やす)” の例文
そして、ここがいちばん安心あんしんだというふうに、あたまをかしげて、いままでさわいでつかれたからだを、じっとしてやすめるのでありました。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
よくたゞしてると、しかく平氣へいきをとこも、時々とき/″\歡樂くわんらく飽滿はうまん疲勞ひらうして、書齋しよさいのなかで精神せいしんやすめる必要ひつえうおこるのださうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『ああまだ膝小僧ひざこぞうにもとゞいてないよ。さうさな、やすみなしの直行ちよくかう夕方ゆふがたまでにはけるだらう。これからが大飛行だいひこうになるんだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
質請しちうけして御主人をあたゝかにやすませられよほかに思案は有まじと貞節ていせつを盡して申を聞き喜八も涙を流して其志操そのこゝろざしかんわづか二分か三分の金故妻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「お見舞みまい方々かたがたも、つぎにお引取ひきとりなすってはどうじゃの、御病人ごびょうにんは、出来できるだけ安静あんせいに、やすませてあげるとよいとおもうでの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けれども、流れる霧のために、そのような景色けしきはすぐまたかくれてしまいました。なにもかもが水の上に静かにやすらっているようでした。
我儘わがまゝばかり、おつてらつしやつたのを、こんなところまでれていて、すわつておやすみなさることさへ出來できないんだよ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そんなに心配しんぱいしないでもいいんですよ。わたしいようにしてあげるから——だれでもあることなんだから——今日きょう学校がっこうをおやすみなさいね。」
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちょうど田植たうやすみの時分じぶんで、むらでは方々ほうぼうで、にぎやかなもちつきのおとがしていました。山のおさると川のかにが、途中とちゅう出会であって相談そうだんをしました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
乳母 おゝ、辛度しんど! 暫時ちいとまァやすましてくだされ。あゝ/\、骨々ほね/″\いたうていたうて! ま、どのくらゐほッつきまはったことやら!
昔ゲーテの時代には、自由なる法王の支配するローマは、各民族の思想家らがあたかも鳥のように、暴風雨を避けてやすらいに来る小島であった。
小賢こざかしいからすはそれをよくつてゐました。それだから、そのあたまかたうへで、ちよつとはねやすめたり。あるひは一宿やどをたのまうとでもすると、まづ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しめたと思って、物かげにかくれ、足のどろをすっかりはらい落として、ゆっくりとやす場所ばしょをさがして歩きだしたんだ。
いや、おんみずからのご不自由ふじゆうよりも、戦乱せんらんのちまたにえひしがれている民のうえにご宸念しんねんやすませられたことがない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友田恭助君の戦死直前の勇姿——一つは浮袋を肩から胸に懸けて塹壕に暫しやすらうてゐる凜然たる肖像と、他の一つは呉淞クリイクを背景として
旧友の死 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
(三嶋郡とする説もあり)家持やかもちの哥に「ゆきかへるかりのつばさをやすむてふこれや名におふうら長浜ながはま」▲名立なだち 同郡西浜にしはまにあり、今は宿しゆくの名によぶ。
けれども、先生せんせいのように親切しんせつをしへてくださるひとはなく、やすみの時間じかんにお友達ともだち面白おもしろあそぶことが出來できないから、ときには退屈たいくつすることもありませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
眼前にかなり広い沼があって、その沼の上を一文字に飛んではいるが、岸に着くと、はたと翼を納めてやすらわんとする気合の飛び方でありました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もし未来あるときは、現世げんぜ八六陰徳善功も八七来世のたのみありとして、人しばらくここに八八いきどほりをやすめん。
彼は死にしより以來このかたかくのごとく歩みたり、また歩みてやすらふことなし、凡て世にきものあまりにふとき者かゝる金錢かねを納めてあがなひしろとす。 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ここにおいて彼は訴うるに処なくして、ついに大地に向って訴うるに至った。これ十八節である。「地よわが血をおおうなかれ、わが号叫さけびやすむ処を得ざれ」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あなはもうほとんはちからだのすべてをかくすやうなふかさになつてゐた。が、はちはまだそのはげしい勞働らうどうやすめなかつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
金太郎が帽子ぼうしをとつてお辭儀じぎをすると、山下先生はを絲のやうにほそくして、春やすみは何日までか訊ねた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
すこやすんで其後そののちらず、いま御免ごめんなさりませとことはりをふてやるに、れでいのか、おこりはしないか、やかましくなれば面倒めんだうであらうと結城ゆふきこゝろづけるを
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さてなにがしぼくしたが我家わがやをさしてかへみちすがらさき雲飛うんぴが石をひろつた川とおなじながれかゝつて居るはしまで來ると、ぼくすこかたやすめるつもりで石を欄干らんかんにもたせてほつ一息ひといき
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ある日、私は、私達わたしたちをこの家へみちびき入れたをかの上へ行つてみた。私は二人でやすんだくさの中へすわつてみた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
