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薄暗
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うすぐら
ふりがな文庫
“
薄暗
(
うすぐら
)” の例文
『あんな
名僧
(
めいそう
)
知識
(
ちしき
)
と
謳
(
うた
)
われた
方
(
かた
)
がまだこんな
薄暗
(
うすぐら
)
い
境涯
(
ところ
)
に
居
(
い
)
るのかしら……。』
時々
(
ときどき
)
意外
(
いがい
)
に
感
(
かん
)
ずるような
場合
(
ばあい
)
もあるのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
板
(
いた
)
の
間
(
ま
)
には
余
(
あま
)
り人が
居
(
を
)
りませぬで、四五
人
(
にん
)
居
(
を
)
りました。
此湯
(
このゆ
)
は
昔風
(
むかしふう
)
の
柘榴口
(
ざくろぐち
)
ではないけれども、はいる
処
(
ところ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
薄暗
(
うすぐら
)
くなつて
居
(
を
)
ります。
年始まはり
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
けれど二三時間休んだために、短い冬の日はもう暮れかけて、おまけに曇り日なものですから、途中で
薄暗
(
うすぐら
)
くなってしまいました。
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
見世は
大戸
(
おおど
)
が下ろされて
薄暗
(
うすぐら
)
く、通された離れの座敷には、お由利の床がまだそのままに、
枕辺
(
まくらべ
)
に一本線香と、水が供えてあるばかり。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
若い
頃
(
ころ
)
の自分には
親代々
(
おやだい/\
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
い質屋の
店先
(
みせさき
)
に
坐
(
すわ
)
つて
麗
(
うらゝ
)
かな春の日を
外
(
よそ
)
に働きくらすのが、いかに
辛
(
つら
)
くいかに
情
(
なさけ
)
なかつたであらう。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
卯平
(
うへい
)
は
其
(
そ
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
い
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
に
只
(
たゞ
)
煙草
(
たばこ
)
を
吹
(
ふ
)
かしては
大
(
おほ
)
きな
眞鍮
(
しんちう
)
の
煙管
(
きせる
)
で
火鉢
(
ひばち
)
を
叩
(
たゝ
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
卯平
(
うへい
)
と
勘次
(
かんじ
)
とは
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
碌
(
ろく
)
に
口
(
くち
)
も
利
(
きか
)
なかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ひとへに
寄縋
(
よりすが
)
る、
薄暗
(
うすぐら
)
い、
消
(
き
)
えさうに、ちよろ/\またゝく……
燈
(
あかり
)
と
言
(
い
)
つては
此
(
この
)
一點
(
ひとつ
)
で、
二階
(
にかい
)
も
下階
(
した
)
も
臺所
(
だいどころ
)
も
内中
(
うちぢう
)
は
眞暗
(
まつくら
)
である。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
木立生ひ繁る
阜
(
をか
)
は、岸まで
下
(
お
)
りて、靜かな水の中へつづく。
薄暗
(
うすぐら
)
い水の
半
(
なかば
)
は
緑葉
(
りよくえふ
)
を、まつ
青
(
さを
)
なまたの
半
(
なかば
)
は
中空
(
なかぞら
)
の雲をゆすぶる。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
い仏壇の奥、独り者の主人が昼でも時々は
籠
(
こも
)
っている八畳の間には、床から抜け出したままの佐兵衛、血の海の中にこと切れております。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
刷毛
(
ブラツシ
)
の
音
(
おと
)
が
已
(
や
)
んでも
中々
(
なか/\
)
六
疊
(
でふ
)
から
出
(
で
)
て
來
(
こ
)
ないので、
又
(
また
)
