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ひとへ
ふりがな文庫
“
一重
(
ひとへ
)” の例文
僧は
最
(
い
)
と
懇
(
ねんご
)
ろに道を教ふれば、横笛
世
(
よ
)
に嬉しく思ひ、禮もいそ/\別れ行く
後影
(
うしろかげ
)
、鄙には見なれぬ緋の袴に、夜目にも輝く五柳の
一重
(
ひとへ
)
。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
で、
足
(
あし
)
を
運
(
はこ
)
ぶ
内
(
うち
)
に
至
(
いた
)
り
着
(
つ
)
いたので、
宛然
(
さながら
)
、
城址
(
しろあと
)
の
場所
(
ばしよ
)
から、
森
(
もり
)
を
土塀
(
どべい
)
に、
一重
(
ひとへ
)
隔
(
へだ
)
てた
背中合
(
せなかあ
)
はせの
隣家
(
となり
)
ぐらゐにしか
感
(
かん
)
じない。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
壁
一重
(
ひとへ
)
隔てた昔の
住居
(
すまひ
)
には誰が居るのだらうと思つて注意して見ると、終日かたりと云ふ音もしない。
空
(
あ
)
いてゐたのである。
変な音
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
税関吏は鞄の中は見なかつた。私が心配しながら通つた
波蘭
(
ポオランド
)
から掛けて
独逸
(
ドイツ
)
の野は赤い
八重
(
やへ
)
桜の盛りであつた。
一重
(
ひとへ
)
のはもう皆散つた
後
(
あと
)
である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
翠色
(
すゐしよく
)
したヽる
松
(
まつ
)
にまじりて
紅葉
(
もみぢ
)
のあるお
邸
(
やしき
)
と
問
(
と
)
へば、
中
(
なか
)
の
橋
(
はし
)
のはし
板
(
いた
)
とヾろくばかり、
扨
(
さて
)
も
人
(
ひと
)
の
知
(
し
)
るは
夫
(
それ
)
のみならで、
一重
(
ひとへ
)
と
呼
(
よ
)
ばるヽ
令孃
(
ひめ
)
の
美色
(
びしよく
)
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
帶
(
おび
)
は
一重
(
ひとへ
)
で
左
(
ひだり
)
の
腰骨
(
こしぼね
)
の
處
(
ところ
)
でだらりと
結
(
むす
)
んであつた。
兩方
(
りやうはう
)
の
端
(
はし
)
が
赤
(
あか
)
い
切
(
きれ
)
で
縁
(
ふち
)
をとつてある。
粗
(
あら
)
い
棒縞
(
ぼうじま
)
の
染拔
(
そめぬき
)
でそれは
馬
(
うま
)
の
飾
(
かざ
)
りの
鉢卷
(
はちまき
)
に
用
(
もち
)
ひる
布片
(
きれ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
さて
埴輪
(
はにわ
)
の
筒形
(
つゝがた
)
のものは、
墓
(
はか
)
の
丘
(
をか
)
のまはり、
時
(
とき
)
には
堀
(
ほり
)
の
外側
(
そとがは
)
の
土手
(
どて
)
にも、
一重
(
ひとへ
)
二重
(
ふたへ
)
あるひは
三重
(
みへ
)
にも、
取
(
と
)
り
繞
(
めぐ
)
らされたのであり、また
塚
(
つか
)
の
頂上
(
ちようじよう
)
には
家形
(
いへがた
)
や
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
ゆき子はきき耳をたてた。
襖
(
ふすま
)
一重
(
ひとへ
)
へだてた部屋では、一緒の船だつた、芸者の幾人かの声がしてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
「それから、錢形の親分。この堂のまはりに、もう
一重
(
ひとへ
)
の頑丈な
柵
(
さく
)
を
繞
(
めぐ
)
らし、村の若い衆を五六人頼んで、交替で一と晩見廻りさせようと思ひますが、何うでせう」
