はたけ)” の例文
はたけえ、牧場ぼくじょうえてはしってくうち、あたりは暴風雨あらしになってて、子家鴨こあひるちからでは、しのいでけそうもない様子ようすになりました。
いっぽう、平野そのものは、冬のなごりのはだかはたけがつづいているばかりなので、灰色の手織の布よりも美しいとは言えませんでした。
親たちは鉱山から少しはなれてはいたけれどもじぶんのくりはたけもわずかの山林もくっついているいまのところに小屋をたててやった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
だんだん、がふけると、どことなくしめっぽく、ひえびえとしてきました。はたけでは、つゆをしたって、うまおいが、ないていました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれとほはたけつち潜伏せんぷくしてそのにくむべき害蟲がいちうさがしてその丈夫ぢやうぶからだをひしぎつぶしてだけ餘裕よゆう身體からだにもこゝろにもつてない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家族かぞくともあそびにつてたが、其時そのときに、いま故人こじん谷活東子たにくわつとうしが、はたけなかから土器どき破片はへん一箇ひとつひろして、しめした。
このふるかはらふるいおてら境内けいだいや、ふるいおてらのあつた場所ばしよいまはたけとなつてゐるところから、よくされるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
要吉は、そのばん、ひさしぶりにいなかの家のことをゆめに見ました。ある山国にいる要吉の家のまわりには、少しばかりの水蜜桃すいみつとうはたけがありました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
このごろでは保名やすなはすっかりもとのさむらい身分みぶんわすれて、あさはやくから日のれるまで、いえのうしろのちいさなはたけてはお百姓ひゃくしょう仕事しごとをしていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
南瓜かぼちや甜瓜まくはうりと、おなじはたけにそだちました。種子たねかれるのも一しよでした。それでゐてたいへんなかわるかつたのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
掘出ほりいだし候ところかみへも御屆申上げずひそかに自分方へ仕舞置しまひおき候旨をば訴へに及びたり役人中此由を聞き吟味の上兵助を役所へ呼寄よびよせ其方事此度はたけより古金のかめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大名小路の大きなやしきが長い年月に段々つぶれてはたけになつて行くのをも見た。御殿のあつた城址しろあとにはいたづらに草がちやうじた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
わたしはその日、マレイのはたけからうちにもどっても、あの「できごと」のことは、だれにも話しませんでした。
と、五六けん手前てまへからしかり付けた。唖者をし子等こらは人の気勢けはひおどろいて、手に手にあか死人花しびとばなを持つたまヽはたけ横切よこぎつて、半町も無い鹿しヽたにの盲唖院へ駆けて帰つた
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
かつあめのふるひといへよりして我家わがやかへることありしに、もとよりおやいまさず、いろと提灯ちやうちんたぬの、やぶまへほこらのうしろ、左右さいうはたけなかひろひて
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天子てんし御料ごりようの、はたけのある山里やまざといた青菜あをなも、そこの吉備きび國人くにびとと、二人ふたりんでゐると、がはれ/″\とすることよ、といふ意味いみのことをいはれたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
内の白とかの黒とがトチ狂うて、与右衛門の妹婿武太郎がはたけの大豆を散々踏み荒したと云うのである。如何してれるかと云う。仕方が無いから損害を二円払うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が夜中、厠に立てば、裏の山には月が澄んで、はたけの葱さへ一つ一つに真青まつさをだ。虫ももう鳴かぬが、それだけ凄い。首を竦めて、しはぶく時の寒さと云へばまた格別だ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
病氣びやうきくない、』『あめりさうですから』など宿やどものがとめるのもかず、ぼく竿さをもつ出掛でかけた。人家じんかはなれて四五ちやうさかのぼるとすでみちもなければはたけもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
国道こくどうは日にらされて、きいろい綺麗きれいなリボンのように牧場まきばはたけ沿って先へとび、町や村を通りぬけ、人の話では、ふねの見える海までつづいているということです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
更にきてはたけの中にたゝずむ。月はいま彼方かなた大竹薮おほだけやぶを離れて、清光せいくわう溶々やう/\として上天じやうてん下地かちを浸し、身は水中に立つのおもひあり。星の光何ぞうすき。氷川ひかわの森も淡くしてけぶりふめり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ぢいやはやまへもりにくしはたけへも野菜やさいをつくりにつて、なんでもよくつてましたから
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