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
薄暗
(
うすぐら
)
い
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
で、
御米
(
およね
)
はたつた
一人
(
ひとり
)
寒
(
さむ
)
さうに、
鏡臺
(
きやうだい
)
の
前
(
まへ
)
に
坐
(
すわ
)
つてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
日が
短
(
みじか
)
い頃で、葬式が家を出たのは日のくれ/″\であった。
青山
(
あおやま
)
街道
(
かいどう
)
に出て、
鼻欠
(
はなかけ
)
地蔵
(
じぞう
)
の道しるべから畑中を一丁ばかり入り込んで、
薄暗
(
うすぐら
)
い墓地に入った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一體俺は、何だつて、此様な
薄暗
(
うすぐら
)
い、息の
塞
(
つま
)
るやうな室に閉ぢ籠つて、此様な眞似をしてゐるんだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
廊下の行詰りになった
壁
(
かべ
)
をおすと、
薄暗
(
うすぐら
)
い
寝室
(
しんしつ
)
で、ランプがついていて、マントルピイスの上が白く光るので、近よってみると、人骨がばらばらにおいてあるのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
老人
(
らうじん
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
たつ
)
て
行
(
ゆ
)
くので
若者
(
わかもの
)
も
其儘
(
そのまゝ
)
後
(
あと
)
に
從
(
つ
)
き、
遂
(
つひ
)
に
老人
(
らうじん
)
の
宅
(
うち
)
に
行
(
い
)
つたのです、
砂山
(
すなやま
)
を
越
(
こ
)
え、
竹藪
(
たけやぶ
)
の
間
(
あひだ
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
き
路
(
みち
)
を
通
(
とほ
)
ると
士族屋敷
(
しぞくやしき
)
に
出
(
で
)
る、
老人
(
らうじん
)
は
其屋敷
(
そのやしき
)
の
一
(
ひとつ
)
に
入
(
はひ
)
りました。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
山田
(
やまだ
)
の
書斎
(
しよさい
)
は八
畳
(
ぢやう
)
の
間
(
ま
)
でしたが、
其
(
それ
)
に
机
(
つくゑ
)
を
相対
(
さしむかひ
)
に
据
(
す
)
ゑて、
北向
(
きたむき
)
の
寒
(
さむ
)
い
武者窓
(
むしやまど
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
い
間
(
ま
)
に
立籠
(
たてこも
)
つて、
毎日
(
まいにち
)
文学の話です、
此
(
こゝ
)
に
二人
(
ふたり
)
が
鼻
(
はな
)
を
並
(
なら
)
べて
居
(
ゐ
)
るから
石橋
(
いしばし
)
も
繁
(
しげ
)
く訪ねて来る
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
貢さんが
覗
(
のぞ
)
いたのは
薄暗
(
うすぐら
)
い
陰鬱
(
いんうつ
)
な世界で、
冷
(
ひや
)
りとつめたい手で撫でる様に
頬
(
ほ
)
に
当
(
あた
)
る空気が
酸
(
す
)
えて
黴臭
(
かびくさ
)
い。一
間程前
(
けんほどまへ
)
に竹と
萱草
(
くわんざう
)
の葉とが
疎
(
まば
)
らに
生
(
は
)
えて、
其奥
(
そのおく
)
は能く見え無かつた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
突然
(
とつぜん
)
、ちょうど私の頭上にある、その周囲だけもうすっかり
薄暗
(
うすぐら
)
くなっている大きな
樅
(
もみ
)
の、ほとんど水平に
伸
(
の
)
びた
枝
(
えだ
)
の一つに、ばたばたとびっくりするような羽音をさせながら
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
いもみの木の森のあいだ、ロクセン湖の
陰気
(
いんき
)
な岸辺近くに、古いブレタの
僧院
(
そういん
)
があります。わたしの光は
壁
(
かべ
)
の
格子
(
こうし
)
をとおって、広い
円天井
(
まるてんじょう
)
の部屋へすべりこんで行きました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
男
(
をとこ
)
もさうすればわたしの
太刀
(
たち
)
に、
血
(
ち
)
を
塗
(
ぬ
)
る
事
(
こと
)
にはならなかつたのです。が、
薄暗
