りん)” の例文
風情ふぜい一段いちだんで、みぎはには、所々ところ/″\たけひく燕子花かきつばたの、むらさきはなまじつて、あち此方こちまたりんづゝ、言交いひかはしたやうに、しろはなまじつてく……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水術のいんくとひとしく、あきらかに姿をみせた和田呂宋兵衛わだるそんべえ、九りん銅柱どうちゅうをしっかといて、夜叉やしゃのごとく突ッ立っていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すみとりの底に残っている細かな炭をはらわずに、その上にその上にと炭を出し、たまりたまった細かなくずを、七りんにつかうなどは禁物です。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
りんをとるもの、さくを執るもの、さくを執るもの、を握るもの、棒をふるうもの、刀を構えるもの、印を結ぶもの、三十六臂三十六般の形を成している。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雑草ざっそうあいだに、一りん紫色むらさきいろ野菊のぎくいていたが、そのきよらかなで、これを見守みまもっているようにおもわれました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
取繕とりつくろひ申にぞ次右衞門三五郎口をそろへて然らば其石塔せきたふ參詣さんけい致し度貴僧きそうには先へ歸られ其用意よういをなし置給へと云に祐然かしこまり候と急ぎ立歸りて無縁むえんの五りんたふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
えんじゅの下の大きな水鉢みずばちには、すいれんが水面すいめんにすきまもないくらい、まるけて花が一りんいてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
果して枯枝かれえだが大分出来たが、肝腎かんじんいのちは取りとめて、り残されの枝にホンの十二三りんだが、美しい花をつけたのである。彼はあらためてつく/″\と其花を眺めた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
葉と同じかぶから花茎かけいいて花が咲くのだが、花は茎頂けいちょうに一りんき、側方そくほうに向こうて開いている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
墓地を左に折れると、石のさくをめぐらした広い土の真んなかに、小さい五りんの塔が立っている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小手をかざして塔の上の方を見上みあげるならば、五重塔の天辺てっぺん緑青ろくしょうのふいた相輪そうりんの根元に、青色の角袖かくそでの半合羽を着た儒者の質流れのような人物が、左の腕を九りんに絡みつけ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
道子みちこ上野うへのから省線電車しやうせんでんしや松戸まつどえきりたが、てらだけは思出おもひだすことができたものゝ、その場処ばしよまつたわすれてゐるので、駅前えきまへにゐるりんタクをんでそれにつてくと
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
みせは二けん間口まぐちの二かいづくり、のきには御神燈ごしんとうさげてじほ景氣けいきよく、空壜あきびんなにらず、銘酒めいしゆあまたたなうへにならべて帳塲ちようばめきたるところもみゆ、勝手元かつてもとには七りんあほおと折々をり/\さわがしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「遠いよ」と云った人の車と、「遠いぜ」と云った人の車と、顫えている余の車は長きかじを長くつらねて、せばく細いみちを北へ北へと行く。静かなを、聞かざるかとりんを鳴らして行く。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝手元かってもとでは、しきりにばたばたと七りんしたあおぐ、団扇うちわおときこえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、世界を祝福する御手みてからき散らし給ふ薔薇ばらの花、羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、その金色こんじきしんあかがねづくり、そのあだなるりんの上に、露とむすぶ涙は基督クリスト御歎おんなげき、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
さあれ車の鐵のりん、軸に黄金こがねのさし油
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
りんいろくちりもせず
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
りん明月めいげつ天水てんみずの如し
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
みづりんうちをつたへ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すでくらんでたふれさうになると、わざわひ此辺このへん絶頂ぜつちやうであつたとえて、隧道トンネルけたやうにはるかに一りんのかすれたつきおがんだのはひるはやし出口でくちなので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
片膝かたひざおりに、戒刀かいとうさやを横にはらった龍太郎、銅の九りんも斬れろとばかり、呂宋兵衛の足もと目がけてぎつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、黄色きいろおおきなりんはなひらき、太陽たいよううつほういて、あたまうごかす、不思議ふしぎはなでありました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
