たゞ)” の例文
本艦ほんかん一令いちれいした推進螺旋スクルーなみつて進航しんかうはじめた。規律きりつたゞしき軍艦ぐんかん甲板かんぱん、かゝる活劇さわぎあひだでもけつしてその態度たいどみだやうことはない。
たゞして申けるは是名主甚兵衞其外の百姓共よくうけたまはれ將軍の上意なればかるからざる事なりしかるに當村中一同に申合せしらぬ/\と強情がうじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うへの男は、それで、手をはなして、ひざてゝ、袴のひだたゞしく、居住居ゐずまゐを直した。見れば立派な男である。先生もすぐ起きなほつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとへば、吝嗇者りんしょくもののやうにたからおびたゞしうってをっても、たゞしうもちふることをらぬ、姿すがたをも、こひをも、分別ふんべつをも、其身そのみ盛飾かざりとなるやうには。
揚場あがりばから奧方おくがたこゑける。一寸ちよつとことわつてくが、はう裸體らたいでない。衣紋えもんたゞしくとつたふうで、あさからの厚化粧あつげしやう威儀ゐぎそなはつたものである。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんにしても、わたしまゐりません、かく』とつて愛ちやんは、『のみならず、それはたゞしい規則きそくではありません、たついま考案かうあんされたのですもの』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
今度は威儀をたゞしたつもりか、犬をどしの短いのを一本差して、右手に金剛杖こんがうづゑほどの六尺棒まで持つて居ります。
其處そこをよくわきまへて、たゞしくはたらいてもらひたい。つめあかほどでも、不正ふせいがあつたら、この但馬たじまけつしてだまつてゐない。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かまれて暖簾のれんはぢれゆゑぞもとたゞせば根分ねわけのきく親子おやこなからぬといふ道理だうりはなしよしらぬにせよるにせよそれは其方そなた御勝手ごかつてなり仇敵かたき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日の考へでは、脂粉のいらぬ年齡としになつても、たゞしく恥ない日日を送るために入用だと思つてゐる。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
自分じぶんの一心理しんり標準へうじゆんとし、これたゞしいものと獨斷どくだんして、の一心理しんり否認ひにんすることは兎角とかく誤妄ごもうおちいるのおそれがある。これはおほい考慮かうりよしなければならぬことである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
正午しやうごまた夜半やはん十二もととし、このときには短針たんしん長針ちやうしんたゞしくかさなあふて十二ところす。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
げにや榮華は夢かまぼろしか、高厦かうか十年にして立てども一朝の煙にだも堪へず、朝夕玉趾ぎよくし珠冠しゆくわん容儀ようぎたゞし、參仕さんし拜趨はいすうの人にかしづかれし人、今は長汀ちやうていの波にたゞよひ、旅泊りよはくの月に跉跰さすらひて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ほどよく心の中に燃ゆるたゞしきあつき思ひの印を姿にしてかれ斯くいへり 八二—八四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
行跡ぎようせきやゝたゞしとしようせらるゝ者もなほおやし夫にして貯金帳ちよきんてう所持しよじせんためそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
天地あめつちひらけしはじめ、成り成れる不尽の高嶺たかねは白妙の奇しき高嶺、駿河甲斐二国ふたくにかけて八面やおもてに裾張りひろげ、裾広に根ざし固めて、常久に雪かつぐ峰、かくそそり聳やきぬれば、いかしくもたゞしきかたち
随分ずゐぶんわたし思違おもひちがひも多からうと思ひます、それ他日たじつたゞします
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
勝つた者はたゞしく誇る
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
たゞしく受取る物が
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
てら行列ぎやうれつたゞしく出仕有に程なく夜も明渡あけわたり役人方そろはれしかばやゝあつて嘉川主税之助一件の者共呼込よびこみになり武家の分は玄關にて大小を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
軍艦ぐんかん」の甲板かんぱんでは、後部艦橋こうぶかんけうのほとりより軍艦旗ぐんかんきひるがへ船尾せんびいたるまで、おほくの乘組のりくみは、れつたゞして、わが端艇たんてい歸艦きかんむかへてる。
代助は其わらひなか一種いつしゆさみしさを認めて、たゞして、三千代のかほじつと見た。三千代は急に団扇うちはを取つてそでしたあほいだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
領主 つね足下おぬしをばたゞしいそうしんじてをったわ。……ロミオのしもべ何處いずこにをる? れは此儀このぎたいしてなんまうすぞ?
