見返みかへ)” の例文
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
長吉ちやうきちはれるまゝに見返みかへると、島田しまだつた芸者と、れに連立つれだつてくのは黒絽くろろ紋付もんつきをきた立派りつぱ紳士しんしであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二足にそくつかみの供振ともぶりを、見返みかへるおなつげて、憚樣はゞかりさまやとばかりに、夕暮近ゆふぐれぢか野路のぢあめおもをとこ相合傘あひあひがさ人目ひとめまれなる横※よこしぶきれぬききこそいまはしも
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見返みかへり/\やゝかげさへもみえざればうしがみをや引れけん一あし行ば二足ももどる心地の氣をはげまし三河の岩井をあとになし江戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見返みかへると、くろ黄色きいろしまのある大柄おほがらはちで、一たかあがつたのがまたたけ根元ねもとりてた。と、地面ぢべたから一しやくほどのたかさのたけかはあひだ蜘蛛くも死骸しがいはさんである。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ふね秒一秒べういちべうしづんでく、甲板かんぱん叫喚けうくわんはます/\はげしくなつた。つひに「端艇たんていおろせい。」の號令がうれいひゞいて、だい一の端艇たんてい波上はじやう降下くだつた。此時このときわたくし春枝夫人はるえふじん見返みかへつたのである。
兄のにらむのも見返みかへらずに、貢さんは蝋燭と庖丁とを持つて内陣ないぢんぶ様にあがつて行つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
此方こつちの人が向うへ……(前後ぜんご見返みかへり)え成程なるほど近江屋あふみやさん貴方あなたが向うに立つてゐますな、成程なるほどてゐますこと。近「てゐるはずよ、かゞみうつるんだから、並んで見えるだらう。梅「わたし何方どれで。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
丸山まるやまくるわ見返みかへり柳。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かたむけて見返みかへるともなく見返みかへ途端とたんうつるは何物なにもの蓬頭亂面ほうとうらんめん青年せいねん車夫しやふなりおたか夜風よかぜにしみてかぶる/\とふるへて立止たちどまりつゝ此雪このゆきにては
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ばおすゝぎなさるがよいと言れてよろこ會釋ゑしやくしてやれし垣根の切戸きりどけ廣くも非ぬ庭へ進むに老人背後うしろ見返みかへりておみつ水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なににしてもおそろしいいまえだにはひるつてるのであらうとあまりことおもつて振返ふりかへると、見返みかへつたなんえだらず矢張やツぱりいくツといふこともないひるかはぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女にふんした役者は花道はなみちきるあたりまで出てうしろ見返みかへりながら台詞せりふを述べた。あとうたがつづく。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
シロクシナス番兵ばんぺい見返みかへりまして、わうの詩を手に取り上げ、シ
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
兵曹へいそうことばはなく、なみだれて大佐たいさかほ見返みかへした。
青木さんは不おくさんのはう見返みかへつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
十露盤玉そろばんだま筆先ふでさき帳尻ちやうじりつくろふ溝鼠どぶねづみのみなりけん主家しゆか一大事いちだいじ今日こんにち申合まをしあはせたるやうに富士見ふじみ西行さいぎやうきめ見返みかへるものさへあらざれば無念むねんなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立て或松原に差掛りしが此方の松蔭まつかげより黒き頭巾づきんにておもてを隱せし一人の侍士さぶらひ四邊あたりを見廻し立出て忠八暫しと云こゑに驚き見返みかへれば彼の侍士が黒き頭巾をぬぐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちやうさん、君は芸者が好きなのか、贅沢ぜいたくだ。」と新俳優のきちさんは意外らしく長吉ちやうきちの顔を見返みかへしたが
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「べらぼうめ、飛越とびこしたぐらゐの、ちよろがはだ、また飛返とびかへるに仔細しさいはあるめえ。」と、いきつて見返みかへすと、こはいかに、たちま渺々べう/\たる大河たいがつて、幾千里いくせんりなるやはてず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何處どこ姉樣あねさまからお手紙てがみやうぞ、眞赤まつかうそをと我家わがや見返みかへられて、何事なにごと御存ごぞんじなしによいおかほをしてひまくださる勿躰もつたいなさ、あのやうなどく