多くの年数をた古い牡丹にあっては、高さが一八〇センチメートル以上にも達してみきが太くなり、多くのえだを分かち、たくさんな葉をしげらし、花が一株上に数百りんも開花する。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
靜かな夜を、聞かざるかとりんを鳴らして行く。鳴る音はせばき路を左右に遮られて、高く空に響く。かんからゝん、かんからゝん、と云ふ。石に逢へばかゝん、かゝらんと云ふ。陰氣な音ではない。
京に着ける夕 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けん長屋ながやのまんなか縁起えんぎがよくないという、ひとのいやがるそんまんなかへ、所帯道具しょたいどうぐといえば、土竈どがまと七りんと、はし茶碗ちゃわんなべが一つ、ぜん師匠ししょう春信はるのぶから、ふちけたごろの猫脚ねこあしをもらったのが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
美登利みどりなにゆゑとなくなつかしきおもひにてちがだなの一りんざしにれてさびしくきよ姿すがたをめでけるが、くともなしにつたそのけの信如しんによなにがしの學林がくりんそでいろかへぬべき當日たうじつなりしとぞ(をわり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三次が眼をみはると後の四人も、加留多カルタ紛紜ふんぬんを忘れて、しばらくはこの一りん馥郁ふくいくさに疲れた瞳を吸われている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とゞ山懷やまふところに、おほひかさなる錦葉もみぢかげに、眞赤まつか龍膽りんだうが、ふさ/\と二三りんしもむらさきこらしてく。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このひまわりのはなが、そのときちょうどあかぼうあたまほどもありそうなおおきなりんひらいていました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
秋にくきの上部分枝ぶんしし、小枝端しょうしたんに五れつせる鐘形花しょうけいかを一りんずつけ、大きな鮮紫色せんししょく美花びかが咲くが、栽培品には二重咲ふたえざき花、白花、淡黄花たんおうかしぼり花、大形花、小形花、奇形花がある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
なにならんと小走こばしりしてすゝりつ一枝ひとえだ手折たをりて一りんしうりんれかざしてるも機嫌取きげんとりなりたがひこゝろぞしらず畔道あぜみちづたひ行返ゆきかへりてあそともなくくらとりかへゆふべのそら雲水くもみづそう一人ひとりたゝく月下げつかもん何方いづこ浦山うらやましのうへやと見送みをくればかへるかさのはづれ兩女ふたりひとしくヲヽとさけびぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そらに一りんつぼみへて、いたやうに、常夏とこなつはなにした、ほつそりとしろと、さくらぢらしの紫紺しこんのコート。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大将伊那丸いなまるとばりをはらってそれへきたが、閣上かくじょうの呂宋兵衛は、いちはやく屋根の上へとびうつり、九りんもとに身をかがめてしまったので、遠矢とおやかけるすべもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山影やまかげながらさつ野分のわきして、芙蓉ふようむせなみ繁吹しぶきに、ちひさりんにじつ——あら、綺麗きれいだこと——それどころかい、馬鹿ばかへ——をとこむねたらひ引添ひきそひておよぐにこそ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
疲れた体を投げて、賛五郎は、空虚うつろの中に寝ころんだ。——そしてふと、意外な物を机の上にふと見出した。おととい——彼女が裏藪から一りん切ってけた藪椿のつぼのそばに——
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へたのが何時いつびて、丁度ちやうど咲出さきで桔梗ききやうはなが、浴衣ゆかたそで左右さいうわかれて、すらりとうつつて二三りんいろにもればかげをも宿やどして、雪洞ぼんぼりうごくまゝ、しづかな庭下駄にはげたなびいて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花片はなびらいたはるよ、てふつばさづるかと、はら/\ときぬ手巾ハンケチかろはらつて、の一りん薔薇ばらくと、おもいやうにしなつて、せなぢさまに、うへへ、——さかうへへ、とほりのはし
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
萌黄もえぎに敷いた畳の上に、一簇ひとむれの菫が咲き競ったようになって、朦朧もうろうとした花環の中に、就中なかんずくりんの大きい、目に立つ花の花片が、ひらひらと動くや否や、立処たちどころに羽にかわって、蝶々に化けて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いろ三つをかさねて、ひた/\とうつつて、あゐうかべ、みどりひそめ、くれなゐかして、なみや、かへかぜに、紅紫こうしりんはなたちまき、藍碧万顆らんぺきばんくわほしたちまひらいて、さつながるゝ七さいにじすゑ湖心こしんもつとふかところ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祖母そぼ佛壇ぶつだんりんつてすわつた。わたしおなじやうにすわつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)