いさ)” の例文
わたしが、お約束やくそくをいたします。いさましい、とお船出ふなでから、あなたのおかえりなさるを、氏神かみさまにご無事ぶじいのって、おちしています。」
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
いさみに勇む第十三潜水戦隊は、その日から船脚ふなあしに鞭うって、東南東の海面へ進撃してゆきました、いよいよ×国は近くなる一方です。
太平洋雷撃戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まことに彼はさも思へらんやうにいさみ、喜び、誇り、楽める色あり。彼のおもては為にふばかり無く輝ける程に、常にもして妖艶あでやかに見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その火のぬくみに全身ぜんしんの血が活々いきいきとよみがえってくるのをおぼえて、かれは、この新しい力を、どこへそそごうかといさみたった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にいさんはおとうさんとマリちゃんのをとって、みんなそろって、よろこいさんで、うちはいり、食卓テーブルまえすわって、一しょに食事しょくじをいたしました。
丁度通り掛つたのは、おたくの前で御座います。捕物の名人と言はれながら、滅多に人を縛らないといふ義にいさむ親分にお願ひして、この急場を
くるり棒の調子を合わして、ドウ、ドウ、バッタ、バタ、時々ときどきむれの一人が「ヨウ」といさみを入れて、大地もひしげと打下ろす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ヂュリ ほんにロミオのかほを……死顏しにがほを……るまでは、わたし如何どうしてもこゝろいさまぬ、從兄いとこがおにゃったのが、それほどこゝろみてかなしい。
翌朝あけのあさむねくもあふいで、いさましく天守てんしゆのぼると、四階目しかいめ上切のぼりきつた、五階ごかいくちで、フトくらなかに、金色こんじきひかりはなつ、爛々らん/\たるまなこ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さらに進んで青年の修養を論ずる段になると、かれの佩剣のさやが、たえ間なく演壇の床板をついて、いさましい言葉の爆発ばくはつ伴奏ばんそうの役割をつとめた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
代助は斯んな話を聞くたびに、いさましいと云ふ気持よりも、まづ怖い方が先につ。度胸を買つてやる前に、なまぐさいにほひ鼻柱はなばしらを抜ける様にこたへる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
七八間先けんさききざみに渋蛇しぶじゃよこを、一文字もんじ駆脱かけぬけたのもつか、やがてくびすかえすと、おにくびでもったように、よろこいさんでもどった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのいきおいがあんまりいさましかったものですから、ごしになっていたほかのねずみたちも、ついうかうかつりまれて
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ついに海蔵かいぞうさんは、かえってませんでした。いさましく日露戦争にちろせんそうはなったのです。しかし、海蔵かいぞうさんのしのこした仕事しごとは、いまでもきています。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたくし斷言だんげんする、わしごとたけく、獅子しゝごといさましき列國れつこく艦隊かんたい百千舳艫ひやくせんじくろならべてきたるとも、日章旗につしようきむかところおそらくば風靡ふうびせざるところはあるまいと。
寢室の窓を開けて、何ももすつかり、きちんととゝのへて、化粧臺の上に置いてあるのを見ると、私はいさんで室を出た。
みんなは小さいけれども、いさましくあるいていました。そして、たがいにたすけをもとめようとでもするように、ぴったりとかたまりあっていました。
あのおいぼれじじいと一騎うちの勝負をしても、このおねえさまを救わないでおくものかと、少年の胸には、いさましいいきどおりがこみあげてきました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
箱根はこね伊豆いづ方面はうめん旅行りよかうするもの國府津こふづまでると最早もはや目的地もくてきちそばまでゐたがしてこゝろいさむのがつねであるが、自分等じぶんら二人ふたり全然まるでそんな樣子やうすもなかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
貨車かしゃ横腹よこばらにある大きな板戸いたどの、すきまをもれていましがた上がったと思われる月がさしこんできたのであった。自分は、なんというわけもなくいさみたった。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
古代の人のような帽子ぼうし——というよりはかんむりぎ、天神様てんじんさまのような服を着換えさせる間にも、いかにも不機嫌ふきげんのように、真面目まじめではあるが、いさみの無い、しずんだ
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
兵士へいし軍楽ぐんがくそうしますのはいさましいものでございますが、の時は陰々いん/\としてりまして、くつおともしないやうにお歩行あるきなさる事で、これはどうも歩行あるにくい事で
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
車上しやじやうひと目早めばやみとめて、オヽ此處こゝなり此處こゝ一寸ちよつとにはか指圖さしづ一聲いつせいいさましく引入ひきいれるくるま門口かどぐちろす梶棒かぢぼうともにホツト一息ひといきうちには女共をんなども口々くち/″\らつしやいまし。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
喜悦よろこびいさみて下りけり依て瀬川せがはが評判江戸中鳴渡なりわたり諸方よりもらはんと云者數多あまたあれ共當人たうにんは是を承引うけひかず今迄の難澁なんじふとても世に云苦勞性くらうしやうなるべし遁世して父と夫のあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
孔子こうし弟子でしなる子路しろいさましい男性的の者であって、つねに勇を好んだ。ある日孔子こうしにたずねた
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
