工合ぐあひ)” の例文
「ははあ、そいつはどうもとんだご災難でございました。しかしいかゞでございませう。こんども多分はそんな工合ぐあひに参りませうか。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
頂戴ちやうだいしてしまつた。何しろ仙桂和尚の春風のやうな、のんびりした人柄が、良寛さんの心も、さいうふ工合ぐあひにしてしまふのであつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
が、きやくたうがつまいが、一向いつかう頓着とんぢやくなく、此方こつち此方こつち、とすました工合ぐあひが、徳川家時代とくがはけじだいからあぢかはらぬたのもしさであらう。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ウフヽヽ、アハヽヽ梅喜ばいきさんはらつちやアいけないよ、おまへとこのお内儀かみさんは失敬しつけいだがあま器量きりやうくないよ。梅「へえゝんな工合ぐあひですな。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくし何氣なにげなく衣袋ポツケツトさぐつて、双眼鏡さうがんきやう取出とりいだし、あはせてほよくその甲板かんぱん工合ぐあひやうとする、丁度ちやうど此時このとき先方むかふふねでも、一個ひとり船員せんゐんらしいをとこ
胴の締り工合ぐあひといひ、ふつくりとした肉つきといひ、平素ふだんあまりこんなものを見馴れない喜平の素人眼にも、何だかはくがありさうに見えました。
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
その時居合せた男が見ると、その怪物と組み合つた人間は、怪物の体に隠れた所だけ、全然形が消えたやうに見えた、——と云つたやうな工合ぐあひです。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
工合ぐあひえゝつちこともねえが、んでも命懸いのちがけではたれえてんだから、他人ひとのがにやけえぜねになるやうにもえべが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞこの博物館はくぶつかんむかしものをそのまゝ使つかつてゐるので、光線こうせん工合ぐあひすこしくわるいのが缺點けつてんともいへるでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すこ身體からだ工合ぐあひわるいから、今日丈けふだ宿やどのこつてゐると、つひ思切おもひきつてともふたのでつた、しかるにミハイル、アウエリヤヌヰチは、れぢや自分じぶんいへにゐることやう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たとへば六觀音くわんのん元々もと/\大化物おほばけものである、しかその澤山たくさんかた工夫くふうによつて、その工合ぐあひ可笑おかしくなく、かへつてたうとえる。けつして滑稽こつけいえるやうな下手へたなことはしない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
工合ぐあひにそれを方法はうはふかんがへつくやいなや、(それをこぶのやうにまるめてしまつて、それかられがけないやうに、そのみぎみゝ左足ひだりあしとを緊乎しツかりつて)あいちやんはそれを廣場ひろばつてきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そら、いゝ工合ぐあひだらう。僕がこいつをはいてすっすっと歩いたらまるで芝居のやうだらう。まるでカーイのやうだらう、イーのやうだらう。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてミツちやんが、わあんと泣き出しても、みむきもせず、弓の工合ぐあひが悪くなりはしなかつたかどうか、仔細しさいに調べた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そつゆすぶる、したがつてゆすぶれるのが、んだうをひれつまんで、みづうごかすとおな工合ぐあひで、此方こちらめればじつつて、きもしづみもしないふう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
フヽヽんな工合ぐあひだツて……あ彼処あそこ味噌漉みそこしげて何処どこかのやとをんなるね、あれよりはう少し色がくろくツて、ずんぐりしてえてくないよ。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
だが油絵の依頼は、ふところ加減に少し工合ぐあひくないので、大抵の依頼者はその儘引き下つてくが、帰りがけには屹度門札をぺがしてくのを忘れない。
そしてそれらの金屬きんぞくをもつてつくつた器物きぶつほうが、いしつくつたものよりは工合ぐあひのよいことをつてからは、だん/\いしかはりに金屬きんぞくつくるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その色々の声が、大津絵を補綴ほてつして行く工合ぐあひは、丁度ちやうどぜの屏風びやうぶでも見る時と、同じやうな心もちだつた。自分は可笑をかしくなつたから、途中であははと笑ひ出した。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不幸ふこうにしてわたくし想像さうざうあやまらなければそれこそ大變たいへんいま本船ほんせんとかの奇怪きくわいなるふねとのあひだだ一海里かいり以上いじやうたしかへだゝつてるが、あの燈光ともしびのだん/\と明亮あかるくなる工合ぐあひても
勘次かんじさん近頃ちかごろ工合ぐあひがえゝといふはなしだが」親方おやかた義理ぎりぺんのやうにいふと
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それでもあいちやんは粗暴そばう振舞ふるまひこのみませんでしたから、出來できるだけそれをしのんでました。『競技ゲームいま工合ぐあひつてる』つてあいちやんはすこしく談話はなしはずませやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お前たちは医者ならそんなこと位知ってさうなもんだといふやうな工合ぐあひかへって逆にお医者さんをいぢめたりするのでした。
よく利く薬とえらい薬 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
面啖めんくらつて、へどもどしながら、そんななかでもそれでも、なん拍子ひやうしだか、かみなが工合ぐあひひ、またしまらないだらけたふうが、朝鮮てうせん支那しな留學生りうがくせいら。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一畝ひとうね麦を刈つてしまふと、ちやうど腰が痛くなるので、その時百姓達は腰をのばす。そのついでに小手をかざして、村の方を見張るのだから、大層工合ぐあひはいい。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
