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散藥
疊迄熱くなつた
座敷の
眞中へ
胡坐を
掻いて、
下女の
買つて
來た
樟腦を、
小さな
紙片に
取り
分けては、
醫者で
呉れる
散藥の
樣な
形に
疊んだ。
宗助は
昨夕御米が
散藥を
飮んでから
以後の
時間を
指を
折つて
勘定した。さうして
漸く
不安の
色を
面に
表はした。
枕元の
朱塗の
盆に
散藥の
袋と
洋杯が
載つてゐて、
其洋杯の
水が
半分殘つてゐる
所も
朝と
同じであつた。
頭を
床の
間の
方へ
向けて、
左の
頬と
芥子を
貼つた
襟元が
少し
見える
所も
朝と
同じであつた。