真夏の暑い日ざかりにはたけの雑草を取つてゐて、それから発熱ほつねつしてつひに歿した。それは大正十二年七月すゑで、日本の関東におほ地震のおこる約一ヶ月ばかり前のことである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ことに山県蔦之助やまがたつたのすけは、弓術きゅうじゅつは自分のはたけのものであるし、じしん得意とくいとする代々木流よよぎりゅうも、ひさしく、日輪巻にちりんまきゆみつがえをして、うでのスジを思うさまのばしたことがないから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一方いつぽうでは人口じんこう増加ぞうかにつれてこれまで食料しよくりようにしてゐたくさもだん/\りなくなり、それをおぎなふためにはたけをこしらへて、農作のうさくをする必要ひつようがおこるし、同時どうじにまた野獸やじゆう
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
友人の心のはたけたがやされているや否や、英国のことわざに賢人とは正しき時に、正しき言をはなつ者なりとあるが、実にそのとおりで、どんな正しい言でも時ならぬ時に放てば愚人ぐじんの言にもおとる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「人が殺されましたよ、親分。斯うなりやこちとらのはたけぢやありませんか」
火星くわせいでは一年に数回すうくわい洪水こうずゐがあるのです、そのときにはたけに水をやるんですよ
うらはたけ担桶たごならんでますから、それへなさいまし。僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
アワのはたけには臭いニラが一ぽんえている。
はたけン中に、田鼠むぐらもちが一匹
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
歪形いびつはたけに盛り上げ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まめはたけにみいさんと
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あははたけ
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
あおほうちかづくと、だれか、きゅうりのをうつろにして、うちへろうそくをともしてはたけなかてておいたのです。二人ふたりわらうと
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ヤッローさん、トーケルンの水がされて、はたけになったら、おまえさんたち野ガモは、来年らいねんは、いったいどうなさるんだね?」
私たちは今年三度目どめ、イギリス海岸へ行きました。瀬川せがわ鉄橋てっきょうを渡り牛蒡ごぼう甘藍かんらんが青白いうらをひるがえすはたけの間の細い道を通りました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はたけ作主さくぬしその損失そんしつ以外いぐわいにそれををしこゝろからかげいきほはげしくおこらうともそれはかへりみるいとまたない。勘次かんじせた茄子畑なすばたけもさうしておそはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おじいさんがいつもはたけに出てはたらいていますと、うらの山から一ぴきのふるだぬきが出てきて、おじいさんがせっかく丹精たんせいをしてこしらえたはたけのものをらした上に
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ばあさんは、今日けふもうれしさうにはたけ見廻みまはして甘味うまさうにじゆくしたおほきいやつを一つ、庖丁ほうてうでちよんり、さて、さも大事だいじさうにそれをかゝえてかえつてきました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
なんだね、お前達まえたちこれだけが全世界ぜんせかいだとおもってるのかい。まあそんなことはあっちのおにわてからおいよ。なにしろ牧師ぼくしさんのはたけほうまでつづいてるってことだからね。
十九にち雨中うちうを、つてて、おどろいた。いままでの貝塚發掘かひづかはつくつ臺地だいち東部とうぶさか上部じやうぶ左側さそくであつたが、臺地だいち南側なんそく下部かぶ菱沼鐵五郎ひしぬまてつごらう宅地たくちまえはたけを、大發掘だいはつくつしてある。
かうした石斧せきふなどをさがすのには、はたけころがつてゐるいし片端かたはしから調しらべてるとか、はたけそば小溝こみぞなか石塊いしころとか、あぜまれたいしなか熱心ねつしんさがすにかぎります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
貢さんはうさぎぶ様に駆け出して桑畑に入つて行つた。はたけなかにお濱さんは居ない。ぬまほとりに出た。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
わたしは、きゃっとさけぶと、こわさのあまり夢中になって、ありったけの声でわめきたてながら、あき地ではたけをたがやしていた百姓ひゃくしょうのほうへ、いっさんにかけだしました。
はたけに出てあか実付みつき野茨のばら一枝ひとえだって廊下の釣花瓶つりはないけけ、蕾付つぼみつき白菜はくさい一株ひとかぶって、旅順りょじゅんの記念にもらった砲弾ほうだん信管しんかんのカラを内筒ないとうにした竹の花立はなたてし、食堂の六畳にかざる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
五年目ごねんめには田地でんち取返とりかへし、はたけ以前いぜんよりえ、山懷やまふところ荒地あれち美事みごと桑園さうゑんへんじ、村内そんないでも屈指ゆびをり有富いうふう百姓ひやくしやうおはせたのです。しかもかれ勞働辛苦らうどうしんくはじめすこしかはらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
下はあの通り土のやはらかいはたけで、重い箱を置けば形位はつきます
野づかさの冬のはたけの青菜の葉あはれと見つつくるまにていそぐ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)