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
障子
(
しやうじ
)
一重
(
ひとへ
)
の次の
室
(
ま
)
に、英文典を復習し居たる書生の大和、両手に頭抱へつゝ、涙の
霰
(
あられ
)
ポロリ/\
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
苅薦
(
かりごも
)
の
一重
(
ひとへ
)
を
敷
(
し
)
きてさ
寐
(
ぬ
)
れども
君
(
きみ
)
とし
寝
(
ぬ
)
れば
寒
(
さむ
)
けくもなし 〔巻十一・二五二〇〕 作者不詳
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
透谷の文章詩歌に接して最も遺憾に思ふのはこの新樣式の缺如である。すべての舊き型を破り棄てむとして、この
一重
(
ひとへ
)
の膜にささへられた彼の苦悶は如何ばかりであつたらう。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
それには次第に
利
(
き
)
いて来るコニヤツクも手伝つてゐるのであらう。唐紙を
一重
(
ひとへ
)
隔てて、隣の部屋に大の男の、しかも軍人が三人寝てゐるのが、さほど苦にもならないのである。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
否
(
いな
)
これは、東雲の光だけではない、置き餘る露の
珠
(
たま
)
が東雲の光と冷かな
接吻
(
くちづけ
)
をして居たのだ。此野菜畑の突當りが、
一重
(
ひとへ
)
の
木槿垣
(
むくげがき
)
によつて、新山堂の正一位樣と背中合せになつて居る。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
勸
(
すゝ
)
むるに
稍
(
やゝ
)
三四升ほども飮しかば半四郎は機嫌
斜
(
なゝ
)
めならず
謠
(
うたひ
)
を謠ひ
手拍子
(
てびやうし
)
を
拍
(
うつ
)
て騷ぎ立るに
隣
(
とな
)
り座敷の
泊
(
とま
)
り客は兎角に騷がしくして
眠
(
ねむ
)
る事もならず甚だ
迷惑
(
めいわく
)
なし
能加減
(
いゝかげん
)
に
靜
(
しづ
)
まれよと
襖
(
ふすま
)
一重
(
ひとへ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
村にちかき所は皆
伐
(
きり
)
つくしてたま/\あるも足場あしきゆゑ、山
一重
(
ひとへ
)
踰
(
こえ
)
て見るに、薪とすべき柴あまたありしゆゑ
自在
(
じざい
)
に
伐
(
きり
)
とり、
雪車
(
そり
)
哥うたひながら
徐々
(
しづかに
)
束
(
たばね
)
、雪車に
積
(
つみ
)
て縛つけ
山刀
(
やまかたな
)
をさしいれ
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
皆な土くれの苔
一重
(
ひとへ
)
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
眞
(
まこと
)
に、
罪
(
つみ
)
な、
濟
(
す
)
まない
事
(
こと
)
ぢやあるけれども、
同一
(
おなじ
)
病人
(
びやうにん
)
が
枕
(
まくら
)
を
並
(
なら
)
べて
伏
(
ふせ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、どちらかに
勝
(
かち
)
まけがあるとの
話
(
はなし
)
。
壁
(
かべ
)
一重
(
ひとへ
)
でも、おんなじ
枕
(
まくら
)
。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
宗助
(
そうすけ
)
の
頼
(
たの
)
んだ
産婆
(
さんば
)
も
可成
(
かなり
)
年
(
とし
)
を
取
(
と
)
つてゐる
丈
(
だけ
)
に、
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
のことは
心得
(
こゝろえ
)
てゐた。
然
(
しか
)
し
胎兒
(
たいじ
)
の
頸
(
くび
)
を
絡
(
から
)
