうさんは出掛でかけてきました。『大丈夫だいぢやうぶ榎木えのきはもうあかくなつてる。』と安心あんしんして、ゆつくりかまへて出掛でかけてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それにれて私自身わたくしじしん気持きもちもずっとれやかになり、戸外そと出掛でかけて漫歩そぞろあるきでもしてたいというようなふうになりました。
ところ仕合しあはせにもミハイル、アウエリヤヌヰチのはうが、此度こんど宿やど引込ひつこんでゐるのが、とうとう退屈たいくつになつてて、中食後ちゆうじきごには散歩さんぽにと出掛でかけてつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
また、それだけにつりがうまい。素人しろうとにはむづかしいといふ、鰻釣うなぎつり絲捌いとさばきはなかでも得意とくいで、一晩ひとばん出掛でかけると濕地しつち蚯蚓みゝず穿るほどひとかゞりにあげてる。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今、仏蘭西フランス巴里パリから着いたものである。朝の散歩に、主人逸作いっさくといつものように出掛でかけようとして居るところへ裏口から受け取った書生しょせいが、かの女の手に渡した。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中學ちゆうがくつても二人はくことをなによりのたのしみにして、以前いぜんおなじく相伴あひともなふて寫生しやせい出掛でかけてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
夕凉ゆふすゞみ出掛でかけるにぎやかな人出ひとでの中においとはふいと立止たちどまつて、ならんで歩く長吉ちやうきちそでを引き、「ちやうさん、あたいもきあんな扮装なりするんだねえ。絽縮緬ろちりめんだねきつと、あの羽織はおり………。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
もつとふるつてたのは三十六ねんぐわつ元旦ぐわんたんで、此日このひ年始ねんし幻花子げんくわしは、掘初ほりぞめをするとつてたゞ一人ひとり出掛でかけたのを、あとから、靜灣せいわん佳水かすゐ天仙てんせん望蜀ぼうしよく古閑こかん狹衣さごろも活東くわつとうの七にん評議ひやうぎうへ
さて六日むいかには泉山せんざんといふところへお出掛でかけになるについて、わたくしもおともをいたし四条通しでうどほりから五条ごでうわたり、松原通まつばらどほりから泉山せんざんまゐりまするには、かねて話に聞いてりました、ゆめ浮橋うきはしといふのをわたりました
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これよりその秘密ひみつなる塲所ばしよ出掛でかけるのである。
御米およね此所こゝから出掛でかけるには、何處どこくにも足駄あしだ穿かなくつちやならないやうえるだらう。ところ下町したまちると大違おほちがひだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)