(
うすぐら
)
い
藪
(
やぶ
)
の
中
(
なか
)
に、ぢつと
女
(
をんな
)
の
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
た
刹那
(
せつな
)
、わたしは
男
(
をとこ
)
を
殺
(
ころ
)
さない
限
(
かぎ
)
り、
此處
(
ここ
)
は
去
(
さ
)
るまいと
覺悟
(
かくご
)
しました。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あたりは
薄暗
(
うすぐら
)
くなり家の方では
灯
(
あかり
)
がつきました。樋にひっかかっている羽子はだんだん心細くなりました。屋根の上の空には
三月
(
みかづき
)
が見え、星がかがやいてきました。とうとう夜になったのです。
屋根の上
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その
趣味
(
しゆみ
)
の
澁
(
しぶ
)
い
例
(
れい
)
を
擧
(
あ
)
げると、
三上
(
みかみ
)
がその
著名
(
ちよめい
)
なる
東京市内出沒行脚
(
とうきやうしないしゆつぼつあんぎや
)
をやつて、
二十日
(
はつか
)
も
歸
(
かへ
)
つて
來
(
こ
)
ないと
時雨
(
しぐれ
)
さんは、
薄暗
(
うすぐら
)
い
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
で
端座
(
たんざ
)
して、たゞ
一人
(
ひとり
)
双手
(
もろて
)
に
香爐
(
かうろ
)
を
捧
(
さゝ
)
げて、
香
(
かう
)
を
聞
(
き
)
いてゐる。
長谷川時雨が卅歳若かつたら
(旧字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
しかし何となく陰気に
薄暗
(
うすぐら
)
くじめじめして、
妙
(
みょう
)
に気味の悪い
厭
(
いや
)
な感じがしたので、夫人が直覚的に反対したにもかかわらず、ヘルンは一見して大いに気に入り、『面白いの家』『面白いの家』と
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そのうちに、だんだんあたりは
薄暗
(
うすぐら
)
くなった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
き
町
(
まち
)
の
片角
(
かたかど
)
に
車夫
(
しやふ
)
は
茫然
(
ばうぜん
)
と
車
(
くるま
)
を
控
(
ひか
)
へて
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
い
角店
(
かどみせ
)
の
二重
(
にぢゆう
)
に
腰
(
こし
)
かけて
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
忽
(
たちま
)
ち
燈
(
ともしび
)
の光の消えて
行
(
ゆ
)
くやうにあたりは全体に
薄暗
(
うすぐら
)
く灰色に
変色
(
へんしよく
)
して来て、満ち
来
(
く
)
る
夕汐
(
ゆふしほ
)
の上を
滑
(
すべ
)
つて
行
(
ゆ
)
く
荷船
(
にぶね
)
の
帆
(
ほ
)
のみが
真白
(
まつしろ
)
く
際立
(
きはだ
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「もう
廃
(
よ
)
しませう。
彼方
(
あつち
)
へ
行
(
い
)
つて、
御飯
(
ごはん
)
でも
食
(
たべ
)
ませう。
叔父
(
おぢ
)
さんもゐらつしやい」と云ひながら立つた。部屋のなかはもう
薄暗
(
うすぐら
)
くなつてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのうちにも、雲は
次第
(
しだい
)
に空一面に広がって、あたりが
薄暗
(
うすぐら
)
くなったかと思うまに、ざーっと大粒の雨が降り出しました。
ひでり狐
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
い処でお休みなさいと命令されるが、私は夜が
更
(
ふ
)
けるまで
寐
(
ね
)
ることが出来ないから、その間の心持といったらない、
殊
(
こと
)
にこの
頃
(
ごろ
)
は夜は長し
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青菜
(
あをな
)
の
下葉
(
したば
)
はもうよく/\
黄色
(
きいろ
)
に
枯
(
か
)
れて
居
(
ゐ
)
た。お
品
(
しな
)
は
二人
(
ふたり
)
を
出
(
だ
)
し
薄暗
(
うすぐら
)
くなつた
家
(
いへ
)
にぼつさりして
居
(
ゐ
)
ても
畑
(
はたけ
)
の
收穫
(
しうくわく
)
を
思案
(
しあん
)
して
寂
(
さび
)
しい
不足
(
ふそく
)
を
感
(
かん
)
じはしなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私達
(
わたくしたち
)
の
辿
(
たど
)
る
小路
(
こみち
)
のすぐ
下
(
した
)
は
薄暗
(
うすぐら
)
い
谿谷
(
たに
)
になって
居
(
い
)
て、
樹叢
(
しげみ
)
の
中
(
なか
)
をくぐる
水音
(
みずおと
)
が、かすかにさらさらと
響
(
ひび
)
いていましたが、
気
(
き
)
の
故
(
せい
)
か、その
水音
(
みずおと
)
までが
何
(
なん
)
となく
沈
(
しず
)
んで
聞
(
きこ
)
えました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
前通には皿や鉢や土瓶やドンブリや、何れも
疵
(
きず
)
物の瀬戸類が埃に塗れて白くなつてゐた。漆の剥げた椀も見える。其の
薄暗
(
うすぐら
)
い奥の方に金椽の
額
(
がく
)
が一枚、鈍《にぶ》い光を
放
(
はな
)
ツてゐた。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
えらう早く
来
(
き
)
たな、まだ
薄暗
(
うすぐら
)
いのに。金「エヘヽヽ
昨晩
(
さくばん
)
は
大
(
おほき
)
にお
喧
(
やか
)
ましうございます。坊「ウム
値切
(
ねぎつ
)
た人か、サ
此方
(
こつち
)
へ
這入
(
はい
)
んなさい。金「へい、
有難
(
ありがた
)
う。坊「
穏坊
(
をんばう
)
/\、見て
上
(
あ
)
げろ。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
マッグはいつも
薄暗
(
うすぐら
)
い
部屋
(
へや
)
に
七色
(
なないろ
)
の
色硝子
(
いろガラス
)
のランタアンをともし、
脚
(
あし
)
の高い机に向かいながら、厚い本ばかり読んでいるのです。僕はある時こういうマッグと河童の恋愛を論じ合いました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その中へ這入ると急に
薄暗
(
うすぐら
)
くなったようだけれど、私たちの眼底にはいまの空地の明るさがこびりついているせいか、
暫
(
しば
)
らく私たちの周りには一種異様な薄明りが
漂
(
ただよ
)
っているように見えた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あたりは、もう
薄暗
(
うすぐら
)
くなりはじめました。もうじき夜になってしまいます。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「あすこにつく頃には
薄暗
(
うすぐら
)
くなる頃だ」
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
もあからさまには
射
(
さ
)
さず、
薄暗
(
うすぐら
)
い、
冷々
(
ひや/\
)
とした
店前
(
みせさき
)
に、
帳場格子
(
ちやうばがうし
)
を
控
(
ひか
)
へて、
年配
(
ねんぱい
)
の
番頭
(
ばんとう
)
が
唯
(
たゞ
)
一人
(
ひとり
)
帳合
(
ちやうあひ
)
をしてゐる。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
父
(
ちゝ
)
は
正月
(
しやうぐわつ
)
になると、
屹度
(
きつと
)
此
(
この
)
屏風
(
びやうぶ
)
を
薄暗
(
うすぐら
)
い
藏
(
くら
)
の
中
(
なか
)
から
出
(
だ
)
して、
玄關
(
げんくわん
)
の
仕切
(
しき
)
りに
立
(
た
)
てて、
其前
(
そのまへ
)
へ
紫檀
(
したん
)
の
角
(
かく
)
な
名刺入
(
めいしいれ
)
を
置
(
お
)
いて、
年賀
(
ねんが
)
を
受
(
う
)
けたものである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
い
釣
(
つるし
)
ランプの光が
痩
(
や
)
せこけた
小作
(
こづく
)
りの
身体
(
からだ
)
をば
猶更
(
なほさら
)
に
老
(
ふ
)
けて見せるので、ふいと
此
(
こ
)
れが
昔
(
むかし
)
は
立派
(
りつぱ
)
な質屋の
可愛
(
かあい
)
らしい
箱入娘
(
はこいりむすめ
)
だつたのかと思ふと
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
夕方
薄暗
(
うすぐら
)
くなると、大きなお
膳
(
ぜん
)
の上へごちそうを飾り立て、強い酒の
徳利
(
とくり
)
をいくつも並べ、ろうそくを何本もともして、天狗が来るのを待ち受けました。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
其處らが
寂
(
しん
)
として
薄暗
(
うすぐら
)
い。體が快く
懶
(
