)” の例文
そのわたしの一貧乏びんぼうをして、わたしは、興行師こうぎょうしられましたが、自分じぶん不幸ふこうおもうにつけて、おつたがかわいそうになります。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平家琵琶へいけびわから分れてはなが立ち、『太平記たいへいき』や『明徳記めいとくき』や『大内義弘退治記おおうちよしひろたいじき』(応永記)のような講釈軍記の台本が書かれている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
こちらのいびきは、然し、相變らずうなされてゐると同時に、からだの筋肉が痙攣を引き起す前のやうにびく/\動いてゐる。
えうするに娘が内職ないしよくするは親に関することなく妻が内職ないしよくは夫にくわんすることなし、一経営上けいえいじやう全くこれは別口べつくちのお話とも申すべきものにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
かくて水車すいしゃはますますぶじに回転かいてんしいくうち、意外いがい滑稽劇こっけいげきが一を笑わせ、石塊せっかいのごとき花前も漸次ぜんじにこの家になずんでくる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
土地に縁のあるけリユウバンスとヷン・ダイクの作を多くをさめて居るが、巴里パリイ倫敦ロンドンで見受ける様な二の傑作は見当らない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あたらずとも六分利付りつきそんなしといふやうなことが、可り空たのめなことながら、一めんさうの青木さんの氕持きもちつよげきした。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
何のもなく七堂伽藍がらんの善美や九百余坊の繁昌仏国ぶっこくをすてて、北へ北へ、たましいのを求めて、孤影を旅の風にまかせて歩いた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の一こと/″\涙含なみだぐんだ。このやさしい少女せうぢよ境遇きやうぐうかはつてたのと、天候てんかうくもがちなのとで、一そう我々われ/\ひとこゝろやさしさがかんじられたのであらう。
あらゆるの種類に接触して、其たびごとに、甲から乙に気を移し、乙から丙に心をうごかさぬものは、感受性に乏しい無鑑賞であると断定した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(こゝで、私とつまとがおなじやうにつかれたといふことが、私達わたしたちの間に、大きな悲劇ひげきをもたらした原因げんいんであつた。)——
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
それを聞いて王ヘロデはひどく心をいため、その赤ん坊に嫉妬を感じて殺そうと企て、博士たちに子供の在りがわかったらすぐ立ち戻って知らせろと命じた。
処女の木とアブ・サルガ (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
けれども先生せんせい其家そのいへかこ幾畝いくせかの空地くうちみづからたがやして菜園さいゑんとし種々しゆ/″\野菜やさいゑてます。また五六羽ごろつぱにはとりふて、一もちゆるだけのたまごつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かくも荒れはてたでは、奥ぶかくなどにじっとしていると、その儘何かの物のけにでも引っ張り込まれていってしまいそうな気がされて、女はおびえ切り
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
殊に虎七の住みはその露地の奥の奥で、四畳半一間ひとまに型ばかりの台所が付いているだけである。そこへ町方まちかたの手先がむかったのは明くる日のひるごろであった。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
麺包パンと水とで生きていて、クリスマスが来ても、子供達にもみの枝に蝋燭ろうそくを点して遣ることも出来ないような木樵きこりのにも、幸福の青い鳥はかごの内にいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして其の屍體したいが地の底におさまるか納まらぬに、お房の家は破産の宣告せんこくを受けて一離散りさんとなツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
下宿へ帰って、意地悪そうなお内儀かみさんの眼を見るよりもましだと思って、不意に考えついて選んだこのも、とうてい長くは辛抱できないことがすぐにわかってきた。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
しるさんに去る×月×日午後十一時頃×県×郡×村あざ×所在×の寺男×某(五〇)が同寺住職のいいつけにて附近のだん使つかいに行き帰途同寺けいだいの墓地を通過せる折柄おりから雲間を
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たい多數たすうひとあつまつて一組織そしきすれば自然しぜんいきほひとして多數人たすうじん便宜べんぎといふこと心掛こゝろがけねばなりません、多數たすう都合つがふよろしいとやうにといふのが畢竟ひつきやう規則きそく精神目的せいしんもくてきでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
家にはたびたび狐狸妖怪をなせしといへども、幸にして産を破るに至ざりしは何たる果報ぞと、今になりては妖婦の魔力よりも僕が身の安泰かへつて不思議とやいふべき。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さりとは無作法ぶさはうおきつぎといふがものか、れは小笠原をがさはらか、何流なにりうぞといふに、お力流りきりうとてきく左法さはうたゝみさけのまする流氣りうぎもあれば、大平おほびらふたであほらする流氣りうぎもあり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
偶然ぐうぜんおこつたかれ破廉耻はれんち行爲かうゐにはか村落むら耳目じもく聳動しようどうしても、にもかくにも一處理しよりしてかねばならぬすべてのものは、彼等かれら共通きようつうきたがりりたがる性情せいじやうられつゝも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
長崎遊学中の逸事鄙事多能ひじたのうは私の独得どくとく、長崎に居るあいだは山本先生の家に食客生しょっかくせいり、無暗むやみに勉強して蘭学もようやく方角の分るようになるその片手に、有らん限り先生の家事を勤めて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
貴方、ここには、——この城下で、上手名人と言われた近常ちかつねさんという……評判の、いずれ、そんな人だから貧乏も評判の、何ですかね、何とかとか云ったけれど私にはよく分らない。
第一だいゝち建築けんちくは、古墳こふん石室せきしつなども一種いつしゆ建築けんちくではありますが、人間にんげんなどのるいはどういふふうなものであつたかといふと、まへにもまをしたとほり、屋根やね草葺くさぶき、茅葺かやぶきあるひはまた板葺いたぶ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ひまわりのはなが、かって、あたまをうつすのをると、二ばんめのむすめ故郷ふるさとこいしがっているのだと、一のものはかなしくおもいました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが人間はついに、われからそのごうかまとして、自分も他人も、煮え立つ釜中ふちゅうまめとしてしまった。——天下騒然
