不平ふへい)” の例文
すずめは、こころうちに、こんな不平ふへいがありましたけれど、しばらくだまって、こまどりの熱心ねっしんうたっているのにみみかたむけていていました。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただうろついている。源四郎はもとより悪気わるぎのある男ではない。祖母の態度たいど不平ふへいがあるでもなく、お政の心中しんちゅうを思いやる働きもない。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もうしばら炬燵こたつにあたつてゐたいと思ふのを、無暗むやみと時計ばかり気にする母にせきたてられて不平ふへいだら/\、河風かはかぜの寒い往来わうらいへ出るのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しな病氣びやうきあんずるほかかれこゝろにはなにもなかつた。その當時たうじには卯平うへい不平ふへいをいはれやうといふやうな懸念けねん寸毫すこしあたまおこらなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
コウノトリはくちばしをければ、たいてい不平ふへいをこぼす、とよく言われていますね。たしかに、これはほんとうのことです。
だんだんひどくなって、よこからきつけてくる風を、マサちゃんは不平ふへいそうにながめて、それから決心して、目かくしをして歩きだしました。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
『さうか、だけど屹度きつとくづおなぐらゐはいつてたにちがひない』帽子屋ばうしや不平ふへいたら/″\で、『麺麭パン庖丁ナイフ其中そのなかんだナ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
自分ながら自分の藝術のまづしいのが他になる、あわれたいしてまた自分に對してなやみ不平ふへいが起る。氣がンずる、悶々もだ/\する、何を聞いても見ても味氣あじきない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
発病以来苦痛も中々あったであろうが、一言も不平ふへい憂悶ゆうもんの語なく、何をしてもらっても「有難ありがとう/\」と心から感謝し、信仰と感謝を以て此世を去った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宗助そうすけこの一語いちごなかに、あらゆる自暴じばう自棄じきと、不平ふへい憎惡ぞうをと、亂倫らんりん悖徳はいとくと、盲斷まうだん決行けつかうとを想像さうざうして、是等これら一角いつかくれなければならないほど坂井さかゐおとうと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
といふ母や父母のこゑ不平ふへいはモデルにした妹たちや女中までから來た。わたしはすつかり、しよげた。金ねだりにも、母は、さう/\いゝかほは見せなくなつた。
それから三千ねんぜん往古わうこかんがへながら、しんくと、不平ふへい煩悶はんもん何等なんら小感情せうかんじやううかぶなく、われ太古たいこたみなるなからんやとうたがはれるほどに、やすらけきゆめるのである。
それだから追分おひわけ何時いつでもあはれにかんじらるゝ。つまるところ卑怯ひけふな、臆病おくびやう老人らうじん念佛ねんぶつとなへるのと大差たいさはないので、へてへば、不殘のこらずふしをつけた不平ふへい獨言つぶやきである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
取せ急がし立れば幼稚のならぜにを貰ひしうれしさに初の不平ふへい何處どこへやらあと引添ひきそひ出行きつ音羽の村へ差掛さしかゝり七丁目まで來りければたしか茲等こゝらと忠兵衞が歩行あるきながら四邊あたりを見たりぬ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いくらひどく使っても出て行く心配もなければ、不平ふへいを言う気づかいもない重宝ちょうほうな女中であった。かの女が外へ出ることはめったになかったし、けっしておこったこともなかった。
耳をすましてみますと、それはアリの王さまがぶつぶつ不平ふへいをいっているのでした。
ふなのりがうたぐりぶかい調子ちょうしでいうと、わかいなかまは、不平ふへいそうにほおをふくらし
新任しんにん奉行ぶぎやうひかるので、膝元ひざもとでは綿服めんぷくしかられない不平ふへいまぎらしに、こんなところへ、黒羽二重くろはぶたへ茶宇ちやうはかまといふりゆうとした姿すがた在所ざいしよのものをおどかしにたのだとおもはれたが
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ところが、シューラはけっして悪戯いたずらっ子ではなかったので、不平ふへいそうにいった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
くれ/″\もゝう、境遇きやうぐうむかつて不平ふへいつぶやきをらす時は過ぎりました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そして心中しんちゆうひそかに不平ふへいでならぬのは志村しむらかならずしも出來できないときでも校長かうちやうをはじめ衆人みんながこれを激賞げきしやうし、自分じぶんたしかに上出來じやうできであつても、さまでめてのないことである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
無茶苦茶むちやくちやにいぢめたてわけではあるまいが、世間せけんもの敏腕家はたらきてなどゝはれるはきわめておそろしいわがまゝものそとではらぬかほつてまわせどつときの不平ふへいなどまで家内うちかへつてあたりちらされる
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よくも格別かくべつ不平ふへいわずにらせたものである……。
明らかに不平ふへいが、かれの顔色かおいろにうごいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなが不平ふへいをぶちまけ寝台しんだいうえ
すずめは、かんがえてみると不平ふへいでたまりませんでした。なぜ、自分じぶんたちにもまれてから、こんないいごえせないのだろう。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ブツブツ不平ふへいばかりこぼしていましたが、だんだんなれるにつれて、みんなといっしょに元気よく飛んでいきました。
