たゝ)” の例文
新字:
其頃そのころ東京とうきやういへたゝむとき、ふところにしてかねは、ほとんど使つかたしてゐた。かれ福岡ふくをか生活せいくわつ前後ぜんごねんつうじて、中々なか/\苦鬪くとうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
温泉いでゆは、やがて一浴いちよくした。純白じゆんぱくいしたゝんで、色紙形しきしがたおほきたゝへて、かすかに青味あをみびたのが、はひると、さつ吹溢ふきこぼれてたまらしていさぎよい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くろおほかみ最惜いとをしげもなくひきつめて、銀杏返いてうがへしのこはれたるやうに折返をりかへ折返をりかへ髷形まげなりたゝみこみたるが、大方おほかたよこりて狼藉らうぜき姿すがたなれども
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もっと燭火あかして、家來共けらいども! 食卓テーブルたゝんでしまうて、せ、あま室内ざしきあつうなったわ。……あゝ、こりゃおもひがけん慰樂なぐさみであったわい。
一ぴきののみ眞蒼まつさをになつて、たゝ敷合しきあはせの、ごみのなかげこみました。そしてぱつたりとそこへたふれました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
おつぎはとき吹消ふつけしたブリキのランプをけて、まだ容子ようすがはき/\としなかつた。勘次かんじ先刻さつき風呂敷包ふろしきづゝみいた。ちひさくたゝんだ辨慶縞べんけいじま單衣ひとへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
したゝをはりし書面しよめんをば幾重いくえにもたゝみ、稻妻いなづま首輪くびわかたむすけた。いぬあほいでわたくしかほながめたので、わたくしその眞黒まつくろなるをばでながら、人間にんげん物語ものがたるがごと
あざむいて道十郎へたゝつけ又小夜衣を賣代うりしろ爲し身の代金は博奕ばくちと酒と女郎買ひにつかなくし其上に又小夜衣の手紙てがみたねに伊勢屋の養子やうし千太郎をうまくもあざむき五十兩と云大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それなら一ことんなでかへらうとて、發掘はつくつ中止ちうしし、天幕てんとたゝみ、飮餘のみあましたる麥酒ビールびんたづさへて、うら池邊ちへんき、其所そこにてまた小宴せうえんり、食物しよくもつのこりをいけうを投與とうよして、かるくし
とうさんの幼少ちひさ時分じぶんいたり背負おぶつたりしてれたおひなは、ういふ山家やまがうまれたをんなでした。たけのこかはを三かくたゝんで、なか紫蘇しそけたのをれて、よくそれをとうさんにれたのもおひなでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たゝみまであつくなつた座敷ざしき眞中まんなか胡坐あぐらいて、下女げぢよつて樟腦しやうなうを、ちひさな紙片かみぎれけては、醫者いしやれる散藥さんやくやうかたちたゝんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うちのか、よそのか、かさなりたゝんだむねがなぞへに、次第低しだいびくに、溪流けいりうきしのぞんで、通廊下かよひらうかが、屋根やねながら、斜違はすかひにゆるのぼり、またきふりる。……
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小麥粉こむぎこすこしほれたみづねて、それをたまにして、むしろあひだれてあしんで、ぼういてはうすばして、さらいくつかにたゝんでそく/\と庖丁はうちやうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いろいろのことたゝまつて頭腦あたまなかがもつれて仕舞しまふからおこことれは氣違きちがひか熱病ねつびようらねども正氣せうきのあなたなどが到底とてもおもひもらぬことかんがへて、ひとしれずきつわらひつ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故なぜとなれば昨日きのふまでは、如何いか重要ぢうえうことにしろ、櫻木大佐さくらぎたいさある秘密ひみつをばそのむねたゝんでわたくしかたらぬとおもふと、多少たせう不快ふくわいかんいでもなかつたが、いま秘密造船所ひみつぞうせんじよことも、海底戰鬪艇かいていせんとうていことこと/″\わか
その小高こだか所々ところ/″\に、したから石段いしだんたゝんで、てららしいもんたかかまへたのが二三軒目げんめいた。平地ひらちかきめぐらして、點在てんざいしてゐるのは、幾多いくらもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あひだに、風呂敷ふろしきは、手早てばやたゝんでたもとれて、をんな背後うしろのものをさへぎるやうに、洋傘かうもりをすつとかざす。とかげが、またかごはなうつすいろへつつうつる。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れ/\羽織はをりすそについてどろるは御存ごぞんいか、あれかさころがる、あれをたゝんでてかけてけばいにと一々もどかしうがゆくはおもへども、此處こゝれが御座ござんす
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勘次かんじいそがしげな容子ようすをしてかへつた。かれ蒲團ふとんを二三まいたゝんだまゝおび脊負しよつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この歸途かへりに、公園こうゑんしたで、小枝こえだくびをうなだれた、洋傘パラソルたゝんだばかり、バスケツトひとたない、薄色うすいろふくけた、中年ちうねん華奢きやしや西洋婦人せいやうふじんた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むすめも、白地しろぢ手拭てぬぐひを、一寸ちよいとたゝんで、かみうへせてる、びんいろまさつて、ために一入ひとしほゆかしかつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんなは、とると、それは、夥間なかまはなしくらしく、しやがんだなりに、くるりと此方こつち向直むきなほつた、おびひざも、くな/\とたゝまれさうなが、咽喉のどのあたりはしろかつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はこせこかとおもふ、にしき紙入かみいれから、定期ていきだかなんだかちひさくたゝんだ愛知あいち銀行券ぎんかうけんきぬハンケチのやうにひら/\とふつて、きん一千圓いつせんゑんなり、といふ楷書かいしよのところをせて
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
る、かぜなくしてそのもみぢかげゆるのは、棚田たなだ山田やまだ小田をだ彼方此方あちこちきぬたぬののなごりををしんで徜徉さまよさまに、たゝまれもせず、なびきもてないで、ちからなげに
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もやゝさわやかにつて、ほつ呼吸いきをしたとき——ふと、いや、はじめてとはう、——かれけたはすに、むかがは腰掛こしかけに、たゝまりつもきりなかに、ちておちかさなつたうつくしいかげた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとみが、たゝみかけた良人をつと禮服れいふくもんはなれて、元二げんじ懷中ふところほんうつつたのであつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
土橋どばしなゝめ烏森からすもり、とまちもおどろ/\しく、やがて新橋驛しんばしえきいて、づぶ/\と濡幌ぬれほろたゝんでで、𤏋ぱつあかるつたところは、暴風雨あらしふね燈明臺とうみやうだい人影ひとかげくろく、すた/\とまばらに往來ゆきかふ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとみが、たゝみかけたをつと禮服れいふくもんはなれて、千助せんすけ懷中ふところほんうつつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あらためてたゝなほしてところ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)