苦心くしん)” の例文
そうだ、これをおとうとせてやろう。そして、りこうなはちが、どうしてつくり、また子供こどもそだてるのに苦心くしんするかをおしえてやろう。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
五番ごばんめの石上いそのかみ中納言ちゆうなごんつばめ子安貝こやすがひるのに苦心くしんして、いろ/\とひと相談そうだんしてのち、ある下役したやくをとこすゝめにつくことにしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ところが仲々なかなか、お役人方やくにんがた苦心くしんは、新聞に出ているくらいのものではありませんでした。その研究中けんきゅうちゅうの一つのはなしです。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかるにわたくし苦心くしんまつた無益むえきであつた。第一端艇だいいちたんてい波上はじやううかぶやなや、たちま數百すうひやくひとは、雪崩なだれごと其處そこくづれかゝつた。
おかあさんを見ろ、きさまのことを心配してあのとおりやせてるわ。もうそのくらいの年になったらば、両親りょうしん苦心くしんもすこしはわかりそうなものだ
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「もちろんだよ。あとでやつは、さんざん苦心くしんして自由じゆうからだになっただろう。そうとうきつくしばってやったからな」
かれは、まだ羞恥はぢ恐怖おそれとが全身ぜんしん支配しはいしてるおつぎをとらへてたゞ凝然ぢつうごかさないまでには幾度いくたびかへ苦心くしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何しろうでぱいのところを見せて、すくなくとも日本の洋畫界やうぐわかいに一生面せいめんひらかうといふ野心やしんであツたから、其の用意、其の苦心くしん、實にさん憺たるものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かつ性來せいらい記憶力きおくりよくとぼしきは、此等これら病症びやうしやうためます/\その※退げんたいするをかんじ、治療法ちれうはふ苦心くしんせるときたま/\冷水浴れいすゐよくしてかみ祷願たうぐわんせばかなら功驗こうけんあるしとぐるひとあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
それでも時々とき/″\は、先方さき樣子やうすを、小六ころくあに對話たいわからこともあつた。一週間しうかんほどまへに、小六ころくあにに、安之助やすのすけがまた新發明しんはつめい應用おうよう苦心くしんしてゐるはなしをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あとくと、とんさんの苦心くしんは、大根だいこんおろし。まだ御馳走ごちそうもないまへに、あへ消化せうくわたすけるためではない。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪ふかき所は雪中には山に入りてきこりする事あたはざるゆゑの所為しわざにて、我国雪のため苦心くしんするの一ツ也。
ボートはぐ、水練すゐれんる、自転車で乗廻のりまはす、うまる、学科には平生へいぜい苦心くしんせんのであつたが、く出来ました、試験しけん成績せいせき相応さうおうよろしかつた、わたしと来ると
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのてんでとりわけ物事ものごと縁起えんぎかつ支那人しなじん如何いか苦心くしん焦慮せうりよするかはいろいろかたられてゐることだが、まつたほかのことでは如何いかなるかつでもないぼく麻雀マージヤンとなると
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
湯屋ゆやひろあつめたつめじゃァねえよ。のみなんざもとよりのこと、はらそこまでこおるようなゆきばんだって、おいらァじっとえんしたへもぐりんだまま辛抱しんぼうして苦心くしんたからだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
學校がくかう唱歌しようかにもぎつちよんちよんと拍子ひやうしりて、運動會うんどうくわいやり音頭おんどもなしかねまじき風情ふぜい、さらでも教育きやういくはむづかしきに教師きやうし苦心くしんさこそとおもはるゝ入谷いりやぢかくに育英舍いくえいしやとて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これも小栗上野介おぐりこうずけのすけ等の尽力じんりょくに出でたるものにて、例の財政ざいせい困難こんなんの場合とて費用の支出ししゅつについては当局者の苦心くしん尋常じんじょうならざりしにもかかわらず、陸軍の隊長たいちょう等は仏国教師の言を
「そうだ! その砦へけるために、じつは非常に苦心くしんしているところじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或年のはるぼくは原稿の出来ぬことにすくなからず屈託くったくしていた。滝田くんはその時ぼくのために谷崎潤一郎くんの原稿をしめし、(それは実際じっさい苦心くしんの痕の歴々れきれきと見える原稿だった。)大いにぼく激励げきれいした。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
イヤ一人ひとり小供こども満足まんぞく仕上しあげるにはなかなか並大抵なみたいてい苦心くしんではござらぬ。
先生が生きて復讐する事が出来ないで、死んであだをとろうとあれだけの苦心くしんをなすったのに、こうむざむざと見つけられるとは。あの業突張りに何故もっと大きな天罰が与えられないのでしょう。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
さすりながら其こゝろざしはうれしけれど如何いかに年貢の金に差閊さしつかへたりとて其方達そのはうたち浮川竹うきかはたけしづめんとは思ひもよらずと十兵衞は妻お安の泣居なきゐるをはげまし餘り苦心くしんをするとよき工夫くふうの付ぬ物なりと自在鍵じざいかぎより鑵子やくわん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みろ、これが苦心くしんすえ、おれが翻訳した文章なのだ
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
子供こどもたちは、かってな理屈りくつをつけて、さおにさおをして、どうかしてたかえだまでとどくようにしたいと苦心くしんしていました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「やっぱりがまんしてつづけよう。ここでげだしては、いままでの苦心くしんも水のあわだ。それにしても、こんど、あいつに会ったら、ただではすまさんぞ」