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
臺所だいどころれば引窓ひきまどから、えんてば沓脱くつぬぎへ、見返みかへれば障子しやうじへ、かべへ、屏風びやうぶへかけてうつります。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
垣根かきね近邊ほとりたちはなれて、見返みかへりもせず二三すゝめば遣水やりみづがれおときよし、こゝろこゝにさだまつておもへば昨日きのふれ、彷彿はうふつとして何故なにゆゑにものおもひつる
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カン/\とかねたゝきながら、提灯ちやうちんふくみましたやうに、ねずみ腰衣こしごろもをふは/\と薄明うすあかるくふくらまして、行掛ゆきがけに、はなしたばして、あし爪立つまだつて、伸上のびあがつて、見返みかへつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
友仙いうぜんおびぢりめんのおびあげも人手ひとでりずにばしこくめたる姿すがた不圖ふとたるには此樣このやう病人びやうにんともおもるまじきうつくしさ、兩親ふたおや見返みかへりて今更いまさらなみだぐみぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは可笑をかしいくらゐでした。が、狂人きちがひは、とると、もとのところへ、のまゝしやがんで、げたのがまがかどで二三にん見返みかへつてえなくなる時分じぶんには、また……カチリ、ばら/\。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一同いちどうこれはとおそつゝしみけるに、やゝありて幸豐公ゆきとよぎみ御顏おんかほなゝめ見返みかへたまひ、「もくもく」とたまへば、はる末座まつざかたにて、いらへつ、白面はくめん若武士わかざむらひすこしくれつよりずりでたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まわれば大門おほもん見返みかへやなぎいとながけれど、おぐろどぶ燈火ともしびうつる三がいさわぎもごとく、けくれなしのくるま行來ゆきゝにはかりられぬ全盛ぜんせいをうらなひて、大音寺前だいおんじまへほとけくさけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はじめて鸚鵡あうむ見返みかへして、言葉ことばよ、言葉ことばよ!日本につぽん、と眞前まつさきひましたとさ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
嗚呼をこがましけれど雪三せつざう生涯しやうがい企望のぞみはおまへさましん御幸福ごかうふくばかりと、ひさしてことばりつ糸子いとこおもてじつとながめぬ、糸子いとこ何心なにごゝろなく見返みかへして、われ花々はな/″\しきにならんのねがひもなく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このまゝに見返みかへりもしたまはずはいまさらおもてもけがたしかなしきことよと娘氣むすめぎたのみを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とほあと見返みかへれば、かぜつた友船ともぶねは、千すぢ砂煙すなけぶりをかぶつて、みだれて背状うしろさまきしなつて、あたか赤髪藍面せきはつらんめん夜叉やしやの、一水牛すゐぎうくわして、苜蓿うまごやしうへころたるごとく、ものすさまじくのぞまれた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もすそをすらりと駒下駄こまげた踏代ふみかへて向直むきなほると、なかむかうむきに、すつとした襟足えりあしで、毛筋けすぢとほつた水髮みづがみびんつや。とけさうなほそ黄金脚きんあしの、淺黄あさぎ翡翠ひすゐ照映てりはえてしろい……横顏よこがほ見返みかへつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此下駄このげた田町たまちまでことかといまさら難義なんぎおもへども詮方せんかたなくて立上たちあが信如しんによ小包こづゝみをよこに二タあしばかり此門このもんをはなれるにも、友仙ゆうぜん紅葉もみじのこりて、てゝぐるにしのびがた心殘こゝろのこりして見返みかへれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はひつてよう……いま前途ゆきさきいたのに、道草みちぐさをするは、とがさして、燒芋屋やきいもやまへ振返ふりかへると、わたしをしへたとき見返みかへつた、のまゝに、そといて、こくり/\とぬくとさうな懷手ふところで居睡ゐねむりする。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなしつ不圖ふと見返みかへりてまゆ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
をんな見返みかへつたまゝ、さかうへへ、しろ足袋たびさきが、つまれつつ
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもはず振向ふりむいていけはう、うしろのみづ見返みかへつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見返みかへつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)