んでゐた
臍帶
(
さいたい
)
は、
時
(
とき
)
たまある
如
(
ごと
)
く
一重
(
ひとへ
)
ではなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
惑
(
まよ
)
ひし
眼
(
め
)
に
邪正
(
じやしやう
)
は
分
(
わ
)
け
難
(
がた
)
し、
鑑定
(
かんてい
)
は
一重
(
ひとへ
)
に
御眼鏡
(
おめがね
)
に
任
(
まか
)
さんのみと、
恥
(
はじ
)
たる
色
(
いろ
)
もなく
陳
(
の
)
べらるゝに、
母君
(
はゝぎみ
)
一ト
度
(
たび
)
は
惘
(
あき
)
れもしつ
驚
(
おど
)
ろきもせしものゝ、
斯
(
か
)
くまで
熱心
(
ねんしん
)
の
極
(
きは
)
まりには
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
吁々
(
あゝ
)
然
(
さ
)
に非ず、
何處
(
いづこ
)
までの浮世なれば、心にもあらぬ
情
(
つれ
)
なさに、互ひの胸の隔てられ、恨みしものは恨みしまゝ、恨みられしものは恨みられしまゝに、あはれ皮
一重
(
ひとへ
)
を堺に
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
嗚呼また
一重
(
ひとへ
)
しほからき
草わかば
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
美女
(
たをやめ
)
の
背後
(
うしろ
)
に
当
(
あた
)
る……
其
(
そ
)
の
山懐
(
やまふところ
)
に、
唯
(
たゞ
)
一本
(
ひともと
)
、
古歌
(
こか
)
の
風情
(
ふぜい
)
の
桜花
(
さくらばな
)
、
浅黄
(
あさぎ
)
にも
黒染
(
すみぞめ
)
にも
白妙
(
しろたへ
)
にも
咲
(
さ
)
かないで、
一重
(
ひとへ
)
に
颯
(
さつ
)
と
薄紅
(
うすくれなゐ
)
。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
小六
(
ころく
)
は
袂
(
たもと
)
を
探
(
さぐ
)
つて
其
(
その
)
書付
(
かきつけ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
せた。それに「
此
(
この
)
垣
(
かき
)
一重
(
ひとへ
)
が
黒鐵
(
くろがね
)
の」と
認
(
したゝ
)
めた
後
(
あと
)
に
括弧
(
くわつこ
)
をして、(
此
(
この
)
餓鬼
(
がき
)
額
(
ひたへ
)
が
黒缺
(
くろがけ
)
の)とつけ
加
(
くは
)
へてあつたので、
宗助
(
そうすけ
)
と
御米
(
およね
)
は
又
(
また
)
春
(
はる
)
らしい
笑
(
わらひ
)
を
洩
(
も
)
らした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
づかしや
女子
(
をんな
)
の
身
(
み
)
不似合
(
ふにあひ
)
の
菓
(
くだ
)
もの
賣
(
う
)
りも
一重
(
ひとへ
)
に
活計
(
みすぎ
)
の
爲
(
ため
)
のみならず
便
(
たよ
)
りもがな
尋
(
たづ
)
ねたやの一
心
(
しん
)
なりしが
縁
(
ゑに
)
しあやしく
引
(
ひ
)
く
方
(
かた
)
ありて
不圖
(
ふと
)
呼
(
よ
)
び
入
(
い
)
れられし
黒塗塀
(
くろぬりべい
)
お
勝手
(
かつて
)
もとに
商
(
あきな
)
ひせし
時
(
とき
)
後
(
あと
)
にて
聞
(
き
)
けば
御稽古
(
おけいこ
)
がへりとや
孃
(
じやう
)
さまの
乘
(
め
)
したる
車
(
くるま
)
勢
(
いきほ
)
ひよく
御門内
(
ごもんうち
)
へ
引入
(
ひきい
)
るゝとて
出
(
い
)
でんとする
我
(
われ
)
と
行違
(
ゆきちが
)
ひしが
何
(
なに
)
に
觸
(
ふ
)
れけん
我
(
わ
)
がさしたる
櫛車
(
くしくるま
)
の
前
(
まへ
)
には
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
