ふせ)” の例文
(ロ)水源すいげん涵養かんよう。 森林しんりんはかように雨量うりよう調節ちようせつすることが出來できると同時どうじ一方いつぽうでは水源すいげんやしなひとなり、河水かすいれるのをふせぎます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ロレ いや、そのことば鋭鋒きっさきふせ甲胄よろひおまさう。逆境ぎゃくきゃうあまちゝぢゃと哲學てつがくこそはひとこゝろなぐさぐさぢゃ、よしや追放つゐはうとならうと。
この遊歩いうほあひだ武村兵曹たけむらへいそうめいずるまゝに、始終しじゆう吾等われらまへになり、うしろになつて、あらかじ猛獸まうじう毒蛇どくじや危害きがいふせいでれた、一頭いつとう猛犬まうけんがあつた。
ハツと呼吸いきく。目口めくち吹込ふきこ粉雪こゆきに、ばツとけて、そのたびに、かぜ反對はんたいはう眞俯向まうつむけにつてふせぐのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天井てんじようまであがつたならば、屋根やねまで打拔うちぬいて火氣かきくこと。これはほのほ天井てんじようつてひろがるのをふせぐに效力こうりよくがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
保名やすな家来けらいたちもみんなつよさむらいでしたから、けずにふせたたかって、とうとう乱暴らんぼう侍共さむらいどものこらずはらってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「相手は何分容易よういの者ぢやない。私が見張つて居たところで、ふせぎやうはないかも知れませんよ。それを承知なら一日お邪魔をさせて頂きませう」
また輸出時期ゆしゆつじきであるから輸出手形ゆしゆつてがた買取かひとる、うすれば一ぱうからへば爲替かはせ急激きふげきなる騰貴とうきふせぐことが出來できる、爲替かはせ急激きふげきなる騰貴とうきふせれば
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
火はわらのべてゆくようにうつる。むーッとこもる熱気ねっき刻一刻こくいっこくにたかまる。そして、むせるそばから煙ははなにしみてふせぎようもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
與吉よきち繃帶ほうたいをしてから疼痛いたみもとれた。繃帶ほうたいまた直接ちよくせつものとの摩擦まさつふせいで、かれこゝろよく村落むらうち彷徨さまよはせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『おい人車くるまに乘れば好かつたね。』と小池は、路傍みちばたの柔かい草の上を低い駒下駄こまげたに踏んで歩きつゝ土埃つちぼこりの立つことをふせいでゐるお光の背後うしろから聲をかけた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「あんなたよりのない花圃はなばたけなんですか、今夜こんや大風おおかぜをどうして、あんなところでふせぐことができますか。」と、せみはあきれたようなかおつきをしていいました。
二つの運命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんながばたばたふせいでいたら、だんだん粘土ねんどがすべって来て、なんだかすこうし下へずれたようになった。しゅっこはよろこんで、いよいよ水をはねとばした。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしたちは石の間にほらあなのような所を見つけた。そこにはまつの落ち葉がたまっていた。これで、上には風をふせぐ屋根があり、下にはしいてねるふとんができた。
車上しやじやうひと肩掛かたかけふかひきあげて人目ひとめゆるは頭巾づきんいろ肩掛かたかけ派手模樣はでもやうのみ、くるま如法によほふぐるまなり母衣ほろゆきふせぐにらねば、洋傘かうもりから前面ぜんめんおほひてくこと幾町いくちやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
建振熊命たけふるくまのみことは見る見るうちに宿禰すくねの軍勢を負かしくずして、ぐんぐんと、どこまでも追っかけて行きました。すると敵は山城やましろでふみとどまって、頑固がんこふせいくさをしだしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
殺さば殺せ覺悟なりと己れが舊惡きうあくあらはれ口を横道よこみち引摺込ひきずりこんふせがんと猶も奸智かんちめぐらしけるに忠兵衞の妻お富は長庵がいふ事を始終しじうもくして聞居たりしが眞赤まつかに成たる顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
コロボックルは如何いかにして之をふせぎしか。余は彼等はエスキモーが爲す如く、もりに長きひもを付け其はし獸類ぢうるい膀胱抔ばうくわうなどにて作りたるふくろくくけ置きしならんと考ふるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
もみはある程度まで成長して、それで成長を止めました、その枯死かれることはアルプス産の小樅こもみ併植へいしょくをもってふせぎ得ましたけれども、その永久の成長はこれによって成就とげられませんでした。
ときとしては柳条にりて深処にぼつするをふせぎしことあれども、すすむに従うて浅砂せんさきしとなり、つひに沼岸一帯の白砂はくさげんじ来る、砂土人馬の足跡そくせき斑々はん/\として破鞋と馬糞ばふんは所々に散見さんけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
けれども此樣こんな氣候にも耐えてゐなければならんといふ人間は意久地無いくぢなしだ。要するに人間といふやつは、雨をふせぐ傘をこしらへる智慧ちゑはあるが、雨を降らさぬやうにするだけの力がないんだ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
妾の再び三たび頼み聞えしには答えずして、しずかに沈みたるそこ気味わるき調子もて、かかるだいそれたる事に加担する上は、当地の警察署に告訴して大難を未萌みほうふせがずばなるまじという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
道をあるいていて、いきなりなぐられてもふせぎようがない、というのだ。音もなく家に忍びこまれても、これまた、見えないのだから、どうしようもない。町の人は不安にかられていた。
少し待てばみさうである。二人ふたりは大きな杉のしたはいつた。雨をふせぐには都合のくないである。けれども二人ふたりともうごかない。れても立つてゐる。二人ふたりさむくなつた。女が「小川さん」と云ふ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんとしても、それは、ふせがなければなりません。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