月よりも遠く見える空の奥に、シルラス雲がほのかな銀色をしてやすらっていた。びきった眺めだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まつ赤な血を飲まなければならないのね、おやすみなさい、私のたつた一の宝物、お眠みなさい、私の神、私の子供、私は貴方に害をしようと思つてはゐなくつてよ。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
「そうだとも、それでおまえの精神せいしんはわかった、それで、おれがおまえの保証人になるから、おまえ安心してやってくれ、まだ昼乳ひるちちまでにはすこしやすむまがあるから休んでくれ」
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
べつ特別とくべついたむわけでもなく外面ぐわいめんからも右足うそく膝關節しつくわんせつは、なんの異常いじやうもなかつたのであるけれども、自由じいう曲折きよくせつ出來できないめに、學校がくかうでは作法さはふ體操たいさうやすまなければならなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
吾等われらとう印度洋インドやうこの孤島はなれじまへだゝつてつても、么麽どうしてこのいわはずにられやう、去年きよねんも、一昨年おとゞしも、當日たうじつ終日しうじつげふやすんで、こゝろばかりの祝意しゆくゐひやうしたが、今年ことし今日けふといふ今日けふ
さてどうも困る事には、これまで十五にちかんつゝしみで長休ながやすみをいたしてりましたところへ、御停止ごちやうじあけとなつて、またやすんで京都きやうとまでまゐらうといふものは一人もありませんで、誠に困りましたが
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一昨日おとついは、一字の男総出で、隣村の北沢から切組きりくみ舞台ぶたいを荷車で挽いて来た。昨日は終日舞台かけで、村で唯一人ただひとりの大工は先月来仕かけて居る彼が家の仕事をやすんで舞台や桟敷さじきをかけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
去年きよねん夏頃なつごろから稼場かせぎば姿すがたはじめ、川風かはかぜあきはやぎ、手袋てぶくろした手先てさきこゞえるやうなふゆになつても毎夜まいよやすまずにるので、いまでは女供をんなどもなかでも一ばん古顔ふるがほになつてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
みなさんがお正月しようがつやすみをへて、ふたゝ寒風かんぷうなか學校がつこうにおかよひになるときには、おほくのかず、れたようにねむつてゐますが、なかにはまんさくのようにさむかぜにもへてはや
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「きょうはおまえのうちは仕事がやすみかい。林太郎も学校がお休みかい?」
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
知縣ちけん官舍くわんしややすんで、馳走ちそうになりつゝいてると、こゝから國清寺こくせいじまでは、爪先上つまさきあがりのみちまた六十ある。くまでにはりさうである。そこでりよ知縣ちけん官舍くわんしやとまることにした。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
用水のそばに一軒涼しそうなやす茶屋ぢゃやがあった。にれの大きな木がまるでかぶさるように繁って、店には土地でできる甜瓜まくわが手桶の水の中につけられてある。平たい半切はんぎり心太ところてんも入れられてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
すきやすめたるらまでもりやうずる顏の姿かな。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やすめ」「かしこし」「さむし」「いざ」
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
二人ふたりは、そこでかなしいわかれをしました。びっこのむすめは、ひとり山道やまみちあるいてかえります途中とちゅうみちばたのいしうえこしをかけてやすみました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
御米およね御前おまへ神經しんけい過敏くわびんになつて、近頃ちかごろうかしてゐるよ。もうすこあたまやすめて工夫くふうでもしなくつちや不可いけない」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やすいきを入て居けるゆゑ怖々こは/″\前へ行先生只今の者に能々うけたまはりし處熊谷にて御世話になりたる者のよしに候と云ば後藤は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つねさんの、三日みつかばかり學校がくかうやすんだのはことながら、民也たみやは、それがゆめでなくとも、まで可恐おそろしいとも可怪あやしいともおもはぬ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふん、もの値打ねうちのわからねえやつにゃかなわねえの。おんな身体からだについてるもんで、ねん年中ねんじゅうやすみなしにびてるもなァ、かみつめだけだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わし居間ゐま燭火あかして! はれやれ、おそうなったわい、こりゃやがておはやうとはねばなるまい。……さゝ、おやすみなされ。
(三嶋郡とする説もあり)家持やかもちの哥に「ゆきかへるかりのつばさをやすむてふこれや名におふうら長浜ながはま」▲名立なだち 同郡西浜にしはまにあり、今は宿しゆくの名によぶ。
くずはいつものとおりはたかって、とんからりこ、とんからりこ、はたりながら、すこつかれたので、手をやすめて、うっとりにわをながめました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
として、しろいところにくろふといてある看板かんばんは、とうさんたちにもつてやすんでけとふやうにえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)