)” の例文
よるもうっかりながしのしたや、台所だいどころすみものをあさりに出ると、くらやみに目がひかっていて、どんな目にあうかからなくなりました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
父親ちちおやはなにかいっていましたが、やがて半分はんぶんばかりとこなかからからだこして、やせたでその金貨きんかを三にんむすめらにけてやりました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女郎屋ぢよらうやふわけにはかず、まゝよとこんなことはさてれたもので、根笹ねざさけて、くさまくらにころりとたが、如何いかにもつき
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けられぬなれば恩愛おんあいおもきにかれて、くるまにはりけれど、かゝるとき氣樂きらく良人おつと心根こゝろねにくゝ、今日けふあたり沖釣おきづりでもものをと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなわち、伊勢いせ滝川一益たきがわかずますをうった秀吉ひでよしが、さらにその余勢よせいをもって、北国の柴田軍しばたぐんと、天下てんか迎戦げいせんをこころみたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幼児をさなごたちはみな十字架クルス背負しよつて、しゆきみつかたてまつる。してみるとそのからだしゆ御体おんからだ、あたしにけてくださらなかつたその御体おんからだだ。
望蜀生ぼうしよくせいとは、夢中むちうつて、それを採集さいしふした。其數そのすうじつに二ひやく七十六ほん。それを四大布呂敷おほふろしきつゝみ、二づゝけてことにした。
たゝみまであつくなつた座敷ざしき眞中まんなか胡坐あぐらいて、下女げぢよつて樟腦しやうなうを、ちひさな紙片かみぎれけては、醫者いしやれる散藥さんやくやうかたちたゝんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
柳と同じやはらを持つた、夜目には見きの附かない大木が岸の並木になつて居る。あちこちに捨石すていしがいくつも置かれてあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
われへ」卯平うへい蕎麥掻そばがきけてやつた。かれはさうしてさらあとの一ぱいきつしてその茶碗ちやわんんでんだ。藥罐やくわんかるくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けだししずかの歌にある「峰の白雪けて入りにし人」は、この橋を過ぎて吉野の裏山から中院の谷の方へ行ったのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
明くる日、男は、「私共は二食で、朝飯あさめしを十時にやります。あなた方はおかまいなく」と何方どちが主やら客やらからぬ事を云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
安否をかざりし幾年いくとせの思にくらぶれば、はやふくろの物をさぐるに等しかるをと、その一筋に慰められつつも彼は日毎の徒然つれづれを憂きに堪へざるあまり
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いずれのカクラサマも木の半身像にてなたの荒削あらけずりの無恰好ぶかっこうなるものなり。されど人の顔なりということだけはかるなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
服装ふくそう筒袖式つつそでしき桃色ももいろ衣服きもの頭髪かみ左右さゆうけて、背部うしろほうでくるくるとまるめてるところは、ても御国風みくにふうよりは唐風からふうちかいもので
注意ちういはらふ」だの「ちか將來しやうらい」などは、おかしいけれどもまだ意味いみかるが、めうつてまはつて、意味いみつうじないのは、まことにまる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あやめもかぬ真の闇。闇の中で、カタカタカタとクランクの音が聞えると、正面のスクリーンに、薄ボンヤリと、抜けの悪い画が動き始めた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
卑弥呼は薄桃色の染衣しめごろもに身を包んで、やがて彼女の良人おっととなるべき卑狗ひこ大兄おおえと向い合いながら、鹿の毛皮の上で管玉くだだまと勾玉とをけていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
良久やゝあつちひさな二輪車りんしやひゞきがしたとおもふと、みんなで一しよはなしをする澤山たくさんこゑが一みゝりました、あいちやんは其言葉そのことばけました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つゞゐてとりふねかぬほど一點いつてんポツンとしろかげ、それが段々だん/″\ちかづいてるとそは一艘いつそう白色巡洋艦はくしよくじゆんやうかんであつた。
ぼくはなんのことやらわけがからなかったので、あとでおとうさんにきいてたら、おとうさんはこう説明せつめいしてくれた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
くきは立って六〇〜九〇センチメートルの高さとなりえだかっている。葉は大形で葉柄ようへいそなえ、くき互生ごせいしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ヒエ一人従弟えとこがありやすが、是は死んでしまエたか、生きているかきやたゝんので、今迄何とも音ずれのない処を
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
我々われ/\門川もんかはりて、さら人力車くるまりかへ、はら溪谷けいこくむかつたときは、さながらくもふかおもひがあつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
杜はそれをボンヤリ見つめていたが、そのうち起き上って土間に下り、裏口の幕を掻きけて何気なく外を見た。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『ラランよ、今度こんどなにをたべてるのか。すこしでいいからけてくれよ。はらつてぼくはもうまはりそうだ』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