物語ものがたりき、此像このざうはいするにそゞろに落涙らくるゐせり。(りやく)かくてたる小堂せうだう雨風あめかぜをだにふせぎかねて、彩色さいしき云々うん/\
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(ホ)ゆきなだれと海嘯つなみ防止ぼうし。 それからまへにおはなしした洪水こうずい豫防よぼうや、水源すいげん涵養かんようのほかに森林しんりん雪國ゆきぐにですと『ゆきなだれ』のがいふせぐことも出來できます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
金庫きんこ書庫しよこ土藏どぞうにはおの/\おほきさに相應そうおうする器物きぶつたとへば土藏どぞうならばばけつ)にみづくこと。これは内部ないぶ貴重品きちようひん蒸燒むしやきになるのをふせぐためである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かれ什麽どんなをしんでもかますなかつてくのをふせぐことは出來できない。しか寡言むくちかれいたづらに自分じぶんひとりみしめて、えずたゞ憔悴せうすゐしつゝ沈鬱ちんうつ状態じやうたい持續ぢぞくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さけぶまに、もう見ているだ! 蛾次郎がじろうのあとから小頭こがしら雁六がんろく伊部熊蔵いのべくまぞう、そのほかあまたの山掘夫やまほりたち、ふせぎようもなくヒラリヒラリととびあがって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう大将たいしょうは、とても正当せいとうちからではおつ軍勢ぐんぜいふせぐことができない、そうして降参こうさんしなければならないとおもいましたから、これはなにか策略さくりゃくめぐらして、おつ兵隊へいたい
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てきめてたというのに、よけいなことをする手間てまで、なぜはやてきふせ用意よういをしないのです。蔵人くらんどでもなんでもかまいません。わたしはあくまで鎮西八郎ちんぜいはちろうです。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
門内から不意に飛び出すものはふせぎやうはない——多分曲者は夕刻の忙しい時分塀を越して屋敷の中にまぎれ込み、植込みに隱れて本矢を飛ばし、裏門から逃げ出したものであらう
手鎗てやりまわしたりして、からうじてその危害きがいふせいでるが、それも何時いつまでつゞことか、けるにしたがつて、猛獸まうじういきほひ益々ます/\激烈げきれつになつてた、かゝるときにはさかんにくにかぎると
もつ野道のみち山路やまみちは云も更なり都合つがふよりてはあさほしいたゞくれには月をふん旅行りよかうなす事往々まゝあるにより先生をたのみ劔術をまなびなば道中するにも心強くかつ賊難ぞくなんふせぐ一端共成事なれば此趣きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この場所はずいぶんあれたさびしい所であったが、それよりいい場所は見つからなかった。それに花こう岩の中にはいってねむれば、しめっぽい夜風をふせぐたしにもなろうと思った。
經濟界けいざいかい波瀾はらんあたへることになるのであるが、これ如何いかにしてふせるかとふと、政府せいふ財政ざいせい整理緊縮せいりきんしゆくこれ持續ぢぞくし、國民こくみん消費節約せうひせつやく程度ていどこれ持續ぢぞくしてくよりほかみちはないのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
エスキモーは斯かる浮き袋にいきを吹き込み、且つ其氣のるるをふせぐ爲に栓を爲るの便をはかりて、角製のくだを是に付け置く事なるが是と等しき物武藏西ヶ原貝塚及び下總柏井貝塚より出でたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あの、とほりだ。さすがに、たゝみうへへはちかづけないやうにふせぐが、天井裏てんじやううらから、臺所だいどころねずみえたことは一通ひととほりでない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのはやしがあるので、ただに景色けしきがいゝばかりでなく、まへにもおはなししたように海嘯つなみがいふせぐことも出來できます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
もしこのはさまると、人畜じんちく牛馬ぎゆうば煎餅せんべいのようにつぶされるといはれ、避難ひなん場所ばしよとしては竹藪たけやぶえらべとか、戸板といたいてこれをふせげなどといましめられてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
勘次かんじあさのまだすゞしい、しめりのあるあひだかまどはひつてつてけてだけ手數てすうつくしたのである。それでいくらでも活溌くわつぱつ運動うんどうする瓜葉蟲うりはむしふせがれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うえのぼっていったものは、ようやくのことで、からすにあたまをつつかれたり、をねらわれたりするのをふせいで、なかからひかるものを一まいしてみたのでした。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
暗々陰々あんあんいんいんとして到底その正体を見究むるあたわず、かかる間にも寒気はますます加わり、もしこのままにてなお十分間を過さば、余はついに凍え死ぬべし、ああいかにしてこの寒さをふせがん
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
千代松に疑ひのかゝるのを、一生懸命でふせいでゐた樣子です。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それでもとにかく、風雨をふせぐ屋根だけはできたのであった。
表にて喰居くひゐたりし時ふせぎ傳吉といふ者に出合互に昔しがたりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「しからば火攻かこうふせぎは」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のまゝ、うと/\してると、種痘うゑばうさうわざとて、如何いかにともふせぎかねて、つい、何時いつにかはなる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゆうちゃんは、へびがくるのをふせげるとって安心あんしんしました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)