月影
(
つきかげ
)
は、
夕顏
(
ゆふがほ
)
のをかしく
縋
(
すが
)
れる
四
(
よ
)
ツ
目
(
め
)
垣
(
がき
)
一重
(
ひとへ
)
隔
(
へだ
)
てたる
裏山
(
うらやま
)
の
雜木
(
ざふき
)
の
中
(
なか
)
よりさして、
浴衣
(
ゆかた
)
の
袖
(
そで
)
に
照添
(
てりそ
)
ふも
風情
(
ふぜい
)
なり。
逗子だより
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
道
(
みち
)
と
空
(
そら
)
との
間
(
あひだ
)
に
唯
(
たゞ
)
一人
(
ひとり
)
我
(
わし
)
ばかり、
凡
(
およ
)
そ
正午
(
しやうご
)
と
覚
(
おぼ
)
しい
極熱
(
ごくねつ
)
の
太陽
(
たいやう
)
の
色
(
いろ
)
も
白
(
しろ
)
いほどに
冴
(
さ
)
え
返
(
かへ
)
つた
光線
(
くわうせん
)
を、
深々
(
ふか/″\
)
と
頂
(
いたゞ
)
いた
一重
(
ひとへ
)
の
檜笠
(
ひのきがさ
)
に
凌
(
しの
)
いで、
恁
(
か
)
う
図面
(
づめん
)
を
見
(
み
)
た。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
藍地
(
あゐぢ
)
に
紺
(
こん
)
の
立絞
(
たてしぼり
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を
唯
(
たゞ
)
一重
(
ひとへ
)
、
絲
(
いと
)
ばかりの
紅
(
くれなゐ
)
も
見
(
み
)
せず
素膚
(
すはだ
)
に
着
(
き
)
た。
襟
(
えり
)
をなぞへに
膨
(
ふつく
)
りと
乳
(
ちゝ
)
を
劃
(
くぎ
)
つて、
衣
(
きぬ
)
が
青
(
あを
)
い。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
問返
(
とひかへ
)
すうちにも、
一層
(
いつそう
)
、
妙
(
めう
)
な
夢路
(
ゆめぢ
)
を
辿
(
たど
)
る
心持
(
こゝろもち
)
のしたのは、
其
(
そ
)
の
差配
(
さはい
)
と
云
(
い
)
ふのは、こゝに三
軒
(
げん
)
、
鼎
(
かなへ
)
に
成
(
な
)
つて、
例
(
れい
)
の
柳
(
やなぎ
)
の
樹
(
き
)
を
境
(
さかひ
)
に、
同
(
おな
)
じくたゞ
垣
(
かき
)
一重
(
ひとへ
)
隔
(
へだ
)
つるのみ。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
云
(
い
)
つた——
大
(
おほ
)
きな
戸棚
(
とだな
)
、と
云
(
い
)
つても
先祖代々
(
せんぞだい/\
)
、
刻
(
きざ
)
み
着
(
つ
)
けて
何時
(
いつ
)
が
代
(
だい
)
にも
動
(
うご
)
かした
事
(
こと
)
のない、……
其
(
そ
)
の
横
(
よこ
)
の
襖
(
ふすま
)
一重
(
ひとへ
)
の
納戸
(
なんど
)
の
内
(
うち
)
には、
民也
(
たみや
)
の
父
(
ちゝ
)
と
祖母
(
そぼ
)
とが
寢
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
た。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
姿見
(
すがたみ
)
の
俤
(
おもかげ
)
は
一重
(
ひとへ
)
の
花瓣
(
はなびら
)
薄紅
(
うすくれなゐ
)
に、
乳
(
ち
)
を
押
(
おさ
)
へたる
手
(
て
)
は
白
(
しろ
)
くかさなり
咲
(
さ
)
く、
蘭湯
(
らんたう
)
に
開
(
ひら
)
きたる
此
(
こ
)
の
冬牡丹
(
ふゆぼたん
)
。
蕊
(
しべ
)
に
刻
(
きざ
)
めるは
誰
(
た
)
が
名
(
な
)
ぞ。
其
(
そ
)
の
文字
(
もじ
)
金色
(
こんじき
)
に
輝
(
かゞや
)
くまゝに、
口
(
くち