われらずあいちやんは小枝こえだきれぱしひろげ、それをいぬころのはうしてやると、いぬころはたゞちに四ッあしそろへてくうあがりさま、よろこいさんで其枝そのえだえつきました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そして男子だんしのものには、甲胄かつちゆうをつけつるぎいてゐるいさましいかたちをしたのがあり、婦人ふじんぞうには、かみむすびたすきをかけ、なに品物しなものさゝげてゐるようなのもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
朝日新聞社員あさひしんぶんしやゐん横川勇次氏よこかはゆうじしを送らんと、あさ未明まだきおきいでて、かほあらも心せはしく車をいそがせて向島むかふじまへとむかふ、つねにはあらぬ市中しちうにぎはひ、三々五々いさましげにかたふて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
世がくだるにしたがつて、それが表面化し、いさはだといへば、職業的な任侠にんけふの徒や、見得みえを大切にする根性になりさがつたが、大根おほねはいまいつたやうなところにあつたのだ。
初かつお (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
六兵衛はびっくりするやら、ホッとするやら、ゆめのような気がしてぼんやりしてしまいました。が、やがてたくさんの御褒美ごほうびをいただいて、よろこいさんで村へ帰って来ました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そこでたとえばいさましい戦争せんそうの曲をひきながら、かれはジョリクール大将たいしょうが登場を知らせた。大将はインドの戦争でたびたび功名こうみょうあらわして、いまの高い地位ちいにのぼったのである。
すこおもいけれど、かうしてあるけば途中とちう威張ゐばれて安全あんぜんだといふので、下男げなんいさつてあるした。るほどあふひもんと『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだは、人々ひと/″\皆々みな/\みちゆづらせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ほう自分達じぶんたち仲間なかまからしたしいひとうしなうのでございますから、しずってりますのに、他方たほう自分達じぶんたち仲間なかましたしきひと一人ひとりむかえるのでございますから、むしいさんでいるような
されば信長公の招きを受けたウルガン伴天連バテレン(おや、またウルガンが現はれたぞ!)弘法こうぼうの好機ござんなれと喜びいさんで京を指してのぼつたが、そのとき摂州せっしゅう住吉のやしろ、たちまち鳴動して
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
いさみ立つたか引すうる嵐かな」という発句ほっくをもって始まっている一聯いちれんである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
江戸前えどまえを誇ったいさはだの寿司屋など跡を絶たねばならなくなるだろう。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
身震いの出るような心のいさみは、なぜか、すこしも感じられなかった。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして音楽の天分てんぶんがゆたかだったので、まだ何の意味いみも持たないものではあったけれど、ともかくも楽句がっくをこしらえ上げることができた。すると彼は喜びいさんで、それを祖父そふのところへ持っていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
国には盗人ぬすびと家に鼠と、人間ひとに憎まれいやしめらるる、鼠なれどもかくまでに、恩には感じ義にはいさめり。これを彼の猫の三年こうても、三日にして主を忘るてふ、烏円如きに比べては、雪と炭との差別けじめあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
これでもいさみの山王さんのう氏子うぢこだ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「いまごろ、ゆみなんかったかがしなんてあるものでない。どこのや、はたけでも、鉄砲てっぽうった、いさましいかがしをてている。」
からすとかがし (新字新仮名) / 小川未明(著)
というのは、なにか見えるだろうと喜びいさんで甲板に出てみても、いつも周囲は真暗な洋上で、灯台の灯も見えなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや、いさんだのさふらふの、瓜井戸うりゐどあねはべたりだが、江戸えどものはコロリとるわ、で、葛西かさいに、栗橋北千住くりはしきたせんぢゆどぢやうなまづを、白魚しらをつて、あごでた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またかの天女てんによごと春枝夫人はるえふじんが、萬一まんいちにも無事ぶじであつて、このいさましい姿すがたたならば、どんなにおどろよろこことであらう。
とおっしゃって、弓矢ゆみや太刀たちをおりになり、身方みかた軍勢ぐんぜいのまっさきっていさましくたたかって、ほとけさまのてきのこらずほろぼしておしまいになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ふかいわけはわからないが、竹童ちくどうはそう聞いて、なんとなく胸おどり血わいて、じぶんも、甲斐源氏かいげんじの旗上げにくみする一人であるようにいさみたった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下田の金さんとこでは、去年は兄貴あにきが抽籤でのがれたが、今年は稲公があの体格たいかくで、砲兵にとられることになった。当人はいさんで居るが、阿母おふくろが今からしおれて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それに、これらのいさましい少年たちは、後日ごじつ、またどのような手がらをたてないものでもないのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大路おほぢ見渡みわたせばつみなき子供こどもの三五にんひきつれていらいたらいたなんはなひらいたと、無心むしんあそびも自然しぜんしづかにて、くるわかよくるまおとのみ何時いつかわらずいさましくきこえぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところで、鐵火とは、卷き舌で、齒ぎれのよい肌合を差していつたものだが、氣のあらいいさはだのなかでも、鐵火といはれるのは、どうしたことかすこし下品さをふくんでゐる。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)