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呌
『
失敬な!』と、
一言呌ぶなりドクトルは
窓の
方に
身を
退け。『
全体貴方々はこんな
失敬なことを
言っていて、
自分では
気が
着かんのですか。』
與四
郎は
忽ち
顏の
色青く
赤く、
唇を
震はせて
惡婆、と
呌びしが、
怒氣心頭に
起つて、
身よりは
黒烟りの
立つ
如く、
紙幣も
文も
寸斷/\に
裂いて
捨てゝ、
直然と
立しさま
人見なば
如何なりけん。
つれなく
見えし
有明の
月の
形見を
空に
眺めて、(
曉ばかり)と
呌きけんか
知らず。