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次に本場ほんば寄席よせれて行つてやると云つて、又細い横町へ這入つて、木原店きはらだなと云ふ寄席よせがつた。此所こゝで小さんといふ話しを聞いた。十時過ぎ通りへ出た与次郎は、又
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とりわけ空さうなにかの趣味道楽しゆみだうらくなしには生きられない青木さんにとつては、ただ金にはれてばかりゐるやうな、あくせくした日々の生活せいくわつがむしろのろはしいくらゐだつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そういう折にはいつも観音かんのん様とその裏の六地蔵様とにおまいりするだけで、帰りには大抵並木町なみきちょうにある母方のおばさん(其処そこのおじさんはきん朝さんというはなだった。……)
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
甚之助じんのすけとて香山家かやまけ次男じなん、すゑなりにはないとヾ大輪おほりんにて、こヽのつなれども權勢いきほひしのぎ、腕白わんぱくかぎりなく、分別顏ふんべつがほ家扶かふにさへはず、佛國ふつこく留學りうがく兄上あにうへ御歸朝ごきてうまでは
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また隅田川うなぎかきの図等いづれもぜんの有せざる江戸気質かたぎの他の一面を想像し得べし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
技師もここで花前の花前たることを聞き、おおいにきまりわるくなって、むつかしい顔のしまつにきゅうしたままった。夜、主人が帰ってから一くずるるばかり大笑いをやった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
二三にちあひだ片口かたくち摺鉢すりばちれた葬式さうしきとき残物ざんぶつべて一たゞばんやりとしてくらした。雨戸あまどはいつものやうにいたまゝ陰氣いんきであつた。卯平うへいくはへて四にんはおたがひたゞひやゝかであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
塾長になっても相替あいかわらず元の貧書生なれども、その時の私の身の上は、故郷に在る母と姪と二人は藩からもらう少々ばかりの家禄かろくで暮して居る、私は塾長になってから表向おもてむきに先生まかないを受けて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大殿おおとのにはそれを聞こしめされて、この古屋敷は変化へんげの住みとみゆるぞ、とく狩り出せよとの下知にまかせて、われわれ一同が松明たいまつ振り照らして、床下から庭のすみずみまで隈なくあさり尽くしたが
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
色の浅黒い空脛からすね端折はしょって——途中から降られたのだから仕方がない——好みではないが、薩摩下駄さつまげたをびしゃびしゃと引摺ひきずって、番傘のしずくを、剥身屋むきみやの親仁にあやまった処は、まったく、「。」や
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伸一先生しんいちせんせい給料きふれうつき十八ゑんしか受取うけとりません、それで老母らうぼ妻子さいし、一にん家族かぞくやしなふてるのです。家産かさんといふは家屋敷いへやしきばかり、これを池上權藏いけがみごんざう資産しさんくらべてると百分一ひやくぶんのいちにもあたらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、一都合つごうでは、どうすることもできません。いよいよ真吉しんきち出発しゅっぱつがやってきました。おかあさんは、がおせてはいけないとおもって
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「めっそうもない。たとえお沙汰をいただいても、今は住みも秘めて、身のおき場もない私です。それゆえ自分からこうお訪ねして来たわけでございまする」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまだにむすめこゝろせで、金齒きんばれたる口元くちもとい、い、子細しさいらしく數多あまた奴婢ひとをも使つかへども、旦那だんなさますゝめて十けんだな人形にんぎやうひにくなど、一つまのやうには
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あに一人ひとりあつたが戦地せんちおくられるともなく病気びやうきたふれ、ちゝ空襲くうしふとき焼死せうしして一全滅ぜんめつした始末しまつに、道子みちこ松戸まつど田舎ゐなか農業のうげふをしてゐる母親はゝおや実家じつかはゝともにつれられてつたが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「まるではなの話を聞くようでござんすね」とは細君の批評であった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上に新書生が入門するとき先生束脩そくしゅうを納めて同時に塾長へもきん貳朱にしゅを[#「貳朱を」は底本では「※朱を」]ていすと規則があるから、一箇月に入門生が三人あれば塾長には一分いちぶ二朱の収入
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その美人たちが、河上の、うぐい亭へお立寄り遊ばしたか、と聞いて、その方が、なお、お土産になりますのに、と言ったそうである。うぐい亭の存在を云爾しかいうために、両の名を煩わしたに過ぎない。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くし事件じけんれつきりをはつた。勘次かんじなにかにつけてはおつう/\となつかしげにんで一ひとほどきはめてむつましかつた。しかしかういふ事件じけん村落むらすべてのくちひさしくふせぐことは出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おくさまは、この一は、子供こどもがたくさんで、平常ふだんからこまっているのをよくっていました。これまでも、こんなことをいってきたのは、たびたびです。
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、貧しいものほど濃い骨肉愛だった。そのいたわり合いがあるばかりに、この細民くつは、餓鬼の住みにならなかった。やはり人間のあたたかさを持っている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでもあなたは一御主人ごしゆじんさまにりて釆配さいはいをおとりなさらずはかなふまじ、いままでのやうなおらく御身分ごみぶんではいらつしやらぬはづおさへられて、さればまこと大難だいなんひたるおぼしめせ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)