室内の灯を受けて、半身はめい、半身はあんけの姿を冷々と据えて、けむりのごとく、水のごとく……。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そしていかにも易々やすやすあししたみずけて、見事みごとおよまわるのでした。そしてあのぶきりょうな子家鴨こあひるもみんなと一緒いっしょみずに入り、一緒いっしょおよいでいました。
大人おとな世界せかいのことはすっかりかってしまったとはえないまでも、すくなくもそれをのぞいてた。そのこころから、袖子そでこいあらわしがたいおどろきをもさそわれた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おいらァおめえの兄貴あにきだよ。——けた、たった一人ひとり兄貴あにきだよ。それも、百とまとまったかね入用いりようだというわけじゃねえ。四半分はんぶんの二十五りょうことむんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
風に吹き立つ枯葉のように、八方分身十方隠れ、一人の体を八方にかち、十方に隠れて出没し! 敵をして奔命ほんめい疲労つかれしめ、同士討ちをさせるがためであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ふる草津くさつかくれて、冬籠ふゆごもにも、遙々はる/″\高原かうげんゆきけて、うらゝかなつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
すべての樹木じゆもくはそれ/″\かたちがちがつてゐますが、それをおほきくふたつにけることが出來できます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「こんなに貰っちゃ済まないな。だが、まあ、折角のお福けだ。ありがたく頂戴しておこう。どうぞあした来てください。放しうなぎの惣仕舞は近頃お前ばかりだ。」
放し鰻 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「オホヤマモリの命は海や山のことを管理なさい。オホサザキの命は天下の政治を執つて天皇に奏上なさい。ウヂの若郎子は帝位におつきなさい」とおけになりました。
人夫中にては中島善作なるものはりやうの為めつねゆきんで深山しんざんけ入るもの、主として一行の教導けうどうをなす、一行方向にまよふことあればただちにたくみに高樹のいただきのぼりて遠望ゑんぼう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
まへべたとほ地震學ぢしんがく研究けんきゆうは、便宜上べんぎじようこれをふたつの方面ほうめんけることが出來できる。すなはひとつは人命じんめい財産ざいさん直接ちよくせつ關係かんけいある事項じこう地球ちきゆう内部状態ないぶじようたい推究すいきゆう關係かんけいある事項じこうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
看経も時によるわ、このきがたい最中もなかに、何事ぞ、心のどけく。そもこの身の夫のみのお身の上ではなくて現在母上の夫さえもおなじさまでおじゃるのに……さてもさても。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
やがて月はのぼりて桂の川の水烟みづけぶり、山の端白はしろ閉罩とぢこめて、尋ぬる方は朧ろにして見えかず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
お絹はその抽斗の中をけて一枚の借用証文を引き出しました。この証文は、お角が甲府へ旅興行に行く前に、仕込金として、忠作から借りて行った金の証文であります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
追分の供養塔などの立ち竝んだ村はづれ——北國街道と中山道とのれ——に立つて眞白な花ざかりの蕎麥畑などの彼方に眺めやつてゐると、いかにも穩かで、親しみ深く
初秋の浅間 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
細君さいくん不安ふあんなりに同意どういして、その乳しぼりをおいてやることになった。牛舎ぎゅうしゃのほうでは親牛おやうし子牛こうしとをけて運動場うんどうじょうにだしたから、親牛も子牛もともによびあっていてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
百姓はわりに合はん仕事やちうことは、ようかつてるが、そいでも地價がズン/\あがるさかい、知らん身代しんだいが三ぞう倍にも五層倍にもなつたアるちうて、みな喜んではつたが
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
共々うれしく帰朝して我はかろからぬ役を拝命するばかりか、ついに姓を冒して人に尊まるゝについてもそなたが母の室香がなさけ何忘るべき、家来に吩附いいつけて段々ただせば、果敢はかなや我とたのしみけで
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしはやぶけながら、たからすぎもとうづめてあると、もつともらしいうそをつきました。をとこはわたしにさうはれると、もうすぎいてえるはうへ、一しやう懸命けんめいすすんできます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この流をしばらく下ると Bregeブレーゲ 川がこれに合する。ドナウはそこから始まるというのであった。早口で云われたのだが、前に地図で調べて置いたので、若者のいうことがほぼかった。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
わたしが、なんぼいうても、あなたは聞かんで、票をあっちこっちにけなさる。そら、同志を落しちゃならんという、あなたの気持はようわかっとるですよ。その気持をうれしいとは思いますたい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「俺アは、もうどうもかもはアかなくなつたんし。」……
防雪林 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
雨となりしぐるる空の浮き雲をいづれの方ときてながめん
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)