ものう
)
く、そして頭が馬鹿に輕くなツてゐて、
近頃
(
ちかごろ
)
になく
爽快
(
さうくわい
)
だ………恰で頭の中に籠ツてゐた腐ツたガスがスツカリ拔けて了ツたやうな心地である。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
現
(
げん
)
にあの
岩屋
(
いわや
)
にしても、
最初
(
さいしょ
)
は
何
(
なに
)
やら
薄暗
(
うすぐら
)
い
陰鬱
(
いんうつ
)
な
処
(
ところ
)
のように
感
(
かん
)
ぜられましたが、それがいつとはなしにだんだん
明
(
あか
)
るくなって、
最後
(
しまい
)
には
全然
(
ぜんぜん
)
普通
(
ふつう
)
の
明
(
あか
)
るさ、
些
(
すこ
)
しも
穴
(
あな
)
の
内部
(
なか
)
という
感
(
かん
)
じがしなくなり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
軈
(
やが
)
て
脊戸
(
せど
)
と
思
(
おも
)
ふ
処
(
ところ
)
で
左
(
ひだり
)
に
馬小屋
(
うまごや
)
を
見
(
み
)
た、こと/\といふ
物音
(
ものおと
)
は
羽目
(
はめ
)
を
蹴
(
け
)
るのであらう、もう
其辺
(
そのへん
)
から
薄暗
(
うすぐら
)
くなつて
来
(
く
)
る。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此間
(
このあひだ
)
から
頭
(
あたま
)
の
具合
(
ぐあひ
)
がよくないため、
寐付
(
ねつき
)
の
惡
(
わる
)
いのを
苦
(
く
)
にしてゐた
御米
(
およね
)
は、
時々
(
とき/″\
)
眼
(
め
)
を
開
(
あ
)
けて
薄暗
(
うすぐら
)
い
部屋
(
へや
)
を
眺
(
なが
)
めた。
細
(
ほそ
)
い
灯
(
ひ
)
が
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の
上
(
うへ
)
に
乘
(
の
)
せてあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
遊
(
あそ
)
んでツてよ。」と
周囲
(
しうゐ
)
の
人込
(
ひとごみ
)
を
憚
(
はゞか
)
り、
道子
(
みちこ
)
は
男
(
をとこ
)
の
腕
(
うで
)
をシヤツの
袖
(
そで
)
と一しよに
引張
(
ひつぱ
)
り、
欄干
(
らんかん
)
から
車道
(
しやだう
)
の
稍
(
やゝ
)
薄暗
(
うすぐら
)
い
方
(
はう
)
へと
歩
(
あゆ
)
みながら、すつかり
甘
(
あま
)
えた
調子
(
てうし
)
になり
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
與吉
(
よきち
)
は
薄暗
(
うすぐら
)
い
中
(
なか
)
に
居
(
ゐ
)
る、
材木
(
ざいもく
)
と、
材木
(
ざいもく
)
を
積上
(
つみあ
)
げた
周圍
(
しうゐ
)
は、
杉
(
すぎ
)
の
香
(
か
)
、
松
(
まつ
)
の
匂
(
にほひ
)
に
包
(
つゝ
)
まれた
穴
(
あな
)
の
底
(
そこ
)
で、
目
(
め
)
を
睜
(
みは
)
つて、
跪
(
ひざまづ
)
いて、
鋸
(
のこぎり
)
を
握
(
にぎ
)
つて、
空
(
そら
)
ざまに
仰
(
あふ
)
いで
見
(
み
)
た。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこで手拭をぶら
下
(
さ
)
げて、
御先
(
おさき
)
へと挨拶をして、風呂場へ出て行つた。風呂場は廊下の突き当りで便所の隣りにあつた。
薄暗
(
うすぐら
)
くつて、大分不潔の様である。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
なだらかに
流
(
なが
)
れて、
薄
(
うす
)
いけれども
平
(
たひら
)
に
日
(
ひ
)
を
包
(
つゝ
)
むと、
沼
(
ぬま
)
の
水
(
みづ
)
は
靜
(
しづか
)
に
成
(
な
)
つて、そして、
少
(
すこ
)
し
薄暗
(
うすぐら
)
い
影
(
かげ
)
が
渡
(
わた
)
りました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼は
家
(
いへ
)
に帰つた。
父
(
ちゝ
)
に対しては只
薄暗
(
うすぐら
)
い不愉快の
影
(
かげ
)
が
頭
(
あたま
)
に残つてゐた。けれども此影は近き未来に於て必ず其
暗
(
くら
)
さを増してくるべき性質のものであつた。其他には眼前に運命の二つの潮流を認めた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
暗
常用漢字
小3
部首:⽇
13画
“薄暗”で始まる語句
薄暗闇
薄暗黒