これはすすきの葉の垂れた工合ぐあひが、殊に出来が面白い。小林君は専門家だけに、それを床柱とこばしらにぶら下げて貰つて、「よろしいな。銀もよう焼けてゐる」とかなんとか云つてゐる。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ハイ/\これ猪口ちよくかい、大分だいぶ大きな物だね、アヽ工合ぐあひについたね。グーツと一くちむかまんうち旅僧たびそうしぶい顔して、僧「アツ……御亭主ごていしゆついで愚僧ぐそうしばつておれ。 ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さうでないとわれ/\は博物館はくぶつかん知識ちしきひろ勉強べんきようすることが工合ぐあひよくまゐりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
氣※きかう工合ぐあひや、草木さうもく種類しゆるいなどでると、亞弗利加アフリカ沿岸えんがんにもちかやう氣持きもちもする。
話は少し古いが、ある雑誌社の社員が、長田ながた幹彦氏のところへ原稿を取りに往つた事があつた。長田氏がまだ今日のやうに名を成さない頃で、従つて氏の懐中ふところ工合ぐあひも近頃のやうに暖くはなかつた。
かれ次第しだいふところ工合ぐあひけたので、いまではいきほひづいた唐鍬たうぐはの一うちは一うち自分じぶんたくはへをんで理由わけなので、かれ餘念よねんもなくきはめて愉快ゆくわい仕事しごとしたがつてるやうにつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その代り乱杭らんぐひを二三十本打ちこみましたがね、昼になってその崩れた工合ぐあひを見ましたらまるでまん中から裂けたやうなあんばいだったのです。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
くろすごなかに、紫色むらさきいろえましやう。高山かうざん何処どこもこの景色けしきです。光線くわうせん工合ぐあひです。夕立雲ゆふだちぐもではありません。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下札さげふだいまあつらへにやつてある、まだ出来できんが蝋色ろいろにして金蒔絵きんまきゑ文字もじあらはし、裏表うらおもてともけられるやうな工合ぐあひに、少し気取きどつて注文をしたもんぢやから、手間てまが取れてまだ出来できぬが
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どこの工合ぐあひだつしやろ、ねつから工夫が附きまへんよつて。」
ところが狸は次の日からどうもからだの工合ぐあひがわるくなった。どういふわけか非常に腹が痛くて、のどのところへちくちく刺さるものがある。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その身体からだいろばかりがそれである、小鳥ことりではない、ほんとうママ可愛かあいらしい、うつくしいのがちやうどこんな工合ぐあひ朱塗しゆぬり欄干らんかんのついた二階にかいまどからえたさうで。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同じ事でもめうなもので、料理茶屋れうりぢややから大酔たいすゐいた咬楊子くはへやうじなにかでヒヨロ/\すぐ腕車くるまに乗るなどは誠に工合ぐあひよろしいが、汁粉屋しるこやみせからはなんとなく出にくいもの、汁粉屋しるこやでは気遣きづかひはない
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんまり工合ぐあひがよすぎるよ。息がつゞかないでやめたもんなら、片っ方は眼のまはり、あとはひたひの上とかいふ工合に行きさうなもんだねえ。
林の底 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
で、にはとがつて、あとが座敷ざしきつゞきに、むかうへすつとひろがつた工合ぐあひが、友禪切いうぜんぎれ衽前おくみさきていがある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことわりのみにて今日けふ御入来おいでるまいとぞんじましたが、はからざるところ御尊来ごそんらい朋友ほういうもの外聞ぐわいぶんかた/″\誠に有難ありがたい事で恐入おそれいります……うもお身装みなり工合ぐあひ、おはかま穿はきやうからさらにおかざりなさらん所と
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おかみさんは赤漆塗あかうるしぬりのはちの上にざるを置いて、をけの中から半分つぶれた葡萄ぶだうの粒を、両手にすくって、お握りを作るやうな工合ぐあひにしぼりはじめました。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
蒋生しやうせいニタリとなり、つかずはなれず尾之これをびす、とある工合ぐあひが、ことで、たぼつたは牛車うしぐるま相違さうゐない。うして蜻蛉とんぼられるやうでも、馬車ばしやだとうは呼吸いきつゞかぬ。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と返事したものですからさすがの大王も、すこし工合ぐあひが悪さうに横を向き、柏の木もみな興をさまし、月のあかりもなんだか白つぽくなりました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あつ時分じぶんぢやが、理屈りくつをいふとうではあるまい、わしいたせいか、婦人をんな温気ぬくみか、あらつてくれるみづいゝ工合ぐあひみる、もツとたちみづやはらかぢやさうな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たしかに茶いろのポケットの沢山ついた上着を着て長靴ながぐつをはいてゐる。そこで私は又私の役目を思ひ出した。そして又横目でそっと作物の発育の工合ぐあひながめた。
花椰菜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
で、立騰たちのぼり、あふみだれる蚊遣かやりいきほひを、もののかずともしない工合ぐあひは、自若じじやくとして火山くわざん燒石やけいしひと歩行あるく、あしあかありのやう、と譬喩たとへおもふも、あゝ、蒸熱むしあつくてられぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こんな工合ぐあひで、猫にはまあ便利なものでした。ところが今のおはなしからちやうど半年ばかりたつたとき、たうとうこの第六事務所が廃止になつてしまひました。
几帳きちやうとも、垂幕さげまくともひたいのに、うではない、萌黄もえぎあを段染だんだらつた綸子りんずなんぞ、唐繪からゑ浮模樣うきもやう織込おりこんだのが窓帷カアテンつた工合ぐあひに、格天井がうてんじやうからゆかいておほうてある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
歩哨はスナイドル式の銃剣を、向ふの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りやうやあごのかたち、それから上着のそでの模様や靴の工合ぐあひ、いちいち詳しく調べます。
朝に就ての童話的構図 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)