さて紫紺染しこんぞめが東京大博覧会だいはくらんかい二等賞にとうしょうをとるまでにはこんな苦心くしんもあったというだけのおはなしであります。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
其後そのご幾年月いくねんげつあひだ苦心くしん苦心くしんかさねた結果けつくわ一昨年いつさくねんの十一ぐわつ三十にちわたくし一艘いつそう大帆走船だいほまへせんに、おびたゞしき材料ざいれうと、卅七めい腹心ふくしん部下ぶかとを搭載のせて、はる/″\日本につぽん
かれ未明みめいまた土藏どざうかくれた。内儀かみさんは傭人やとひにんくちかたいましめてそとれないやうと苦心くしんをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是非共二三十羽の孔雀を捕獲致さざるべからずと存候ぞんじそろ。然る所孔雀は動物園、浅草花屋敷等には、ちらほら見受け候えども、普通の鳥屋などには一向いっこう見当り不申もうさず苦心くしん此事このことに御座そろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で其の準備じゆんびからしてすこぶ大仰おほげうで、モデルの詮索せんさくにも何のくらい苦心くしんしたか知れぬ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
時勢じせいしからしむるところとは申しながら、そもそも勝氏が一身を以て東西の間に奔走ほんそう周旋しゅうせんし、内外の困難こんなんあた円滑えんかつに事をまとめたるがためにして、その苦心くしん尋常じんじょうならざると、その功徳こうとくだいなるとは
一同いちどう幹事かんじ苦心くしんさつして、一錢いつせんいたゞいた。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りょう一は、つくえのそばにあった、手製てせいのモーターをげてせました。電池でんちとおせばまわるまでに、なかなかの苦心くしんがいったのです。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
巡査じゅんさは、苦心くしんのすえに相手のくびをしめあげた。もちろん、見えない首をしめあげるのだから、ずいぶんおかしなものだったが、巡査は一生けんめいだった。
勘次かんじには卯平うへいおそろしいよりもそのときではむしいや老爺おやぢつてた。二人ふたり滅多めつたくちかぬ。それをなければらぬおしな苦心くしん容易よういなものではなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
櫻木大佐さくらぎたいさ幾年月いくねんげつあひだ苦心くしん苦心くしんかさねたる結果けつくわある秘密ひみつなる十二しゆ化學藥液くわがくやくえき機密きみつなる分量ぶんりよう化合くわごうは、普通ふつう電氣力でんきりよくして、ほとんど三十ばい以上いじやう猛烈まうれつなる作用さようおここと發見はつけん
いもうとは、うちてから、そのおとこひとれられて、らぬ他国たこくたびしてあるきました。そのあいだに、おとこはまた苦心くしんして、良薬りょうやくさがしました。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見物人けんぶつにんから、なんとののしられても、さもきここえぬようなふうをして、すすきのなかかくれて、おとりのすずめをかすのに、苦心くしんしていました。
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうは、どうかして、そのみずめなくしてしまうように苦心くしんしたのであります。けれど、いいかんがえがかびませんでした。そのうち、一つのかんがえがかびました。
神は弱いものを助けた (新字新仮名) / 小川未明(著)
むら子供こどもたちも、大人おとなも、ひとのいい弥吉やきちじいさんが、さかなをとる苦心くしんらないものはありませんでした。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、そうおもうと、憤然ふんぜんとして、すきをて、このサーカスだんからそうと苦心くしんしたのであります。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いもうとはしかたなく、苦心くしんをして、そのおばあさんをおぶって、ようようはしわたることができました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、についたむしってやったり、また、ちょうがんできてまろうとするのをったりして、それは、ひとらぬ苦心くしんをして、はなをいたわってやったのであります。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのひとは、どうしたら、愉快ゆかいるかと、いろいろに苦心くしんをこらしたのです。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あんまり、強情ごうじょうるものでない。あんないいおうちを、おひまなんからなくてもよかったのだ。」と、植木屋うえきやのおじいさんが、いったときに、彼女かのじょは、おかあさんが、あれほど、苦心くしんして
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、よくはたらまごの、このねがいはむなしくなかった。ついに、その木琴もっきんが、秀吉ひできちはいったとき、どんなにうれしかったでしょう。かれは、苦心くしんして、ほそ針金はりがねで、いとれたのをつなぎました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くるあねは、だれにもれないように、苦心くしんをしてしろからのがれました。そして、まち人々ひとびと女皇じょおうひめであるということをづかれないようにして、とうっているところまでやってきました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いしも、てつも、かしてしまうためにつよがたかれました。かねるものは、おうさまの命令めいれいしたがって、仕事しごと苦心くしんをしました。そして、おおきな、おもい、あおみをふくんだかねができあがったのでありました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもをまぎらせようと苦心くしんしました。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)