貧乏びんばふ所帶しよたいであれば彼等かれらいく少量せうりやうでも不足ふそくをいはぬ。しか多少たせう財産ざいさんいうしてると彼等かれらみとめてうちでそれををしめば彼等かれら不平ふへいうつたへてまぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
愛想あいそよくいつもにこにこして、葉巻はまきのたばこを横にくわえ、ざるをうって不平ふへいもぐちもなかった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そのくらゐこと夫程それほど不平ふへいならべられゝば、何處どこつたつて大丈夫だいぢやうぶだ。學校がくかうめたつて、一向いつかう差支さしつかへない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
按摩あんまどのは、團栗どんぐりごととがつたあたまで、黒目金くろめがねけて、しろ筒袖つゝそで上被うはつぱりで、革鞄かはかばんげて、そくにつて、「お療治れうぢ。」とあらはれた。——勝手かつてちがつて、わたし一寸ちよつと不平ふへいだつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其秋白の主人あるじは、死んだ黒のかわりにかの牝犬の子の一疋をもらって来て矢張やはりれを黒と名づけた。白ははなはだ不平ふへいであった。黒を向うに置いて、走りかゝってどう体当たいあたりをくれて衝倒つきたおしたりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
黄金作こがねづくりの大小だいせう門前もんぜん茶店ちやみせげられて、丸腰まるごしになつたのを不平ふへいおもふうで、ひと退けながらやつて天滿與力てんまよりきは、玄竹げんちく脇差わきざしをしてゐるのをて、しからんといふふう
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『あれではみんながまつた都合つがふよくあそべるはづがないわ』とあいちやんは不平ふへいがましく、『自分じぶんふことさへ自分じぶんきこえないほどおそろしくあらそつてるんですもの——とくにこれと規則きそくもないらしいのね、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「なんで、おまえさんは、そんなものにひっかかったのだ?」と、風船球ふうせんだまは、いとかって不平ふへいをいいました。するといと
風船球の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老公らうこうかさねて、「これよりのち汝等なんぢら一同いちどうもくしたがかれげんそむくことなかれ、此儀このぎしかと心得こゝろえよ」とおもひもらぬめいなれば、いづれも心中しんちうには不平ふへいながら、異議いぎとなふる次第しだいにあらねば
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相互さうご權能けんのうえて領域りやうゐきをかとき其處そこにはかなら葛藤かつとうともなはれるはずでなければらぬ。若者わかものあひあつまればみな不平ふへいじやうかたうて、勝手かつて勘次かんじ邪魔じやまなこそつぱいものにしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ヒンネリュードの牧師館ぼくしかんにいた大きな黒ネコを、おぼえていなさるかね? あのやろうは、子をうむと、いつも人間がとって、川んなかにほうりこんじまうもんだから、不平ふへいたらたらだったんでさ。
にいさんやうになれたらいだらうな。不平ふへいなにもなくつて」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不平ふへいおも顏色かほいろは、ふねいつぱいにあふれてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とりなかおうさまになったといってありがたがった。それを、おまえさんは、かえって、不平ふへいおもうとは、どういうことだ。
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
モひとつ不平ふへいなのはお天気てんきわるいことで、戸外おもてにはなか/\あめがやみさうにもない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うつくしいものは、ちがったものだ。」と、ほかの古道具ふるどうぐたちは、自分じぶんらが、そのようにかわいがられないので、不平ふへいをもらしたものもあります。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、各々おの/\その懷中くわいちうたいして、憤懣ふんまん不平ふへい勃々ぼつ/\たるものがある。したがつて氣焔きえんおびたゞしい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子供こどもたちの不平ふへいみみはいると、おやたちも、いつかきることに、はんたいしました。それでむら人々ひとびとさくらみちのそばへうつすことになったのです。
青葉の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老職らうしよくやからふもさらなり、諸役人等しよやくにんらも、いよ/\でて、いよ/\不平ふへいなれども、聰明そうめいなる幼君えうくんをはじめ、御一門ごいちもん歴々方れき/\がたのこらず御同意ごどういひ、こと此席このせきおいなにといふべきことばでず、わたくしども
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けんちゃんも、とくちゃんも、みんなたから……。」と、まさちゃんは、うたがわれるのが、不平ふへいでたまらなかったのです。
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
……對手あひて百日紅さるすべりだと燒討やきうちにもおよところやなぎだけに不平ふへいへぬが、口惜くちをしくないことはなかつた——それさへ、なんとなくゆかしいのに、あたりにしてはなりひろい、には石燈籠いしどうろうすわつたあたりへ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのとき、いままで、毎日まいにち、まずいものをべているのを不平ふへいおもったことが、まちがっていたのをづきました。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)
我慢がまんをしろ、我慢がまんをしろ、おれなどは去年きょねんあきから、たらずにいるのだ。それでもだまって不平ふへいをいわないじゃないか、我慢がまんをしろ、我慢がまんをしろ。」
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)