かい)” の例文
近所きんじょいえの二かいまどから、光子みつこさんのこえこえていた。そのませた、小娘こむすめらしいこえは、春先はるさきまち空気くうきたかひびけてこえていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上杉うへすぎ隣家となり何宗なにしうかの御梵刹おんてらさまにて寺内じない廣々ひろ/\もゝさくらいろ/\うゑわたしたれば、此方こなたの二かいよりおろすにくも棚曳たなび天上界てんじやうかい
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれは、東京とうきょうへきてから、ある素人家しろうとやの二かい間借まがりをしました。そして、昼間ひるま役所やくしょへつとめて、よるは、夜学やがくかよったのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「二かいればねずみがさわぐ。うすなかはくものだらけ。かまの中はあたたかで、用心ようじんがいちばんいい。そうだ、やっぱりかまの中によう。」
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
金十郎はかいノ間に通って、几帳の奥にいる方に進物の口上を披露するのだが、行く先々で見物みものにされるのでやつれてしまった。
奥の海 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
勿論彼は密送前みつそうまへから本葬にかゝるまで十も、あによめの弟にあたる人のいへの二かいはなれに閉籠とぢこもつてゐて叮重ていちやうにされゝばされるほど気が痛んだ。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「いいか、朝食ちょうしょくを二人まえ用意よういして、ここまでもってきなさい。そしてわしがぶまで、二かいへかってにくることはならんよ。わかったな」
そばまどをあけて上氣じやうきしたかほひやしながらくらいそとをてゐると、一けんばかりの路次ろじへだててすぐとなりうちおなじ二かいまどから
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そこで、お姫さまは、しかたなしに、カエルを二本の指でつまんで、二かいのおへやにつれていって、すみっこにおきました。
登らんとするいわお梯子ていしに、自然の枕木を敷いて、踏み心地よき幾級のかいを、山霊さんれいたまものと甲野さんは息を切らしてのぼって行く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
らつしやいまし。」とわか女中ぢよちゆうあがぐちいたひざをつき、してあるスリツパをそろへ、「どうぞ、お二かいへ。突当つきあたりがいてゐます。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
予はヹツクチオ邸のかいを昇つて、※ンチとミケランゼロ二人の意匠に成つた「五百人の広間」のいろ大理石の装飾其他そのた
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
やまくづして、それに引添ひきそふやうにてられたこのいへの二かいからは、丁度ちやうどせまらぬ程度ていどにその斜面しやめんそらの一とが、仰臥ぎやうぐわしてゐるわたしはいつてる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
伽藍がらんのうちから次々に席を立って退出してゆく人々は、かいを降りて、もういっぺん廻廊にある彼のすがたへ、挨拶してゆくか、黙礼をして散って行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
して藤助の處へゆくと番頭は何をして居ると尋ねらるゝに小僧こぞうアノ藤助さんのはうゆくと久兵衞さんはすぐに二かいあがりおたみさんと云ふ美麗うつくしいねえさんと何だかはなしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其入口そのいりくちにはぴか/\した眞鍮しんちゆう表札へうさつに『山野兎やまのうさぎ』と其名そのなりつけてありました、あいちやんはこゑもかけずに二かいあがりました、眞實ほんと梅子うめこさんにつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ちっともはや返事へんじくて、帳場格子ちょうばこうしと二かいあいだを、九十九かよった挙句あげく、とうとう辛抱しんぼう出来できなくなったばっかりに、ここまで出向でむいて始末しまつさ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やがて二かい寐床ねどここしらへてくれた、天井てんじやうひくいが、うつばり丸太まるた二抱ふたかゝへもあらう、むねからなゝめわたつて座敷ざしきはてひさしところでは天窓あたまつかへさうになつてる、巌丈がんぢやう屋造やづくり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
光吉こうきちのかたい決心に動かされて、母はかれをつれて、二かいのマーケットの事務所じむしょへあがっていった。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
かいと謂ツても、ンの六でふで、一けん押入おしいれは付いてゐるが、とこもなければえんも無い。何のことはないはこのやうなへやで、たゞ南の方だけが中窓になツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
工芸こうげい学校の先生は、まずむかしの古い記録きろくをつけたのでした。そして図書館としょかんの二かいで、毎日黄いろに古びた写本しゃほんをしらべているうちに、ついにこういういいことを見附みつけました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
勘次かんじはどうも卯平うへいいやおそろしくつてやうがないのですこ身體からだ恢復くわいふくしかけるとみんなあとでそつとけてむらうち姻戚みよりところつて板藏いたぐらの二かいかくれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家のちうかいは川に臨んで居た。其処そこにこれからたうとする一家族が船の準備の出来る間を集つて待つて居た。七月の暑い日影ひかげは岸の竹藪にかたよつて流るゝあをい瀬にキラキラと照つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
