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怒氣
それから
怒氣を
含んだ
聲が
聞えました——
兎の——『
小獸や
小獸や!お
前何處に
居るんだい?』すると
聞き
慣れない
聲で、『
此處に
居るよ!
林檎を
掘つて!』
船長は
周章てゝ
起上つたが、
怒氣滿面、けれど
自己が
醜態に
怒る
事も
出來ず、ビール
樽のやうな
腹に
手を
當てゝ、
物凄い
眼に
水夫共を
睨み
付けると、
此時私の
傍には
鬚の
長い、
頭の
禿た
與四
郎は
忽ち
顏の
色青く
赤く、
唇を
震はせて
惡婆、と
呌びしが、
怒氣心頭に
起つて、
身よりは
黒烟りの
立つ
如く、
紙幣も
文も
寸斷/\に
裂いて
捨てゝ、
直然と
立しさま
人見なば
如何なりけん。