よ/\、おなまぼろしながら、かげ出家しゆつけくちよりつたへられたやうな、さかさまうつばりつるされる、繊弱かよは可哀あはれなものではい。真直まつすぐに、たゞしく、うるはしくつ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
韋駄天ゐだてんちからでもりませいでは。‥‥どんなお早駕籠はやでも四日よつかはかゝりませうで。‥‥』と、玄竹げんちくはもうおもてをあげることが出來できなかつた。但馬守たじまのかみきつかたちたゞして
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
禮儀れいぎたゞしくおしなさい』とあいちやんは嚴格げんかくつて、『なんです、他人ひとたいして亂暴らんばうな』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つきものをあてにせずして、もとよつこよみたつるは、事柄ことがらおいたゞしきみちといふべし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
しづかなる響のよさや独楽ひとつ廻り澄みつつたゞしく据わる
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
忍び今の身の敢果はかなきさまかこちつゝ如何いかなる因果と泣沈なきしづむにぞ文右衞門はかたちたゞしコレお政其方は何とて其樣に未練みれんなることを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夜がけて、四隣あたりが静かな所為せゐかとも思つたが、念のため、右の手を心臓の上に載せて、あばらのはづれにたゞしくあたおとたしかめながらねむりに就いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地上ちじゃうそんするものたるかぎり、如何いかしいしな何等なにらかのえききょうせざるはく、また如何いかいものも用法ようはふたゞしからざればそのせいもとり、はからざるへいしゃうずるならひ。
眞個まつたくことばちがはないもんですから、主人しゆじんも、きやくも、たゞして、のいはれをかうとつたの。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『それは大儀たいぎだツた。どうだな能登守殿のとのかみどの御病氣ごびやうきは。』と、但馬守たじまのかみかたちたゞしてうた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なに艦長かんちやうめいかんとて、姿勢しせいたゞしててる三四めい水兵すいへいは、先刻せんこくより熱心ねつしん武村兵曹たけむらへいそうかほ見詰みつめてつたが、そのうち一名いちめい一歩いつぽすゝでゝ、うや/\しく虎髯大尉こぜんたいゐ艦長かんちやうとにむかひ、意味いみあり
あいちやんはこれがねずみはなしをするたゞしい方法はうはふだとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これみな大陰暦たいゝんれきたゞしからざるところなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
平岡の言葉は言訳いひわけと云はんより寧ろ挑せんの調子を帯びてゐる様にこえた。襯衣シヤツ股引もゝひきけずにすぐ胡坐あぐらをかいた。えりたゞしくあはせないので、胸毛むなげが少しゝゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此時このとき白襟しろえり衣紋えもんたゞしく、いお納戸なんど單衣ひとへて、紺地こんぢおびむなたかう、高島田たかしまだひんよきに、ぎん平打ひらうちかうがいのみ、たゞ黒髮くろかみなかあはくかざしたるが、手車てぐるまえたり、小豆色あづきいろひざかけして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
幼君えうくんきつとならせたまひて、「けつしてづることあひならず一生いつしやう其中そのなかにてくらすべし」とおもてたゞしてのたまふ氣色けしきたはむれともおもはれねば、何某なにがしあまりのことにことばでず、かほいろさへあをざめたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ高座かうざはう正視せいしして、熱心ねつしん淨瑠璃じやうるりかうとつとめた。けれどもいくらつとめても面白おもしろくならなかつた。時々とき/″\らして、御米およねかほぬすた。るたびに御米およね視線しせんたゞしいところいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一體いつたい童謠どうえう收録しうろくするのに、なまりをたゞしたり、當推量あてずゐりやう註釋ちうしやくだい禁物きんもつなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をしへをうけようと、電氣でんきけて、火鉢ひばちうへへ、ありあはせた白紙はくしをかざして、そのあかいインキで、ヴヱスビヤス、ブエスビイヤス、ヴエスヴイヤス、ヴエスビイヤス、どれがたゞしいのでせう
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紀伊きいみや樟分くすわけやしろまうづ、境内けいだいくす幾千歳いくちとせあふいでえりたゞしうす。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
往來傍わうらいばたにはまたきしのぞむで、はてしなく組違くみちがへた材木ざいもくならべてあるが、二十三十づゝ、目形めなりに、井筒形ゐづつがたに、規律きりつたゞしく、一定いつていした距離きよりいて、何處どこまでもつゞいてる、あひだを、井筒ゐづつ彼方かなた
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)