やがて二人ふたりは、あるレストランドの二かいの一すみこしをおろした。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
公園のいしかいより長崎のまちを見にけりさるすべりのはな
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
絶頂ぜつちやうかいまでも、てんまでものぼ往來ゆききの道となりて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
此時このときヂュリエット二かいまどあらはるゝ。
大理石のかいくだ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そして、さっそく、二かいがっていって、まどぎわにちましたけれど、ひくくて、二郎じろうは、屋根やねうえをのぞくことができませんでした。
びっこのお馬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おなじかくれるにしても、二かいほう用心ようじんがいい。」とおもって、馬吉うまきちは二かいがって、そっとすすだらけなたたみの上にごろりとよこになりました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
大路おほぢあなぎつきのかげになびいてちからなささうの下駄げたのおと、村田むらたの二かい原田はらだおくきはおたがひのにおもふことおほし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この男、京都にいたことがあるとみえて、旗亭きていの二かいから首をだして、そのながめを大文字山の火祭に見立みたてた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行水ぎょうずいでもつかうように、もも付根つけねまであらったまつろうが、北向きたむきうらかいにそぼあめおときながら、徳太郎とくたろう対座たいざしていたのは、それからもないあとだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
三四郎は寐巻のうへへ羽織を引掛けて、窓をけた。風は大分ちてゐる。向ふの二かいが風の鳴るなかに、真黒に見える。いへが黒い程、いへうしろそらあかかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とき、おかみさんが、二かい小部屋こべやへはいっていると、おんなもついてて、こういました。
したの又かれ無學文盲むがくもんまうの何も知らぬ山師醫者の元締もとじめなりなど湯屋ゆやの二かい髮結床かみゆひどこなどにて長庵の惡評あくひやうきく夏蠅うるさきばかりなれば果はいのちの入ぬのか又はしにたく思ふ人は長庵のくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
全くわるくないね。間数まかずはと? ぼく書斎しよさいけん用の客に君の居間ゐま食堂しよくだうに四でふ半ぐらゐの子ども部屋べやが一つ、それでたく山だが、もう一つ分な部屋へやが二かいにでもあれば申分なしだね。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それでおつぎをれて、提灯ちやうちんけてひそか土藏どざうの二かいのぼつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かなた、かいかいかさ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それから、いくねん……たったことでしょう。あるまちの二かいりて、としとったおとこが、とり二人ふたりでさびしい生活せいかつをしていました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
祖母おばあさんがおよめにときふる長持ながもちから、お前達まへたち祖父おぢいさんのあつめた澤山たくさん本箱ほんばこまで、そのくらの二かいにしまつてりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ねむくなった。今夜こんやはどこにようかな、うすの中にしようか。かまの中にしようか。下にようか。二かいようか。そうだ、すずしいから二かいよう。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、ひとりの尼、真白い全身に尺布しゃくふもまとわず、赤裸の観世音かと見ゆるばかり、りんとしてかいの上に立ち、微妙の霊音ともひびく声を張って大衆の中へ云った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つき下坐敷したざしきへは何處どこやらの工塲こうばの一れ、どんぶりたゝいてじん九かつぽれの大騷おほさはぎに大方おほかた女子おなご寄集よりあつまつて、れいの二かい小坐敷こざしきには結城ゆふきとおりき二人限ふたりぎりなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奪ひ取たる事松葉屋まつばやの二かいにて平四郎手負ておひながら白状はくじやうに及びことに源八は本人なりと申たりサア未練みれんらしくかくすなと申されしかば兩人共一言のこたへもなく居たりしかば大岡殿どのことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そう、おもった松江しょうこうは、つぎ座敷ざしきまでってって、弟子でしのいるうらかいこえをかけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
記憶きおく辿たどれば、久保田さんのはわたしも二三一緒に行つた事のある、あさ草の十二かいしよの球突塲つきば背景はいけいにしたもので、そこに久保田さん獨特どくとく義理ぎりぜう世界せかいを扱つてあつたやうにおもふ。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こうして、おしろにわで大がかりな火がたかれました。この火のなかで、お妃さまがころされることになったのです。王さまは二かいまどぎわに立って、なみだながらにこのありさまをながめていました。
二人ふたりは、二かいのまどから、かきのながらいろいろかんがえつづけていました。そして、はやいえへかえって、あそびたいなとおもったのです。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)