)
渇
(
かわ
)
き
又
(
また
)
耳
(
みゝ
)
熱
(
ねつ
)
す。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
風
(
かぜ
)
は
凪
(
や
)
んでも
雨
(
あめ
)
にも
成
(
な
)
らず……
激
(
はげ
)
しい
暑
(
あつ
)
さに
寢
(
ね
)
られなかつた、
唯吉
(
たゞきち
)
は
曉方
(
あけがた
)
に
成
(
な
)
つてうと/\するまで、
垣根
(
かきね
)
一重
(
ひとへ
)
の
隔
(
へだ
)
てながら、
産聲
(
うぶごゑ
)
と
云
(
い
)
ふものも
聞
(
き
)
かなかつたのである。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ハタと
止
(
や
)
めば、
其
(
そ
)
の
空
(
そら
)
の
破
(
わ
)
れた
處
(
ところ
)
へ、むら/\と
又
(
また
)
一重
(
ひとへ
)
冷
(
つめた
)
い
雲
(
くも
)
が
累
(
かさな
)
りかゝつて、
薄墨色
(
うすずみいろ
)
に
縫合
(
ぬひあ
)
はせる、と
風
(
かぜ
)
さへ、そよとのもの
音
(
おと
)
も、
蜜蝋
(
みつらふ
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
く
封
(
ふう
)
じた
如
(
ごと
)
く、
乾坤
(
けんこん
)
寂
(
じやく
)
と
成
(
な
)
る。……
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此
(
こ
)
の
奧
(
おく
)
に
住
(
す
)
める
人
(
ひと
)
の
使
(
つか
)
へる
婢
(
をんな
)
、やつちや
場
(
ば
)
に
青物
(
あをもの
)
買
(
か
)
ひに
出
(
い
)
づるに、いつも
高足駄
(
たかあしだ
)
穿
(
は
)
きて、なほ
爪先
(
つまさき
)
を
汚
(
よご
)
すぬかるみの、
特
(
こと
)
に
水溜
(
みづたまり
)
には、
蛭
(
ひる
)
も
泳
(
およ
)
ぐらんと
氣味惡
(
きみわる
)
きに、
唯
(
たゞ
)
一重
(
ひとへ
)
森
(
もり
)
を
出
(
い
)
づれば
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
片側
(
かたがは
)
のまばら
垣
(
がき
)
、
一重
(
ひとへ
)
に、ごしや/\と
立亂
(
たちみだ
)
れ、
或
(
あるひ
)
は
缺
(
か
)
け、
或
(
あるひ
)
は
傾
(
かたむ
)
き、
或
(
あるひ
)
は
崩
(
くづ
)
れた
石塔
(
せきたふ
)
の、
横鬢
(
よこびん
)
と
思
(
おも
)
ふ
處
(
ところ
)
へ、
胡粉
(
ごふん
)
で
白
(
しろ
)
く、さま/″\な
符號
(
ふがう
)
がつけてある。
卵塔場
(
らんたふば
)
の
移轉
(
いてん
)
の
準備
(
じゆんび
)
らしい。
深川浅景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
所
(
ところ
)
で
地震前
(
ぢしんまへ
)
のその
大雪
(
おほゆき
)
の
夜
(
よる
)
である。
晩食
(
ばんしよく
)
に
一合
(
いちがふ
)
で、いゝ
心持
(
こゝろもち
)
にこたつで
寢込
(
ねこ
)
んだ。ふすま
一重
(
ひとへ
)
茶
(
ちや
)
の
室
(
ま
)
で、
濱野
(
はまの
)
さんの
聲
(
こゑ
)
がするので、よく、この
雪
(
ゆき
)
に、と
思
(
おも
)
ひながら、ひよいと
起
(
お
)
きて、ふらりと
出
(
で
)
た。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“一重”の意味
《名詞》
多層構造の一つの層。
《形容動詞》
(context、dated)一層。一段。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
“一重”で始まる語句
一重瞼
一重羽織
一重物
一重目縁
一重咲
一重垣
一重差
一重桜
一重目
一重褄